名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

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RMCチャンネル人気動画ランキング2022

RMC

 皆様、今年も押し迫ってまいりました。流行病がちっとも収まらない中、ノーマスク批判をするとすぐ炎上するようなクソな世相をあざ笑いながら、今日も完全防備の生活をしています。
 さて2021年ランキングは今年の年初に発表しましたが、今年は年内にランキングを発表してみようと言うことにしました。今更ご説明の必要もないでしょうが、名作会と私の個人プロジェクトの連動企画で、RMCチャンネルをYouTube上に立て、我が国を中心に忘れられたり、まだ知られていなかったりといった作品を打ち込みも形で取り上げ毎週紹介しているこの企画、今年一年の再生数ランキングを見てみようというものです。
なお筆者の都合で、執筆時点(2022/12/7)でのランキング集計となることをご承知おきください。

 今年一年間で視聴回数は7924回となって少しずつ多くの人に届けられてきているようです。

2022年の再生数ランキングに早速参りましょう。


第10位
断章/菅原明朗
指定期間内再生数135
トータル再生数502

菅原明朗

 第10位にランクインしたのは去年から引き続く好評を頂いている菅原明朗作曲の「断章」でした。ちょっとお戯れの過ぎたコメントを頂戴した楽曲でもありますが、関西方面では実演で蘇演されたとのことで、非常に有意義な研究と再演が進んでおり、とても喜ばしいですね。
 ちなみに筆者はある方を介して、菅原先生のご遺族様と直接メールをやり取りし、お褒めを頂いたこと代えがたい思い出となっております。
 この曲は雑誌の附録として二回に分けて連載された結果、後々の研究に齟齬が生じてしまい、曲数も3曲説、5曲説、6曲説などがあったようですが、私の研究では5曲と結論付けていましたところ、本家の方でも同じ結論だととのことで、本楽曲の迷走史に終止符が打たれることになったこと、少しだけ関われて光栄でした。
 タイトルに有る通りまさに「断章」という5つの小品からなっており、和の雰囲気と近代的な響きが融合したまさに菅原ワールドと言える素晴らしい曲ではないでしょうか。

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第9位
五月の組曲/江文也
指定期間内再生数139
トータル再生数653

江文也

 第9位にランクインしたのは日本で歌手として人気を博し、作曲方面でもいち早くモダニストとして独特の作風を築き上げた江文也の「五月の組曲」です。
 この曲も当チャンネルで安定的な人気を誇っており、去年もランクインしていた作品となります。
 江文也の日本での足跡は研究者の間ではよく知られている方だと思いますが、中国へ渡ってからの、特に最晩年の足跡は資料が薄く、中国本国で刊行された作品全集がほしいなと思い続けているのですが、揃えるとなるとかなりの額になるので厳しいなと毎年逡巡しています。
 この曲も非常にモダンな作風で書かれ、また中国圏を中心によく演奏される曲でもあるようで、当チャンネルへのアクセスも多いのかなと思っています。

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第8位
3つのピアノ曲/宅孝二
指定期間内再生数140
トータル再生数285

宅孝二

 第8位にランクインしたのは宅孝二のかいた「3つのピアノ曲」でした。
この曲も非常に人気を誇っており、安定した再生率ですが、今年に入ってからは特によく再生されたようです。3つの曲の中には「ソナチネ」にそのまま流用された曲もあるのですが、宅孝二らしい軽妙洒脱な曲想はやはりピアニストを強く惹きつけるようです。この曲などはコンサートで取り上げるには最適な内容かと思うので、もっと演奏されてほしい曲だと感じています。

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第7位
ひなたぼっこ/すぎやまこういち
指定期間内再生数141
トータル再生数269

すぎやまこういち

 第7位にランクインしたのは日本人なら誰でも知る作曲家の一人すぎやまこういちが書いた子供のためのごく短い小品「ひなたぼっこ」です。やはり去年9月に飛び込んできた訃報に驚いた方が多かったのでしょう、当チャンネルでも追悼の意味を込めて一生懸命探した純音楽でした。今年になって懐かしさを感じる方が増えたのか、レコメンドされやすくなったのか一気に再生数が上がりました。
 今でもちょっとなくなったことが信じられないですが、この小さな曲の中にまさに「ああすぎやまサウンドだ!」と言える世界観が凝縮されていて優しい気持ちになれます。アンコールなどに使っても映える曲ではないでしょうか。

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第6位
落ち葉の秋に/千秋次郎
指定期間内再生数161
トータル再生数161

千秋次郎

 第6位にランクインしたのは本年アップした千秋次郎の「落ち葉の秋に」でした。
子供のための曲集に収載された小品で、また御本人のYouTubeチャンネルもある中、ランクインさせていただいてちょっと不思議な気持ちです。
 この曲はそのタイトルが示す通り素朴で秋の憂いを表現した日本人的感性に包まれた曲です。残念ながらあまり演奏機会には恵まれていませんがこれからどんどん演奏されてほしい曲です。

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第5位
Walzer SAKURA/栗原泰
指定期間再生数175
トータル再生数175

栗原泰

 第5位となったこちらの作品も今年アップした楽曲です。
 日本人の心ともいうべき「さくらさくら」をテーマにしたワルツとなっていますが、作曲者については謎が多く限られた情報しかない忘れられた作曲家です。
 音楽の構成はシンプルですが、雰囲気はウインナーワルツであり、ドイツ系の音楽の勉強をしたと考えられそうです。そしてテーマからはどんどん離れていき完全にオリジナルのワルツとなっていきます。しかし和の音階が感想部分にも使われ日本人の心がウィーンの響きに埋め込まれたような実にユニークな楽曲になっています。
こういった作品を紹介するのが本チャンネルの使命ですので、ランクインは嬉しいの一言です。

