名大作曲同好会

“音楽”を創る。発信する。

スペクトル学派の技法 初級編①

音楽は時代と共に変化しています。

その変化には2つの側面があって、それは文化的な変化技術的な変化

つまり、時代の流れの中で過去の価値観が新しい価値観に塗り替えられていくのが前者、

技術が発展して昔できなかったことができるようになるのが後者です。

最近流行っているDTMなんかは、まさに後者の代表例ですね。

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PCを使って作曲する現代人

今回は、そういった技術的な発展によって実現された作曲法として、スペクトル学派の作曲法を見てみます。

入門編なので全然難しくないよ。

 

【もくじ】

 

スペクトル学派とは

スペクトル学派とは、ひとことで言えば

ある音の倍音構造に注目して作曲を行った人々

のことです。

ふつう、1つの音(に聞こえる音)にはたくさんの倍音と呼ばれる音が混じっています。

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倍音

上の図で基音と書いてある音が、我々の耳に知覚される音です。

上の図では「ド」ですね。

ピアノで「ド」を弾いた場合、耳で聞いても「ド」の音しか聞こえないかもしれませんが、じっくり聞くとその1オクターヴ上の「ド」(第2倍音)、その上の「ソ」(第3倍音)、その上の「ド」(第4倍音)、……なども同時に鳴っている、というわけ。

こういった倍音たちがどういった比率で含まれているかによって、その音の音色が変わって聞えます。

例えば、クラリネットの音には奇数倍音が多く含まれ、偶数倍音はあまり含まれません。

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クラリネット倍音

要するに、我々が普段1つの音として聞いている音は、実はたくさんの音のかたまりでできているということです。

この音のかたまりを分解してみたり、逆に人為的に音のかたまりを作ってみたりするのが、スペクトル学派の特徴です。

 

特徴と実例

スペクトル学派の音楽は、上で紹介したように自然倍音列に基づいています。

時として激しい不協和音を含むものの、自然倍音列に従った不協和音なのであまり厳しい響きにならず、むしろ美しく感じられます。

良い例として、藤倉大の「春と修羅」を挙げておきます。

また、厳密に自然倍音列を再現する場合は微分音を含む場合があります。

この例はJonathan Harveyの「towards a pure land」を聞いてみましょう。

 

方法

スペクトル学派の最も典型的な作曲法は、まずある音を素材と決め、スペクトル解析することから始まります。

スペクトル解析にはコンピュータが必須です。

自分は「Sonic Visualiser」というフリーソフトを使っています。

スペクトル解析を行うことで、その音がどういった音のかたまりなのかが分かります。

たとえば、川のせせらぎを解析すると次のようになります。

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川のせせらぎ

上の方が全体的に黄色いですね。

つまり、高音がまんべんなく全体的に鳴っている状態ということになります。

これをピアノで再現しようとすると、こうなります。

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うげぇ

流石に聞けたもんじゃないですね。

ということで、せせらぎは素材としては使えなさそうです。

では、トライアングルの音はどうでしょうか。

しかも、めっちゃいい音がするということで話題の北山トライアングルの音を解析してみましょう。

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北山トライアングル

黄色い部分がだいぶはっきりと表れましたね。

黄色くなっている部分の音だけを拾ってみると、こうなります。

 

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 かなりの不協和音ですが、聞いてみると確かに北山トライアングルの音に似ていませんか?

 

というわけで、この和音を素材として作曲すれば、立派な(のかは分からないけど)スペクトル学派の音楽になるはずです。

まあ、実際にはこれだけだと素材が貧弱すぎるので、もう少し工夫する必要がありますが……。

 

というわけで完成した楽曲がこちら。

 

次回に続く!

俺がエスペラントやる話 前編


どうも、gyoxiです。

 

突然ですがみなさんエスペラントって知ってますか。そうです、アレです。「世界共通の言語を作ろうぜ!」ってなって作られたあの言語です。今回はそのエスペラントの概略と、私がエスペラントに触れるまでの前日譚です。

 

そもそもエスペラントとは

あまりにも冒頭説明が適当すぎるので一応Wikipediaから引用しておきましょう。

 

エスペラント (Esperanto) とは、ルドヴィコ・ザメンホフとその弟子(協力者)が考案・整備した人工言語母語の異なる人々の間での意思伝達を目的とする、国際補助語としてはもっとも世界的に認知され、普及の成果を収めた言語となっている[要出典][1]。

エスペラント - Wikipedia

 

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ルドヴィコ・ザメンホフ

ユダヤポーランド人であるザメンホフ「世界の言語バラバラ問題、なんとかならねぇかな〜」と考えていたのですが、とりあえずラテン語をやってみてこう思いました。

 

ラテン語むっっっっっっっっっっっず」

 

そう、そもそも言語習得はクッッッソ難しいのです。中高で英語に触れた皆さんならお分かりでしょう。「この単語の過去形、例外だからね♡ 〜ed型じゃダメなの♡」とか平気でやってのける訳ですよ、奴らはこれでは言語による溝は深まるばかりです。

 

そこで、彼は「例外規則をできるだけ無くした、誰でも学びやすい言語」を整備し、発表しました。言葉の壁を超えた交流の補助になるようにと希望を込めて......それがエスペラント(Esperanto)です。

エスペラント"espero"「希望」という意味で、"〜anto"が英語の"〜er(〜する人)"と同じような意味なので、"Esperanto" は希望する人(の言語)=希望の言語といったところでしょうか。


ザメンホフさんが文法をキチンと整備してくれたお陰で、英語で1000時間くらいかかる学習エスペラントでは200時間くらいで済むと言われているので、そう考えると学習するのがすげーーーーーーー楽だということがわかります。ま、言語習得が血と汗と涙の道ということに変わりはありませんが...

 

結局、エスペラントは思ったほど普及しなかった訳でありますが、それでも第二言語として使うことのできる人は100万人くらいはいるらしい(Wikipedia情報)ので、普通にすげぇんじゃねぇの?と思います。

 

自分がエスペラントをやるまで

私がエスペラントの存在を初めて知ったのは(多分)中学生くらいの時でした。英語の先生が「こういう言語があるんやぞ〜w」って授業中に言ってて「へぇ〜〜〜〜〜〜〜〜」と聞き流していたのが最初でした。

 

時は流れて2020年、努力と文字がクソ苦手なため英語の基礎すら頭から抜け落ち、Twitterばりの貧弱日本語力しか持たん人間がここに誕生しました。そうです、今の私です。そんな人間でも音楽を聴くことはできたので、私はいつでもいつまでも、音楽を聴き続けておりましたとさ。

 

さて2020年8月、そんな音楽関係で嬉しいニュースが飛び込んできました。アニメ系音楽レーベルであるフライングドッグがサブスクを解禁したことにより、以前ブログでも取り上げましたARIAサウンドトラックがサブスクで聴けるようになったのです。

 

 

ARIAのサントラは2枚所持しているのですが、3枚目のアルバム『「ARIA The Origination」ORIGINAL  SOUNDTRACK tre』は未入手だったので、そのアルバムは特に大喜びで何度も聴きました。ありがとう。

 

そしてそのアルバムを何周もして数ヶ月、時は2020年11月。アルバムに収録されている「ルーミス エテルネ」という挿入歌を聴いていた私はあることに気が付きます...

