弾け弾です。今回は、全コード進行界隈が待望したであろう、テンション10thコード使用楽曲データベースを作成しました。
テンション10thコードって何?って方はまず、下にスクロールして「September」「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」「Pick Up the Pieces」辺りを聴いてみて下さい。
こんな雰囲気かーってのがつかめると思います。
本記事で使う用語解説
root, 1st, 3rd, 5th, 7th
コードの度数を表す。特に1stとrootを区別しているので注意。rootはコードの最低音。1stはrootと同じ音名を原位とする音で、転位する余地がある場合に用いる。
二次転位音
当記事においては特に、1stの長3度上にあたる二次上部転位音。1stが9thに転位し、さらに長2度上に転位したもの。
テンション10th
上記意味での二次転位音と同義。弾け弾の過去記事では17thと言っているものと同義。
テンション10thコード
おススメ度
楽曲ごとにテンション10thコードらしい響きがパッと聴いてわかるかを軸に主観で決めました。
なのでテンション10thコードの響きがまだピンと来ていない方は、まずは星5つのものから聴いていただくのがよいでしょう。
逆におススメ度が下がっていくほど、こんな使い方もあるのか!とコアな使用例に当たれます。
テンション10thの原理など詳しく知りたい方向け
私の過去記事をご参照ください。
nu-composers.hateblo.jp
注意事項
用語解説で定義した通り、テンション10thが含まれるコードであっても、メジャーセブンス系の和音は今回のデータベースには含めません。V7/Iと解釈できる和音で比較的レアリティが低いためです。
テンション10thがコードではなく、非和声音として鳴っている、つまりメロディに一部含まれるだけのものも事例に含めています。
コードDBと銘打っておきながらコードではないものの、テンション10thコードの原理を理解する助けになるサンプルとして収集しました。
テンション10thコード使用楽曲一覧
Nocturne Op. 9-2/Frédéric Chopin おススメ度:★★★★★
Frédéric Chopin / クラシック / 1832
該当部分:0:22
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テンション10thの確認できる最古の用例は、ショパンの超スタンダードナンバー。
私がテンション10thの仕組みに気づいたきっかけの曲でもある。
ここではドミナントセブンスはテンション10thが鳴っているタイミングではなく、9thに解決してから鳴らされる。
テーマの最高音に従来の理論では通用しないテンション10thを採用するショパンの奇才さが現れている。
愛の夢 第3番/Franz Liszt おススメ度:★★★★☆
Franz Liszt / クラシック / 1845
該当部分:2:26
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テンション10thが鳴らされて3音まではただのドミナントセブンスのように聞こえるが、続く第4音が4度であることで、テンション10thコードだったとわかる。
そしてその次の打鍵ではテンション10thは9thに解決してしまう。一瞬を聴き逃すな!
悲劇的詩曲 Op.34/Alexander Scriabin おススメ度:★★★★★
Alexander Scriabin / クラシック / 1903
該当部分:1:32
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長めの倚音として鳴らされ、9th、1stと順当に解決する。テンション10thを使っていることが分かりやすい用例。
Toccata/Aram Khachaturian おススメ度:★☆☆☆☆
Aram Khachaturian / クラシック / 1932
該当部分:1:15
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クラシック音楽という分類ではあるが、近代曲の語法が使用されている。解決先を持つ非和声音でなく独立和音として響く。
低域のどっしりとした長三和音の上に短7度上を根音とする長三和音、その上にさらに低域と同じ長三和音が重なるという複雑な堆積をしており、解釈が難しい。私としてはこう考える。
最初の和音に含まれる第3音を、ベース音の第10倍音として取り込んでしまえば無いものとして扱える。 すると、後続する和音でsus4の上に3rdが堆積する形になるので、テンション10thコードとして聴ける。
ハチャトゥリアンがどう聴かせたかったのかは分からないが、テンション10thの響きに慣れるとこれも同種の印象の響きと受け取れるではないかと思う。
