名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

巨星次々に堕つ -モリコーネ、カプースチン、服部克久、田中利光

f:id:nu-composers:20200811165335j:plain

鎮魂

長い梅雨がコロナとともに国民に強いストレスを与えている中にあって、中共と米国の緊張は高まり、日本の馬鹿は相変わらず寝ぼけているというとき、世界中から相次いで衝撃的な訃報が届いた。

 

まもなく梅雨は明け、今度は凄まじい酷暑が列島を包み込む中、
彼らの追悼文を、今を生きる一作曲家として書かないわけには行かなかった。

 

本来なら一人ずつ稿を分けて書くべきところではあるが、追悼文ばかり続くのもいかがなものかと懊悩し、ここにまとめてしたためることに決した。
やや長くなるかも知れないが、お付き合い願えればと思う。

 


エンニオ・モリコーネ

f:id:nu-composers:20200811165535j:plain

エンニオ・モリコーネ


 言わずと知れた、映画音楽界の大巨匠である。その名を知らないという人すら少ないだろうし、その音楽を無意識的にでも聴いたことがない人はほぼいないだろう。
ことに日本ではロマンス系映画における、彼の甘美でどこか哀愁のあるメロディは人気が高かった。


 アメリカの映画音楽の潮流には、様々な潮流があるが、その中でもコープランドからバーンスタインジョン・ウィリアムズといった所謂「純アメリカ系」に対して、彼はもう一つの巨大潮流である「イタリア系」を代表する一人であった。
 イタリア人を祖先に持つアメリカ人作曲家というのはたくさんいるが、モリコーネ正真正銘のイタリア人である。


1928年にローマに生まれゴッフレド・ペトラッシに作曲を学んだ。
ロマンス映画に親しんでいた層からは驚かれるかも知れないが、彼がまず得意にしたのはウェスタン系」の映画音楽であった。
その後もどんどんアメリカ映画界での存在感を増し、あのニュー・シネマ・パラダイスでその名を不動のものにしたのだ。

www.youtube.com

Cinema Paradiso

 

 これぞモリコーネワールドであり、イタリア人たる彼のカンツォーネに至るルーツをも感じることが出来るだろう。

 しかしこの側面だけでモリコーネを語る人の多いことには正直言って憤りを超えて辟易する以外にない。
なぜなら、上記の通り彼はペトラッシ門下の作曲家であり、そのキャリアの基本はクラシックの作曲にあるからだ。

 映画音楽で成功した作曲家にはよくみられることではあるが、例えばニーノ・ロータジョン・ウィリアムズも純音楽作曲家としての一面があり、日本でも坂本龍一久石譲がそうであることはもっと知られなくてはならないことではないだろうか。
 事実、モリコーネ自身も自分が「現代音楽の作曲家である」と考えていると語っているように、純音楽を聴かずして彼について語り終えることはできないのだ。

 

f:id:nu-composers:20200811170325p:plain

20世紀イタリアの3大巨匠

 師匠のペトラッシは、ルイジ・ダラピッコラ、ジャチント・シェルシと並び20世紀イタリアの3大巨匠の一人と言われる独特の作風をもっていた。
もともとは新古典主義の作風だったが、次第に作風は晦渋になっていく。しかし当初から叙情性を表に出すことを恐れず、それは終生変わることなく貫かれた。
 このことがペトラッシの作風を独特のものに至らしめ、またその側面から弟子であるモリコーネ「映画音楽家」「現代音楽作曲家」の二面性を眺めるのは非常に面白いかも知れない。

 自身をポスト・ウェーベルン世代の作曲家だと位置づけていたモリコーネの純音楽は時代によっても変わって行くが、師匠のペトラッシが最も得意にした管弦楽のための協奏曲」というスタイルの曲を彼もまた残している。
そしてその作風、及びペトラッシ門下であることの証とでも言えるこの曲を紹介しようと思う。
師匠譲りの晦渋と叙情の両立が図られた、実に良曲ではないかと思う。

www.youtube.com

Concerto per Orchestra

愛とは悲しみの一種なのかも知れない。
モリコーネの音楽はいつもそのことを私に語りかけてくる気がしてならない。
2020年7月6日ローマにて没。自宅で転倒し大腿骨を骨折、療養中のことであったという。
ここに深い哀悼の意を表したい。

 

 

ニコライ・カプースチン

f:id:nu-composers:20200811170707j:plain

ニコライ・カプースチン

 モリコーネと全く同じ時期、コロナ禍に揺れるロシアからも大きな訃報が届いた。
ジャズのイディオムでクラシック作品を書き続けてきた巨匠カプースチンの死である。
一般にロシアの作曲家と区分される彼だが、少々その背景は複雑である。


 1937年にウクライナに生まれ、父はベラルーシ人、母はロシア人、二次大戦下ではキルギスタン疎開を経験すると行った具合で、旧ソ連諸国の多くと関連がある生い立ちをもっていた。
 彼は前述の通り、ジャズをその作曲の言語の中心としたクラシックの作曲家という非常に特異な位置にあり、その創作姿勢は常に賞賛と批判の両方が向けられていた。
 しかしその功績は、間違いなくクラシックピアニストの演奏の幅を広げるものであり、また誰だかの言葉ではないが「クラシックとポップスの安易な結婚」真っ向否定するに足る素晴らしいものであったことは間違いのないところだ。