ルーミス エテルネ

ルーミス エテルネ

 

「なんかこの曲、歌詞ついてね?」

 

そりゃあ歌だもの、歌詞はあるでしょうよ。ただ、他のアルバムに入っている挿入歌は架空言語で歌われており、調べても歌詞が出てこんのです。しかしこの曲は検索したら歌詞が出てきた。どういうことだ、これは。

 

歌詞は前半がエスペラント、後半が日本語で内容はほぼ同じことを歌っている。タイトルはエスペラントで "Lumis eterne" と書いて「ずっと輝き続けている」といった意味になる(対応する日本語詞は「永遠(とわ)に輝く」)。

ルーミス エテルネとは (ルーミスエテルネとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

エ ス ペ ラ ン ト 

で  た  わ  ね

 

そういやそんなのあったなぁ〜!!!、と思い出すのと同時に、私はある事を思い出しました。

 

「なんかエスペラントの百合ゲーあったよな?」

 

あります。それがSukeraSparoよりリリースされております「ことのはアムリラート」です。

 

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ことのはアムリラート(PC版パッケージ)



一部界隈で話題になっていたり、4年前くらいに人工・架空言語好きの友人からオススメされたりして存在は知っていました。が、文字嫌いなワタクシ、もちろんダイアログ読みも嫌いなので、当時はやる気など起きる筈も無く......

でも好きな曲の歌詞がエスペラントだと知っちゃうと気になってきちゃうんだな。さらにその当時、忙しさに生活を詰められて自由に対するフラストレーションが溜まっていたので、もう心の起爆剤としては充分すぎます。しかもスマホアプリ版があるではないか。

 

......よし、やるべ。

 

そうして私は、「ことのはアムリラート」をプレイすることになったのでした。

 

《次回へつづく》

インターネット詰め合わせ

皆さんこんばんは。今日は単発でブログ書くほどではないけど面白かったものを一挙に3つ紹介します。ある意味出オチです。どうぞよしなに。

 

もくじ

 

久しぶりにたまを聴いたら良かった件

皆さんたまというバンドを知っていますか。知らなくても「さよなら人類」という曲や、癖の強すぎるボーカルは耳に残ってると思います。ちびまる子ちゃんのEDもやってましたね。

僕はそれなりに好きでアルバムも色々聴いてましたが、イカ天出演時の映像は見たことがありませんでした。 

(ちなみにイカ天というのは89-90年にあった三宅裕司いかすバンド天国というオーディション番組で、対バン相手に5週勝ち抜くとグランドイカ天キングになりメジャーデビューできるというシステムがあります。この番組が切っ掛けでBEGINとかJITTERIN'JINNとかがデビューしたらしいです。)

 

そんなある日、YouTubeイカ天出演時の映像を見つけたので見ました。YouTubeには何でも載っている。YouTubeは偉大。

司会者と知久(変な髪の人)の会話が一切成立してないのが既に良いですね。

初登場での「らんちう」の衝撃だったり、「オゾンのダンス」で柳川幼一郎(ギター)がクネクネしながら歌うのだったりも好きですが、やはり何と言ってもグランドイカ天キングになった時の「まちあわせ」(20:11~)が良いです。

 

売名は済んだし勝っても負けても今週で最後だから、という理由で演奏されたこの曲は

ゲンゲンゲロロ~という謎の歌い出し(全くイカしてない)

・編成がボーカル、ギター、おもちゃの笛、パフパフ、ガラガラ(所謂"バンド"ではない)

・超短い

という、「イカすバンド天国」の中のイカさないバンドじゃない地獄、普通に考えたら勝ち抜きようがない最悪の曲でした。

しかし審査員が4週かけてたまに慣れてしまったために、グランドイカ天キングになってしまったのであります。あるいは強烈なオリジナリティに惹かれたということにしておきたいですね。

なにはともあれ、この曲でキングを獲ったのは非常に格好が良いなあと思ったのでした。

 

宮台真司、ギャルに囲まれ困惑する

宮台真司といえば、90年代にオウム真理教の研究や援助交際をする女子高生の研究をしていた社会学者です。

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宮台真司

援交研究していたので当然ギャルに詳しいおっさんなのです。ギャル如きに動じるそこら辺のおっさんとは違います。

しかし哀しい哉、時代は2020年代。彼がフィールドワークしていた時代から30年も経つとこうなります。

 

2:40くらいから出演

 

事前に内容を知らされていなかったのか、めちゃ困惑しています。

宮台「なにこれ......」

という心の声が聞こえてくるようです。

ちなみに宮台がメディア出演するときは基本真顔で論破するときなので、困惑する顔は非常にレアです。ここぞとばかりにガン見しましょう。

 

初見では宮台に目が行ってしまい気づきませんが、リリックも

私マジギャル宮台真司 give me a die, give me a die

 

と、パワーワード全開です。どういう韻の踏み方だ。

 

最初に紹介し忘れましたが、このZoomgalsは緊急事態宣言によりZoomで仲良くなったラッパーのギャルたちで結成されたギャルサークル(ヒップホップクルーではない)だそうです。今風ですね。

ちなみに曲は全然好きではないです。

 

けもフレの謎文化でディグる

 けものフレンズとは動物を可愛いおにゃのこに擬人化させたゲーム・アニメ・漫画のメディアミックス作品な訳ですが、インターネット上では謎のミームと化していたりもします。

 

今回紹介するのはこちら

Dancing Birds Of Paradiceです。

 ご覧の通り、けものフレンズのキャラを背景にダンサブルな音楽を流しているだけです。

それだけです。

 

それだけなのになぜか根強い人気があり、派生アカウントも存在します。

どういう経緯で発生し普及したのか全くわかりませんが、ツイッターで DancingBirdsOfParadise と検索すると、よく知らない音楽に気軽に出会えて楽しいのでおすすめです。

 

おわりに

インターネットは何でも知ることが出来て便利ですね。みなさんも何か面白いの知ってたら是非教えてください。では良きインターネットライフを。

 

子供のための作品と作曲家の作風について

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ピアノ教室

 我々作曲家にはふとした瞬間にやってくる依頼がある。
それは「子供のためのピアノ曲というやつだ。
事実私も数曲この手のご依頼を受けたことがあるのだが、よくこのジャンルについて考えると、案外難しいものであることが分かる。

 

-え?簡単に弾ければいいだけじゃん?
-オクターブ届かないから音域に注意するだけでしょ?
-調性音楽で書くだけでしょ?
-可愛いタイトルにしたほうがいいよね

 