Someday My Prince Will Come/Miles Davis, Wynton Kelly おススメ度:★★★☆☆
Frank Churchill, Larry Morey / ジャズ / 1961
該当部分:0:05
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時は経ち、クラシックからジャズに目を向けてみる。
ザ・ジャズ・セオリーというジャズ教本に登場する事例。
Miles Davisのアルバムで、Wynton Kellyが演奏しているピアノ。
書籍では、「susコードでは4thが3rdにとって代わっているという根強い誤解があります。」「susコードに3rdを含めることがよくあります。3rdが必ず4thの上になっていることに注意しましょう。」と記載されている。
これまでのクラシックの用例を観察してわかるように、原理的には「susコードでは4thが3rdにとって代わっている」は真実で、その上さらに「テンション10thが1stにとって代わっている」のでsusコード上にテンション10th=3rdが存在できると私は考える。実際には1st,9thがテンション10thに置き換えられず、テンション10thと同時に存在している事例の方が多いため、そう感じるのは難しいけれども。
Maiden Voyage/Herbie Hancock おススメ度:★★★☆☆
Herbie Hancock / モードジャズ / 1965
該当部分:3:53
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ジャズミュージシャンによるポッドキャスト で紹介されていた事例。
曲全体がミクソリディアンのモードジャズになっている。
ポッドキャストではピアノの旋律に対して使われているという指摘だったが、
聴く限りジャズコンボ版の3:53の後ろでコードを鳴らしているピアノが一番わかりやすい。
もしくはアウトロでサックスがトリルをしている部分でもテンション10thが聴ける。
Pick Up the Pieces/Average White Band おススメ度:★★★★☆
Average White Band / ファンク / 1974
該当部分:1:12
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ここからは、ソウル、ファンク、ディスコの時代。
アルバム Average White Bandより。カバーだとテンション10thが聴けない場合が多い。
インスト曲でSynth Padがわかりやすくテンション10thを弾いている
そのテンション10thはもはや解決しない。コード/モードの時代に突入した。
ドリアンのIVなのは珍しい。
Distant Lover/Marvin Gaye おススメ度:★★☆☆☆
Marvin Gaye, Sandra Greene / ソウル / 1974
該当部分:3:18
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トランペットソロやストリングスが、17→1→9と、1stを下部刺繍音のように使っているのが特徴的。
4thが聞こえにくいが、カッティングギターが鳴らしてる気がする。
Ain’t No Stoppin’ Us Now/McFadden & Whitehead おススメ度:★☆☆☆☆
Jerry Cohen, Gene McFadden, John Whitehead / ディスコ / 1978
該当部分:1:25
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テンション10thとしては4thの上に3rdがくる(長7度で堆積する)というのがスタンダードな形ではあるが、本曲では逆さ積みで短2度でぶつかっており、ボイシングが微妙。
しかしレコーディング・ミキシング技術が発展した時代ではボーカルとオケの空間的分離がはっきりしており、これをテンション10thとして聴くことも難しくない。
解決先がないため非和声音というわけでもないがごく短い間旋律に含まれる。7sus4の上では何使ってもええんですというモーダルな使い方。
September/Earth, Wind&Fire おススメ度:★★★★★
Al McKay, Maurice White / ファンク / 1978
該当部分:2:18
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超有名曲。1stに対する上ハモとしてテンション10thが登場する。これもsus4が聞きづらいが真ん中右のギターから聴ける。
本曲のように、IV始まりの循環進行の準備としてのI7でテンション10thが鳴らされる用例はソウル系に多く、採集しやすい。
Don’t Stop ‘Til You Get Enough/Michael Jackson おススメ度:★★★★★
Michael Jackson / ファンク / 1979