とりあえず彼自身の演奏でその特異な作風の楽曲を聴いてみよう。

www.youtube.com

Inpromptu Op.66 No.2

 この老齢にして正確無比なピアニズムと、官能的で技巧的なジャズのフレーバーが融合し、独特の宇宙を形作っている。
この正確無比なピアニズムは彼が、正当なロシア・ピアニズムの申し子であることを表している。

f:id:nu-composers:20200811171658p:plain

カプースチンの師たち


 彼のピアノの師匠は「楽譜を正確に弾く」ことを信条とし、ラフマニノフの正統後継者とも言われたアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルの門下であった。
また師匠のゴリデンヴェイゼルは作曲家でもあり、タネーエフ、アレンスキー、イッポリトフ=イワノフに師事していたことから、カプースチンも流れ的にはロシア民族主義に位置するはずであった。
 そんな彼の作曲語法を大きく変えたのは、ラジオから流れるジャズであった。
すっかりその音に魅了された彼はその後オレグ・ルンドストレム国立ジャズ音楽室内管弦楽団のピアニストになり、ゴリデンヴェイゼル正確無比なピアニズムでジャズを弾く無二のピアニストとなっていった。
 そしてその楽団時代、その後のロシア国立映画交響楽団員時代に、彼らしいピアノ協奏曲を発表するなどしていたのだ。
ここで彼のルンドストレム楽団時代の演奏を見てみようと思う。

www.youtube.com

Toccata Op.8

 長く演奏家として活動していたが、その楽曲が評価され始めたのは晩年である。
マルカンドレ・アムランなどが好んで取り上げたことで、世界のクラシックファンに大きな衝撃を巻き起こし、一気にスターダムへとのし上がったのである。

 演奏家を引退後の彼は、作曲に専念し実に20曲ものピアノソナタ、6曲以上のピアノ協奏曲の他、様々な楽曲を書き、その作品番号は160を超えるという。
 世界中から新作が期待され、そのたびにカプースチン節を披露して、ファンの期待を裏切らなかった彼だが、長い闘病の末、2020年7月2日にモスクワに没した。
 私は主にPops曲のアレンジにおいて、そのピアノパートの在り方の一つとして彼の影響を強く受けたと思っている。
ここに深い哀悼の意を表したい。

 

 

服部克久

f:id:nu-composers:20200811171858j:plain

服部克久

 上記の海外の巨星の訃報が届く少し前に、国内に衝撃が走った。
劇伴、ことセミクラシック調のPops作品をその中心とし、今のテレビ音楽の草創からそのスタイルを確立、大きな影響を与え続けた服部克久の死である。
 服部家と言えば日本の音楽史の中核に位置する音楽一家の一つで、克久の父は日本歌謡曲の、そして日本Jazzの生みの親である服部良一であり、克久氏の息子と言えば、同じく今の劇伴や多くのPopsアーティストのアレンジから、純音楽までを手掛ける服部隆之である。

f:id:nu-composers:20200811172011p:plain

服部家3代


 隆之氏のお嬢様はヴァイオリニストであり、実に4代も音楽に関わる家系となり、そのいずれもが商業音楽の分野で大成功しているのだ。

 服部克久1936年東京生まれ、父良一より徹底的な英才教育を受けて育ち、パリ国立高等音楽院を卒業している。
その経歴はクラシックの作曲家だったとしても最高度に優秀なものであるが、克久氏は純音楽の道には一切進まず、その高い技術と知識を用いて劇伴、商業音楽の水準向上に一貫して取り組まれた。
 我々今の世代が映像音楽を作るときに、克久氏の作り出した手法は最早定石となっていると言って過言ではない。
 美しく鳴るオーケストレーションには確固たるクラシックの基礎がありながらも、類まれなるメロディセンスと瀟洒な空気感で重さを全く感じさせないのは職人芸と言っていいだろう。
 自らメディアに露出し、私の子供の頃は多くのテレビ番組において、軽妙なトークで笑いを誘っていた。
まずはそんな克久先生の代表的な作品「自由の大地」を自らのタクトで聴いてみよう。

www.youtube.com

自由の大地

 このメロディを知らない日本人はいないのではと思うほどに知られたメロディ、そしてその下支えとなっているのはやはり確かなオーケストレーションテクニックである。
Popsだから、軽音楽だからと勉強を遠ざけ、我流に走って悦に入るようなことがまかり通る現在のそれとは根本から違う。
 多くの日本人が服部の系譜をもっと当たり前に知り、学ぶことが求められると言って過言ではない。
そして同じように、山本の系譜、宮川の系譜という日本劇伴界の大系譜は、音楽の定石として教育でももっと扱われてよいべきものだろう。

 克久氏のもう一つの代表作「ル・ローヌ」克久氏、隆之氏、そして隆之氏のお嬢様であるヴァイオリニストの服部百音さんの共演で作られた映像を最後に見ていただきたい。
2020年6月11日、腎不全のため永眠。
心よりご冥福を申し上げる次第である。

www.youtube.com

ル・ローヌ(河)

 

 

 

田中利光

f:id:nu-composers:20200811172539j:plain

田中利光

 次々に巨星墜つの報に悲嘆に暮れていた7月末、もうひとりの作曲家が静かに亡くなったとの情報が舞い込んできた。
ここまでの巨人たちと比べればその存在は確かに小さいのかも知れない。
しかし合唱、歌曲、とりわけ打楽器作品の分野ではその功績は大きく、氏の曲を試験曲で選んだ学生も多いのではないだろうか。

 田中利光は1930年に青森県に生まれ国立音楽大学に学んだ。
そして青森の民族素材を生かした作品群を作り続け、青森の県民歌である「青森県賛歌」の作曲者でもあるなど、郷土愛を持ち続けた人であった。
まずはそんな田中先生の代表的な作品である、打楽器作品を聴いてみよう。

www.youtube.com

マリンバのための二章より第1楽章

 現代的な響きのマリンバ独奏曲だが、随所に日本的な雰囲気が香ってくる。
こういった作品の中に、自身の郷土性を生かしていくのは並大抵のことではないのだが、堂々とその2つを並べ、あるときはぶつけ合って独特の世界を生み出されている。

