名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

コンテンポラリーの回廊 俺の視聴部屋4

コンテンポラリーの回廊

 皆様あけましておめでとうございます。
 旧年中は当ブログ、そして何より名古屋作曲の会と私自身に多くのご指導ご鞭撻をいただき有難うございました。
 この会の顧問になって数年、会長も変わり次の局面を迎えた昨年は、残念ながら当会としては満足の行く活動内容とは行きませんでした。体制の変化に伴い、徐々にヴィジョンと企画の着地に失敗することが多かったのが主たる原因と考えますが、今年はそんな雰囲気を吹き飛ばし大飛躍をしてもらいたいと考えております。まだ具体的な段階ではありませんが、支部の結成、事務局の設置、さらに外部協力者の方々と色々ご一緒させていただき、会にも大きな刺激になれば良いなと感和えております。

 どうか本年もさらなるご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 さて本年のブログ、私の担当回としては最初の回となります。やはりここはこの「コンテンポラリーの回廊」シリーズで始まり、近年のコンテンポラリーの動向をどこよりも速くキャッチし、日本の文化度の後退を止めたいとの思いを新たにしたいと思います。では早速近年書かれたユニークだと私が感じた作品を聴いていきたいと思います。

 

Alex Temple

1.This Changes Everything!/Alex Temple


 はじめにご紹介するのは1983年アメリカ生まれの作曲家、アレックス・テンプルの書いた曲です。アレックス・テンプルは写真でも分かる通りLGBTQをカミングアウトしており、Qとしての活動に力を入れている作曲家です。

 彼女はイェール大学に学び、作曲はカスリン・アレキサンダー、マシュー・サッターに師事しており、系譜としてはポスト・ミニマル的なものと言えますが、作風はミニマリズムではなくPOPSとのクロスオーヴァー微分音による音響に関心が置かれているようです。
 この曲はソプラノ・サックスの独奏に打ち込みによる伴奏がつけられ、Jazzのイディオムを柔軟に取り入れた上で、微分音によるゆらぎを加えるというクラシック離れした内容です。非常に現代的でDTM的な視座に立った個人的な作品と捉えられますが、そこらのDTMerと名乗る人々とはやはり土台の力が全く違います。日本でパソコンのケツを眺めてシコシコやっている自称音楽家も、このくらいの精度と解像度を持って音楽に臨んでもらいたいとの思いを新たにする刺激的な作品ではないかと思います。
 え?何が違うって?わからないあなたの耳はもうカビで詰まっているのでしょう。対位法の技術が詰まった作品ということにすら気が付かないようでは先が思いやられますね。さてそんなワードをヒントに聴いてみましょう。

 

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Demian Rudel Rey

2.Cuélebre/Demian Rudel Rey


 次にご紹介するのは1987年アルゼンチン出身デミアン・ルーデル・レイの作品です。作者はアストル・ピアソラ音楽大学サンティアゴ・サンテロに師事し、その後は一貫してエレクトロニクスを活用した作曲を行っています。
 その音楽は細かい断片を各楽器に演奏させ、一種ジョン・ゾーンのような無軌道で疾走する断片を敷き詰め、徹底的に電子加工して聴衆に届ける手法を用いています。こういった作品は今に始まった手法ではありませんが、加工の方法がギタリストでもある彼の側面を生かしたものとなっており、一般的なライブエレクトロニクスの域を遥かに超え、楽器の実音を殆ど残さない域に達しているのが現代的ではないかと思います。音楽自体は難解な響きに包まれていますが、文明の利器をここまではっきりと肯定している音楽は、アレキサンダーシューベルトの作品を思い出すほどです。またVJ的な要素をライブに持ち込むインスタレーションアートとしても極めて独創的と言えるでしょう。

 

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Adrianna Kubica-Cypek

3.Reflection Nebulae/Adrianna Kubica-Cypek


 3曲目はポーランド出身の新鋭作曲家アドリアンナ・クビツァ=ツィペックの書いたオーケストラ曲です。タイトルは「反射星雲」の意味で、宇宙に輝く茫洋とした星雲の一形態のことのようです。
 クビツァ=ツィペックは1996年にポーランドに生まれ、デンマーク王立音楽アカデミーでニールス・ロスリング=ショウのマスタークラスを卒業、その後もアレクサンダー・ラーション、ヴォイチェック・ステピエン、デイヴィッド・チャップイス、ルカ・アンティニャーニに師事しています。現在では国際的評価が大きく高まり世界各国から委嘱を受けるようになり、人気作家として頭角を現してきています。
 この頃の音楽ではもはや、調性、無調、汎調、復調、多調、旋法性、倍音性、騒音性などは音楽を分ける区分ではなくなって来ており、彼女の作品も語彙選択が自由に行われています。この曲ではよく鳴り響くポイントとなる鋭い音が、茫洋と反射され溶け込むような響きの残滓になってゆくというはっきりした描写が続きますが、調的な響きと倍音的響きの混在が明らかであり、それが違和感なく美しく調和しています。大きな視座と直感的ですらある感性が結びついたまさに今を表す作風だなと感じたので、ここに紹介してみようと思います。

 

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Jannik Giger

4.ŒIL/Jannik Giger


 4曲目はスイスの作曲家ヤニク・ギーガーの作品をご紹介します。昨今のコンテンポラリー作曲家は作曲行為だけで何かを表すだけでなく、複数の芸術ジャンル、表現活動にまたがって活動することが多くなっており彼もまたそんな一人です。
 1985年にスイスのバーゼルに生まれ、現在もそこを拠点に活動する、作曲家・ビジュアルアーティストです。
 ベルン大学でダニエル・ヴァイスバーグ、ミカエル・ハレンバーグに師事、更にバーゼル音楽大学でミシェル・ロスとエリック・オーナのマスタークラスを修了しています。その後メディアアートを中心に作品を発表しており、映像と音楽との関係を不可分にした表現を中心にしているようです。
 今回は純粋な弦楽四重奏の作品を紹介しますが、聴けばすぐにその作風の特異性に気がつくことと思います。一見すると古典音楽のような響きなのです。しかしなにか歪でレコード変調でもしたかのような不思議な感覚にとらわれることでしょう。これは調性や微分音やゆらぎのようなものを複数の言語の統合として認識し、複雑な楽譜を通じて不思議な音体験として聴衆に正確に届けているためです。倍音管理がしっかりしているため、これら微分音と調性が無理なく結びつき、ユニークな音楽となっています。なお表題の意味は「目」。非常に曲内容とともに意味深なタイトル付けだなと感心します。

 

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Mithatcan Öcal

5.Alessandro Perevelli/Mithatcan Öcal


 最後に紹介するのはトルコの作曲家ミタトカン・エカルの作品です。

 私は常々このブログや他媒体を通じて現代トルコの作曲家はいずれ世界のコンテンポラリーの中心を築くだろうと申し上げておりますが、まさにこの曲を聴くとその思いを新たにします。トルコには非常に豊かで、またかなり細かい微分音を含む伝統音楽の歴史があります。このあたりは当会の岩附会員の専門分野ですので、彼の記事を参照されるとよいかと思いますが、この伝統のせいか先天的に音の分解能が高いという特色があるように思います。
 先程来書いてきた通り、今の作曲家はあまり音楽語法について一つの言語に拘泥せず、それらを如何に混ぜるかが作風の決定的な部分となっています。その中の要素にマイクロトナリティ、つまりは微分音の復活が著しいことは、トルコの作曲の絶対的な後押しになっていると言えると思います。9分音を文化に持つ彼らは、そもそも美しい微分音というものを幼少期から染み込ませているとも言え、これが倍音を中心とした響きを作る上で絶対的なイニシアチブとなっているのです。
 エカルは特にアナトリア民謡や、中東の伝説などに興味の中心を置き、現代においてこれら古典がどのように聴かれるかということを作曲のテーマにしています。このため先程の曲もそうだったように、様々な語法がそれら民族素材の上に並べられ、西洋音楽史上では出現し得なかった旋法音楽に繋がっているわけです。
 エカルは1992年トルコのイスタンブール出身。ミマール・シナン国立音楽院でアフメト・アルトゥネル、メフメット・ネムトルに師事しキャリアの最初の頃から、伝統音楽への傾倒を見せる作風を確立、現在国際的にも注目される一人になっています。
 この作曲家の取り組みについてはそのうち「コンテンポラリーを聴く」シリーズで詳細に取り上げたいなと思っているので今回は多くは語らず、まず彼の音楽を堪能してみてください。ベートヴェン好き、民族音楽好き、そして劇伴好きにも刺さる内容と思います。

