名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

榊山大亮

ヘテロフォニーの死 - 西村朗の訃報に接して

西村朗 2023年、収まらぬコロナ禍の中9/7に大きな訃報が飛び込んできた。我が国を、いやアジアを代表する作曲家、西村朗の突然の死である。私は、久しぶりに、いや一柳先生以来だからそれほどでもないが、思わず「えっ!」と声を上げてしまった。西村先生は1…

知られざる東欧シンフォニズムの系譜

東欧諸国 私には交響曲は長すぎる。しかし年に何度か交響曲を欲する時期があると数回前の記事でも書いた。 またやってきてしまった。 ちょっと収まっていて、前回は重い論文的な記事などもあげて、興味は中田喜直などの研究に向いていた。 しかし来てしまっ…

ベスト・オブ・コンテンポラリー002「ウストヴォーリスカヤ - その音楽に潜むもの」

ベスト・オブ・コンテンポラリー 一人の現代作曲家の音楽を深く聴き込み、分析を試みる当企画はとにかく準備が大変で全く回を重ねられないままになっていたが、やっと重い腰を上げて一本書いてみようと思い、かねてからの懸案だった作曲家、ガリーナ・ウスト…

RMCチャンネルとリアルなピアノ演奏の関係

四分音ピアノ 私の個人研究と名古屋作曲の会の活動を繋げ、協力という形で運営していただいているYouTubeチャンネル「RMC」は、このブログの読者の皆様ならすでに登録していただいていることと思う。 基本的には今は日本の作曲家に焦点を当て、忘れられたり…

たまには交響曲、聴きませんか?

オーケストラ配置図 私は元々長大な曲、特にドイツ本流のブラームス、ワーグナーやブルックナーが苦手だったりする。本流の重厚さに胸焼けがするのと、ブルックナーなどはそのロマンティシズムへの共感ができないという個人的な理由だ。なのであまり「交響曲…

ポップスとの安易な結婚?

ライブハウス クラシックであること、芸術音楽であることとポップスであること、商業音楽であることは相反することなのだろうか。 私たちはこの問題に大昔から取り組んできた。 例えばルネサンス期にだって世俗音楽を取り入れたものが良いのか悪いのかなど、…

坂本龍一の死と彼の偽オリエンタリズム

坂本龍一 去る2023年4月上旬、コロナ禍も下火の春にそのニュースは国民に飛び込んできた。教授こと坂本龍一が3月28日に大腸がんに倒れ亡くなったと。 ある世代にとっては志村けん同様、彼の死も一つの原風景の消失であろうし、思想を同じくする者にとっては…

我が国の作曲家シリーズ 番外編5 成田為三の楽曲発見!

シリーズ我が国の作曲家 新型コロナが低調になる中、梅毒、サル痘に続き、マールブルク病、鳥インフルエンザの人への感染といったように、令和という時代は本当に感染症の時代となってしまいました。恐ろしいやら、以前の生活が懐かしいやら思いは複雑ですが…

ロマン好きへの手紙 -ラトビアの天才三兄弟

ラトビア 日頃現代音楽の普及と理解に筆を走らせて少しでも力になろうとしていますが、たまにはロマンティックな作品を聴きたいという声にも応えなければと思うこともあります。しかし研究の進んだジャンルを私が取り上げることにはあまり意義がないとも感じ…

コンテンポラリーの回廊 俺の視聴部屋3

コンテンポラリーの回廊 皆様あけましておめでとうございます。旧年は三の酉ということもあり、SNSではたびたび炎上、バカばかりが雨後の筍がごとく現れ切っても切ってもきりがない実に不毛な時間を多く経験しました。しかしその中から拾ったものは大きく、…

RMCチャンネル人気動画ランキング2022

RMC 皆様、今年も押し迫ってまいりました。流行病がちっとも収まらない中、ノーマスク批判をするとすぐ炎上するようなクソな世相をあざ笑いながら、今日も完全防備の生活をしています。 さて2021年ランキングは今年の年初に発表しましたが、今年は年内にラン…

コンクール受賞者を追う 第1回日本音楽コンクール

コンクール本選演奏 続くコロナ禍のなかで音楽というコンテンツ自体にも、喜ばしい方向ではない変化が出てきている。その一つに作曲コンクールが挙げられるだろう。通常作曲コンクールは譜面審査を抜けた本選で、その作品をオーケストラが演奏し、聴衆と審査…

巨星墜つ 野田暉行、一柳慧を偲ぶ

R.I.P 2022年、日本はその誇るべき芸術文化の担い手、そしてその文化が華やかだった頃を知る生き証人を相次いで失った。 すでに日本という国はかつての栄華を失い、文化、国力ともに大きく衰退し、アジア諸国は愚かすでに後進国の様相である。その中でも凄ま…

様々な協奏曲①

協奏曲 皆様は協奏曲と言うと何を思い出しますか? ・ピアノ ・ヴァイオリン ・チェロ 確かに王道ですし、名曲も多いですよね。これは作曲家の目からするとこれらの楽器がオーケストラを伴奏に従えたときに映える楽器だからなのだろうと思います。 しかし楽…

オケコンのススメ

オーケストラ 皆さんは「協奏曲」と言ったらどういう形態を思い浮かべるでしょうか。 -ソリストが前にいて技巧的な演奏をする後ろでオケが伴奏をする音楽 そうですね。ピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲とたくさんの協奏曲があります。中には変わった協奏曲…