 かつて田中先生の世代に近い恩師が「としみっちゃん」と呼んでいたのを思い出す事があるのだが、実は田中先生は教育分野の仕事もされたようだ。
そして合唱や歌曲を通じて、日本というものの原風景を伝え続けたという意味でも、今この世の中だからこそ見つめ直すべき点が多々あるのではないかと思う。
 我々はともすると、文明の便利さを利用するつもりですっかり利用され、しらずしらずにそれを自分の実力と過信してしまう。

f:id:nu-composers:20200811173727j:plain

ふるさと

 しかし「故郷」をもつ者なら、帰省したときの旧友との時間に、かけがえのないものを感じることは多いだろう。
氏の作品はそういった時間軸の中にあったように思う。

ここでそんな郷土の素材を余すところなく使った氏の代表作を聴いてみたいと思う。

www.youtube.com

津軽の音素材による混声合唱「四季」

 

こういった音楽の母語というものはいつ形作られるのだろうか。
あなたの母語はなんだろうか。
私は今母語を話しているだろうか。

そんなことを思いながら氏の作品に浸る。
2020年7月30日、肺がんにて逝去される。
謹んでご冥福を祈るものである。

 

 最後に私が続けている「忘れられた音楽」シリーズとリンクさせ、氏のピアノの小品を紹介して追悼に代えたい。
田中先生はこの「ある風景」の向こうに行かれたのだろう。
各巨星たちも、自らが望んだ音風景の向こうで、ゆっくりと休まれているに違いない。

f:id:nu-composers:20200811173657j:plain

ある風景の向こうへ

 このコロナ禍の世の中、そして戦争の気配近づく中、残された我々は先人への敬意を忘れずに、一歩一歩歩んでいかねばならない。

www.youtube.com

ある風景

悪魔の第七旋法 "ロクリア" の封印を解く 第2話「4度圏音楽『TLT』の誕生」

~前回までのあらすじ~

f:id:nu-composers:20200607193232p:plain

f:id:nu-composers:20200607193618p:plain

4度圏音楽の和音の形と和声進行ができたらしい????

 


 

覚えて帰れ「TLT」

今まで当たり前だと思われてきた音楽は、いずれも完全5度主体のものでした。
これは、前回の記事でもお話しした通り。
なので、そういった従来の音楽をここでは5度圏音楽と定義することにしましょう。

f:id:nu-composers:20200607185851p:plain

5度圏音楽の和音

しかし、主体とする音度は完全5度以外にじつは完全4度でもよく、その場合成立するのは4度圏音楽ということになります。
この4度圏音楽という概念こそが重要であり、まだ世界で僕以外に誰も体系化していない(たぶん)大発見の理論です。
そして、この4度圏音楽を僕(トイドラ)が体系化したものを、ここで

Toydora Locrian Theory

略して、
TLT

と名付けます。
いやー自分の名前がついた理論があるってキモチいいですね!!!

f:id:nu-composers:20200607193239p:plain

4度圏音楽(TLT)の和声


4度圏音楽の和音構造

「で、結局4度圏音楽ってなんなの????」

という人のために、ばっちり説明しておきましょう。
と言っても、そう難しいもんでもありません。
要するに、5度圏音楽の構造をよ~く見極めたうえで、

完全5度」を「完全4度」に置き換える

だけで、4度圏音楽は完成します。

 

まず、和音について考えてみましょう。
僕は前回の記事で、5度圏音楽の和音の構造についてこう説明しました。

 1. 主音と第3音との音度関係(長和音 or 短和音)

 2. 主音・第3音それぞれからの完全5度堆積(3和音 or 4和音 or それ以上……)

以上の2つのファクターから和音は構成されています。

つまり、しいて言えば和音は5度堆積からできているのです。

f:id:nu-composers:20200607185851p:plain

 この文章に手を加え、完全5度完全4度に置き換えるとどうでしょう。

 1. 主音と第3音との音度関係(長和音 or 短和音)

 2. 主音・第3音それぞれからの完全4度堆積(3和音 or 4和音 or それ以上……)

以上の2つのファクターから和音は構成されています。

つまり、しいて言えば和音は4度堆積からできているのです。

f:id:nu-composers:20200607193239p:plain

なんと。
実に簡単に4度圏音楽の和音が完成してしまいました
この“和音”は、見た目には3度と2度を交互に堆積したいびつな形になっています。
5度圏音楽の和音は綺麗な3度堆積の形になっていましたが、そんなのは結果論なので、TLTではめげずにこのいびつな和音を使っていくことにします。

 

4度圏音楽の和音進行

そうしたら、次は和音進行について考えてみたくなりますよね?(なれ)
こちらも考え方は全く同じです。
前回の記事で、僕は次のように述べました。

(5度圏和声の)基本的な進行は、どれも根音が完全5度下行(完全4度上行)する進行ですよね。

f:id:nu-composers:20200607191130p:plain

従来の音楽では、Ⅴの和音がⅠの和音に解決するという役割を担っています。
つまり、トニック(T)に解決するドミナント(D)ということですね。
和声進行の基礎となるツー・ファイブ(終止定型)の進行では、上の画像のように完全5度進行(D進行)が2回繰り返されます。

 

で、これを4度圏音楽に翻訳するとどうなるのか?

4度圏和声の)基本的な進行は、どれも根音が完全4度下行(完全5度上行)する進行ですよね。

f:id:nu-composers:20200607193618p:plain

 わーいできた。
根音が完全4度下行する進行は、従来和声では「S(サブ-ドミナント)進行」と呼ばれます。
「副D進行」みたいな意味ですね。
ただ、TLTにおいてはこの進行は「主」であり、「副」ではないので、これをS進行と呼ぶのはふさわしくない気がします。
だから新しい名前を与えましょう。
今日からこの進行はE(エニモッド)進行です*1
上の画像では、TLTにおけるツー・ファイブ的な何かを実践しています。
和音で言うと「Ⅶ-Ⅳ-Ⅰ」という進行なので、しいて言うならセブン・フォーでしょうか(????)。

 

「TLT」の激ヤバ発展性(ヤバい)