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 いかがだったでしょうか。新春を彩るにふさわしい最新現代音楽の世界は。そして日本の遅れっぷり、忘れ去られっぷりとこの国における文化理解度の低さをこれほど簡単に味わえることは少ないのではないでしょうか。
 陽出づる國、経済大国と浮かれてるうちに、何も学ばず、楽を覚え、権利だけが先に行き、努力も研究もせず自分の好きなものだけ食べ続けたら、それはこうなるのは必然でしょう。2024年はどんな音楽が世界から生まれてくるか、どんな表現に出会えるか楽しみですね。願わくばそこに天才的日本人の存在がほしいですが、現状では望み薄なのかなと言わざるを得ません。少なくとも私とその弟子たちは、こういったフィールドへの研究を絶やさず、小さくまとまってほしくないものだなと思うばかりです。

 

 ということで新春から強めの刺激と厳し目の論説で始めてしまいましたが、皆様に置かれましては引き続き感染症にもお気をつけになり、この年を良い年になさってください。また当会の活動にもぜひご注目ください。

 

ストリートピアノ企画各曲解説

明けないに1万掛けてましたが、明けましたね。

おめでとうございます。

なんすいです。

名作会今年もよろしくお願いします。

 

 

さて、我々名作会より、今年の年明けと同時に「ストリートピアノ企画」の公開を行いました。

皆さんご視聴頂けたでしょうか。

 

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ストリートピアノを使って演奏することを前提としたストリートピアノのための楽曲を、3人の会員が書き下ろしました。

 

KIRITORI~by the media's efforts to sabotage the nation through street pianos /榊山大亮

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榊山先生が制作したこの作品は、原曲の演奏にさらに映像編集を施した、メディアアートになっています。

 

「私はだれ?どこから来て、どこへ向かうの?」…というテロップから始まり、終始シリアスな雰囲気を纏ったドキュメンタリー風に映像が仕上げられています。

一体この映像にはどういう意味が込められているのでしょうか。

 

 

ここで作品の英語タイトルを訳してみると、「ストリートピアノによる、国家を妨害するメディアの"KIRITORI"」となります。

なんだか不穏ですが、このタイトル自体が本作品の種明かしになっています。

 

実は、意味ありげな映像には本当は何の意味も無く、ただそれっぽさを演出しているだけのものです。

意味の無い素材達を切り取って繋げ、恣意的に編集する「マスコミの手法」メディアアートとして再現されているのです。

 

マスコミ

 

ストリートピアノはもともと、街中での文化的な営みの機会として世界中に広まりました。

誰でも弾くことが出来、その中で文化的な交流が生まれることを期待されてきました。

 

しかし、現状はどうでしょうか。

 

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ピアノの弾ける人達がこぞってストリートピアノでの演奏動画をYouTubeにアップし、人気を博しています。

もはやストリートピアノといえば、こういう風に上手い人が動画を回して流暢に流行りのポップスを弾いてみせる、といったイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

「誰でも弾く」ものではなく「弾ける人が弾く」ものへ、「何でも弾く」ものから「人気の曲を弾いてウケる」ものへと、ストリートピアノの役割は変貌してしまいました。

 

すなわち、当初の目的を果たせなくなったストリートピアノは「もっともらしく意味ありげな無意味」の象徴となった……ここに、マスコミの"KIRITORI"の手法を重ねるというのが、本作品のからくりになっているわけです。

非常に榊山先生らしい、意地悪なコンセプトです。

ストリートピアノの演奏が専らYouTubeで動画として拡散されていることに対比して、メディアアートの形で本作品が作られているという点も、皮肉ポイントです。

 

演奏者の私自身、最初からコンセプトを聞いていたので、演奏の際は本当に何も考えずに譜面の音符を弾いていただけでした。

映像として見ると、なんだか神妙な面持ちで弾いているように見えてきますが、それは弾くのが難しかったからです。素人の私でも弾けるようにだいぶ少ない音数で作って頂きましたが、いや、ピアノって難しいんですね。

私の演奏のぎこちなさ、そして風貌の謎さがより意味ありげな感じを醸していて、作品により良い効果を出せていたようで光栄です。

 

 

 

空間デザイン/冨田悠暉

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冨田悠暉(トイドラくん)作曲の「空間デザイン」。

これを最初から最後まで飛ばさずに聴いてくれた人は何割くらいいるんでしょうか。

 

1ページに収まるくらいの短くシンプルな譜面を、無限に繰り返し弾くという内容。

私自身、最初に楽譜をもらった時はかなりギョッとしました。

本曲を聴いてくれた人は、なんかずっと同じようなことばっかり弾いてるなと思ったかもしれませんが、本当にそうなのでした。

 

本曲の背景には、エリック・サティ家具の音楽という概念の存在があります。

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家具の音楽」は無意識のうちに聴かれながら空間の心地良さを演出するという、アンビエント的な音楽の構想といわれています。

しかし、そうして作られた楽曲はいずれも癖があり、あまり無意識的に聴けるような内容ではありませんでした。

実際、その初演は観客が音楽に聴き入ってしまったため失敗に終わったとされています。

 

さて、この「家具の音楽」を踏まえた上で、本作品は機械的な内容をひたすら繰り返すという、まさに道具のような音楽を鳴らし続けるものです。

静かな騒音を響かせ続けるピアノ、これを人々が意識に上らせまいと無視することにより、ストリートピアノは環境に溶け込みます。「逆・家具の音楽になりうるのです。

 

本作品は終始左腕で幅広のクラスターをpppで響かせ続けます。それは明確なビートにすらならず、機械のノイズのように静かに単調になり続けます。

コンセプト通り、譜面も演奏の動作自体も家具的で、静的な異様さを孕んでいるのが私的にとても好きです。

 

 

さて、榊山先生の作品とトイドラくんの「空間デザイン」は、どちらもストリートピアノが抱える重大な矛盾を指摘しています。

すなわち、公共空間に自由さを持って設置されたはずのものが、娯楽的で異質な存在としてある現状。本来の存在意義を見失って社会の中で浮遊しているという矛盾です。

この点で、2人の作品は非常に似たコンセプトを持ち、異なる手法でその矛盾に迫っているものといえるでしょう。

 

一方、榊山先生はストリートピアノがYouTube等で拡散された動画として消費されている点に目を向け、トイドラくんはストリートピアノの本来想定された聴衆の方を意識して、それぞれの作品を作り上げたという相違点も明確にあります。

 

どちらもストリートピアノの現状に異なる目線から切り込んだ、厳しいコンセプチュアル・アートになっていました。

 

 

 

ピアノ・イドラ/なんすい

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正直、先の2人と全然コンセプトの毛色が違ってドキドキしていました。が、それは割と当たり前の結果だったと言えます。

何故なら、本企画は私が発案し、私が全曲演奏したいと買って出たものだったからです。

 

したがって、先の2人の作品はいずれも演奏者を含めた空間や映像全体にピントを合わせた作品になっていますが、一方で私の「ピアノ・イドラ」は、最終的に演奏者…つまり私にスポットライトが当たる仕組みになっています。

 