該当部分:4:50
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映画「マイケル」を観て発見。
歌い出しからレ♯→ラという増4度跳躍により増音程跳躍警察を敵に回すが、前の音がテンション10thであればこの跳躍も厳重注意くらいで許してもらえる気がする。
その理由として、このテンション10thはレ♯→ド♯→シと解決することが自然に想定され、その次の旋律がラだとしても順次進行を補完できる。そこに増音程の跳躍は無くなるのだ。
尤も、前半部分はレ♯のときはBの長三和音であり実はテンション10thになっていない。
後半コードチェンジが単純になって、終盤の4:50でマイケルが増殖したところで、テンション10thとsus4和音の交錯が存分に楽しめる。
sus4→長三和音をひたすら反復する、ミクソリディアンモーダルな曲はこのようにテンション10thが現れる確率が高い。
Septemberにしても本曲にしても、この時代のファンクの多幸感にはテンション10thが重要なカギになっているように思う。
細かい編曲者はWikipedia参照。
Don't Stop 'Til You Get Enough
Shake Your Body (Down to the Ground)/The Jacksons おススメ度:★★★☆☆
Michael Jackson, Tom Tom 84 / ファンク / 1979
該当部分:0:24
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Don’t Stop ‘Til You Get Enough 同様、sus4と3を繰り返すミクソリディアンモーダルな曲。
0:24の(C Major基準で)第7音のメロディをテンション10th的に聞くことができる。
だがコードの切り替わりが早いので、一時的にただのG7の上に第7音が乗っていて導音的に聞こえる場合がある。
脳内ではコードチェンジは徹底的に無視して常にsus4を鳴らし続けておくのが良い。
Celebration/Kool & The Gang おススメ度:★★★★☆
Eumir Deodato, Kool & the Gang / ファンク / 1980
該当部分:3:20
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こちらもミクソリディアンモーダルで、Vsus4→I/V→Vと一手間加えた進行。
ボーカルがsus4→テンション10thと降りて、9thを経由せずに1stに解決する。
よく聴くと、sus4→テンション10thと降りる中で、順次進行を断つようにグゥ~↑と9thからポルタメントしている。
このポルタメントがテンション10thコードらしさに大きく寄与している。テンション10thは9thを緊張させたものであるから。そしてsus4を弛緩させたものではないから。
Get Down On It/Kool & The Gang おススメ度:★★★☆☆
Eumir Deodato, Kool & the Gang / ファンク / 1981
該当部分:3:11
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ポルタメントの影響がCelebrationとの比較になる。
sus4→テンション10thと降りる箇所がポルタメントになっている。もしメロディがこれで終わりなら、この第7音は3rdとして聞こえやすかったかもしれない。
しかしフォール後、Celebrationと同様9thからポルタメントにより上行しなおすことで、第7音がテンション10thであることが念押しされている。
Variations Op. 41/Nikolai Kapustin おススメ度:★★★☆☆
Nikolai Kapustin / クラシック、ジャズ / 1984
該当部分:0:09
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ここである作曲家の為にピアノソロ曲に戻る。
カプースチンはジャズとクラシックを融合させたピアニスト。
本曲は変奏曲で、主題部分は(彼にしては)割と落ち着いている。
春の祭典でも聞いたような民謡調のメロディがミクソリディアンモードの上で淑やかに鳴らされる。
Piano Sonata No.1/Nikolai Kapustin おススメ度:★★★☆☆
Nikolai Kapustin / クラシック、ジャズ / 1984
該当部分:7:58
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ピアノソナタ第2楽章の終止和音。テンション10thの響きへの絶対的な信頼が窺える。
終始不安定な調性の緩徐楽章を大変幻想的に締めくくる。
Piano Sonata No.2/Nikolai Kapustin おススメ度:★★★☆☆