ここまでサクサクと話を進めてきましたが、実際にTLTを使うに至るまでにはたくさんの課題がありました。
結論を先に言っとくと、それらの課題は全部突破され、無事実用段階にまでこぎつけました
や っ た ぜ 。
というわけで、僕がTLTを用いて作った曲たちを参考までに載せておきましょう。

 

これまでTLTにどのような発展があったかというと、

  • 4度圏音楽にも長・短音階があることを発見
  • 変格ロクリア旋法の導入により汎用化に成功
  • 4度圏対位法を発見
  • 限定進行音を発見
  • 和声進行の主要な動力を発見
  • 日本和声との類似性を発見

…………などなど。
これらについてもいずれ語っていきたいと思っています。
TLT和声法に関しては、いずれ理論書の自主出版も考えていますのでお楽しみに(楽しみにする人いるのか???)。

 

【次回】

nu-composers.hateblo.jp

*1:「『エニモッド』って何????!???」と気になって夜も眠れず、生命活動に支障をきたして即身仏と化しそうになったら、遠慮なく名作同に連絡してください。ふつうに教えます。

【エッセイ】時流に取り残されて〜ある占い師への回想

最近、時の流れがとても速く感じる。それも異様なほどに速く。昔は時の流れの速さなど感じたことなど一度もなかったのに。私がただ鈍感だったからなのだろうか。それともやはり、年齢を重ねたからなのだろうか。

 

ーー----------------------

 

私は小中高と田舎の学校に通っていた。その所為もあろう、あの頃は時の流れがゆっくりだった。時が止まっていたという訳では無いのだが、それでも記憶に残っているのは、通学駅の改札が自動改札になったことや駅ビルが整備されて飲食店が入ったこと程度で、それらに特別な感傷を覚えることなどなく、ただ流されるままに日々を暮らしていた。

 

そんな時の中でのんびりとしすぎて受験に失敗した私は、めでたく予備校生となった。そして、地元通学とは打って変わって都会の予備校へ通うこととなった。華の都会デビューである。

 

都会と言ったが、私の通っていた予備校の周りはゴチャゴチャしており、所謂「インナーシティ」という言葉が似合う場所だった。気忙しい駅前の大通りから少し歩くと、時代に取り残されたような風景がそこにはいつもあった。夜になるとサラリーマンが集う立ち飲み屋、ボロボロのビジネスホテル、色褪せた赤い看板の中華屋。客付きの悪いパチンコ屋。薄暗い路地に風俗店が軒を連ね、いつもキャッチが暇そうに立っていた。そんな光景を横目にもう少し歩くとそこはもう住宅街のど真ん中で、いつも静かで穏やかな空気が漂っていた。住宅街の中には公園があちこちに散らばっており、時々昼休みのサラリーマンがベンチで煙草をふかしていたのだった。

 

さて、私の浪人生活はというと、あまり順調ではなかった。初めのうちはコーヒーをガブガブ飲んで、行き帰りの電車の中でもバリバリと勉強していたが、疲労とカフェインの過剰摂取の所為か、授業中にパニック擬きを起こして死にそうな思いをした。それ以降はやる気がプッツリと切れ、やるべきことを怠惰にこなす日々を過ごしていたのだった。

 

しかしながら、夏はだんだん近づいてくる。受験生の天王山。そろそろやらねばならぬが、いまいち心に火がつかぬ。どうしようも無い焦りに、梅雨の低気圧が精神に追い討ちをかける。私は、気が参っていた。

 

そういえば、と私は思い立った。そういえば、あの街並みの中に「占い」の貼り紙があった。どうせ今は勉強に身が入らない。占い師に占ってもらって、何か助言でも貰ってみよう。私は有り金を握り締めて街へ飛び出した。

 

その占い師とは、いつも潰れたカラオケ屋前のソファに座っている老人だった。髭を生やして頭巾を被り、いつもボロボロの半纏を着ていた。そのカラオケ屋を住処にしているらしく、言わば「家のあるホームレス」といった感じだった。私はその老人の周りを2・3分ほどウロウロとしていたが、ついに決心を固めて老人の前まで行き、「占って欲しい」という旨を話した。その老人はニッコリと笑って、「家」へ招き入れてくれた。

 

「家」に入るとすぐの所に二階へ続く階段があり、そこには酒やらお菓子やらが乱雑に置かれていた。どうやらこの階段の先が寝室らしい。階段の手前には接客用の机があり、向かい合わせに椅子が置いてあったが、そこもまたゴチャゴチャしていて窮屈な感じだった。

 

占いの御代は5000円ということだったが、そもそもそれもいつの間にか誰かが勝手に決めたらしい、といった感じで決まった額はないようだ。しかし初めてということもあり、とりあえずキッチリ5000円支払うことにした。

 

いよいよ占いが始まった。占いは、いくつかの結果を総合するやり方なのか、手の平を見たり、瞳や額の辺りを虫眼鏡で見たり、紙に名前を書かされてその筆跡を鑑定したり、というような感じだった。そして、鑑定が終わるとその老人はニッコリと笑ってこう言った。「大丈夫ですよ。必ず上手く行きます」。

 

その言葉になんとなく勇気づけられた私は、モチベーションに翻弄されつつもやるべきことに励んだ。モチベーションが底を尽きたときには、ちょっとしたお菓子やお茶などを持ってその老人の所へ行き、話を聞いてもらった。その老人に言われた「日光浴は大事ですよ」という言葉は忘れず、昼休みになると外へ出て太陽の光を浴びるようにした。受験本番数日前もまたその老人の元へ立ち寄り、勇気づけてもらっていた。いつの間にか、その老人との会話が心の支えとなっていた。

 

そして3月。私は、無事志望校に合格した。合格発表の掲示板を見に行った帰り、私は真っ先にその老人の元へと向かった。老人は、大層喜んでくれたし、私もまた、とても嬉しかった。

 

大学に入学してからも、菓子や飲み物などを持って度々その老人の元を訪ねた。その老人に安焼酎を貰い、「家」の前で一緒に飲んだこともあった。酒に酔った眼に街を行く人々がボンヤリと輝いて、とても綺麗だったのを覚えている。