たしかにそのとおりである。しかしそのとおりでもない。

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こどもの成長

 まず「簡単に弾ける」というのは、どのくらいのグレードを対象にしているかによって意味合いが変わってくる。
 子供でもすでにショパンを弾くような子にとって、ドレミだけで構成された曲など簡単すぎて弾くわけがない。
 反対に今触り始めたばかりの子にツェルニーの中盤ぐらいの難度の曲を与えても弾けるわけがない。

 同様にオクターブについても幼児ならそうかもしれない。
しかし小学校も高学年になってくれば結構届く子も増えてくる。
それより前に演奏レベルが上って、オクターブはアルペジオで弾くことを覚えている子もいる。

 タイトルに関しては、たしかに対象の子たちの関心を持ちやすいもののほうが良い。
しかしそれも「ちゅーりっぷ」とかでは中学校1年生くらいになって関心を持つだろうか。
 逆に「ほのかな恋」とかにしても幼稚園の子ではちょっと踏み込み過ぎかもしれない。


 というように「子供のための」という言葉の中にはその急速な成長に応じた幅広い設定が求められるため、一概にこういうものだと定義しづらいのだ。

 

しかし問題は、実はそこだけではない。

 

 自身の作風と、求められている楽曲の間の乖離こそが最大の問題である。
そしてそれは、子供をただの未発達な存在と見るか、素直な直感に優れたアーティストとしてみるかとも関係してくる。
 前者としてみれば、案外失礼なものだし、後者として期待しすぎると重荷にもなる。
加えて指導者の力量もまた大きく問われるのである。

 

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苦悶する作曲家

 

こんなに多用な背景があるジャンルを私は他に知らない。
そしてそれを多くの人は「作曲のプロにとっては造作もない簡単のこと」勘違いしていることがまま見受けられるから怖いのだ。


 そこで今日はそんな問題を多くの作曲家がどのように対処しているか、特に日本の作曲家に絞ってみてみたいと思う。

 

 

 

1.子供用と普段と作風を切り分けてしまえ!

 

 すぐに思いつくのはこのパターンである。
子供用にはそれ専用のわかりやすい曲を書き、一方で普段の芸術作品は難解を極めるというパターンは、やはり黄金パターンであって多くの作曲家に見られるものである。

以下、少し例を見てみよう。

 

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水野修孝

水野修孝(1934-)
東京藝術大学柴田南雄、長谷川良夫、小泉文夫に師事し、即興を主とする音楽からジャズを経て、実験音楽などを通じた結果、非常に独特な折衷様式へ到達した作曲家である。
<普段の作品>
ピアノのための「仮象

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<子供向けの作品>
ピアノ連弾組曲「ミューズの詩」より1,4,5

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 なるほど硬派な響きを中心とした前衛語法に対して、子供向けの作品では自身が得意なジャズを取り入れた楽しい音楽が書かれいている。
 水野は自身の多彩な作風を入れ替え、組み換えその都度そのシーンに合う音楽を紡いでいるとも言えるかもしれない。

 

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佐藤眞

佐藤眞(1938-)
 言わずとしれた合唱の大家である佐藤は、東京芸術大学で下總皖一に師事している。
非常に手が大きいことでも知られ、ピアノ曲にしてもピアノ伴奏にしても結構多くの和音を用いた分厚さがあるのはそんな特徴から来るものかもしれない。
 一般的には大地讃頌の作曲者と知られており、シャープな面についてはあまり知られていないが、以下聴き比べてみよう。

 

<普段の作品>
ピアノ・ソナタ

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<子供向けの作品>※童謡
はしるのだいすき

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 音源選びには苦心したが、ピアノ・ソナタは私の展開する「忘れられた音楽」で作った音源を参照した。
 調性は放棄していないものの、極めてシャープでゴリゴリとした音響が聴かれ、大地讃頌の作曲家とは思えない一方、子供向けの童謡ではとてもチャーミングでありながら、洒落たハーモニーで終わらせるなど、子供を楽しませる工夫も感じられる。
非常に2つの作風が乖離している点では、紹介する中でも随一かもしれない。

 

 

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毛利蔵人

毛利蔵人(1950-1997)
 毛利は元々は一般職で音大の図書館職員であったが、そこで三善晃に師事する知遇を得て才能を開花、その後は武満徹の助手や、芥川也寸志との共作など非常に恵まれた環境で音楽を吸収し将来を嘱望された。
しかしその矢先胃がんに侵され46歳で早逝してしまった天才である。


<普段の作品>※アンサンブル曲
冬のために

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<子供向けの作品>
3つの小品

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 普段の作品はピアノの作品の音源が見つからなかったので、アンサンブル曲を取り上げたが、静謐と激動のなかにリリシズムを立ち上げる語法で、武満徹の影響も感じられる。
 子供向けの作品はやはり私の「忘れられた音楽」で音源化した作品を紹介したが、これはフランス風の瀟洒な響きで、三善晃の系統を感じるものだ。
なるほど多彩な音楽を吸収した毛利ならではの語彙チョイスと言えるだろう。


 なるほどたしかにこれなら、作曲は調性的な作品を書くときと、無調の作品を書くときで作風を切り分けることが可能で、その分作曲家としての懐広さも広がる。
しかし、そうではなく単に「子供だから」という理由だけで、作風を曲げ、単に「手抜きとして」簡単な作品を書いているとしたら、それは大問題である。
 名前は挙げないが、吹奏楽作曲家や若手現代作曲家にはそういった例も垣間見られメーカーの商業主義に操られる芸術家のあるまじき醜態と断じなければならないだろう。

 

 

2.そもそもの作曲スタイルが分かりやすい

 これはそもそも軸心が童謡や児童合唱、あるいは教育的作品におかれている作曲家に多い。
 もともと難解な曲を書こうという意図があまりないケースである。

 

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湯山昭

湯山昭(1932-)
 子供向けの作品と言って湯山の名前を知らない人はいないと言うぐらいに、このジャンルでは大家だと認識されており作品数も非常に多い。
 湯山は東京芸術大学で池内友次郎に師事、はじめはかなりモダンな作風であったが児童音楽の分野に軸心をおき、多くの童謡なども手掛けている。
<普段の作品>
ピアノ・ソナタ

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<子供向けの作品>
ピアノ曲集「お菓子の世界」

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 湯山の場合、普段の作風が子供向けの方とも言えるだけに、ピアノ・ソナタは異質な方かもしれない。
 たしかにソナタの方は勢い晦渋な響きもあるが、普段の湯山の語法の延長線であり、難易度の設定と構成法の差異はあれど、乖離は見られないといえる。

 

 

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大中恩

大中恩(1924-2018)
 大中もまた児童音楽や童謡、歌曲の世界では知らぬ者のない大家である。
 東京音楽学校(現芸大)の出身で信時潔、橋本國彦に師事、学徒出陣も経験したことがその後の作風へ影響しているのは間違いないだろう。
 特に日本語の美しさを大切にした歌の分野で多くの仕事をし、わかり易い中に印象的なスパイスを加える作風は広く愛されている。

