名大作曲同好会

“音楽”を創る。発信する。

「あなたも作曲家になろう」ふらったぁ☓榊山大亮

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あなたも作曲家になろう

当会の会議でその企画が上がった背景には明らかに中国武漢に端を発する新型コロナウイルスの影響があった。
そしてその流行の中、エンタメは次々に中止に追い込まれ、当会の企画もどんどん予定が狂って行ってしまっていた最中だった。

 

「メロディを公募してみんなで編曲をしてみよう」

 

そのアイディアは自粛生活が一日の基本となった世の中に、今現在のあらゆるネットツール、在宅ツールをもってエンタメを提供するのに相応しかった。
問題はその公募にどれだけの人が応じるかだ。

 

果たしてその心配は杞憂だった。

 

結構な曲数が公募に応じてくださり、アルバムとしての体裁をなすには充分、いやアレンジャーの人数が少し足りないくらいになったのだった。


ふらったぁさんと名乗る方からは、ちゃんとABサビの形式になったメロディにかんたんなドラムのリズムが付けられた音源が送られてきた。
察するにこれまでにDTM的な作曲経験があるのだろう。

 

ふらったぁさんTwitterアカウント

https://twitter.com/flflFlater

 

原曲はスクウェアな8Beatでちょっとゲーム音楽風味のものだったが、私はこの作品にどう接するべきだろうか。


私の世代ぐらいまでの音楽人は、修行時代にお客様のリクエストを聞いてその場で演奏するという経験が必ずと言っていいほどある。
ということは、ジャンル問わずかなりの曲をソラで演奏できるようにしておかねばならないのが前提になるのだが、
今の世代と違ってこの頃の音楽人は、ガチでみんな音楽が好きで始めたので、殴られまくっても辞めようなどとは思わない人間ばかり。
だから、多くの曲をなけなしの金で買ってコピーするなんてことは日常茶飯事でやっていたのだ。

 

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フォークといえばギター

今でも私より年配のフォークシンガーがテレビなどで集まると、誰かが一節歌い始めれば、ギターを持った連中が一斉に伴奏を演奏し始める。
歩くディクショナリーと言っていいほど彼らの頭には曲が詰まっているのだ。

 

その際たる人として、かつてテレビ番組で次々に飛び出す曲のすべてに対して、たちどころに伴奏をしてみせるアコーディオン奏者がいた。

その人の名を横森良造といった。

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横森良造

ああ懐かしいと思う人は同世代以上の人だろう。

残念ながら8年ほど前に鬼籍に入ってしまわれたが、彼こそその時代の音楽人のそれを示すのにぴったりなものはないと言える。

とにかく我々はそうやって下積みのうちにありとあらゆる楽曲を知り尽くしていって、それらのスタイル、マナーを体に叩き込んだのだ。


この企画は私にとって、まさにその頃培い、今も増やし続けている引き出しを開ける行為に他ならなかった。


話をふらったぁさんの曲に戻してみよう。

 

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二台のピアノ

私はこの曲をピアノ二台によるJazz風味の曲にしてみようと思い至った。
なぜなら、原曲を聴き込んだときにメロディの勢いや構成に比して、表情が乏しく印象に残る特徴点が薄いと感じたからだ。

 

逆説的に言えば、それさえ獲得してしまえば確実に印象的で個性的なものになると言えるのだ。

 

そこでJazzの引き出しから、ブギとビックバンドのスタイルを取り出し、ピアノなのでわずかにカプースチンのマナーを加えてみることにする。

 

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譜例1

このバッキングはビックバンドをイメージしている。
サックス隊のシャバっとしたラインにウォーキングベース、ホーンが入ってキメというオーソドックスなスタイルだ。

 

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譜例2

この辺りはブギウギっぽい強めの押しとビートを全面に出し、スタイルこそ踏襲しないがマナーの断片を用いている。

 

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譜例3

ソロワークにはやはり私が元来クラシックの作曲家なので、クラシックの世界でJazzのスタイルを用いた作曲法を採ったカプースチン風味のものを使うことにした。

 

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譜例4

またイントロにもカプースチンの和声進行とヴォイシングを施している。

 

 

こうやって原曲に化粧をするようにJazzの様々なスタイルを介入させて、彩っていくことでこの曲は完成した。

 

これは公式アカウントのこの楽曲に関する抜粋と宣伝記事である。

 

しかし反面そのやり方では原曲からは離れてしまうんじゃないかという意見があることも理解はできる。
では逆に原曲そのままでアレンジとは言うのだろうか。


芸術としてアレンジをするときには様々な方法があるものだ。
その中でも今回は、原曲を尊重する方法を採用したので、その意見はアレンジというものに対する知識が足りない指摘と断じざるを得ない。

 

結果できあがったものは、原曲のもつ魅力やイメージを壊してはいないはずだ。
そこにコーディネートを加えて仕上げたことで、とても洒落っ気をもったものになったのではないかと思う。

 

なお原曲にはタイトルがなかったので「Untitle Duo」というタイトルを付けさせて頂いた。

 

最後に原曲を提供していただいたふらったぁさんに深い感謝を表し、多くの人にこの曲が楽しまれることを願って、今回の記事を終えたい。

 

なおアルバムの全曲はYouTubeで先行配信しているので、ぜひお聴きいただければ。

www.youtube.com

 

 

★配信開始しました!→コチラ