ベスト・オブ・コンテンポラリー001 「マリン・ボングを聴く」

Best of Contemporary さて今回から始める新シリーズは、すでに進行中の「俺の視聴部屋」シリーズとは違い、もう少し専門的に一人の作曲家を掘り下げてみようと言うものである。もちろんアイキャッチとシリーズ名は某FM局の某番組のパロディである。 記念す…

コンテンポラリーの回廊 俺の視聴部屋2

コンテンポラリーの回廊 俺の視聴部屋2 さて今回も世界中の新しい音楽を、この遅れきった国日本に紹介してこうではないか。JAPANがどうのCool Japanなんて本当にバブルの亡霊まだいたのと言う感じで、口にするのも恥ずかしいというものだが、まあどうやら文…

シリーズ我が国の作曲家006「栗原泰」

我が国の作曲家 この研究をしているとしばしば出会うのがほとんど資料が残っていない、もう存在を肯定することも難しいという作曲家である。 そんな作曲家の書いた「楽譜」がと登場してしまうと、誰かのペンネームでない限りその作曲がいた事になってくるの…

コンテンポラリーの回廊 - 俺の試聴部屋1

コンテンポラリーの回廊 どうも榊山です。アイキャッチ画像とタイトルからピンとくる方も多いでしょうが、NHK-FMで片山杜秀先生のお送りされるところの「クラシックの迷宮」の「私の試聴室」のパロディをやってみようと思いつきではじめてみました。 まあ内…

ウクライナの作曲家入門編

ウクライナ 知っての通りウクライナという国はロシアの侵略を受けている真っ只中である。ウクライナは私が幼い頃はソ連の一地方であったが、ソ連解体とともに独立国になった。 とはいえ歴史的には様々な国や勢力の支配を受け、1917年にはじめてウクライナ人…

最大のファンタジー作曲家、逝く - ジョージ・クラム追悼とその音楽

George Crumb 偉大なるファンタジー作曲家、ジョージ・クラムが死んだ。2022/2/6のことだった。92歳の大往生、しかしそれでも私はもっと生きてほしかった。そしてあの世のファンタジーを聴かせ続けてほしかった。 今回は私が敬愛してやまない作曲家の一人だ…

RMCチャンネル人気動画ランキング2021

RMC 私の個人研究に名大作曲同好会のご理解を頂いて協力関係を作り、毎週1曲のペースで忘れられた音楽、知られざる音楽を紹介しているRMCチャンネルですが、2021年の人気動画ランキングとその理由などを纏めてみようかと思います。 このチャンネルはすでに10…

年のはじめに歌う歌

賀正 みなさまあけましておめでとうございます。 旧年中はコロナの激震に揺れる中、名作同をご支援ご注目頂き本当にありがとうございました。本年も、我々一同頑張ってまいりますので、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。 さてお正月…

我が国の作曲家番外編4「資料について」

シリーズ我が国の作曲家 もうこのブログの読者の方なら、私が日本の忘れられた作曲家や、再評価の進んでいない作曲家について真剣に調べ、音源化しあるいはその経歴についても纏めていることはご承知だろう。 しかしこの研究も中々骨が折れるもので、普段平…

スティーブ・ライヒはミニマルなのか

Clapping Music 我が名作同も逡巡と試行錯誤の中、このコロナ禍での音楽活動を模索、実行している。在野から世界へという我々の野望は、ただのありふれたキャッチコピーや政治家の公約とは違い、人生と魂をかけた決意と言っても良いものなのだ。こんなことく…

怪異と音楽

某有名幽霊の方 夏も分かりやすいほどにあっさりと過ぎ、秋の只中、一気に涼しくなり、忌まわしきコロナもちょっと小康状態。皆様、ご健康にお変わりはありませんか? なんだか夏があまりにも一気に過ぎていってしまったので、私はちょっとだけ懐かしくなっ…

自然共生と音楽 - レイモンド・マリー・シェーファーに寄せる

冬のカナダ 訃報というものはいつも突然飛び込んでくるものである。カナダの大作曲家、レイモンド・マリー・シェーファーが亡くなった。コロナ禍に世界が揺れる2021年8月14日のことだった。 この時期、人の死の知らせを聞くとどうしても「そのこと」が頭をち…

HIROSHIMA - FUKUSHIMA

原爆投下 8/6は広島に原子爆弾が投下された日である。続いて8/9には長崎にも原爆が投下された。日本人なら誰もが知る痛ましい歴史の1ページである。 そしてこのことが日本を唯一の被爆国とならしめ、平和憲法とともに右に左に様々に語られ、利用されている。…

五輪と音楽

オリンピック まもなく東京オリンピックが開幕する。 コロナ禍で延長されたが、そもそもの開催年であった去年の西暦を変えず「東京オリンピック2020」と称したまま開催されるそうだ。2021年には誰もコロナ禍が収まっているだろうと甘く考えた結果がこの名前…

私達のコンサートのメッセージ

バトンタッチ いよいよその日が近づいてきた。 達成率100%以上となったクラウドファウンディングとういう大きな支援を頂いて、私達のコンサートが始まろうとしている。 前回私のブログの担当週ではそのコンサートからストラヴィンスキーの「春の祭典」、そ…