ついにこの記事を書く時がやってまいりました!
といっても、読者の方々は何のことやらわからないでしょう。
皆さまおはこんばんにちは、名作同の会長トイドラこと冨田悠暉とは私のことですが、実は私の音楽研究における主要な領域こそが、このロクリア旋法なのです。
本連載ではやや理論的な話をしていくつもりですので、理論家の方々はぜひ見ていってください。
今回は第0話ということで、
「ロクリア旋法って何????」
という人のために基本的なロクリアの常識をお教えしたいと思います。
先に結論から言っちゃうと、
というのが今回の記事の要旨です。
上の1~3をすでに理解してる人はこの記事を読む必要ないので、来月の記事更新を全裸待機しててくださいな。
今日は初歩的な内容に触れていきましょう。
ロクリア旋法とは?
まず、そもそもロクリア旋法とは何でしょう?
一言で言うと、ロクリア旋法は音階(旋法)の名前です。
具体的にはこういうやつ。
一般的な音楽で使われる音階は、ほとんどの場合長音階・短音階のどちらかだけですよね。
しかし、実際にはそれ以外にも多数の音階があります。
ヨナ抜き音階や琉球音階、ブルーノートスケール、その他諸々……
挙げればキリがないですが、それぞれの音階が固有の雰囲気を持っていて、曲の全体や一部を彩っています。
そんな音階たちですが、音階の種類の中に教会旋法*1という大きなくくりがあります。
教会旋法は全部で7種類あり、すべて共通の特徴を持っています。
その特徴は、
- 7種類の構成音でできている。
- 主音の位置をずらせば、調号なしで記譜できる。
というものです。
特に2.が重要で、実際に上の図では7種類すべてが調号なし(#も♭も使わない)で記譜されていますね。
言葉を変えれば、ピアノの白鍵だけで弾けるスケールということです。
そしてここに……
ロクリア旋法も含まれています。
ロクリア旋法は教会旋法の一種なんですね。
ちなみに、教会旋法のうちイオニア旋法・エオリア旋法は、実はそれぞれ長音階・短音階と全く同じ音階になっています。
しかし、嫌われるロクリア
さて、そんな教会旋法は、性質の上で使いやすいので多くの民謡や古今の音楽の中で使われています。
例えば、「スカボロー・フェア」はドリア旋法で書かれた曲です。
また、有名な「ハンガリー狂詩曲」の冒頭部分はフリギア旋法だったりします。
しかしながら、そんな教会旋法の中で唯一日の目を見ない旋法があります。
それこそが、皆さんお気づきの通りロクリア旋法なのです。
というのも、ロクリア旋法を使うとどうしても響きがキモくなってしまいます。
なぜなら、ロクリア旋法は教会旋法の中で唯一
主音と第5音の音程が完全5度ではない
からです。
ロクリア旋法以外の6つの音階では、主音-第5音間の音度は完全5度です。
が、ロクリアの場合のみそれが減5度(=3全音)になっていますね。
そのせいで、主和音(Ⅰ)の中にも当然3全音が含まれてしまいます。
これはロクリア旋法にしか起きない現象です。
3全音は、あらゆる音度の中でも特に不安定な音度です。
よって、ロクリア旋法は主和音で安定することができず、安定軸を持たない浮遊霊のような音階になってしまうのです。
“5度”の呪縛
そういうわけで、歴史の闇に葬られてしまったロクリア旋法。
現代になっても、ロクリア旋法を体系立てて使用する方法はありません。
…………いや、ありませんでした。
私トイドラが、次のことに気づくまでは。
……西洋音楽って不文律として完全5度の安定性を要求してくるけど、
ロクリア旋法の安定軸って完全4度じゃねえ?
~第1話に続く~
*1:厳密には、音階と旋法は別の意味を持つ言葉です。ただしここでは、便宜上同じものとして扱っています。