<普段の作品>
三つの小品より第3番

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<子供向けの作品>
ピアノ曲集「あおいオルゴール」よりお月さまのおはなし

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 なるほどどちらも全く同じ語法で貫かれており、尖った部分など微塵も見せない。
 前者は対位法を駆使した古典的な書き方、後者はタイトルが示すように非常にメルヘンチックな世界観である。
 たしかに多くの人に愛された氏の人柄を思い起こさせる楽曲ばかりである。

 

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原博

原博(1933-2002)
 原もまた東京芸術大学の出身で池内友次郎門下である。
 この影響もあり、非常に対位法の技術に秀でており、これらを生かした音楽はモーツァルトやバッハにも通じるものがある。
 フランス留学を経験し、デュティユーにも師事しているが、厳しい作風は限定的な作品にしか見られない。
<普段の作風>
ピアノ・ソナタ第1番~第4番

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<子供向けの作品>
組曲第4番より子守歌

www.youtube.com

 

 ピアノソナタは確かに難易度や曲の厚さなどで結構重いものがあるが、それでも子供向けの作品の正当延長上にあり、古典的な作風を愛した氏の作風として全く乖離がない。
 なんというか古典の作曲家が現代に生まれたらこうなるのかなと思わせるような作風である。


 こういった作曲家はロマン派の延長であったり、正格に厳格に音楽を作ることを大切にしているケースが多く、その叙情性に惹かれる人も多い。
 一方でシャープな現代性に惹かれる人はあまり取り扱わない作曲家ということも出来、そういう意味では棲み分けを自らしてしまっているとも言える。

 

 

3.なにが子供だ!芸術に妥協など必要がない

 これは少数派ではあるが、徹底的に自己の語法を曲げず、子供だろうが大人だろうが芸術に立ち向かうことを強く強要するスタイルを持つ人もいる。
 無論このスタイルはある意味で徹底的なストロングスタイルであり、演奏され難い曲を書くことになるが、芸術家の立ち振舞としては一つの憧れではある。

 

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八村義夫

八村義夫(1938-1985)
八村に関してはかつて特集記事を書いたので、詳しくはそちらを参照して欲しい。

 

nu-composers.hateblo.jp

 
東京藝術大学で島岡譲に師事、独自の感性に基づくショッキングで痛みの強い音楽を特徴とした。


<普段の作風>
ピアノのための即興曲

www.youtube.com

 

<子供のための作品>
彼岸花の幻想

www.youtube.com

 

 八村にはいくつかの子供のための曲があるが、彼岸花の幻想はその中でも驚くべき曲である。
 全く普段の作風と乖離がなく、子供のための難易度設定などお構いなしといった体である。
 しかし八村はその一方で、この曲に少年時代の不安感をモチーフにしたというように、ある意味子供に対して感じさせようとした点がそもそも異なるのだろうと思う。

 

 

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入野義朗

入野義朗(1921-1980)
 入野は日本における十二音技法の祖ともいわれ、その作風は当時のモダニズムを全身にまとったものである。
 また彼は元々東京帝国大学(現東大)の出身で、作曲は諸井三郎に師事した以外は基本独学であったようだ。
<普段の作風>
三つのピアノ曲

www.youtube.com

 

<子供向けの作品>
四つの小曲より十二の音で

www.youtube.com

 

 確かに難易度設定こそ違うが、子供用の作品でも全く臆することなく十二音技法を用いている。
 これらの作品に触れた子供は当時どう感じたのか非常に気になるところだが、今の耳からするとかえってユニークで楽しそうだなと思えるのが面白い。

 

 

4.超越的な世界に進んだもの

 そして最も驚くべきスタイルが、一つの作曲家の作風自体が難度や進度に柔軟に対応し、かつ芸術性を微塵も失わないというスタイルがある。
 私はこれこそが最も至高のスタイルであろうと確信するものだが、これはおいそれと到達できるものではない。

 

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三善晃

三善晃(1933-2013)
 三善はある意味で真の天才とも言える。幼少期から平井康三郎、池内友次郎に師事し、東大仏文科に入りパリに留学。
 その後はデュティユーに私淑しその語法を我がものとすると、ありとあらゆるジャンルの音楽にその才能を発揮して、日本の音楽史を塗り替えてきた。

<普段の作風>
ピアノ・ソナタ

www.youtube.com

 

<子供のための作品>
海の日記帳より波のアラベスク

www.youtube.com

 

 全く見事なまでに同じ作風で統一されているのにも関わらず、方や極めて晦渋さを表に出した雰囲気で、圧倒的に絶対音楽的世界観を構築しているのに対し、もう一方は素晴らしい描写と和声感覚、更にはこどもの表現力を馬鹿にしない姿勢を強く感じる。
 三善は三善メソードというピアノのグレード別メソードを確立していることから、教育的にも優れた人物であった。
 そのことが全く同じ語法においてすべてのジャンルの曲を書きこなすという類まれな境地にいざなったのだろうと言える。

 

 

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田中カレン

田中カレン(1961-)
 田中カレンは湯山昭に師事した後、桐朋学園大学三善晃に師事、その後フランスのIRCAMで学びトリスタン・ミュライユに師事していわゆるスペクトルの作曲法を身に着けた。
 しかし作品群には師に倣ったのか、こどもの作品がとても多いのが特徴で、またその美しさも話題になっている。

<普段の作品>
テクノ・エチュード

www.youtube.com

 

<子供向けの作品>
星のどうぶつたちより

www.youtube.com

 

 なるほど、同じ作風の延長線上両者があることは明白である。
明らかに難易度は違うが、これほどまでに純粋なこどものための音楽を書く人は稀であろう。
 そしてその響きは自然倍音列から生み出されるものが多く、彼女のスペクトルの経験がしっかり行きている点も見逃せない。

 

 

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武満徹

武満徹(1930-1996)
 最早何度も登場している武満について今更語ることはないが、現代日本を代表するレジェンドであり、その独特の語法から生み出されるサウンドは、柔らかさと愛に包まれている。
 武満は清瀬保二に少し師事した以外はほぼ独学で作曲を学び、アカデミズムを拒否し純粋に音楽のあり方を模索した。

<普段の作品>
雨の樹 素描

www.youtube.com

 

<子供向けの作品>
こどものためのピアノ小品より雲

www.youtube.com

 

 たしかにどちらも一度聞いただけで武満と分かる音楽であるし、子供向けの音楽にあってはこどもに寄り添う優しい眼差しすら感じられるだけでなく、何となく自分の少年時代の面影が曲に映し出されているようにも感じる。

 