Nikolai Kapustin / クラシック、ジャズ / 1989
該当部分:1:45
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9thを原位音とするトリル。テンション10thから♭10th(=#9th)への半音的平行移動がシューベルトの即興曲を思わせる、伝統に回帰するようなテンション10thの使い方。
ヴィーナス/Original Love おススメ度:★★★★☆
オリジナル・ラヴ / ソウル / 1992
該当部分:0:10
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ここからはメイドインジャパンの曲中心に現代に至るまでを見ていく。
ソウルを源流とするOriginal Loveからはテンション10thを時折聴ける。
本用例は一次転位音を経ずに原位音に解決する係留音。Aメロの歌い出し、それどころかイントロのリフとして登場する象徴的な事例。
リフが登場する前の短いプリイントロがあるが、イントロはその進行を発展させたものといえる。
プリイントロはIIm7→IM7という穏やかな順次進行であるが、それは仮初の姿。イントロに入るとベースがIIm7のrootとしてまさかの五度下のVを鳴らす。真の姿はIIm7/Vというオンコードだった。更にメロディの第7音を考えると、IIm7の13thであるから、正確にはIIm7(13)/Vである。そしてこれはテンション10thコードの別表記に他ならない。
テンション10thコードの仕組みを理解するのにも有益な事例である。
接吻/Original Love おススメ度:★★★☆☆
オリジナル・ラヴ / ソウル、R&B / 1993
該当部分:3:16
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メリスマで刺繍的に入るだけだが、代表曲ということで入れてみた。シンプルイズベスト。こういうところから気軽にテンション10thを使っていきたい。
スペルバウンド/ピチカート・ファイヴ おススメ度:★☆☆☆☆
小西康陽 / シティ・ポップ / 1994
該当部分:1:33
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スケールをすべて鳴らしたような変わったヴォイシングで、ボーカルもテンション10thを歌っているわけではないのでこれをテンション10thと認めてしまうともはや何でもありになりかねない。
ただ使用箇所で言えばサビのキメ和音として鳴らされるのは往年のディスコソウルに通じる部分がある。そんな思想のもとDBに入れてみた。
SOULS/bird おススメ度:★★★☆☆
大沢伸一 / J-POP、R&B / 1999
該当部分:0:26
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低域から高域までを広く使ったヴォイシングの中で、空を漂うようにメロディが歌われる。
テンション10th→1st→9th→1stと進むが、最後の1stに解決するとき、D進行してIVの第5音になる。
導音であれば、IVの主音に解決するはずだ。
このようにD進行後の第5音に重心を持つメロディはテンション10thと相性が良い。
Do You Believe In Magic?/Cymbals おススメ度:★★★★☆
沖井礼二 / ロック / 2000
該当部分:1:17
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一旦ドを無視すると、テンション10thが1stに解決すると同時にコードチェンジが起きて、V→Iに強進行する。birdの用例と同じく、Vの1stとされるはずだった音が、Iの5thに変身する。導音ではないから、Iの1stには進行しない。
いやいや、間に挟まるド、これこそがIの1stで、先取しているんですよ。と言いたいかもしれない。
ではこのドの正体とは?この旋律を少し変えて、ラシソというメロディにしてみると、
ラは1stの一次転位音、シは二次転位音である。
それと同じことが原曲でも起こっていると考えると、
シは二次転位音、ドは三次転位音(!?)となるかのように思えるが、そうはならない。
ドはsus4として既に和声構成音として存在するからだ。そしてやはりIの1stでもない。
更なる高次の転位音の発見には至らなかったが、だとしても、二次転位音からさらに上方転位したように聴かせるというのは上手い使い方。
ウィナーズ 吹奏楽のための行進曲/諏訪雅彦 おススメ度:★★☆☆☆
諏訪雅彦 / 吹奏楽 / 2000
該当部分:2:41
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主音であるシ♭をソプラノペダルで保持しながら、スケール外のコードで展開する場面。
機能的な進行というより飛び道具的な使い方であるが、テーマへ戻る重要なきっかけとしてフィーチャーされている。