本作品では、「冷たい羨望」をキーワードに、ストリートピアノを使って所謂「地下アイドル」的な風景を作ることを目指しました。

聴衆の平たい眼差したちを含めた風景が、結果的に演奏者をアイドルたらしめるのです。

この演奏を通して、ストリートピアノ界の地下アイドル…「ピアノ・アイドル」を出現させるのが、本作品の目的です。


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私が演奏者である私のために作ったと言っても良い本作品の背景には、やはり非常に個人的な動機がありました。

人前に立った時の湿っぽい緊張感、自分がなれなかったものへの嫉妬心、遠く離れた分野で華々しく活動する人達への複雑な目線。

そうした感情が、去年とあるアニメを見たことがきっかけでより深刻に起こり、作品に残すことを迫られることになりました。

それが「ひろがるスカイ!プリキュアです。



最終回が近づいてきてとても寂しいです

 

このアニメに出てくる青色のプリキュア「キュアスカイ」は、今の所私の中で最もアイドルです。

最高にかっこいくてかわいくて真っ直ぐで向う見ずで、私が絶対になれない性格をしています。

キュアスカイを見るたびに心が洗われ、同じくらいまた心が濁るので、毎回プラマイゼロになっています。

 

そんなわけで、本曲に使われているモチーフはほぼ全て「ひろがるスカイ!プリキュア」のOPメロディや変身シーンのBGMから取られています。

(本曲は「ひろがるスカイ!プリキュア」の二次創作と言ってしまっても過言ではありません、)

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本作品「ピアノ・イドラ」は私をプロのピアニストにはしてくれませんが、アイドル性の本質にある濁った仕組みを描き出してくれる装置として機能するのです。

 

今一度他の作品と比べてみると、ストリートピアノが演奏されている空間自体に作用するという点では、トイドラくんの作品とより近いと言えそうです。

というより、むしろ榊山先生の作品の視点の特殊さがより際立ったという所でしょうか。

 

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以上3曲、変わったテーマの企画であっただけにいつもに増してコンセプチュアルな作品が集まりましたが、それぞれ全然異なるアプローチのものになっていたと思います。

 

これら3曲の楽譜は全て近日無料公開する予定です。どれも楽譜で見るとまたとても面白いので、ぜひご覧頂きたいですね。

またこれらの作品に興味を持って頂けたなら、ぜひお近くのストリートピアノで演奏してみて下さい。公共空間をちょっとだけ揺さぶることが出来ます。

2023年よかった曲

[前書き]もういくつと数えることもない。なぜなら明日はお正月なのだから。

2023年の3月に私が東京行きの新幹線に置き忘れたイヤホンは、誰かに拾われ今頃どこかの警察署で保管されている。いや、もう捨てられたかもしれない。でももうそんなことはどうだっていい。おかげで半年間電車で音楽を聴くことができなかった私の耳は渇望のあまりついに知多半島を飛び出し、今や名古屋大学のすぐそばに住んでいるという。そばに居て蕎麦煮て。今日は大晦日なのだから。

私は聴いた音楽をその場でメモるとかプレイリストに入れ、濃縮還元するとかいう活動を年がら年中しており、それもついに5年というメモリアル・イヤーに突入した。メモリアルだから何だというわけでもないが、今年も今年で現代音楽〜J-POP〜個人制作まで異種格闘技空中技・寝技・打撃技乱れ打ちの様相を呈している。そしてそれをここに記す。このブログはプログラム通りならば12/31 19:00に公開されているはずである。はたして紅白歌合戦の最中にこんなブログを読むやつはいるのだろうか? しかしまあ紅白歌合戦の最中にこんなブログを見るやつのために私は一年分の記録を参照したのだった。そういう人も、そうじゃない人も、どうぞご照覧あれ。

 

目次

 

やばきゅん♡シューベルト / DIALOGUE+


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DIALOGUE+は女性声優8人組のグループです。プロデュースは全てUNISON SQUARE GUARDENの田淵智也が務めているようです。本曲「やばきゅん♡シューベルト」の作曲は広川恵一によるもの。広川は田中秀和もかつて在籍していたMONACA所属の職業作曲家で、アニメやゲーム音楽などを多数提供しているようです。ベーシストとしての顔も持ち、この曲ではその技が存分に発揮されています。また師匠は「もってけ!セーラーふく」などのアニソンを多数作曲する神前暁であり、師に勝るとも劣らない電波具合でもありますね。

 

SERENITARY 2.0 / Ben Nobuto


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Ben Nobutoは日系イギリス人の作曲家です。現代音楽に加えてジャズやインターネットカルチャー的なイディオムを感じます。今最も「現代」的な作曲家の一人と言っても良いでしょう。梅本佑利と仲が良く、彼がこういった精神性の音楽を実現しようとしているのも頷けます。
この曲もそうですが、全体的にカットアップ的な音響がとても印象的です。目まぐるしく変わるのに不思議と一貫性があるのがとても現代っぽい。切り替わる際にしばしばチャンネルを切り替えるかのような特徴的な電子音が挿入されるのもなんかポップで面白いです。

 

MAGICAL DESTROYER / 愛美


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OPとEDだけよかったクソアニメ「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」のOPテーマ。歌唱は声優の愛美。作曲はソロユニットAA=としても活躍する上田剛士です。彼は海外での評価も高いメタラーで、日本だとBABYMETALの「ギミチョコ!!」楽曲提供で有名でしょうか。ルーツにYMOを挙げているように、ただのメタルではなくデジタル的な無機質さが特徴だったりします。

 

Gospelion in a classic love / The 13th tailor


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同EDテーマ。なぜか音楽のセンスだけは異常に高くてむかつくアニメでした。

The 13th tailor吟(Busted Rose)名義でも作曲活動を行う羽柴吟によるソロプロジェクトです。吟名義だとアニメ・ポプテピピック周りの作曲がすべてそうなので、聴いたことがある人もいるかもしれません。そんな彼に好き勝手やらせた結果がこれです。JPOPの楽曲構造をバキバキに崩して文字通り好き勝手やってくれました。もっと好き勝手やってくれると嬉しいなと思います。

 

Scotoma / kou/kizumono


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kou/kizumono、またの名をkasane vavzedは東京出身のミュージシャンですがそれ以上のことはあんまりよくわかりません。とりあえずレーベルに所属せずすべて自力でやっていることは確かなようです。明らかにメタル出身なのは良いとして、そこにビルドアップやドロップなどEDM的な要素とハイパーポップががっつり加わり、歌っているのは可不と、現代インターネット・ポップスの流行りどころが贅沢にミクスチャーされています。混ざりすぎてもはやかっこいいことしかわからない。

 

Negaceando / Radames Gnattali


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Radames Gnattaliはイタリア系ブラジル人作曲家です。クラシックもポップスも幅広くてがけていたようで、この曲ではポップス方面での才が発揮されています。ジャズが基調となりながらもときおりクラシカルな香りがしたり、自身の出身であるブラジル音楽への目配せが効いているなかなかイカした小品だと思います。

 

鬼 remixed by 佐藤優介 / 吉澤嘉代子


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吉澤嘉代子はもはや押しも押されもしないシンガーソングライターなわけですが、相変わらずいいですね。原曲ももちろんよかったですが、佐藤優介の80年代風ポップアレンジが特にナイスでした。

 

シノワズリ / Babi


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Babiは日本の作曲家で、主にCMのBGMなんかを作曲していますが、やはりソロ活動が素晴らしいと思います。こんな感じで旋法性の強い室内楽調の楽曲が特徴です。長らくアルバムが出ていなかったんですが今年は久しぶりに新作(この曲が入ったアルバム)が出ました。その間にどうやら子供が生まれたようで、作られる曲の中に生活感が見え隠れするようになったのもなかなかほっこりするポイントかも。

 

