名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

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悪魔の第七旋法 "ロクリア" の封印を解く 第1話「完全5度の“桎梏”」

~前回までのあらすじ~

主和音に3全音を含むため嫌われてきたロクリア旋法だったが、トイドラがあることに気付いたのだった。

それは果たして……???

 

 

 

5度堆積のリディア

さて、ロクリア旋法の真の可能性に気付くためには、まず次のことに気付く必要があります。

ロクリア旋法は、主音から完全4度を7回堆積した音をすべて含む音階である。 

 

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これに対し、もう1つの完全音程である完全5度を7回堆積した音階はリディア旋法です。

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リディア旋法は、現代にいたるまで使われ続けている長旋法の祖であることが知られています。

すなわち、リディア旋法の特徴音である第4音が、下属音を取れるように下方変位した結果として長旋法が生まれた、というわけです。

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リディア旋法は、構成音の全てが主音に対してノン・アヴォイドであることも知られており、まさしく根源的な旋法です。

事実、リディアを作るために用いられた完全5度は、和声進行の原則として現れてきます。

D進行やツー・ファイブといった基本的な進行は、どれも根音が完全5度下行(完全4度上行)する進行ですよね。

また、あまり知られていませんが、実は和音の構造自体にも完全5度の原則ははっきりと表れています。

皆さんがよく知っている和音の形と言えば、これですね。

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こういった長・短3和音とその4和音形体(メジャー・7th、マイナー・7th)は、よく見る和音の形です。

こういった和音について、

「和音は3度の堆積でできており……」

などと紹介している理論書やサイトが散見されますが、じつはこれは誤りです。

見た目は3度堆積に見えますが、実際には

  1. 主音と第3音との音度関係(長和音 or 短和音)
  2. 主音・第3音それぞれからの完全5度堆積(3和音 or 4和音 or それ以上……)

以上の2つのファクターから和音は構成されています。

つまり、しいて言えば和音は5度堆積からできているのです。

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その証拠に、和音が3度堆積なら標準的な和音になるはずの○7(属和音)・○Mm7といった和音は、一部の限られた用法でしか出てきませんよね。

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衝撃の事実

以上のことから、こんな衝撃的なことが分かってしまいます。

僕らはこれまで、3度堆積された和音の形D進行して五度圏をグルグル時計回りする和声進行を、自明のものだと思っていました。

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一般的なD進行(ツー・ファイブ)

これが自明だからこそ、この自明の構造を持たないロクリア旋法を嫌っていたわけですよね。

しかし、こういった構造が全て完全5度というキーワードを持っており、しかも長旋法も同じく完全5度からできているということは…………

 

 

完全5度がないとダメって固定観念じゃね???

 

 

つまり、長旋法は完全5度の安定軸を持つように狙って作られた旋法なので、5度でしっくりくる構造を持っているのは当然です。

なお、短旋法も同じく完全5度の安定軸を持つように作られた旋法と言えますが、文量の問題で割愛するので自分で考えてみてね(適当)。

もっと話を推し進めれば、従来の和声は全体的に完全5度の構造を内包するように人為的に作られてるってことです。

だとすれば、

他の安定軸を持つような旋法はねえの???

って話になりますよね???

 

 

 

 

あります!!!

 

 

4度堆積のロクリア

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四度圏音楽の和音の形と和声進行ができちゃいました…………。

 

~第2話に続く~
nu-composers.hateblo.jp