 彼らの作品を聴けば、すぐに誰の曲かわかるスタイルがあり、当然大曲であればそのスタイルを濃くし、子供向けなら軽く薄めてみせるだけで、その表現の世界のレベルを落とそうなどととは全く感じない。
 こどもの芸術性ということを真に理解しているとも言えるし、ある意味で指導者の力量をも試してきているとも言える点では、非常に指導者泣かせかもしれないが、熟達していないものが指導にあたる怖さを浮き彫りにしてくれるという面においても意味が大きい。


 これらは今やピアノの世界においての出来事ではない。
 合唱曲、吹奏楽といったアマチュアが触る機会の多いジャンルでは、多く見受けられる現象になってきている。
 しかもそれぞれが全く良い形ではなく、1.の項で危惧したようなメーカー主導の中身のない商業主義への迎合に満ちている点は、日本の音楽文化のレベルを大幅に下げることをこれ以上なく助長してしまっていると言わざるを得ない。
 長ったらしいサブタイトルと、いかにも中身有りげな伝説を表題に取り上げながら、若者の短絡性に目をつけ忖度するようなことでは、作曲家自身も大したものにはならず、それを演奏したものにも大きな芸術性は身につかない。
 子供のための音楽に見られる、いびつな劣化今やメディアや企業によって商業モデル化されたことにより、その頻度や量を日に日に増している。

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西村朗



 そんな中で吹奏楽の課題曲に、作風を曲げずに「発注側の注文」をこなして見せた西村朗先生などの姿勢はやはり光り輝いていると言える。

 

 芸術家たるもの、それを求める者に対しても「芸術家たれ」と返せるようでなければならない。
 そのために日々修練し、脇目もふらずに研究をすべきだろうし、また商業主義、迎合主義に一喝入れられるようでなければならないと強く思う。


それが、文化の発展に寄与するということの意味ではなかろうか。


 この国の音楽界で仕事をするという意味を知っていたとしても、その中で抗うことをやめてしまっては、人間として、芸術家として生まれた意味がないというものである。

個人的音楽が芸術なら、青木龍一郎も芸術家ではないのか ―「HASAMI GROUP=現代音楽」説―

 

”現代音楽”

現代音楽という言葉ができてから、いったいどれほど経ったのだろうか。
今様色が今や今様ではなく、「ナウい」が古語となったように、現代音楽などとっくに”現代の”音楽ではない。

そもそも、現代音楽とはどういう音楽かといえば…………。

・・・メロディを歌ってはいけない・・・協和音やハーモニーなどもって
のほか・・・感覚(聴いて心地よい)より知性(論理的であること)を優
先するべきである・・・芸術なのだから、大衆に受けたりしてはいけな
い・・・新しいこと、人のやっていないことをするべきである

上の文章は2013年のロクリアン正岡氏の言葉を引用した*1ものだが、 それ以前から現代作曲家の吉松隆氏が唱えていた思想でもある。
伝統という足かせ(調性、教科書通りの演奏法、協和音、権威主義、などなど……)からの解放を目指して作られた新しい潮流は、やがてそれ自身が新たな足かせとなり果て、新たな権威となり果てる。
12音技法の時代以降、芸術音楽はどんどん不協和音に満ち、心躍るビートを失い、”聞きづらく”なり続けていった。
その結果、逆に”聞きづらく”なければ芸術音楽と認められないというバカらしい風潮が醸成されていったのは言うまでもない。
無論、現代になって印象主義を復古することに意味があるとは言えないだろうが、だからと言って何の考えもなく聞きづらい音響に走っても同様に意味がない。
芸術はその意味内容が重要なのであって、表面的な手触りに翻弄されてはいけないのだ。

 

個人主義の台頭

それでもあえて現代音楽という言葉を使い続けるとしたら、本当の意味での現代音楽は個人音楽であろうか。
これまで音楽においてタブーとされていた極度に個人的で主観的な表現が、今や新たな表現としてその芸術性を認められている。
榊山大亮先生が当ブログでまさにその内容を書いてくれているので、読んでいない方は是非読んでほしい。
個人音楽の先駆けとなったのは、「線の音楽」で知られる近藤譲である。

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近藤譲

彼の音楽は、平たく言うと非常につまらない。
胸を打つメロディも、美しいハーモニーも、見事な対位法もない。
ないというより、それを読み取ることを(私が)許されていない気がするのである。
無秩序に彷徨するような音の連なりは、他者と共有可能な何らのものをも表してはいない。
ただ個人的な音楽としてのみそこにあり、排他的であり、共感も意思の疎通も許さない。

 

HASAMI GROUPに見る個人主義

話は変わるが、「HASAMI group」というインディーズ音楽ユニットがある。

YouTubeやBandCanpで自身の音楽を無料公開している彼らは、青木龍一を筆頭に活動しつつ、最近徐々に知名度を上げてきている*2
彼らの音楽はいわゆるJ-popの影響を顕著に受けており、かなりイージー・リスニングなポップスが多い。
同時に、hip-hopやダンス・ミュージックの影響をも強く受けており、4つ打ちのドラムや日本語ラップ、リフが頻繁に登場するあたり、まさに現代のダンサブルな商業音楽に近い。

しかし、彼らの音楽はそれだけでは終わらない。
HASAMI groupの音楽は、ポップスであると同時に、奇妙なほど強力に個人主義である。
現代の商業音楽を席巻するポップ・ミュージックと見かけこそ似ているが、その哲学性はまるで逆なのである。
どういうことか。

 

というわけで、まずは実例から見ていこう。

 

1.ありがとう

この歌は、「ありがとう」というタイトルからは全く想像できない前奏から始まる。
やがてラップによる歌詞が始まるのだが、その歌詞はというと……

宮下草薙 / 街裏ぴんく / ダイアン / さんさんず / 錦鯉 / 永野 / 銀座ポップ / 虹の黄昏 / モダンタイムス / 野性爆弾 / 令和ロマン / ランジャタイ / かまいたち / 銀兵衛 / うるとらブギーズ / ジャルジャル / くるくる / モシモシ / ゴリゴリ / 秀正 / 八田荘 / 加藤誉子

(中略)

ありがとう ありがとう ありがとう ありがとう

なんとお笑い芸人の名前を言い続けるだけ
一応2番もあるのだが、芸人の名前が変わる以外はほとんど変化がない*3

つまり、この「ありがとう」という歌は

青木龍一郎がお笑い芸人にお礼を言う歌

でしかなく、完全に個人的な音楽であることが分かる。
実際、お礼を言いまくっているとは思えないほど激しい不協和音やクラスター、不気味な旋律に満ちているが、彼にとってはこれがある種「感謝の響き」なのかもしれない。
「ありがとう」というタイトルのポップスなど無数にあるだろうが、これほどまでに個人的な「ありがとう」を聞いたのは初めてで非常に衝撃を受けた。

ちなみにMVもだいぶ奇怪だが、青木龍一郎は普段からYouTubeで再生数の少ない動画を漁ったり、日本中でリリースされた全て(文字通り)の音楽を漁ったりして、サンプリングの素材を収集しているらしい。
彼の音楽やムービーにはサンプリングによるコラージュが多用されており、この技法は彼の分かりやすい特徴といえる。