The Fairy / Paavo


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Babiいいな~と思っていたら海外で若干似たような音を鳴らすバンドを見つけたのでついでに紹介します。Sofia Jernberg と Cecilia Persson 、ふたりの女性バンドリーダー率いる Paavoです。それしかわかりません。Paavoで調べるとパーヴォ・ヤルヴィ(指揮者)のことしかでてこないからです。

しかしこれはジャンルは何になるんでしょうか?一応ジャズのような気がしなくもありませんが......。

 

化石のうた / パスピエ


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パスピエといえば人気邦ロックバンドだったはずなのですが、ここ数年で売れ線っぽい曲を作る頻度が激減し、最新作ではこうなりました。

どうしてこうなってしまったのかは全くの不明なのですが、とにかく脱臼しまくったモダンジャズみたいな何かが展開されていきます。ところで今までの客層ってついてこれてるんでしょうか? マジで何がしたいんでしょうか? 私はこのまま続けていってほしいですが。

 

意外なことが次々に起こる / ZOMOZ


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ZOMOZはほかのすべての曲もかっこいいので四の五の言わずすべて聞いてほしいです。活動自体は今年はあまりやっていなくて情報があまりないんですが、たま~にライブはやっています。

肝心のこの曲ですが、リズムもコード進行もかっこよすぎます! 途中のビートチェンジもめちゃくちゃスムーズ。タイトルがキャッチーなのに意味不明、あと歌詞が意味不明。本当に意外なことが次々と起こる。

 

大仏ビーム / カラコルムの山々


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カラコルムの山々は下北沢を起点とするシネマチック・ロックバンドです。バンドのアカウントを見たらめちゃくちゃそのへんの大学生の軽音サークルみたいで吹き飛ばしそうになりました。

さて、肝心の「大仏ビーム」ですが、どう考えてもZAZEN BOYSとか向井秀徳に影響されまくっています、されてないとは言わせません。にしても「第三の目から大仏ビーム」のなんてキャッチーなこと! 曲自体も普通にかっこいいです。ZAZEN BOYSみたいだから。

あとなんか地下演劇の香りがする曲が多いです。シネマチックを名乗るのはその辺が所以でしょうか?

 

Valsa para as Criancas / Amilton godoy


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Amilton godoyはブラジルの作曲家・ジャズピアニストです。1941年生まれということでブラジル・ジャズ界の生き字引のような存在らしいです。この楽曲は子供のためのワルツということで(クソ速いですが)平易に書かれてはいますが、ちゃんとジャズワルツとしてめちゃくちゃお洒落でいい感じだなと思います。

 

夢 / めぞぴあのきゃんでぃ


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「めぞぴあのきゃんでぃ」は日本で唯一の姫かわHIPHOPを全国47都道県の少女たちに届けるために美兄(びにい)霊臨(たまりん)とによって結成されたヒップホップユニットです。何を言っているかお判りでしょうか。

おそらくHIPHOPから一番遠いものとは何か考えたときに出てきたのが「姫」だったんだと思いますが、にしてもそのイメージをここまで凶悪な形で具現化できるのには驚かざるを得ません。あと何気にリリックがイカしています。「大きいほうをあげる 小さいほうを食べる パク  ファック」とか普通思いつきませんよ。

彼らはめぞぴあのきゃんでぃ以外でも謎の曲ばかり歌っており、そちらも実は気に入っています。気に入っていますが、紹介するほどでもないのでここには載せません。

 

驚異320回転 / HASAMI group


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さて、HASAMI groupの最新楽曲の一つなわけですが、マジでイカれています。

この曲の前では今まで紹介した曲のすべてがかすんでしまうほどのインパクトとすさまじい熱量を感じます。I’M A KAMAKIRIだけで曲を完成させてしまい、I’M A KAMAKIRIという言葉にこれだけの説得力を与えられるのは青木龍一郎しかいないのではないかと本気で思っています。

 

G.A.D / QUBIT


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さてそろそろ口直しを。

QUBITは今年結成されたバンドで、ボーカルはDAOKOです。の割には全く話題になっておらず悲しいです。ボーカルがDAOKOだからというよりはちゃんとかっこいいからなのですが......。キーボードに現代音楽作曲家としての顔を持つ網守将平が参加しており、まあまあの本気度がうかがえるのですが......。

 

I'm the president / KNOWER


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当ブログでもたびたび取り上げているKNOWER。EDMっぽいサウンドが特徴かと思っていたのですが、どうやらそれにも飽きてしまったらしく、最早音だけではルイス・コールのソロとの違いが判らなくなっています。それはそれとしてベースラインが絶望的にダサいはずなのにちゃんとかっこよく聞こえていて流石です。今度来日するのがめちゃくちゃ楽しみですね。

 

There's s something happening / Jack Stauber's Micropop


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アメリカの映像作家Jack Stauberによるソロプロジェクトです。くわしくはこちら。

nu-composers.hateblo.jp

この記事を書いた後もたびたび聞くようになり、完全にお気に入りになりました。

 

踊るクエン酸回路 / おしゃれTV


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おしゃれTV野見祐二荻原義衛によるテクノ・ポップ・ユニットです。野見祐二は職業作曲家で「耳をすませば」の劇伴で有名です。個人的には「日常」サウンドトラックなんかも結構お気に入りなのですが。彼の仕事を聞くとわかるようにオーケストラを使うのが得意です。なので「踊るクエン酸回路」でもそのクラシック的な技法がいかんなく発揮されています。さらにいえばおしゃれTVは坂本龍一プロデュースなので余計にその傾向が強いです。同アルバムに収録されている「アジアの恋」なんかはモロ坂本なんじゃないでしょうか。

「踊るクエン酸回路」ではほんとになんでそうしたかったのかは全くわかりませんが、食事から消化、好気呼吸にいたるまでに起こる諸反応について細かく解説してくれています。しかも現代音楽的な語法を交えて。ありがとう。なんか食事の内容がおしゃれすぎてむかつくけど、まあおしゃれTVだし、いいか!

 

Boys, be ambitious (feat. ermhoi) / 東京塩麹


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東京塩麴は昔からスティーブ・ライヒのようなミニマルミュージックをポップスに落とし込んだ楽曲を製作していましたが、近年でそこにはEDMなどの現代ポップス的なアクセントが加わるようになりました。

本楽曲ではまず明らかにメロディがロクリア旋法をなぞっています。サビはといえばEDMにおけるドロップをそのまま人力で置き換えたかのような(どっちかというとIDMかも?)めちゃくちゃ断片的なフレーズを演奏していますし、今までよりは行儀がよくないミニマルミュージックになっていてなかなか面白いんじゃないかと思います。歌詞はくそダサいけど。

 

Homme (萌夢) / oscilation circuit 


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知る人ぞ知る環境音楽の名盤、oscilation circuitの「serie reflection 1」がサブスク解禁・再発されたことに言及しないわけにはいきません。

映画音楽作家としても活躍する作曲家、磯田健一郎(=oscilation circuit)のレコードデビュー作として、1984年、芦川聡設立の環境音楽の名門・サウンドプロセスデザインからリリースされたこのアルバムは80年代当時の日本の環境音楽の中でも異質で、電子音をほとんど使用せず、かつミニマルミュージック的な語法をかなり素直に使っています。このへんの電子音楽の潮流の話はまた記事に書くとして、この曲は本当に最小限の変化だけで構成されており、異質ではありながらも環境音楽、そしてサウンドプロセスデザインの思想を体現しているのです。あと長すぎて寝るのに最適。

 

以上2023年に聞いた音楽でしたが、皆さんはどう思うか。

変拍子ソングあれこれ

どうも、作曲家のトイドラです。

今年に名作会の会長をなんすい新会長に譲り、以来ジリジリと地道に音楽活動を続けてきました。

その結果、どういうわけかYouTubeチャンネルで1.7万人ものチャンネル登録者を得ることができました。

正直、1年目でこんなことになるとは思っていなかったので驚きです。

特に今年一番バズったのは、変拍子を題材にしたこの動画。

Dave Brubeck のジャズに始まり、果ては Ferneyhough や Ustvolskaya に至るという相当カオスな動画ですが、コメント欄が「こんな変拍子曲もあるよ!」というコメントで溢れ返りました。