時間を名乗る天使/Cymbals おススメ度:★★★★☆
沖井礼二 / バラード、J-POP / 2003
該当部分:0:29
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Cymbalsの楽曲の中で珍しいスローテンポのバラードで、テンポの下降に比例するように、I7sus4のサウンドも他の用例と比べてかなり重たく感じる。この気怠いテンション10thコードの使い方は唯一無二だ。
SAVED./坂本真綾 おススメ度:★★☆☆☆
鈴木祥子, 山本隆二 / J-POP、バラード / 2014
該当部分:1:10
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循環進行ではない例。サビ前半ではVImに進んでいたのを、後半でI7sus4にリハモする。
歌詞と合わせ、場面転換の演出として効果的に機能している。
happy birthday to you/Official髭男dism おススメ度:★★☆☆☆
藤原聡 / J-POP / 2016
該当部分:0:26
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短く逸音のような形ではあるが、メロディが止んだ後ろで、オルガンが明瞭に完全4度ー増4度の堆積で鳴らしているのが目立つ。cozyなテンション10th。
115万キロのフィルム/Official髭男dism おススメ度:★★★☆☆
藤原聡 / J-POP / 2018
該当部分:0:38
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テンション10thとして鳴っている時間は短いが、解決しない逸音。
I7→VIIm7(♭5)というテクニカルな進行にもテンション10thコードが自然に適用できることが分かる。
髭男は、I7上でIで終止するメロディを反復する際に、末尾がアレンジされてIIIになることがしばしばある。
〈115万キロのフィルム〉
僕は助演で監督でカメラマン →きっと気に入ってもらえると思うな
〈I LOVE…〉
僕が見つめる景色のその中に → いつも卒なくこなした日々の真んなか
〈Pretender〉
いたって純な心で 叶った恋を抱きしめて (これはsus4がないのでテンション10thとは解釈しがたい)
ここにテンション10thが潜みがち。
Brand new life/トマト組、白上フブキ おススメ度:★★★★★
トマト組 / J-POP、アイドル / 2019
該当部分:0:25
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私がテンション10thの存在に初めて気づいた曲。Septemberの類例で、1stの上ハモにテンション10thが現れる。
楽曲全体としてはD Majorの中、AメロのセクションのみAミクソリディアンになっている。
ミクソリディアンモードであるが、ソウルでよく使われるI7sus4 - I7 ではなく I7sus4 - IV/Iの反復なのが特徴的。2番ではさらに不規則な進行になる。
何なんw/藤井風 おススメ度:★★★☆☆
藤井風 / R&B / 2019
該当部分:4:27
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1サビ2サビは導音の先取のようにも取られうるが
ラスサビはbabyのフィラーが挿入されることにより sus4→テンション10th→9th→3rd→1stという解決の順番がロジカル。
フラッシュ/坂本真綾 おススメ度:★★★★★
冨田恵一 / J-POP、アニソン、ゲーム音楽 / 2020
該当部分:0:35
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Ab69に後からGbM7/Abを合成している、冨田恵一にしかできない緻密な和声構造。分厚いエレクトロなサウンド。
ID:Entity Voices/hololive Indonesia おススメ度:★★★☆☆
Frashan Sarasin / アイドル / 2021
該当部分:3:46
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E→D#→Dの半音下降ベースラインの上でB,F#,C#で構成されるメロディを保持することで偶発的に生まれている。
順当に考えるとGを入れずにBm/Dなどとしてもスムーズな進行になりそうだが、Gがあることでかなりエネルギッシュになる。
旅路/藤井風 おススメ度:★★★☆☆
藤井風 / J-POP / 2021
該当部分:0:57
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藤井風は、sus4(9,13)→3(♭9,♭13)の進行が多く、3rdへのテンションリゾルブとしてのメロディが多い中で直球にテンション10thを使っている例があった。