 

大学に入学して約一年後、私は春休みに語学研修で海外へ行くこととなった。出発する一月ほど前にも私は老人の所へ行き、海外へ研修に行くことを伝えた。その老人は、いつものように優しく笑って私の話を聞いてくれた。

 

語学研修後に少しバタバタしていたのもあり、再びその老人の元を訪ねたのは4月の下旬頃になった。私は研修先で買った酒を提げ、小走りでその老人の元へと向かった。しかし。老人はいなかった。彼の座っていたソファは跡形もなく、あのゴチャゴチャした玄関もポッカリと片付いており、「家」には鍵がかかっていた。

 

近くの店の人に話を聞くと、その老人は、春先に亡くなったということだった。

 

ーー----------------------

 

初めて会ったあの日からもう5年が過ぎた。埋葬先だけでも知ることができれば、と思って調べ回った時期もあったが、その手がかりもプッツリと切れてしまった。その老人が亡くなった後どうなったのかは、未だに分からない。

 

そして、時の流れが街を飲み込み始めたのも、その占い師が居なくなってからだったように思う。私が浪人時代を過ごしたあの風景も、駅前の再開発によりあっという間に無くなってしまった。サラリーマンが集う立ち飲み屋は、店のある雑居ビルごと封鎖になった。客のつかないパチンコ屋はいつの間にか駐車場になった。風俗店も、気づいた時には入り口をベニヤ板で塞がれて工事関係者が出入りしていた。自分がよく行っていた公園の一つは鉄の板で囲まれ、その隙間からは重機が何台も止まっているのが見えた。

 

時の流れに飲み込まれたのはそれだけではない。私の住処の周りでは、ボロ家が次々に取り壊され、新築の家が建てられている。数年後には、今のこの景色も無くなっているのかもしれない。また、私の故郷のショッピングモールもまた、いつの間にかリニューアルされてピカピカになってしまった。夏休みによく祖母に連れてきてもらった、あの面影はもう無い。

 

時の流れは留まることを知らない。それはきっと仕方のないことだろう。年月を経れば、人も変わるし街も変わる。しかし、今の私はそれをどうしても受け入れられない。きっと多くの人は、気づかぬうちにその流れに身を委ねているのだろう。そしていつの間にか順応し、変わらぬ日々を過ごしてゆくのだろう。しかし、今の私にはその流れを直視することは出来ない。そして、心にポッカリと開いた穴を思い出で不器用に埋め続け、時の流れの中いつまでもポツンと取り残されたままなのである。

「あなたも作曲家になろう」菱川伸也×冨田悠暉

f:id:nu-composers:20200613101737j:plain

あなたも作曲家になろう

今回のあなたも作曲家になろう企画では、僕は2つの曲を編曲させてもらいました。

やっぱり会長たるもの、常に曲数で下っ端たちを凌駕して威厳を見せつけていきたいですよね(?)

実際にはヒラの会員たちが優秀すぎて焦ってるだけ  とにかく、1曲目はYo-yohさんの「Knot will Overcome the Not」です。

こちらはこの前すでに紹介しましたね。

今回は、2曲目の風に憧れた少年 ~Fly to the wind~について語っていきたいと思います。

作曲は菱川伸也さんです。

 

聞いてくれ


かっこよくないですか~~~???

我ながらお気に入りの仕上がりです。

菱川さんから送られてきたメロディは、サビまるまる一個分の鼻歌でした。

さらに、

ヒーローアニメの主題歌みたいなイメージで作ってもらえると嬉しいです

という注文つき。

トイドラ会長に注文を付けるその度胸、気に入りました

というわけで、希望通りA・Bメロをつけ足してアニメ主題歌っぽく編曲していきましょう。

 

トイドラ的「アニソンの作り方」

 

 僕は芸術音楽が好きですが、ポップスが嫌いというわけではありません。

とりわけ、所謂アニソンはポップスの中でも特徴的で、音楽的に巧みなものも少なくないので実は割と好きです。

アニソンを多く書いている作曲家の中でも、僕は特に田中秀和が好きだったりします。

アニメは全く見ないので、あくまで曲だけですが……。

田中サウンドの中でも特に特徴的だと思うのが、サビ前のキメに入る超カッコイイ和音

所謂、Vaug/II♭の和音*1です。

この和音を、キメの前だけじゃなくそこら中に多用するのがトイドラ流です。

あんまやりすぎると元の木阿弥ですが。

 

あと、長短合成和音(V7(#9)*2もアニソンとの相性がいいので、僕は多用します。

長短合成と言いながら、実際には短調の和音なので使うと暗くなる点だけ注意。

ちなみに、場合によってはVaug/II♭を長短合成和音にするという合わせ技を使うこともありますが、響きがキツくなるのでヴォイシングが難しいです。

 

話を戻して、日本のアニソンの特徴として個人的に思うのが、Bメロの重要さ転調です。

根拠はないですが、とにかくBメロで転調しまくっとけばそれっぽくなる気がします(適当すぎんか?)。

そもそもアニソンは転調が大好きなのですが(菅野よう子とかに顕著な気がする)、Aメロでいきなり転調してもしょうがないし、サビでくるくる転調したら流石にバカです。

結局Bメロというのが、サビに向けて盛り上げる意味でも転調パラダイス天国には最適

ゴリゴリ転調しましょう。

 

うまい具合に調を戻したら、バシッとキメてサクッとサビを流してテキトーに終わってしまいましょう

サブドミで唐突に終わっておけば、それとなくTV版っぽさが出て良さみが増します。

「この番組は、ご覧のスポンサーと……」なんて声が、今にも聞こえてきそうじゃないですか?