総数200曲近い曲を紹介していただき、「全部聞きます」と豪語していた僕はゲッソリしながら本当に全部聞きました

おかげで変拍子ボキャブラリーがギュンギュン底上げされています。


さて、せっかくこんなアホみたいな数の曲を聞いたんだから、面白かった曲をまとめてみようと思います。

コメント欄で皆さんから紹介された曲のうち、特に良かった曲をピックアップしていきましょう。

 

ブルガリア民謡

まず、複数の方から

ブルガリア民謡はヤバいよ!!」

というコメントをいただきました。

ブルガリア地方では、民族的な舞曲に変拍子が伝統的に使われているようです。

2拍子と3拍子を複雑に組み合わせた微妙な拍感は、確かにダンスとの相性がよさそう。

この系譜で1つ爆笑した曲があります。

エストニア出身のメタルバンド、Metsatöll の曲です。

厳密にはブルガリア地方の音楽ではないかもしれませんが、あからさまに民謡的な暖かい雰囲気と変拍子、そしてメタルが何故か違和感もなく調和しています。

個人的にMVもかなり好きです。

 

メトリックモジュレーション

拍子に関する概念の1つとして、メトリックモジュレーションというものがあります。

微妙なリズム感の変化をもたらせる面白い技法なのですが、今回コメント欄ではそんなメトリックモジュレーションの例がたくさん紹介されました。

あまり派手に使われることのない技法な気がしますが、効果的に使うとけっこうバーンと印象に残りますね。

 

アイドル・同人・ゲーム音楽

オタク的文化圏と変拍子というのは、どうやら相性が良いみたいです。

アンダーグラウンド的な側面で通じているのか、カワイイ女の子が意味不明なリズムに揉まれている様子が琴線に触れr とにかくこういう曲も複数紹介されました。

特にヤバかったのはこの曲です。

ムチャクチャ長いのにずっとサビみたいなテンションだし、全編変拍子でとんでもなくかっこいいです。

激しく聞き疲れはしますが。

 

クソカッコいい曲たち

ただただシンプルにかっこいい曲たちも多数紹介されました。

マジで大好物なので有り難い。マジで。

聞いていて気づいたのですが、こうしたカッコいい曲からはひしひしと「変拍子である意味」が感じられます。

無理やり感のない、それどころか変拍子であることが自然さにつながっているような、不思議なフィット感がある気がします。

 

おわりに

というわけで、特にいい感じの変拍子曲をピックアップしてご紹介しました。

音楽ガチ分析チャンネルの方では、好評だった「変拍子」動画の第2弾を画策しています。

というのも、皆さんのコメントのおかげでもう1本動画にできるだけのネタが余裕で集まってしまったからです。

やっぱり持つべきものは集合知

来年もどうぞご期待ください。

蛇足ですが、最後に今年僕が作った曲の中で最も拍子がヤバかったものを貼り付けておきます。

RMCチャンネル人気動画ランキング2023

RMC

 年々、年末の雰囲気がなくなりもう師走になって私の担当も年内最後になったとは思えない状況です。相変わらず各種感染症は減るどころか、過去にない流行となっていますし、世相も荒れるばかり。嫌なご時世でしたね。今年は個人的にも環境の変化が大きく、とても疲れた年でした。
 さてそんな中、名作会との共同プロジェクトであるRMCの年間トップ10発表の時期になりました。今年はどんな曲がランクインするか。どうぞお楽しみください。
 なお筆者の都合で、執筆時点(2023/12/5)でのランキング集計となることをご承知おきください。

 

 今年一年間で視聴回数は10634回となって少しずつ多くの人に届けられてきているようです。

 

2023年の再生数ランキングに早速参りましょう。

 


第10位
ピアノのためのソナチネ「青の詩」/助川敏弥
指定期間内再生数173
トータル再生数173

助川敏弥

 第10位にランクインしたのは助川敏弥氏が子供のために書かれたソナチネ「青の詩」でした。さすがRMCリスナーは渋い選択をされますね。
 助川氏は1930年北海道出身、東京藝術大学で池内友次郎に支持しました。その後戦後左翼活動を柱とした作曲の会である「山羊の会」に参加し、伝統音楽と前衛音楽の関係を模索された作曲家です。この曲もそんな彼のアイディアに満ちた内容で、表現力を求められる良曲ではないかと思います。助川氏は2015年に惜しまれながら亡くなられました。

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第9位
日本民謡による三つのパラフレーズ/別宮貞雄
指定期間内再生数194
トータル再生数194

別宮貞雄

 第9位にランクインした曲も実に渋い曲です。というか渋い曲ばかりなので当たり前かもしれません。別宮貞雄は1922年東京生まれ。東大で物理学を学び、同大学に再入学して美学を学びます。そして新声会に参加後渡仏し、ミヨー、メシアンなどに師事しながらも、ドイツ音楽本流を意識し続けたという風変わりな人です。
 保守的な作風を貫きながら、重要な作品を書き上げていった別宮先生は2012年に亡くなられましたが、この曲にもそんな彼の意志がみなぎっています。この機会にもう一度お楽しみいただけたらと思います。

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第8位
トリトローペ/西村明
指定期間内再生数208
トータル再生数208

西村朗

 第8位は本年なくなった西村朗先生の若き頃のピアノ独奏曲「トリトローペ」でした。西村先生の訃報には多くの人が衝撃を受け、そして悲しんだことは記憶に新しいですね。今でも残念でありません。
 西村先生は1953年大阪生まれ。自転車店を営む家に生まれたそうです。ヘテロフォニーを自作の中心的な語法として、日本を、アジアを代表する大作曲家になったレジェンドです。東京藝術大学出身で作曲は池内友次郎、矢代秋雄、野田暉行に師事しました。この曲も大学院在学中に書かれたものですが、すでに完璧な西村流の作風が確立しています。
 逝った人を惜しむことが追善供養の精神です。今ここにもう一度聴くことで、先生の御霊の安らかなることを祈りたいものです。

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第7位
ピアノ曲集「宮古のアヤグ」/杉本信夫
指定期間内再生数214
トータル再生数214

杉本信夫

 第7位にランクインしたのは本年ランクインした曲の中でも特に渋い選択となった曲ではないかと思います。沖縄・八重山民謡の研究家である杉本信夫が、収集した宮古民謡をもとに独特の方法で作曲した曲集がそれです。
 杉本氏は1934年大阪生まれ。日大芸術学部二入学ご中退、東洋音楽短期大学を卒業しました。作曲は箕作秋吉、アルベルト・レオーネに支持し、その後教諭の仕事に就き、沖縄民謡の研究に打ち込みました。長くこの方面の第一人者として活躍しましたが、2022年に亡くなられました。
 民謡というものの背景にある文化と伝承の中の雰囲気を巧みに読み取った専門家ならではの仕事と言っていい名曲ではないかと思います。

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第6位
万葉の杜/青島広志
指定期間再生数225
トータル再生数225

青島広志

 第6位はお茶の間でも人気の青島広志先生のピアノ組曲「万葉の杜」です。ブルー・アイランド先生は、エッセイに漫画、作曲、MCと多彩な人であり、その独特のキャラクターで人気です。作風は調性を手放さず、寧ろ多調を軸としたものが多いのですが、難解ではなく人気な曲も多い作曲家です。しかしこの作品は音源がなく、実にもったいないという思いから当チャンネルで取り上げさせていただきました。
 青島先生は1955年東京生まれで、東京藝術大学に学ばれ、池内友次郎、林光に支持し大学院まで首席で卒業されています。テレビで見るコミカルな姿とは打って変わって、独特の切り取り方で描く万葉の世界、もう一度聴いてみませんか?