シンコペーションでありながら9thからテンション10thに上がる絶妙なラグが大人っぽい。
あわいに/TOMOO おススメ度:★★★☆☆
トオミ ヨウ / J-POP / 2024
該当部分:1:22
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ピアノがsus4を、ストリングスがテンション10thを分かりやすく鳴らしている。
メロディはテンション10thから一旦9thに降りるが、そのまま1stに解決するのではなく、ドミナントモーション後のM7に軽やかに弾む。
分析
まず重要事項として、このデータベースには現状大変な偏りがあるということを念頭においてください。
私の偏狭な趣味、また仮説に基づいてテンション10thコードが多く聴けるであろうアーティストに絞って調査しています。
そのため、このDBを根拠にテンション10thコードが多いのはこのジャンルだ!のように最終結論を下してしまうのは早計だということです。
今回私がどのようなことを意図してDBを収集していたかというと、
テンション10thコードの出自が知りたい
September周辺ジャンルのテンション10thコードの類例を見つけたい
J-POPにテンション10thコードがどれだけ使われているか知りたい
J-POPのテンション10thコードの使用のルーツとなったジャンルが知りたい
といった企みでした。
1.テンション10thコードの出自が知りたい
については、ショパンのノクターン第2番より遡った事例を探しましたが、確認できませんでした。
ノクターンについては創始者であるジョン・フィールドが居るので、彼の曲を聴いてみた所、ショパンが影響を受けただけあって旋律はショパン的な複雑さがあり、主音の二次転位音を使っている箇所もいくつか見受けられました。
ただその多くはV7/I、つまり主音保続上のドミナントで、セブンスがメジャーセブンスになるようなものばかりです。この例も響きとしては面白いのですが、今回の趣旨とは違うためDBには入れず、また別でコレクションしようと思います。
またジャズやソウル系ジャンルは、現状それぞれ独立にテンション10thコードの響きが見つけられたと考えています。
2.September周辺ジャンルのテンション10thコードの類例を見つけたい
Septemberが元々テンション10thコードの用例として知っていたのと、映画「マイケル」を観て「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」にテンション10thコードあるんじゃね!?と勘づき、実際あったので、このジャンルは鉱脈だと気づきました。
それが今回DBを作ろうと思った大きなモチベーションにもなりました。
期待以上にファンク、ソウル、ディスコにたくさん用例を見つけることができました。SpotifyのBest Hits系プレイリストに大きく助けられました。
3.J-POPにテンション10thコードがどれだけ使われているか知りたい
これは、やはり日常生活に直結するジャンルであるため、ここでテンション10thコードが聴ける機会を増やすには、今数少ない事例から傾向を分析してフィードバックする必要があると考えたからです。
ただわざわざJ-POPをディグる機会を作っていなかったというのもあり、探してみると案外メジャーなアーティストからも複数見つけることが出来たのは収穫でした。
4.J-POPのテンション10thコードの使用のルーツとなったジャンルが知りたい
これに関しては、日本にブラックミュージックが入ったきっかけと言えばやっぱり渋谷系ということで、渋谷系アーティストを調べてみましたが、期待ほど見つかりませんでした。
本人は否定しているが一応ジャンル上は渋谷系である、Original Loveからは多くの用例が採集できました。これはやはりソウルの影響が濃いのだと思います。
こぼれ話ですが、これをきっかけにOriginal Loveの楽曲が好きになりライブに行きました。
またポスト渋谷系であるCymbalsからも多く採集できました。ただ彼らの楽曲は異質すぎるので、今のJ-POPに繋がっているかというと難しい所です。
以上のように、恣意的なモチベーションで収集をしてきたため、そのモチベーションが一定まで満たされた今、
まだまだ掘ろうと思いつつ掘れてないジャンルはあるのですが、手を出せていない状況です。
この片手落ちの状況でなんですが、テンション10thコードが見つけられる文脈についてまとめてみようと思います。
自由を求め、即興性を持つジャンル
テンション10thコードの複雑な堆積を受け入れるジャンル
IV始まりの循環進行が使われるジャンル
1.自由を求め、即興性を持つジャンル
クラシックの中でもロマン派は和声を構成しない音、非和声音をいかに美しく響かせるかの可能性を探った時代でした。
現代我々が享受しているのは決まりきった楽譜による演奏だけですが、それは試行錯誤の結果でしかありません。