 

完成

いや完成じゃねえよと思うかもしれませんが、完成しちゃったので仕方ありません。

実際この曲は、マスタリングも含めて2日で書きあげました。

ポップスは特に何も考えずにサクッとかっこよく作るのが楽しいんですよね。

みんなも、むやみにキメ和音や山盛り転調を多用してQOLをムキムキ上げていきましょう。

 

 

★配信開始しました!→コチラ

*1:俗にイキスギコードと呼ばれています。ひどい名前ですね。

*2:この和音、和音の成り立ち的にはどう考えても「V7(♭10)」と書くのが正しいのですが、ジャズ理論的に10thなどというテンションはないので#9と表記することになっています。正直悪習でしかありません。

「あなたも作曲家になろう」Yo-yoh/DENPAMARU☓榊山大亮

f:id:nu-composers:20200613101737j:plain

あなたも作曲家になろう

f:id:nu-composers:20200720022257j:plain

新型コロナウイルス

名作同の企画「あなたも作曲家になろう」では、私はもう一曲参加をさせていただいている。
その楽曲は、本企画の公募の中で唯一といってもいい、完全な楽曲として投稿されてきたものであった。
そしてそのテーマは新型コロナウイルスと戦う人類」。まさに今を描いたものであった。

この楽曲は会長であるトイドラくんも同様にアレンジを行い、それについては以下の記事にまとまっている。

  

nu-composers.hateblo.jp

 

また私のもう一つの参加作品であるふらったぁさんの作品Piano Duoによるアレンジにしたので、この楽曲については違うアレンジにしようと言う意気込みがあったことも忘れてはならない。

ふらったぁさんの作品のアレンジについては以下の記事をご覧いただきたい。

 

nu-composers.hateblo.jp

 

話をYo-yoh/DENPAMARUさんの楽曲に戻そう。
タイトルもすでに決まっていて「Knot will overcome the Not」とあった。
新型コロナウイルスに対する高い問題意識、危機意識と、人類の力を結びつけるに余りある意識の高さを感じるタイトルである。
そしてその楽曲は数声部のアンサンブルのような形態の楽譜で私の手元にやってきた。
楽曲の説明やコンセプトもしっかりしていて、これをアレンジするためには更に多くのことを考えなければかえってマイナスになってしまう。

 

日頃お世話になっているあるプロミュージシャンがこんなことを言っていた。

 

「アレンジとはアップデートでなくてはいけない」

 

たしかにうなずける。
ダウングレードのアレンジが巷に跋扈している中、ちゃんとアップデートを試みるにはまず原曲を知り尽くすことをしなくてはいけない。
作者の創作にコミットし、あるいは自分に憑依させるような作業である。
そしてその結果、私はこの楽曲にはいくつかの「伝わりにくさ」があると感じた。

・構成の不明瞭さ
・ハーモニー展開が最善とは言えない箇所がある
・命題を打ち出すための力強さ
・結論をはっきりさせるためのシーンの弱さ
オーケストレーション的な問題

 

これらをトリートメントして、さらにアップデートしつつ、原曲の魅力は残す
これが今回私に課された内容であると確信し、以下のような方法論を採用した。

・原曲の構成を変える
・ハーモニー付けを大幅に変えながらも原曲感を維持する
・原曲にはない要素を付け加えコントラストを強調する
・フルオーケストラ作品にする

 

殆どの要素を見直すと言っても過言ではない大手術だが、そうは感じないようにすることがプロの仕事とも言える。

まず現在の世間を見渡したときの対コロナに対する怒りと恐怖を打ち出すために、原曲でもっとも強く鳴り響いているシーケンスを取り出し、これを中心に現代的なアクションと打楽器類を多く鳴らすオープニングを構築した。

f:id:nu-composers:20200720022956p:plain

オープニング

実はこのオープニングの書き方には参考にした人物がいる。

それは今回の企画でゲストコンポーザーとして参加したYuya Miyazakiである。
彼もまた私の弟子の一人であるが、普段フルオケを中心としたエピックな作風に定評のあるコンポーザーで、メロディによらない迫力のあるオスティナートを特徴としている。

今回の企画にはメタルサウンドを引っさげて参加しているのでその曲については以下の記事を参照していただきたい。

 

nu-composers.hateblo.jp

 

このオープニングでショッキングさを演出してから、メインメロディに渡す構成に改め、メインメロディは弦とHornによる小さなカノンを形成させて強調を促した。

f:id:nu-composers:20200720023214p:plain

メインメロディ1

楽曲はこのまま確保をして印象づけをした後、一旦休止し中間部分に入る。
原曲では緩徐部分が2回登場するのだが、これを改め、2つの緩徐メロディを統合し一つの部にまとめた。
前半はアングレのソロに段々とダブルリードが絡んでゆく体位的な手法を採用し、映画音楽的効果を与えることにした。

f:id:nu-composers:20200720023323p:plain

中間部分

そしてテーマの確保では大河ドラマ調の盛り上げ方を利用して更に映画感を強めている。

f:id:nu-composers:20200720023403p:plain

中間部確保

この後が再起である。
原曲にはないシーンだが、伝染病は一般に数波に分かれてやってくると言われており、現実的にも今日本はこの曲が書かれた時を第一波とすれば、第二波の渦中にあるので、この構成変更は正しかったかと思う。

オープニングでも使ったシーケンスフレーズマリンバに叩かせ、打楽器で彩られた中に種々の騒音が緊張を高めるシーンである。

f:id:nu-composers:20200720023541p:plain

再起へのブリッジ

再起を促した場合、その後は通常ははじめのテーマが戻ってくるのだが、ここでは原曲のもう一つのメインメロディを用いることにした。
このメロディにはコロナと戦う人類の勇ましさ、力強さが表現されていると感じられたので、これを強調するために有名ゲーム音楽の書法を応用した。
ハーモニーもそれに倣っていわゆる「すぎやま節」と呼ばれる形に付け直してみることにした。
こうすることで、ゲームというプラットホームに慣れた現代人に、直截に勇猛果敢な人類の姿を伝えやすくなると考えたからだ。

f:id:nu-composers:20200720023728p:plain

再起シーン

最後は願いを込めて原曲と同じく平和に終止することとした。
私だって現実のバッドエンドは望まない。
しかし原曲はハーモニーの余韻のみのような終止であったので、ここにメロディを加える方法を採用し、さらにそれら全体をふわっと演出するためにハープを思い切って使うことにした。
また原曲はこのシーンのハーモニーを起点に別の調で終止させるのだが、それを改め同主長調での終止、いわゆるピカルディ終止にしてまとまりを補った。

f:id:nu-composers:20200720023857p:plain

エンディング

以上がこの楽曲のアレンジに私がつぎ込んだアイディアと、その実例である。
楽曲については、各種音楽サービスより絶賛配信中であるのでそちらをぜひ聴いていただきたい。

 

