はじめまして、Southernです。
「誰?」ってなる人も多かろうと思いますが、2018年に"Inoyu"として加入させていただき、今年に入って現活動名に改名した者です*1。
まだまだ作曲家としては未熟なところばかりですが、今後ともよしなに。
そんな私の改名前最後の活動が、2024年4月に配信開始された東方アレンジアルバム『Enigmatic Tributes』。私が初めて経験した「楽曲アレンジ」の企画になります。
名作会の一員として曲を出すのはこれが3回目になりますが、提出した3曲はいずれも最終的には満足いく仕上がりになりました。
『待ちわびた逢魔が時』に至ってはなんすい会長からもお気に入りだと言われて舞い上がったりしています。
自分で宣伝すんのちょっとはずかちい……
ただ、この企画への参加は最初かなり迷っていました。
その理由が、「アレンジってどこまでやっていいの?」という根本的なものがわかっていなかったから。
この悩みは私だけでなく、初めてアレンジに挑戦してみる作曲初心者の方が結構直面する問題だと思います。
当ブログを読まれている方々はもうとっくに通り越したレベルの話かもしれませんが、作曲初学者が思ったこととして、どなたかの救いになればと思い書かせていただきます。
参考音源を探してみたが……
さて、私が思いつく楽曲アレンジの例はゲームミュージックばかりです。
例えばモンスターハンターシリーズのメインテーマともいえる『英雄の証』。
下側『MHXX Version』のほうは、上側のオリジナル版をアレンジしたものと言い切って良いと思います。ちなみにXX Versionは結構好きです。
ほかにはドラゴンクエスト序曲とか。
※下の動画2本は序曲の部分から再生されますのでご安心を。
上記2曲を比較して、「イントロは違うけどなぁ……アレンジって言えるのか?」って思った人、私だけではないと信じてますよ。
で、「アレンジってこの英雄の証くらいやらないといかんのか?」と思った自分がいたわけです。
加えて私は原作が至高だと思っているフシがある厄介オタクなので、なかなかうまいこと手が出せないんじゃないか? と不安になっていました。
手元にいい資料があった
……そんなこんなで悩んでいたところ、ふと「そういえばアレンジアルバム1枚持ってんな」と思い出しました。
それが、同人サークル"MintJam"が2009年に頒布した『Vivid Colors』。
ジャケットにも書いてあるとおり、ゲームブランド"Key"の作品に使われた音楽のトリビュートアルバムです*2。
すでに絶版のようなのですが運良く中古品を見つけ、購入していました。
そんなアルバムの収録曲のひとつである、『AIR』主題歌の『鳥の詩』を聴き比べてみました。上が原曲、下がMintJam版です*3。
全体的に雰囲気がガラッと変わっているという感想を私は持ちました。
同時に最初に聴いたとき、「すげえアレンジだなぁ。曲調が全然違うのに楽曲がすぐわかる」とも思ったものです。
……が、調べていると面白いことを発見しました。
知られざる真実
こちらはMintJam当時のメンバー3名が、Vivid Colors収録曲について解説しているページになります。
その中にこんな表記がありました。
これカバーらしいわ。
初めて見たときに結構驚いたのを覚えています。「こんなにオリジナルのフレーズあるのに!?」みたいな。
ただ読んだうえであらためて聴き返してみると、一聴しただけで原曲がわかるという展開はやはりカバーの類に入ってもおかしくない……のかなぁ、なんて思ったりもしました。
上記の動画では聴くことのできないMintJam版『鳥の詩』のサビ部分についても「和音をなんの楽器の音で発しているのか?」程度の違いが多く、『英雄の証』のようなリズム・和音の変更も少ないんじゃないかと気づけもしたのです。
でも、自分の基準は
という感じで『鳥の詩』以外の収録曲もひと通り聴いてみたのですが、やっぱり自分の中では「これカバーじゃなくて、アレンジだよなぁ………」という思いが捨てきれませんでした。
そもそもですが私の認識では、
- (転調を除き)限りなくアレンジャーのエッセンスを排し原曲通りになぞったものがカバー
- 多少でも元の曲にないフレーズが入っていればアレンジ
……のつもりでいました。
そういった意味では、元の曲と比較して「コード進行や和音が異なる箇所がある」というレベルの差異があるだけで、私自身に生まれた「原曲から離れている」という認識がどうしても拭えなかったのです。
最終的には、その考えを逆手にとって「カバーもアレンジの一種」と思うようにしました。
そして私の施したアレンジはこの考えをもとに、「メロディラインや和音の構成の改変は最低限」「演奏する楽器を変更」程度に収めた、私の認識では「カバー」にあたるレベルのものにしているつもりです。
そして、カバーはアレンジの一種なのでこれはアレンジということになります。
……「当たり前すぎて草」と笑う方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
しかし当初「大幅なアレンジは、事実上新たに作曲しているのと同じなんじゃね?」とまで思い込んでいたのが、この割り切りによって「じゃあこうしたらええやんか」と筆が進み始めたのもまた、私にとっては大事なことでした。
あるいは、結局のところ何事もシンプルに考えるべきだととることもできるかもしれません。「原曲と違うところがある? バカ野郎、そいつがアレンジだ!」くらいでちょうどいいのかも。
いずれにせよ私自身の「アレンジ」への認識がこうして改められたことで、今までで最多の3曲を企画に提出することができたという点においては、私自身の成長を阻害していたモノのひとつが判明し、それが解消されたことを示しているように思います。あと初めて締切を守れました。会員の皆様、いつもすみません。
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ということで、初学者の楽曲アレンジにまつわる話でした。
リリースから4か月経過してしまいましたが、『Enigmatic Tributes』、個人的にも結構思い入れのあるアルバムです。全く聴いていないという方はこの機会にぜひどうぞ*4。
そしてこの記事が、かつての私と同じようにアレンジに迷う皆様の救いになればうれしく思います。
それではまたいつか。