 

2.てて様

この歌もわかりやすく個人的だ。
「てて様」とはお父様という意味だが、なぜお父様ではなく「てて様」がタイトルなのかは誰にも分からない。
それどころか、サビの歌詞がなぜ「Rabbit Rabbit Rabbit Rabbit......」なのかとか、MVはなぜ朝青龍なのかとか、全くもって分からないことが多すぎる。
こうした歌詞やMVの凄まじいナンセンスさは青木龍一郎の大きな特徴だが、よくよく見ていると単にナンセンスなだけではなく、何らかの意味を秘めているように見えるものが少なくない*4
まさしくこういった個人的な表現を何の臆面もなくやっているのが、彼の音楽ではなかろうか。

 

3.景色がほしい

上では意図的に分かりやすく奇妙な歌を2つ挙げたが、HASAMI GROUPの作品の多くはむしろイージー・リスニングである。
「景色がほしい」はかなりポップス寄りの歌で、明確なハーモニーやメロディがある。
しかし、注目すべき点は他にもあるのだ。

まず、歌詞とMVを見る限りどうやらこれはラブ・ソングのようだ。
しかし、いわゆるラブ・ソングと違って歌詞はかなり難解(というかナンセンス)であり、はなから万人へ向けた歌ではないということが分かる。
これは彼の個人的な感情をもとにした作品であり、彼のための歌だと言えるだろう。
とはいえ、この歌から強く感じられるリビドーや諦念を纏った青春の香りは、聞き手にとっても全く共感できないというわけではない。

ちなみにこの曲に使われているサックスの音だが、なんとフリーの楽譜作成ソフト「Muse Score」のフリー音源らしい。
高価な音源などなくても表現はできるということだろうか。

訂正:MuseScoreの音源ではなかったようです。大変失礼致しました……。

 

総括 HASAMI groupは現代アートではないか

正直、ここで紹介できた歌はほんの一部に過ぎない。
HASAMI GROUPの歌の特徴である複調、被せられるノイズ、激しいコード進行、生のヴォーカルなど、まだ紹介できていないことはたくさんある。
それらは興味があれば聞いていただくとして、以上のことから自分はこう言えるのではないかと思う。

HASAMI groupは日本の最先端音楽なのでは?

青木龍一郎は単なるサラリーマンらしいし、恐らくだが芸術のキャリアもさほどないと思う。
作る音楽はYouTubeに無料で上げられている。
しかし、彼の表現していることに着目すれば、これはかなり先鋭的なことをしているのではないだろうか。

ポップスの形態をとった個人音楽。
それは彼自身が「個人的に」hip-hopやダンスミュージックが好きだったからそうなったのであろう。
従来の個人音楽と異なり、彼は作曲技法に徹底した独自性を求めない。
独自性を求めないことでむしろ個人的なコンセプトが達成され、従来のように聞き手の共感を拒絶することなく、むしろある種の共感が可能な個人音楽となっている。
それでいて、この音楽は青木龍一郎にしか到達できなかった地平に到達しているのだ。

 

私たち名大作曲同好会には、在野の若い作曲家が集まっている。
青木龍一郎のように、在野で音楽活動をしつつもかなりアーティスティックな表現に至っている人たちを見ると、気が引き締まる思いがする。
その一方、現代日本の音楽を取り巻く状況を考えると、その空虚さには寒気がする思いもある。
芸術とは何だろうか。
現代の世の中、本物のアートを見つけるためには、前澤友作社長の懐をまさぐるよりも案外ゴミ捨て場を漁った方が早い気さえする。

*1:雑誌「音楽の世界」2013年10月号より
『特集:21世紀音楽の潮流は?(3)』
21世紀の今、音楽の本道に則った作曲を!

http://locriansaturn.com/phirosophy.html

*2:実は10年ほど前にTV出演した時が一番知名度が高かったらしい。

*3:むしろ同じ芸人が2回出てきたりもする。どういうことだ。

*4:単にナンセンスなだけ、というものもたまにあるのだが。

Easy Listnerのためのアニメサントラ選 番外編 〜あっちこっち編〜

〜前回〜

nu-composers.hateblo.jp

 

こんにちは、gyoxiです。はい、やってきましたサントラ選シリーズです。このシリーズ、「アニメを知らない人でも1アルバムまるごと楽しめるサントラを」てな感じで執り行っておりますが、「このサントラの“この曲”が良いんだよなー!!」ってものもありますよね。あります。なので紹介します。今回は尺稼ぎも兼ねたそういう回です。

 

今回紹介するのはこのアルバム。

 

あっちこっち

より

TVアニメ「あっちこっち」オリジナルサウンドトラック

 

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あっちこっちについて

あっちこっちは異識によるラブコメ四コマ漫画だ。

 

日本の漫画家、イラストレーター。千葉在住。
代表作はあっちこっち
眼鏡が本体。単行本が出るたび色彩が薄くなる。
その他、アンソロジー、小説挿絵、イラスト、同人活動などで活躍中。

異識 (いしき)とは【ピクシブ百科事典】 (pixiv.net)

 

ツンネコ無口少女の御庭つみきとイケメン朴念仁な音無伊御、そしてその周りの愉快な仲間達の日常を描いていて、ワチャワチャかつほのぼのしていて読んでてとても楽しい。因みに今でも萌え系四コマの殿堂であるまんがタイムきららで連載中です。読みましょう。

 

www.dokidokivisual.com

 

で、そのアニメ作品の監督は追崎史敏だ。

 

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追崎史敏監督(右)

代々木アニメーション学院[要出典]を卒業後、スタジオジュニオに入社。同スタジオ退社[1]後、長らくフリーランスアニメーターとしてGONZO作品やサンライズ作品などで活動していたが、2008年8月には池田東陽と共にエンカレッジフィルムズを設立[1][4]し、代表取締役の池田を支える取締役として同社へ籍を置く。

近年は演出業にも進出し、2007年には『ロミオ×ジュリエット』で監督デビューを飾った。[5]その他、キャラクターデザインを務めた『ケロロ軍曹』では、一部楽曲の作詞を担当するなど幅広い活動を行っている。

2013年2月25日には、同年2月17日に急逝した池田の後任としてエンカレッジフィルムズ代表取締役に就任した[3]

単なる「いろんな姿形の女の子の日常系アニメ」じゃない「セントールの悩み」の原作者・村山慶&追崎史敏総監督にインタビュー - GIGAZINE

追崎史敏 - Wikipedia

 

個人的に観た作品だとカレイドスター(キャラデザ・総作画監督)、WORKING!!(原画)、たまゆら〜hitotose〜(絵コンテ・演出・作画監督作画監督補佐)とかですかね。

 