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第5位
ピアノ曲集「音の栞」/三善晃
指定期間再生数227
トータル再生数227

三善晃

 第5位は堂々の巨匠の作品です。
 三善晃先生は言わずとしれた本邦を代表する作曲家。1933年東京生まれで平井康三郎、池内友次郎に支持して英才教育を受けました。その後東京大学文学部に進学後、渡仏。パリ国立高等音楽院でアンリ・シャランなどに師事して帰国、その後はあらゆるジャンルの音楽で飛び抜けた才能を発揮し日本音楽し塗り替えていきました。特に合唱への改革は凄まじく、その在り方の根本をすっかり変えたことでも知られています。一方ピアノの教育にも取り組み独自の三善メソードを作り、この曲集もそれに準拠した内容になっています。
 三善先生の曲はこどものための曲でも表現力を求めるものが多く、この曲集も素晴らしい内容の曲がたくさん詰まっています。しかしyoutubeをみると全曲まとめて作られた動画がなく、指導現場で選曲が偏っていることを感じたので、頑張って全曲を動画にしました。なお三善先生は2013年に亡くなられています。

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第4位
ソナチネ/丸田昭三
指定期間再生数233
トータル再生数233

丸田昭三

 第4位はこれまた渋い丸田昭三先生の書かれた「ソナチネ」でした。
 丸田先生は言わずとしれた大理論家で、教科書などの執筆者として名前を見ることはあっても中々作品を聴くことはありません。当チャンネルではゴリゴリの現代曲である「5つのバガテル」も紹介してこちらも好評でしたが、ソナチネは打って変わって優しい曲調です。
 丸田先生は1928年生まれで東京藝術大学で石桁眞禮生に師事し、渡独しハラルド・ゲンツマーに師事しました。厳密な理論家の側面は「芸大和声」の執筆者の一人というところにも現れており、また名伯楽としても知られました。ソナチネはもっと演奏されるべき曲ですので、この機会にしっかり聞き直してみましょう。

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 さて上位三作品を紹介する前に閑話休題
 今年は公私ともに大きな変化があってとてもつかれました。父の死と引越、持病と感染症の流行とすり減るだけすり減らされ、一時はやる気も枯渇してしまい多方面にご迷惑をかけてしまいました。しかし老いる身体とは対象的に、怒りは尽きることがなく、これが原動力になってなんとか乗り越えてこれました。一部では政府の救済策がなくなった今こそが本当のコロナ禍だなどと言われていますが、私も無傷で済む訳はなく、難しい舵取りも多くありました。おかげさまで今年は無事越せそうですが、そろそろ新たな動きも模索しないと干からびてしまいます。
 来年は更に尖りつつ、いよいよ再始動の年と位置づけて頑張っていこうと思います。とにかくバカとのやり取りは時間の損失ということが身に沁みてわかった年でもあるので、今後は蹴散らすことだけを考えてやっていきたいものです。

 

さてランキング上位3つ、行ってみましょう。



第3位
失われたものへの三章/有馬礼子
指定期間再生数283
トータル再生数799

有馬礼子


 第3位にランクインしたのは当チャンネルでもスーパーロングヒットとなっている、有馬礼子さんの書かれた「失われたものへの三章」です。どうしてこの曲がずっと再生され続けているのか不思議なところですが、たしかに非常に素晴らしい名曲であることは疑いようもありません。
 有馬先生は1933年東京出身で、東京藝術大学に学び、下総皖一伊福部昭に師事しました。子供用のピアノ曲などを多く手掛ける作曲家で、愛される曲は多い中、このちょっと難解な曲に人気が集まるのは、ひとえに有馬先生の力にほかありません。この機会にもう一回聴いてみましょう。

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第2位
ピアノ組曲/坂本龍一
指定期間再生数302
トータル再生数302

坂本龍一

 今年の音楽トピックの上位と言えるのがあの坂本龍一の死であったことは誰もが認めるところでしょう。そしてこの曲が上位に来ることはまったくもって妥当なことだと言わざるを得ません。クラシックだけではなく、劇伴、POPSとすべての音楽ジャンルで活躍した「教授」こと坂本龍一の死は日本音楽界の大きな損失でした。
 坂本は1952年に東京に生まれ、東京藝術大学に進学し、松本民之助に師事しました。しかしほとんど学校には行かず、バンド活動や、既存の現代音楽への抗議活動に明け暮れたそうです。その後様々な出会いの中から、真にオリエンタルな音楽を標榜し、独特のアジア性と、左翼的イディオムによる音楽を作り出しました。純音楽の仕事は多くはありませんでしたが、その中でもあまり取り上げられないこの曲を紹介できたことは、私自身とても良かったと思っています。

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さて栄えある第一位は何だったのでしょうか。


第1位
変奏曲-ピアノのために-/水谷一郎
指定期間再生数353
トータル再生数353

水谷一郎

 なんと第一はとても渋い曲となりました。水谷一郎氏による「変奏曲」です。音楽理論家として著名な水谷氏は1942年大阪生まれ。大阪音楽大学に学ばれその後は早くからシンセサイザーなどの電子楽器を導入しました。電車の発車音楽などを多く手掛け、一方では優れた教育者として母校に奉職されました。惜しまれつつも2014年に亡くなられましたが、この曲はパッサカリアとヴァリエーションの手法を織り交ぜた意欲作で、対位法の腕が光る名曲です。そもそもこのチャンネルはこういった本当に知られていない曲を紹介するのが本義ですので、この一位には驚きつつも、とても嬉しいい結果となりました。

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 ということで今年も皆様お世話になりました。
 当チャンネルはもちろん今後も収益化など度外視で、ひたすらにマイナーを掘っていく姿勢は揺るぎません。資料集めやデータ化は大変ですが、多くの人に知ってもらう、埋もれた曲に生命を取り戻してもらう、そしてレパートリーの参考になれば幸いです。

 

本年も本当にありがとうございました。

香水屋さんで変わった香水に出会う

こんにちは、なんすいです。

使っている香水が無くなってきたので、香水好きの友達と一緒に新しいものを買いに行ってきました。

 

私は香水ぜんぜん詳しくないので、友達に案内されるがまま、たぶん合計70種類くらいの匂いを嗅ぎ比べたと思います。

鼻がとても疲れました。

 

アートとしての香水「ニッチフレグランス」

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香水といえば、花とか石鹸といった心地良い香りがして、お洒落や身嗜みとして付けるイメージがあります。

しかし最近は、「自分らしさ」を纏うという目的で、より個性的な匂いの香水が増えているようです。

万人受けする「いい匂い」に拘らず、芸術性を押し出した香水のブランドは、「ニッチフレグランス」と呼ばれています。

 

名古屋駅には新進気鋭のフレグランスブランドを集めた「NOSE SHOP」というお店があり、そこでニッチフレグランスを体験することが出来ます。

g.co

 

私も友達に案内され、NOSE SHOPで色んな商品を試して来ました。今回はその中でも印象的だった2つのブランドを紹介します。

気になった人はぜひNOSE SHOPに寄ってみて下さい。

 

 

 

Maison Matine

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Maison Matine は、2019年に創設されたパリのニッチフレグランスメゾン。

自由さと親しみやすさを意識した現代的なフレグランスを作っているそうです。

以下のようなラインナップがあります。

 

アバン ロラージュ/嵐の前

プンプン/あるがまま

ワルニ ワルニ/こっちにおいで

エスプリ ドゥ コントラディクション/反駁の精神

あらしのうみ/あらしのうみ

バン ドゥ ミディ/真っ昼間の海

イントゥ ザ ワイルド/分け入っても密林

など…

 

おおよそ香水の名前とは思えないようなものばかりですね。

これらの香水はどれも、付けられた名前をイメージしたような匂いを持っています。

 


