名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

オケコンのススメ

オーケストラ

 皆さんは「協奏曲」と言ったらどういう形態を思い浮かべるでしょうか。

 

ソリストが前にいて技巧的な演奏をする後ろでオケが伴奏をする音楽

 

 

 そうですね。ピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲とたくさんの協奏曲があります。中には変わった協奏曲もたくさん書かれていて「ゴミ協奏曲」とか「ギロ協奏曲」果ては「紙協奏曲」なんてものもあります。

 しかし今回は全く違う一瞬意味の分からない協奏曲、つまりは「管弦楽のための協奏曲」通称「オケコン」に焦点を当ててみたいと思います。

 オケコンにはソリストはいません。オーケストだけで書かれる協奏曲です。それでは協奏曲にならないのではないかと、普通は思うでしょう。しかしよく考えてみるとオーケストラとはたくさんの楽器の集まりです。それを作曲家は管弦楽法を駆使して響きを作っていくのですが、このときにあるセクションをソリストのように扱い、他のセクションに伴奏させる事ができます。またソロっぽいセクションを変えて…と繰り返していくと、様々なコンチェルトがつながったような音楽ができるのです。これは古くは「合奏協奏曲」と呼ばれていた手法なのですが、すっかり廃れてしまっていました。ここに目をつけたのが、新古典主義を標榜するパウルヒンデミットです。
 昔の手法を現代的な方法論で蘇らせるという考えのもと、ヒンデミットは「合奏協奏曲」を「管弦楽のための協奏曲」と言い直して作品を発表しました。

 

パウルヒンデミット

 それではそのマイルストーン的作品、ヒンデミットの「オケコン」をまず聴いてみましょう。

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 響きこそ近代的でモダンですが、たしかになんとなく古典作品の匂いが充満していますね。

 

 そしてこの「オケコン」を最も有名にした超名作を挙げなければなりません。
 それはバルトーク・ベーラの晩年の最高傑作です。戦乱からアメリカに逃れたバルトークは研究もままならず、創作意欲を失っていました。それを案じた仲間と指揮者のクーセヴィツキーが彼に破格の待遇と期限なしという条件で委嘱をしたことで、立ち直ったバルトークが全精力を傾けて書いた大作が「オケコン」でした。

バルトーク・ベーラ

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 30分を超える規模で交響曲と言っていい内容を備えつつも、先程のヒンデミット新古典主義的考え方を下地に「オケコン」とされたものです。個人的にはスネアドラムと木管楽器ソリスト的にフィーチャーされた第2楽章が大好きです。

 

 と歴史に残る代表的な「オケコン」を聴いてきましたが、この後はその後も大量に書かれた「オケコン」の中からちょっとマイナーなものも含めて面白いものをご紹介したいと思います。


 やはりバルトークを挙げたならその盟友であり、ハンガリーに残ったコダーイゾルターンの「オケコン」も聴いておきたいですね。

コダーイゾルターン

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 こちらはハンガリー的でありながらもやはり新古典的な楽想をちゃんと備えています。


 次はこちらも名作の呼び声高いヴィトルド・ルトスワフスキの「オケコン」です。

ヴィトルド・ルトスワフスキ

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 はじめが印象的です良いね。ティンパニの刻みがブラームスのシンフォニーを思い出させながらも、点描的に進む旋律は非常に重々しく難渋です。

 

 次はエリオット・カーターの書いた「オケコン」です。カーターは基本的には十二音技法、トータルセリーによって書く作風を採っていましたが、この曲も高速に音列が進むカーター節は建材、そしてフィーチャーされた打楽器がいかにも現代曲のテイストを盛り上げています。

エリオット・カーター

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 なおタクトを握っていた巨大な男は作曲家のオリヴァー・ナッセンで、ナッセン自体も「オケコン」書いてるみたいですね。


 指揮者で作曲家という意味ではスタニスラフ・スクロヴァチェフスキも「オケコン」を書いた一人です。ちょっと渋い作品ですが珍しいので聴いてみましょう。

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ

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 このリストのはじめの二曲がそれです。ポーランド楽派に位置する作曲家と見ると、ルトスワフスキの系統と同じですが、それに比べるともっと後期の極めて渋い曲ですね。


 ところで日本人はどうなんでしょうか。


 安心してください、何人かがかいています。その中でも代表的なものはやはり三善晃の書いたものでしょう。それほど長い曲ではないのですが、はっきりとそれと分かる作風の強さと、響きのコントロールがやはり天才的だと感じます。

三善晃

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 同じアジア出身の作曲として、現代中国の巨匠譚盾(Tan Dun)も「オケコン」書いています。
 こちらは各楽章にサブタイトルが付けられ、絶対音楽性は薄いですが、彼でしかかけない独特のオーケストレーションと構想はやはり天才のそれです。

譚盾

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 流石に聴き疲れてきましたので、最後にもう一曲、若い世代の作品です。
 「現在の音楽」のシーンはポスト・モダンの後期、それぞれの作曲家がそれぞれの言葉で作品を書き、ジャンルの垣根すらなくなっています。その中で絶対音楽を書くのは困難な作業になっているのですが、それでも生み出される意義を考えさせられる作品です。

 スロベニア出身の作曲家ニーナ・シェンクが2019年に書いた「オケコン」がそれです。皆様はこの作品からどのような霊感を受けるでしょうか。

ニーナ・シェンク

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 とまだまだ紹介したい作品はありますが、第一回はこんなところで。第二回があるかはわかりませんが、コロナ禍のおり、じっくり「オケコン」を楽しむのもありでしょうし、オーケストラ関係者は埋もれた名「オケコン」探してみてはどうでしょうか。