このアニメ、漫画と同様にワチャワチャしててまぁ面白いんすけど、つみきさんと伊御さんの恋愛シーンとか含めて、なーーーんか全体的に不思議な落ち着きがあるんすよね。そこがとても良い。本当に良い。マジで良い。まあそこが理解されず(?)、放映当時はネット上ではあまり良い評価はされていなかったっぽいですが(後から知った)。許せねぇ。「このアニメなんか静かすぎてつまんねぇな〜!!」という人はヨコハマへ買い出しに行った後ネオ・ヴェネツィアスケッチブック持ってゆるキャンしてきてください。そして一緒にあっちこっちの二期を待ちましょう(待ってます)。

 

あっちこっちのサウンドトラックについて

さて、この作品のサントラを作っているのは横山克だ。

 

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横山克さん

1982年生まれ。国立音楽大学作曲学科卒業。
アニメやドラマ、映画などの映像作品の音楽を担当するほか、ももいろクローバーZをはじめとしたアイドルへの楽曲提供も手がける。
世界各地でのレコーディングや、自ら制作するサンプリング素材でのサウンド構築など、常に固有の音楽を探し求めている。

横山 克 | Miracle Group Official Site (miraclebus.com)

 

アニメ作品は勿論のこと、作品リストを見てみると映画、ドラマ等々、数多くの作品の劇伴を担当していますね。

 

さてこのあっちこっちのサントラ、「ふざけてるシーン!」とか「おいおいお前なぁ...的シーン」の曲ももちろん入っていますが、実は全体的に穏やかな曲が多く、イージーリスニングとして聴くにはもってこいの作品なのである!(あっちこっちのアニメに不思議な落ち着きがあるのもこのサントラが影響していたり...?) また、アルバム全体を通して生の楽器がガッツリ使われているのでサウンドもとても良いです。

 

それでは、早速あっちこっちのサントラを聴いてみましょう。

 

ぐるぐるぐる

動画用リンク(youtube)

「落ち着きが...」などと言っておきながら一曲目は元気で爽やかな曲。休日に「みんなで出かけようぜ!」ってなって、お出かけしているようなワクワク感が感じられますね。彼らの頭上にはきっと高い青空が広がっていることでしょう。

 

せ、背中だったら

動画用リンク(youtube)

この曲はちょっと寂しげな一曲。作品中の印象的なシーンとして、12話でつみきが、伊御のために作ったバレンタインチョコを家に忘れてきてしまい、雨の中ずぶ濡れになりながらチョコを取りに戻るシーンで流れています。字面だけ見るとシリアスシーンですが、この後つみきさんは迎えに来た伊御さんにナデナデしてもらうのでした。やったね。

 

一緒だと 嬉しい

動画用リンク(youtube)

この曲はとても温かで穏やかな曲だ。「一緒だと 嬉しい」というタイトルから想像されるのはやはりつみきさんと伊御さんの甘々なシーンですが、この曲からは友達みんなと過ごすかけがえのない時間、そんな温かさも感じられます。

 

にゃんにゃん

動画用リンク(youtube)

この曲、よく聞いてみるとストリングス、ギター、クラリネット、ピアノ等々、様々な楽器で構成されているのが分かります。にぎやかで楽しい日常から甘々な恋愛シーンまで、この作品の良さがぎゅっと詰め込まれているのがこの曲だと個人的に思っています。

 

おわりに

さて、今回は番外編と称してあっちこっちのサウンドトラックを特集しました。このアルバムはSpotifyやAppleMusic等配信サービスでも配信されているので、ザックリでいいので一度是非聞いてみてください。冬にぴったりの、透き通っていて、でも温かな、そんな曲がたくさんありますよ。

 

 

 

それではまた。

2020年良かった音楽

こんばんは。2020年冒頭に「2020年は復活と再生の年だ......」とツイートしたら、分断と破滅の年になってしまいました。もう言霊なんて信じない。榊原です。

そんな分断と破滅の一年も終わってしまったので、去年と同様にまた性懲りもなく2020年に聴いた曲を発表していきます。

 

その前に

皆さんお気づきのとおり、去年のにはあった「紅白」の文字がないですね?

そうです。なんかもう紅白歌合戦が完全にどうでも良くなったので、紅白の名を冠するのをやめました。*1

 

そして今回は2020年が終わってからの発表になりますが、それは敬愛するHASAMI group 青木龍一郎氏の発言に感化されてのことです。

 こんなこと言われたら、12/31 23:59まで粘るしかないですよね......

 

粘った結果、12/31 23:59前までに選んだ曲から特に変更はありませんでした。(←????????????????????????????????????????????????????)

 

また例によって僕が2020年に聴いただけで新曲とは限らないです。というかほぼ新曲ではないです。なんでだろう、不思議ですね。

そしてこれも例によって、全ての曲は独断と偏見により選考しています。

 

目次

 

ポスト渋谷系発掘経過報告

2020年前半は特に良い新曲に出会えず、ひたすら渋谷系の後継、ポスト渋谷系を聴きあさっていた時期がありました。ここにその成果の一部を公表しますが、ここに挙げるような良い曲はやはり普通に有名だったので別に目新しさはないです。

 

Cymbals - Show Business 

Cymbalsは1997年結成のバンドで、ポスト渋谷系に分類されます。ちょっとパンキッシュなのが特徴です。

僕はカヒミカリィのone thousand 20th century chairsがめちゃくちゃ好きで、それに匹敵する曲を日夜探していたのですが、これやん......となりました。

頭から終わりまで全部サビみたいな曲で、実質とっとこハム太郎うたと同じです(違う、と言いたいところだが、曲形式が同じなので本当にそう)

 

ROUND TABLE - Every Every Every


Round Table - Every Every Every

ROUND TABLEは1993年結成のユニットで、近年はアニメ関連の仕事が多いです。

かく言う僕もコロナで籠城してたときにそれでも町は廻っている(それ町)というアニメを見、BGM担当であったROUND TABLEを知りました。

 

ちなみにそれ町は全体的に音楽が良く、例えばOPはシュガー・ベイブのDowntown のカバーです。この曲のカバーの中では屈指の完成度だと思います。


それ町面白かったのでみんな漫画買って読んでください(アニメより漫画の方が面白い)。

 

COPTER4016882 - J Madd 9

名前が覚えられない。

COPTER4016882はマイナーなようでネット上に情報がほとんど転がってません。何者?