ショパンのノクターン第2番のパッセージは、繰り返しのたびに毎回変奏されることからも、テーマに絶対的な音列を重視したのではなく、比較的自由だったことが分かります。
ショパン自身が演奏する際には異なった変奏がされていたという記録もあります。
作曲の着想段階では二次転位音が含まれてさえなく、あるふとしたきっかけで偶然降りてきた二次転位音を取り入れたという可能性もあります。
というのは推測が過ぎるかもしれませんが、当時ドミナントに二次転位音を使うというのはそれほどコペルニクス的転換が必要だったように思います。
リストの愛の夢 第3番における二次転位音も、再現部へ向かう長大なD和音の中であらゆる可能性を模索し絞り出した一滴のように感じます。
ジャズがコードから即興を行うことは言わずもがなだし、モードジャズになると一層音づかいの自由度は上がります。
モードジャズと言えば代表例のカインド・オブ・ブルーで使われるドリア旋法が真っ先に思い浮かびますが、
他の旋法でもモードジャズできるんじゃないかという発想からsus4コードによるミクソリディアンにたどり着いたのではないかと思います。
ファンクもモードジャズ同様、同じコードの中で展開を作っていきます。リズム主体のジャンルでありながらも、そのシンプルなコードワークにおいて他の楽曲との差別化を考える必要もあったでしょう。
ファンク/ソウルでは感情表現の手段として言葉一音のなかで音程を変える装飾的な旋律(メリスマ)が多くなり、その中で二次転位音が挟まる傾向がKool & The Gang、Original Loveの楽曲にみられます。
2.テンション10thコードの複雑な堆積を受け入れるジャンル
テンション10thコードを使う難しさとして、広い音域が必要というのがあります。理想的なヴォイシングを実現するには1点ハ音周り、中低域の完全4度を含む伴奏に対して長7度上のボーカルが必要になるため、男性には厳しい。
だからこそ強靭な喉で歌い上げられるソウルとは相性が良かったのだと思います。
一方で、クラシックのピアノ曲であれば声域は問題外の為、ピアノの豊かな音域で理想的なテンション10thコードを響かせることができます。
3.IV始まりの循環進行が使われるジャンル
J-POPは1.で挙げたような即興性をそこまで重視する文化ではないように思います。どちらかといえば分析的で、世界のジャンルを受け入れ、一度完成してしまえば音源通り精確に歌うことが良いとされます。
にもかかわらず、J-POPで偶然的なテンション10thが使われた理由は、その特徴的な循環進行にあると考えます。
IVから始まる丸サ進行、王道進行の前振りとしてI7は相性が良く、そのテンションでI7sus4にテンション10thが付加しやすいのです。
それならV7のテンションにも同じくらい見られるのではないか?という気がしますが、Iのテンション10thがミなのに対し、Vのテンション10thはシであり、後者はヨナ抜き音階に含まれないため、メロディとしての登場頻度が下がるのです。
その結果V上のテンション10thに遭遇する確率は下がると言えます。
またJ-POPでなくても、Septemberが王道進行であるように、ソウルでもIV始まりの進行が良く使われます。そうなると、やはりJ-POPにおけるテンション10thのルーツはソウルなのかもしれません。
今後の動向予想(片手落ちの分析に基づくので、暫定)
まだテンション10thコードはコード理論として浸透しているものではありません。
今後理論が整備され、J-POPでテンション10thコードが増えていくとしたら、
それはIV始まりの循環進行前のI7に多くなる気がします。循環進行の前はつまり、循環進行の末尾です。つまりテンション10thコードを定型の中に組み込めるのです。
丸サ進行でいえば、「IVM7-III7-IVm-I7sus4(10)」、王道進行でいえば、「IVM7-V7-IIIm-IVm-I7sus4(10)」。これらを「丸サ進行 w/10th」「王道進行 w/10th」のように進化系として定型化してしまえば、使用機会はぐっと増えるはずです。
理論で音楽が作られるのではありません。音楽から理論が生まれるのです。機能和声は、帰納和声です。
J-POPがテンション10thコードの最前線となり、日常にテンション10thが溢れる時代が来ようとしています。
だからテンション10thコードは今知るべきなのです。
テンション10thコードの事例 募集中!
分析としては一旦まとまった形ですが、繰り返すようにこれを容易に覆しうる反論としては、「他のジャンルを調べてない」ことです。もとより一好事家、一会の力では限界があります。
そのため、読者の皆さんからテンション10thコードの用例を募集し、テンション10thコードデータベースの更なる拡充に努めたい所存です。
本記事のコメントや、名古屋作曲の会Xアカウントへのリプライなど、いつでも情報お待ちしております。
最前線は本当にJ-POP?貴方にとってのテンション10thコードの現場を教えてください。