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「ワルニ ワルニ/こっちにおいで」

嗅いでみると、確かに、スパイスっぽい怪しげな第一印象の後に、引き込まれるような深い匂いがゆっくり顔を出してきて、何か誘われているような気分になります。

 


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「プンプン/あるがまま」

複雑な匂いではあるんですが、なかなかどうして、「あるがまま」な感じの素朴さが最後に印象として残ります。

 

こんな具合に、全部匂いを嗅いでみると確かに、とネーミングに納得出来るようになっていました。

共感性の高い高度な大喜利が、嗅覚の世界で行われているようです。

そして同時に、決して香水として万人受けする所謂「いい匂い」とは言い難いものばかりでした。

くさいとまではいかない、いい匂いなんですが、いい匂いでのみあることを目指してはいない感じがします。

 

The House of Oud

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2016年に創設されたイタリアのブランド。

「人生における魔法の瞬間」を「目と鼻で体感する」と謳っており、パッケージにも気合が入っています。

 

ザタイム/現在

ジャストビフォー/過去

リブインカラーズ/未来

エメラルドグリーン/愛の系譜

ルビーレッド/情熱的な愛

サファイアブルー/真実の継承

ワビサビ

ギャンブリング

など…

 

ネーミングが厨二病っぽくてくすぐられます。

先程のMaison Matineが情景的なテーマだったのに対して、こちらの方がやや抽象的な題材を扱っている感じがします。時間だとか愛だとか。


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「ワビサビ」。これにはなんと、香水としては珍しく本ワサビが使われているそうです。

ワビサビってワサビだったんだ、と思いながら嗅いでみると………意外とワサビの匂いはしません。

侘び寂びの匂い……も別にしないかもしれない。

どちらかと言えば、海外の人が「Wabisabi」という概念を聞いて思い浮かべたイメージ、の匂いがしました。地に足のついてない感じ。


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一方で、「ギャンブリング」はラインナップの中で最も「わかる!」となった商品でした。

トランプゲームの舞台が目の前に浮かぶよう、かなりギャンブリングって感じの匂い。

この匂いを毎日身に纏いたくはないですが、他人事に嗅いでいる分にはとても楽しいです。

 

アートとしての香水

これらのニッチフレグランスは芸術的でありながら、同時に独自性を求める人々のニーズに応えデザインされた商業作品としての要素も多分に含んでいます。

香水が芸術として認められるかどうかは議論が分かれる問題ですが、一般に匂いを主体とした「嗅覚アート」の分野は、歴史が浅いながらもいくらか発展しているようです。

 

嗅覚アートの第一人者であるMAKI UEDAは、食べ物や体臭などのありのままの匂いを香水化する自身の技術をもって、さまざまな嗅覚アートを発表しています。

 

MAKI UEDA

代表作「オー・ド・パルファン パーフェクト・ジャパニーズ・ウーマン」は4つの香水で構成されたインスタレーション作品で、各々の香水は「日本の社会が期待する女性像」を象徴する香りで出来ています。

それぞれ「糠味噌」「畳」「味噌汁」「石鹸」と名が付いています。米糠をアルコール抽出したり、味噌汁を蒸留したりと、かなりダイレクトな方法で匂いを香水化しています。

本人の解説ページもあり、作る様子の写真なども載っていて面白いので読んでみて下さい。

www.ueda.nl

 

糠味噌の香水は結構嫌だなぁ。

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というわけで、途中で香水繋がりのアート作品も紹介しましたが、いかがでしょう。

先の作品に比べればニッチフレグランスは全然商業的ですが、それでもかなり変わった匂いに出会えて、香水の固定観念が結構揺さぶられるのでおすすめです。身近に嗅覚アート的なものを体験してみたい人は行ってみると面白いと思います。

 

なお、色んな香水を試して回った結果、最終的にBon Parfumeurというブランドの「101」「201」を買うことにしました。

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ここのブランドは商品名が全部番号になっています。1桁目が1ならフローラル、2ならフルーティといった具合にカテゴリごとに番号が振られている感じです。図書館の分類番号みたい。

普通にいい匂いがします。

俺がエスペラントやる話〜検定受験編〜

皆さんお久しぶりです、ぎょくしです。そして今回は、またまたエスペラントの話です(深刻なネタ切れ)。

 

前回までのあらすじ

エスペラントにハマって、そして一度は離れたものの、「あんだけやったのに話せないの勿体なくね?」という天啓が降ってきたことにより再度勉強を始めた。ちょうど八ヶ岳エスペラントの合宿やってたのもあって行くことにした。合宿は結構面白かった(上記記事参照)。

 

それから何をしてたか

で合宿から帰った後は、電車の中でDuolingo単語帳やって、家帰ったら文法テキスト開いて、時にはサボって...というような日々を過ごしてました。

 

当面の目標はエスペラント検定4級に合格すること」と決めていたので、とりあえずやるべきことは試験範囲を抑えることです。エスペラント検定の4級と3級は単語の出題範囲が決められているので、4級の単語リストを公式HPからダウンロードして単語帳をコツコツ作りつつ、テキストを進めていきました。

 

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テキストはことのはアムリラートの言語監修であり、八ヶ岳エスペラント集中学習の主催者でもある藤巻先生の「はじめてのエスペラントを使用していました。4級の試験範囲は、分量的にはテキストの約半分なので7月頃には4級の試験範囲はあらかた終えることができました。テキストを終えた後は、定期的にテキストに目を通すようにしていました。

 

会話試験対策についてですが、単語・文章の読み上げ問題対策はあまりやりませんでした。というのも発音の仕方は、ことのはアムリラートをプレイしていたので、ある程度耳慣れていたからです。ただしcとĉの違いや、sとŝの発音は少し慣れないところがあったので、「初めてのエスペラント」に出てくる例文をできるだけ音読するようにしていました。あとはプロイェクトバベルのエスペラント集会には積極的に参加するようにし、会話力を磨くようにしていました(プロイェクトバベルについては下記記事参照)。

 

 

そんなこんなで、過去問も取り寄せたので早速やってみたところ...
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いや、めちゃくちゃギリギリやんけ!!!!(合格点は60点)

 

そもそもこの過去問が行われた時代には単語リストが公開されていなかったので、試験範囲が若干異なるというのはありますが、それにしてもギリギリすぎる!これは!マズい!!!!!!

 

こんなにもできていない理由はただ一つ:

単語が覚えられていない

 

そう、この時点では単語帳は試験範囲のまだ5分の3くらいしか完成していなかったので、これはよくない。大慌てで単語帳を作って覚えるのでした...(7月中〜下旬くらいには完成させました)。

 

自分流単語の覚え方

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単語の覚え方の話題が出てきたので、ここで自分の単語の覚え方をシェアしようと思います。受験生の皆さんは是非是非ご参考くださいませ。

 

①単語をまず一定数に区切る

一気に覚えるのは無理なので一定数に区切ります。ペラペラめくるタイプの単語帳ならこれはある程度自動的にできるので、その手の単語帳を使用すると良いでしょう。

 

②単語帳を作る

単語帳を、作ります。自分は紙の辞書をひきながら「これ、よく使いそうだな〜」ってものを書くようにしました「単語帳を作りながらもちゃんと単語を覚える!」なんて器用なことは自分にはできませんでした。

 

③単語の存在を知る

ようやくスタート地点です。まずは記憶を「無」から「なんかこんな単語あったなぁ」というレベルに持っていきます。とりあえずはエス→日を続けて、『その単語が存在してたな〜』ってことを頭に入れます。

 

④単語を覚える(エス→日)

次に単語帳をエス→日で答えられるようにします。コツは「どんな手を使ってでも覚える」こと。スッと覚えられるものはそのまま覚え、どうしても覚えられないものは語呂合わせ「この単語の次の単語はこれだったな」という覚え方を使っても構いません。とにかく覚えます。6-7割できるようになったら次のステップに進みます。