Apple Musicで適当に聴いてたらいつの間にか聴いてました。アーティスト名から察せますが、詩や曲がやたら捻くれてます。その捻くれ具合が好きです。サンプリングも一々シニカルでコミカルで素敵。

 

Qypthone - マフィン大作戦

Qypthoneは、去年紹介した中塚武がやってたグループです。中塚的陽キャサウンドが良いですね。陰キャだけどそう思います。メロディが良い意味でアホっぽいのも陽キャ具合を加速させていますね。別に陽キャがアホだといってるわけではないですよ。

 

Plus-Tech Squeeze Box - Dough-Nuts Town's Map

Plus-Tech Squeeze Boxハヤシベトモノリとワキヤタケシによるユニットで、スポンジボブの映画のサントラに参加するくらいには有名なようです。

これが収録されてるアルバムは全体的にカートゥーンからのサンプリングが過剰で、どれくらい過剰かと言うとサンプリング数4500超らしいです。歌詞までカートゥーンからのサンプリングという徹底ぶり。

ピラメキーノTVチャンピオン「アキバ王選手権」などのテレビ番組でよくBGMとして流れていたので、知ってる人も多いかもしれませんね。

0:40くらいから流れています。

この番組がゴールデンタイムに流れてた時代に戻りたいですね~。TVチャンピオン見てえ〜。

 

鹿乃 - Linaria Girl

鹿乃(かの)は所謂歌い手として活動開始したシンガーですが、今ではオリジナル曲を中心に歌っています。元々こうやって売り出すつもりだったんやろな

田中秀和とかが曲を作ってるので、曲はめちゃくちゃ良いです。

 

婦人倶楽部 - わたしお嫁に行くわ

婦人倶楽部のメンバーは、全員が佐渡島に住む主婦だそうです。コンポーザーである佐藤望佐渡に滞在する際に出会った主婦が台湾旅行に行くというので、佐藤はそのついでに曲を作って台湾公演をしたということです。意味が不明ですが、このイントロを聴くとそういうのがどうでもよくなるくらい素晴らしいです。台湾旅行のついでとかいうレベルじゃないです。

 

今年発売の新曲も良かったです。

君にやわらぎ

君にやわらぎ

  • 婦人倶楽部
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

 

洋楽 

Dorian Concept - No Time Not Mine

Dorian Conceptはオーストリア出身のOliver Thomas Johnsonによるソロプロジェクトです。別にドリア旋法を軸にした新しい音楽体系とかではないです。多分。 

ジャズからEDM、ロックにサイケを縦横無尽に行き来するサウンドにグッときます。

というのもこの曲が収録されているアルバム全体的にジャズ的なサウンドを"模倣"したらしく、模倣であるが故にジャズになりきれないが、そうであるが故にかえって奇妙で独自性のある音楽になっているっぽいです。

 

Tennyson - L'oiseau Qui Danse 

Tennysonはカナダ出身の兄Luke Tennyson、妹TessTennysonによる兄妹ユニットです。

音色からしkawaii future bass的な何かかと思ってたんですが、やってることが全然かわいくなくてウケました。

元々ジャズ出身のようで、もうそういうのがあふれ出ちゃってますね。

 

Knower - Overtime

会長の記事でお馴染みですね。ルイス・コールは元々知ってたんですが、何故かKnowerは知らなかったです。

まあ例の記事で語るべきことは語り尽くされている気がするので、次行きましょう。

 

Tigran Hamasyan - Levitation 21

Tigran Hamasyanはアルメニア出身のジャズピアニストです。メタルも好きらしく、随所にメタルっぽいリフがあるのが特徴です。変拍子大好きマンでもあるので最近はインド音楽のモチーフも取り入れているようです。

Levitation(=空中浮遊) 21という題名にあるように、21/16拍子を拡大・分割して様々なリズムパターンを生成し、浮遊するかのように演奏しています。プログレジャズ最高〜。

 

 

邦楽

ASA-CHANG & 巡礼 - 事件

ASA-CHANG&巡礼はもう何度か話に出してるので、特に紹介することはないです。

2010年にユザーンが脱退した後はリズムも平坦で、管楽器やヴァイオリンが曲にあってるとも思えなくてイマイチ面白味に欠けてたんですが、ここに来て現体制での最善の形になったのではないかと思います。かつてはタブラによって付与されていた楽曲の推進力が、今作ではちゃんと管楽器・ヴァイオリンによって付与されているように感じます。

声がいとうせいこうというのがまた絶妙で、曲終盤にかけての迫力がヤバいです。

同じアルバム収録の駅弁ソング(英語バージョン)もよかったです。駅弁食いてえ~

 

avissiniyon - 煙に水をかけましょう 

煙に水をかけましょう

煙に水をかけましょう

  • provided courtesy of iTunes

avissiniyonはiPhoneで楽曲を作るイマドキな uamiと激ヤバギタリストの君島大空によるユニットです。が、この曲に関しては君島大空の主張が強すぎてほぼ君島大空です。

サビでヌルッと拍子が変わるのが非常に気持ちいいです。ここだけ30回くらい聴いた。君島聴いてて常々思うんですが、途中明らかにヤバい音色が混ざるのに調和してるのが凄いです。なぜ?

同じアルバム収録のOrganはさらに音色がぶっ壊れてて良いです。

Organ

Organ

  • provided courtesy of iTunes

  

SUPER JUNKY MONKEY - あいえとう

SUPER JUNKY MONKEYは1991年結成のガールズ・アヴァンギャルドメタル・バンドです。FUNKY MONKEY BABYSではないです。確実に。

曲名が意味不明でまず面白い(焼津の祭りのはやし言葉らしいです)のに、ライブ映像も面白すぎるのはずるいと思います。

 

呆然とする中尾ミエと踊り狂う観客の対比最高じゃないですか?ジッと見つめるタモリがさらに異様さを引き立てています。

 

君島大空 - 縫層

君島大空は去年も書いたので、今年特に説明することはないです。

曲名は「ほうそう」と読むらしいですが、言われるまで「ぬいそう」と読んでました。

「縫層」は君島による造語で"内省のいつも雨が降っている場所、ひらかれた空の手前にある雲のようなもの、声や顔の塊、同音意義の包装や癒着という言葉が投影されるような、人がひとりの中で編み、勝手に育っていってしまう不安や喜びの渦を指す"言葉らしいです。なんかわかるようなわからんような気がしますが、前作と比べて激しい音やかわいらしい電子音の比率が高いので、そういうところでコンセプトが反映されてるんだろうな~と思います。

 

MYTH & LOID - FOREVER LOST

メイドインアビスというオタクホイホイ漫画・アニメがありまして、その劇場版の主題歌なんですけど、バキバキにカッコいいですね。劇伴を担当するKevin Penkinが作曲を担当しています。劇伴も良いので暇な人はどうぞ。

 

HASAMI group - 景色がほしい

2020年は、恐らくどの曲よりもHASAMI groupの曲を聴いた自信があります。何ならここ6,7年ずっと聴いてます。

HASAMI groupはアマチュア音楽グループです。聴けば「ああ、アマチュアだな」となること間違いありませんが、アマチュアならではの肉薄した感じがあって良いです。まあそれだけじゃあないんですけどね!それを書くとこの記事が冗長になりすぎるんですよ。既に冗長ですが。

 

この曲を聴きながら電車で帰るのがこの世で一番しゅき。

 

 俺たちの2020年はまだこれからだ!!!!!!

てな感じで、今年こそは復活と再生の年になるといいですね。おわり。

*1:ちなみに紅白歌合戦は全部見ました。Official髭男dismの曲は良かったです。