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第4位
3つの小品/毛利蔵人
指定期間再生数182
トータル再生数381

毛利蔵人

 第4位となった作品は今年になって再生数が増えた毛利蔵人の子供のための作品「3つの小品」でした。この曲もアップは古いのですが、順調に再生数を伸ばしランクインしたようです。
 毛利蔵人は夭折の天才で、武満徹芥川也寸志のアシスタント、三善晃に指示しフランス風の楽曲の書法を完璧に我が物にした作曲家です。この曲もそんな毛利の作風があますところなく散りばめられた響きの美しい作品です。
 昨今は「わかりやすい曲」「はっきりした調性音楽」などばかみたいな曲が初頭教育場面で用いられますが、こういった楽曲を子どもたちに積極的に演奏させることで、響きへの興味を大きく伸ばせると思うのですが、実に歯痒い思いです。

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 さて上位三作品を紹介する前に閑話休題
 筆者にとっては今年は三の酉ということもあり、炎上の多い年になりました。とある吹奏楽系の炎上に巻き込まれたり、ノーマスク批判を皮切りにネットリンチにあったりと散々な燃え方でしたが、その中で得たものも多く、音楽系の炎上では同士と呼べる人と多く知り合えました。それぞれが熱い想いを持っており、いまのアパレル化し、組織防衛に躍起になるだけとなったお粗末な吹奏楽界に対しても、改善への夢を自ら茨の道を進むことで体現しようとする人々には心打たれました。
 その中で、その世界から下半身の栄養やゼニカネを得ているようなクソ連中の浅ましいふるまいには、改めて反吐が出る思いでしたが、いずれ消滅する業界、やはり在野研究が救う道しかなく、私は正しい行動発言をしていたのだろうと自信を持ちました。そしてその中で知り合った方々とのこれからの発展を夢見るのは必定というものであろうと思います。また在野研究をしている方々からは、今年も多くの刺激と感銘を受け、次世代の天才たちにこのバトンを渡し、つまらない組織の撲滅運動を高めていこうという思いを新たにしました。同じように一般社会でも非科学的なノーマスク信者や陰謀論者を一人でも多く撃滅し、次の時代の日本を本気で考えていける、科学的、論理的でかつ文化的なクラスター形成を来年の活動の柱としようと強く思うに至りました。
 この場を借りて、今年私を育み、またクチの悪い反社の如き私を応援、支持していただけた方々に深い感謝を表したいと思います。本当にありがとうございました。

 

さてランキング上位3つ、行ってみましょう。

 

第3位
花に因んだ3つのピアノ曲/箕作秋吉
指定期間再生数208
トータル再生数208

 

箕作秋吉

 第三位にランクインしたのは日本の伝統音楽に立脚した新しいスタイルの音楽の書き方を模索したパイオニア、箕作秋吉の書いた「花に因んだ3つのピアノ曲」でした。
この曲はある意味有名な曲であり、このチャンネルで取り上げるべきか悩んだ作品でした。
 しかし優良な音源が少なく、そういった意味で取り上げる価値はまだあると判断し、データ化し全曲を公開するという判断をした楽曲です。特筆すべきは「さくらさくら」の主題でフーガを仕上げた部分ではないでしょうか。この様な手法はその後の世代に大きく影響を与え、この曲の意義を不動のものにしているといえます。惜しむらくは、伊福部昭の人気に隠れてしまい、昨今の再評価が遅れている点でしょう。もっと広い視点で日本の近代クラシックを見つめていきたいですね。

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第2位
失われたものへの三章/有馬礼子
指定期間再生数220
トータル再生数502

有馬礼子

 伊福部門下の女性作曲家としても知られる有馬礼子の「失われたものへの三章」は去年に引き続き今年も上位ランクイン。この曲がどうしてここまで人気なのかは計り知れませんが、フランス風の和声と日本人としての感性が溶け合った素晴らしい作品であることは間違いありません。しかしそれだけでは語りきれないアクセス数の多さ、もしかすると参考音源を求めている人が多いのかも知れません。素晴らしい作品なのに音源は見つからず、非常にもったいないという気持ちが強くデータ化しただけに、アクセスの多さは嬉しい限りです。あとは楽譜へのアクセスが改善すれば、もっと多くの人に弾かれるようになるのではないでしょうか。

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さて栄えある第一位は何だったのでしょうか。


第1位
ピアノ・ソナタ第2番/奥村一
指定期間再生数377
トータル再生数377

奥村一

 伊福部門下の一人として、バーバリスティックなまでの強靭なオスティナートやリズムワークを特色として、激しく野生的な音楽を書いた奥村一は昨今の伊福部人気もあって再評価の機運が高まっています。この動きに乗って順調なアクセスを獲得したのがこの曲でしょう。奥村のソナタは多く音源があるのですが、この2番はそれがなく、せっかくならとデータ化した楽曲です。
 作風はまさに奥村!といったところで、その野性的な世界、日本的な感性にしっかり触れられる名曲ではないかと思います。とかく突出したリズム性が語られることの多い作曲家ですが、わらべうたのようなぬくもりのあるメロディにももっと注目したいものです。

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 ということで今年も皆様お世話になりました。
 RMCチャンネルは今後もどんどんこういった楽曲を発掘、研究、発表していく所存ですので引き続きどうぞよろしくお願いいたします。そして年末年始、皆様ご体調を壊されぬよう、また来る年にはこの悪疫が収まり、皆様に幸福がもたらされることをお祈りして、この回を終わりたいと思います。


本年も本当にありがとうございました。