 

⑤単語を覚える(日→エス)

④ができるようになったらその逆です。次は日→エスが答えられるように覚えます。エス→日をちゃんと覚えていれば多少はできますが、それでもパッと出てこない単語はあるものです。これも6-7割できるようになったら次のステップへ。

 

⑥単語帳をシャッフルして答える&音楽を聴きながらやる

ここで一度単語帳をシャッフルして順番をバラバラにし、再度エス→和と和→エスにチャレンジします。単語の出てくる順で覚えているものをこれでつぶしましょう。また、音楽(できれば歌詞のあるもの)を聴きながら勉強するのも良いでしょう。音楽を聴きながら勉強すると、当然集中の妨げとなります。そんな状態でパッと出てこない単語は覚えられていないものなので、ここで覚えるようにしましょう。

 

エス→和で自分の実力をテスト

ある程度自信がついたら、一度自分の実力をテストしましょう。再度シャッフルして、和→エスで自分の実力をテストしましょう。ここでは、実際に書き取りを行い、書き取れなかったものやパッと出てこなかったものは単語帳から抜き出して「もう覚えた単語帳」と「出来なかった単語帳」に分けます

 

⑧新しい単語帳&出来なかった単語帳をやる、時々復習

ここらへんにきてやっと次の単語帳へ進みます。新しい単語帳をやる手順も上記の①から順番にやっていきます。で、それをやりつつ「出来なかった単語帳」をやります。「出来なかった単語帳」は和→エスエス→和を織り交ぜて行い、そして時々⑦の実力テストを行い、「出来なかった単語帳」を少しづつ減らしていきます。また、「もう覚えた単語帳」もたま〜に見返したり実力テストを行って、出来なかったものは「出来なかった単語帳」へ戻します。

 

このように少しづつ前進して覚えていきました。いや、この勉強方法、受験の時に知っておきたかったな...

そんなこんなで

そんなこんなで、単語を覚えながら過去問を解いていくと...

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おおおおお!だんだん高得点が取れるようになってきたではありませんか!!!68点を取っている写真もありますが、試験範囲をしっかりと頭に入れたことにより、「今回は試験範囲外のところも出てるしな」と割り切って試験勉強をしてゆくことができました。そうして試験日を迎えることになります...

そして試験日


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そしてついに明日は試験日。前日の夕方に会場近くのホテルへチェックインして、試験会場も下見し、準備は万端です。明日は頑張るぞ!(といいつつ部屋でスマホポチポチしてました...)

 

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で、当日試験会場へ向かい...

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うおおおお...

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うおおおおおお!ここが俺の戦場だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!

 

試験会場に入ると、思ったより若い顔ぶれでした。エスペラント大会にはご高齢の方が多い」という話を聞いていたので、少々驚ました。ま、高齢の方々は既にペラペラに喋れるもんな...

 

席についてソワソワしていると、問題用紙兼解答用紙が配られました。試験時間は、4級では60分。その後、終わった人から会話試験の面接を始める形式です。いよいよ始まります。

 

さあ、ついに試験が始まりました。「何か新しい出題形式はあるのかしら」と身構えておりましたが、特段変わった出題はなく、ほぼ公式サイトに載っている模擬問題や過去問の通りでした。

 

で、サクサク問題を解き進めていくと...

 

次の単語の意味を答えよ

vendilo

 

?????

 

フワッとした意味は分かります。vendiが動詞で「〜を売る」という意味で、ilo「〜する道具」という接尾辞。で、それを組み合わせると...

「売る道具」

 

?????????????????????????????

 

「売る道具」って何だよ、「売り物」のこと?でもそれ言うなら〜iloじゃなくて〜aĵoを使うべきだし。バーコードリーダーのことか?マジで何?

 

結局その答えが分からず、絶対違うであろう「売り物」と書きました...因みに正解は

 

販売機(自動“販売機”とかのそれ)

 

でした。マジで何なんだよ...

 

とりあえず筆記試験を早めに終えたので、次は会話試験です。会話試験は筆記試験の隣の部屋で行われます。これもまた、過去問や模擬問題とほぼ一緒の出題形式でした。

が、会話試験の読み上げ問題の文章中に「1945(mil naŭcent kvardek kvin)」という数字が出てきた時にはマジでビビり散らかしました。こんな長い数字の読み上げ出題しないでよ〜

 

こうして、私のエスペラント検定4級受験が終わったのです。

 

午後はエスペラント大会

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午後は試験会場と同じ会場でエスペラント大会が開催されていたので、そちらにも参加しました。

 

とりあえず開会式に出席し、「(単語力ねえから全然わかんねぇな〜)」と思いながらエスペラントの話を聞いていると全員が立ち上がり、「La Espero」の斉唱が始まりました。「La Espero」はエスペラント界では、いわば「国歌」のような立ち位置の歌で、こういう場で歌われることは知っていましたが、その場に初めて立ち会えて少し感動しました。なお、歌詞も前のスクリーンに出てるし、そもそもバリバリに予習してあったので自分もちゃんと歌いました。

 

その後は即売会のようなことをやってる部屋の、ことのはレルナード(ことのはアムリラートの最新作)のブースへ行きました。何やらこの会場でしか手に入れられない特典があるとかないとか...これは手に入れねば... などと思いつつブースへ行って話をすると、キャラクタが印刷されたデカいタスキと、「とあるミッション」を託されました。

 

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そのミッションとは、「会場にいる人に『どこの国に行きたいですか?』という質問をエスペラントでして、回答とその理由を聞いてこい」というものでした。なるほど、ことのはアムリラート作中で凛が異世界語でなんとかコミュニケーションをしようとするのを追体験しろということですね...(マジか)。まあ、今回のエスペラント大会のために必死で勉強してきたので、その実践ということでやってみることにしました。

 

会場では名札をつけるのですが、初心者だけど積極的に会話してみたい人は「金色のリボン」を、初心者に優しく対応してくれるベテランエスペランティスト「赤リボン(だったはず...)」をつけることになっているので、赤リボンをつけている人に狙って話しかけることにしました。

 

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...ということで回答が三人分集まりました。かくして私はことのはレルナードのポストカード全三種を手に入れることができたのです。

 

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その後は友人達+その場で知り合った方々と立ち話をしていました。かれこれ1時間半ほど、積もり積もったエスペラントや、その他の言語や、VRチャットの話をしていました。有意義で非常に楽しい時間を過ごすことができました。

 

そこから少しして、初心者向けの「エスペラントで話してみよう!」みたいなイベントがあったので参加することにしました。初心者向け、とは書いてあるものの初心者とは思えんレベルのエスペランティストが多数参加されてて、普通に面食らいました、いや、レベル高ぇよマジ...

 

大会二日目もありましたが、2日目はフラッと行って本だけ買ってそのまま帰りました。いつかはちゃんと講演とか聞こうと思いますね...

 

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合格発表

そこから数週間後、合格発表のメールが届きました。結果は...

 

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合格

 

筆記試験は、vendiloがわからなかったのと、試験終了直後に判明した凡ミスが一問(←くやしい)、ほかにももう一問間違えているところがあったようです。が、予想を超えて高得点をとることができました。また、会話試験が満点だったのには自分でも驚きました。や、ことのはアムリラート様様ですわ... みんな、ことのはアムリラート、やろう!

 

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そこから一週間ほどして合格証も届きました。マジで嬉しいです...これからも頑張ります...!!!

 

おわりに

てなわけでエスペラント検定を受験&大会に参加したわけですが無事合格することができました。4級を受験して、単語力を含めた自分のエスペラント基礎力がグッと高まった気がします。これからエスペラントを学習される方は、まず4級合格を目指してはいかがでしょうか。また、これから検定を受験されたり大会に参加される方は、本記事が少しでも参考になれば幸いです。これからも勉強頑張るぞ...!

 

ではまた!