こんにちは、なんすいです。
最近打楽器アンサンブルを書く練習をしています。
その習作を兼ねた新曲2曲を名作会YouTubeチャンネルから発表したので、紹介しようと思います。
「月食(eat me) -for percussion duet」
・身近な楽器としてスネアドラム、シンバル、トライアングル
・身体を使う楽器としてフットスタンプ、ボーカル
という三層構造な編成になっており、適宜持ち替えしながら二人で演奏出来るようにしています。
打楽器アンサンブルとしては、ボーカルパートがあるのが珍しいかもしれません。しかもコーラス、歌詞のある歌、ボイスパーカッションとあらゆるボーカルをやらせています。
これは、「打楽器奏者たちは日々特殊奏法、楽器魔改造などが当たり前に横行する中を生き抜いてきているため、楽譜に書いてあることは大体やってくれる」という榊山先生の情報を鵜呑みにしたことによります。*1
なお、動画ではボーカルパートを初音ミクに歌わせていて、人間の声では無いので全体的におもろい感じになってしまっています。
月のような女の子
「月食(eat me)」は、知人のある女性をイメージして作りました。
好きな人とかではなく、むしろどっちかというと嫌いなタイプで、3ヶ月前くらいにひょんなことから一方的に罵倒したきり会っていません。連絡も取っておらず、SNSで断片的に近況が流れてくるのみです。
知人について詳細に書くことはなかなか出来ないんですが、とにかく女性的な図太さと脆さに満ちた性格の持ち主です。
それを私は「月のような女の子」と喩えてみて、彼女が周囲に影響しながら日々を過ごす様子を曲に映してみようと試みました。
大体の設計図はこうです:
①彼女を表すモチーフをうっすら曲全体に散りばめる
②身近な楽器、大衆的なリズムなどのモチーフを使う
③無神経さと脆さの共存の表現として、極端で荒削りの曲調で構成する
④断片的に彼女を捉えている表現として、空白(Stop)を多用する
特に③④を合わせたことによって、「複数の極端な曲調が空白などの断裂を伴いながら、テレビのチャンネルを変えるようにパラパラ変化していく」という構成が導かれました。
このような構成を持つ作曲家として、藤家渓子の作品を参考にしました。(なんならモチーフとして使いました)
彼女も女性性を押し出した曲を多く発表されていますが、対象の年齢的な成熟度からか、「月食(eat me)」の方がより固く落ち着き無い印象に仕上がっています。
「Diana -for marimba duet」
そして、もう一曲はマリンバ二重奏です。
「月食(eat me)」の一部を発展させた、普通にポップかっこいい感じの短い曲です。
この曲の役割は、「月食(eat me)」のコンセプトを一面的なものにしないということです。
一昨年開催した名作会のコンサート「名古屋の作曲家たち」では、同じ「初虹」というタイトルの曲を二曲演奏しました。
これは、元々田代萌さん作曲の「初虹」原典版があって、それを二通りに編曲したためです。
一方は田代さんの原曲のイメージを素直に発展させたもの、もう一方は編曲者(榊山先生)独自のコンセプトのもと大幅に改造したものになっています。
「初虹」の場合は二つの間でコンセプトは全然違ったわけですが、同じことを同一のコンセプトのもとでやってもいいんじゃないかと思い、今回二曲を同時に作って発表してみました。
あるコンセプトがあったとして、そのもとにただ一曲だけが作られた場合、方向性がただ一つに決まってしまう。そこで全然表現の違うものを合わせて出すことで、一方向的な主張の無いコンセプチュアル・アートになるんじゃないか。
例えれば、サバ寿司を食べながら水族館で泳ぐサバを見る、みたいな。(伝わってます?)
今までも実は、過去の曲で使った主題を変形しながら新しい曲に使い回していく、という方法で似たようなアプローチをずっと試みてきていたんですが、今回はその流れにある新しい試みをやってみたわけでした。
将来ポップスを勉強したら、月食~デスメタルバージョン とかも出そうかな。
打楽器アンサンブルおもしろい
という感じで、打楽器アンサンブルを書いてみている日々ですが、打楽器の曲を書くのは他の弦楽器とか管楽器の曲を書くのとは全然違う世界で面白いなーと感じています。
あと楽器や奏法がやたら多いので、どれだけそれらの音を知ってるかによって書ける幅が全然変わってきてしまう。生涯掛けてもインプットが事足りる日は来ないでしょう。
一方でこうした性質上、書けば書くほど自由になれるジャンルだとも思うので、今後も色々書いてみようと思います。次回作にご期待下さい。
*1:本当はもっと恥ずかしい指示とか記譜してみたかったですが、今回は常識的な範囲に収めました。今度やります