最後になるが、ここまでの大きなコンセプトを着手する刺激を頂いた原曲者のYo-yoh/DENPAMARUさんに深く感謝し、この楽曲のように、忌まわしい新型コロナウイルスに人類が勝ち、再び平和に満たされる日が来ることを望んで止まない。

 

原曲者Twitterアカウント

https://twitter.com/mamecowiwiACeT?s=20

 

 

★配信開始しました!→コチラ

続・ヒットチャートを比較する

~前回の記事~

 

nu-composers.hateblo.jp

 

続きです。実はまだ比較する予定でした。

 

(すべて5/20のチャート)

 

 

フランス

クラシック音楽の世界ではフランス音楽は調性が希薄で、美麗な曲が多い印象がありますが、現代の大衆音楽は一体どうなっているのか、その謎を探るために我々はひたすらググったのです。

f:id:nu-composers:20200520193731j:image

全員ヒップホップMCである。

フランスのポップスは死んだ、みたいな話を聞いたことがある(ソースは2ch)んですが、これを見る限りそうであるような気がしなくもない。

しかし、その一方で今まで見た国々とはランクインする面子が違うのは明白ですね。 では適当に抜粋してみましょう。

www.youtube.com

BOOBA(ブーバ)はフランスのヒップホップMCです。なんかポケモンにいそう。

f:id:nu-composers:20200718101453g:plain

これはブーバ―

BOOBAは4位にも登場してます。なんか大体おんなじ雰囲気の曲でした(適当)。あとZEDは誰かはよくわかんないです。ZEDDなら知ってるんですけどね。

それにしてもまたトラップの曲(前回参照)ですね。いつまで流行ってんだ、という気はしないでもないですが、人気は健在のようです。

 

とはいえトラップじゃない曲も目立ちます。たとえばこれ。

www.youtube.com

f:id:nu-composers:20200719131533p:plain

Sousou

「ターッカタッカッタッカッタッ」的なリズムパターン(名前忘れた)を使ってる曲がちらほら見られます。トラップの次に流行ってるのはこのリズムパターンなのか??いや逆に既に流行った???知りません。そもそもこれもトラップかも(は?)

 

 

ドイツ

クラシック音楽でドイツといえば、ベートーベンに代表されるように非常にがっしりした曲が多い印象がありますが、現代は一体どうなんでしょうかね。

f:id:nu-composers:20200520213809j:image

また例に漏れずヒップホップが席巻してますね。ヒップホップばっか聴いて飽きんのか?

www.youtube.com

www.youtube.com

ただ言語の違いからか、ちょっとフロウが純英語話者と違うのが面白くはあります。めちゃドイツを感じる。行ったことありませんが。

 

ドイツはアメリカやイギリスでランクインしたのが入りつつも、大半はそうではないのが入ってますね。

 

ブラジル

どの国でもヒップホップMCしかいなくて飽きてきたのでそろそろ大陸を変えましょう。ブラジルです。

ブラジルといえばこの記事

 

nu-composers.hateblo.jp

ですが、現代ポップスがどうなっているかも気になりませんか?僕は気になります。

f:id:nu-composers:20200520213953j:image

 「人間いつかはみな死ぬ(意訳)」の名言でおなじみの大統領の国、ブラジル。現在のような阿鼻叫喚の無間地獄になる前はこんな音楽が聴かれていたようです。やはり南米にもなると西洋の影響は薄いのか、独自の音楽のランクインが目立ちます。

 

というか、

www.youtube.com

久々にラップじゃない普通の歌謡曲がランクインしてて感動しました。EDM要素はありますけどね。

Dua Lipaはイギリスの歌手です。この曲Don't Start Nowは2019年の曲なんですが、なぜか2020年のブラジルで大受けしているようです。なんで?

 

www.youtube.com

これは2位の曲です。ブラジルじゃん......。すげー爽やかなギターデュオなんですが、日本人からは出てこない節回しが散見されてとても良い気分になります。なんというか、こういうのを期待して比較してたんだよなあ......。

www.youtube.com

なんかブラジルの曲にはYoutubeにライブ映像が多くて、客がめっちゃ歌ってるのが多いです。ライブクッソ楽しそう。

 

ちなみによく出てくる(Ao Vivo)という文字列は、ライブという意味です。

 

アルゼンチン

 アルゼンチンはブラジルと隣接しながらも使用する言語が違うことからもわかるように旧宗主国が違います。さらにブラジルでは先住民との混血が進みましたが、アルゼンチンではそこまででもなかったため、音楽的なバックグラウンドに大きな違いがあると考えたが、実際どうなんでしょうね。

 

nu-composers.hateblo.jp

こんな記事もあるので俄然気になっちゃいますよね。

さあ、ヒットチャートは大きく異なるのでしょうか、見ていきましょう。

f:id:nu-composers:20200520214057j:image

 西洋とあんま変わんなくね????

 

ただこういう曲もあるので一概にそうとは言い切れないところではあります。

www.youtube.com

ギターにアルゼンチンみを感じるような気がしないでもないです。

フィメールラッパーがランクインしてるのもちょっと新鮮です。西欧はゴリゴリの男が多かったので特にそんな感じがします。

 

南アフリカ

黒人音楽の源流はアフリカにあります。すなわちヒップホップと親和性が強い人種なのではないだろうか、しかしあれはアメリカで生まれたものだから、本土の人間にはあまり関係が無いのかもしれない。さあどうだろう。

f:id:nu-composers:20200520214418j:image

......特筆すべき点がねえ

 

 

おわりに

なんか白人文化圏でめちゃくちゃヒップホップが流行してるのがよくわかりました。あとブラジルは良い国ですね。

更にこの後流行歌がコロナ禍でどうなったかも気になりますね。露骨に明るい歌が増えたり暗い歌が増えたりしてたら面白いので、またやるかもしれません。では。

「あなたも作曲家になろう」雀句×宮崎雄也

f:id:nu-composers:20200613101737j:plain

あなたも作曲家になろう

 

「あなたも作曲家になろう」に今回ゲストで参加させて頂きました、宮崎雄也と申します。 

「せっかく曲書いたんだし、解説もやりたいなー」なんて思っていたらトイドラさんから依頼が来たのでニヤニヤしながら書いております。 

結果的に他の4名の方々とはかなり違うアプローチで曲を書いたので、解説についても少々違ったアプローチで書いていきます。 

 

1.使用機材 

VST 

u-he / Hive 

Heavyocity / Evolve 

Heavyocity / Damage 

Lennar Digital / Sylenth1 

Spitfire Audio / Albion (Legacy) 

Native Instruments / GuitarRig 5 

Neural DSP / Fortin Nameless Suite 

Naughty Seal Audio / Perfect Drums 

Impact Soundworks / Shreddage Bass 2  

Audio Imperia / Scenes From The Multiverse Vol. 1 

 

Sample 

Vengeance Sound / Vengeance Essential Clubsounds Vol.1 

 

Guitar 

Jackson Guitars / JS Series Dinky Arch Top JS22-7 DKA HT 

 

2.編曲について 

原曲を書いた雀句さんとしてはTrap Beatが書きたかったようで、実際それっぽい音が鳴っていたのですが、そういう音楽を私はやってこなかったので、そのメロディが「らしく聴こえる曲」を書こうと決めました。 

この時期たまたまMick Gordonの音にハマっていて、Doomの曲を聴いていたワケですが、Synth,Guitar,FXの方向性とメロディの方向性がバッチリ合いそうだったので、この方向性で書きました。 

曲名はそういう安直な理由でつけたものです。 

 

www.youtube.com

 

3.メロディを鳴らす 

まず最初に与えられたメロディを少し変奏してPluckを鳴らします。これだけでだいぶそれっぽいです。ここからMick Gordon的な音にしていきます。以下の譜面は最初に与えられたメロディです。 

f:id:nu-composers:20200715123447p:plain

 

 

 

4.BassとGuitarのOrchestration 

今回オーケストラは鳴っていませんが、考え方はオーケストラと同じです。 

上から下までしっかり鳴らしてあげないと、この手の曲はカッコよく鳴りません。 

そしてこの曲のキモはBassとGuitarです。そこをしっかり作ってあげれば、後は難しい事を考えずに書けます。 

 

まずバリバリしたSaw Bassを鳴らします。Bass Guitarも同時に鳴らすので、ローは容赦なくカットして良いです。するとこんな音が出ます。 

 

 

 

ここでBass Guitar追加です。基本的にBass GuitarはDI1本とAmpを通した音を1,2本鳴らすことが多いです。足すとこんな音が出ます。 

 

 

 

まだ少し薄っぺらいですね。ミッドが少し足りてないのでしょう。そこでPianoを鳴らします。Pianoの倍音がこの足りない音域を補ってくれます。しかしここで普通にPianoを鳴らしても曲の方向性と合いません。さて、どうするのかというと答えは簡単です。Amp Simulatorを通します。Amp Simulatorを通せば、今回の曲と音色が合いますし、Amp Simulatorを通すことでPianoの余計なハイを自然にカット出来ます。するとこんな音が出ます。 

 

 

 

上から下まで鳴った、だいぶ迫力のあるBassになりました。今回はあらかじめサンプリングされた音源(Heavyocity / Evolve)を使いましたが、Piano音源にAmp Simulator通してあげれば基本的に同じような結果が得られます。 

 

音全体に少し推進力が欲しかったのでSynth Bassを4分音符で刻ませます。あとはここにGuitarを左右1本ずつ録ってあげれば曲の大枠の出来上がりです。するとこんな音が鳴ります。 

 

 

 

ここまで出来てしまえばあとは与えられたメロディを使って、FXやDrumを追加し、無理なく曲を展開させるのみです。ガチャーン!!!!ドコスコー!!!!シュウィィィィンン!!!!ドギャアァァア!!!!って感じです。 

5.終わりに 

メインのBassが書けてしまえば、あとは聴いた通りの音なので解説はここまでにしようと思います。 

 

Trailer的な音とは言え、やはりやっている事は自体はDjentであるため、このメロディやリフを他の楽器にパスしてあげて、もっと曲の尺を稼いであげても良かったかもしれませんし、Guitarのチューニングについても、もっと落として、よりMick Gordonらしくしてあげても良かったかもしれません。 

長々と書いたBassとGuitarのOrchestrationは、実はこの曲を書く以前から何度もやってきたものではありましたが、後半のDjentないしMetalな音に展開させていくタイプの曲で使うのは始めてだったたので、なかなか学ぶことが多い曲になってくれました。 

 

メロディラインもまず自分では思いつかない音で、シンプルかつ超カッコよかったので楽しみながら1日で書ききってしまいました。 

普段の名作同のキレッキレなContemporaryの感じからはだいぶ遠い音が出せて満足しています。 

いつかそういう音は出してみたいと思っているので、その時はまた御世話になれればと思います。 

お誘い頂き、ありがとうございました! 

 

〈↓↓宮崎雄也さんのブログ↓↓〉

 

 

★配信開始しました!→コチラ