名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

RMCチャンネル人気動画ランキング2023

RMC

 年々、年末の雰囲気がなくなりもう師走になって私の担当も年内最後になったとは思えない状況です。相変わらず各種感染症は減るどころか、過去にない流行となっていますし、世相も荒れるばかり。嫌なご時世でしたね。今年は個人的にも環境の変化が大きく、とても疲れた年でした。
 さてそんな中、名作会との共同プロジェクトであるRMCの年間トップ10発表の時期になりました。今年はどんな曲がランクインするか。どうぞお楽しみください。
 なお筆者の都合で、執筆時点(2023/12/5)でのランキング集計となることをご承知おきください。

 

 今年一年間で視聴回数は10634回となって少しずつ多くの人に届けられてきているようです。

 

2023年の再生数ランキングに早速参りましょう。

 


第10位
ピアノのためのソナチネ「青の詩」/助川敏弥
指定期間内再生数173
トータル再生数173

助川敏弥

 第10位にランクインしたのは助川敏弥氏が子供のために書かれたソナチネ「青の詩」でした。さすがRMCリスナーは渋い選択をされますね。
 助川氏は1930年北海道出身、東京藝術大学で池内友次郎に支持しました。その後戦後左翼活動を柱とした作曲の会である「山羊の会」に参加し、伝統音楽と前衛音楽の関係を模索された作曲家です。この曲もそんな彼のアイディアに満ちた内容で、表現力を求められる良曲ではないかと思います。助川氏は2015年に惜しまれながら亡くなられました。

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第9位
日本民謡による三つのパラフレーズ/別宮貞雄
指定期間内再生数194
トータル再生数194

別宮貞雄

 第9位にランクインした曲も実に渋い曲です。というか渋い曲ばかりなので当たり前かもしれません。別宮貞雄は1922年東京生まれ。東大で物理学を学び、同大学に再入学して美学を学びます。そして新声会に参加後渡仏し、ミヨー、メシアンなどに師事しながらも、ドイツ音楽本流を意識し続けたという風変わりな人です。
 保守的な作風を貫きながら、重要な作品を書き上げていった別宮先生は2012年に亡くなられましたが、この曲にもそんな彼の意志がみなぎっています。この機会にもう一度お楽しみいただけたらと思います。

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第8位
トリトローペ/西村明
指定期間内再生数208
トータル再生数208

西村朗

 第8位は本年なくなった西村朗先生の若き頃のピアノ独奏曲「トリトローペ」でした。西村先生の訃報には多くの人が衝撃を受け、そして悲しんだことは記憶に新しいですね。今でも残念でありません。
 西村先生は1953年大阪生まれ。自転車店を営む家に生まれたそうです。ヘテロフォニーを自作の中心的な語法として、日本を、アジアを代表する大作曲家になったレジェンドです。東京藝術大学出身で作曲は池内友次郎、矢代秋雄、野田暉行に師事しました。この曲も大学院在学中に書かれたものですが、すでに完璧な西村流の作風が確立しています。
 逝った人を惜しむことが追善供養の精神です。今ここにもう一度聴くことで、先生の御霊の安らかなることを祈りたいものです。

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第7位
ピアノ曲集「宮古のアヤグ」/杉本信夫
指定期間内再生数214
トータル再生数214

杉本信夫

 第7位にランクインしたのは本年ランクインした曲の中でも特に渋い選択となった曲ではないかと思います。沖縄・八重山民謡の研究家である杉本信夫が、収集した宮古民謡をもとに独特の方法で作曲した曲集がそれです。
 杉本氏は1934年大阪生まれ。日大芸術学部二入学ご中退、東洋音楽短期大学を卒業しました。作曲は箕作秋吉、アルベルト・レオーネに支持し、その後教諭の仕事に就き、沖縄民謡の研究に打ち込みました。長くこの方面の第一人者として活躍しましたが、2022年に亡くなられました。
 民謡というものの背景にある文化と伝承の中の雰囲気を巧みに読み取った専門家ならではの仕事と言っていい名曲ではないかと思います。

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第6位
万葉の杜/青島広志
指定期間再生数225
トータル再生数225

青島広志

 第6位はお茶の間でも人気の青島広志先生のピアノ組曲「万葉の杜」です。ブルー・アイランド先生は、エッセイに漫画、作曲、MCと多彩な人であり、その独特のキャラクターで人気です。作風は調性を手放さず、寧ろ多調を軸としたものが多いのですが、難解ではなく人気な曲も多い作曲家です。しかしこの作品は音源がなく、実にもったいないという思いから当チャンネルで取り上げさせていただきました。
 青島先生は1955年東京生まれで、東京藝術大学に学ばれ、池内友次郎、林光に支持し大学院まで首席で卒業されています。テレビで見るコミカルな姿とは打って変わって、独特の切り取り方で描く万葉の世界、もう一度聴いてみませんか?

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第5位
ピアノ曲集「音の栞」/三善晃
指定期間再生数227
トータル再生数227

三善晃

 第5位は堂々の巨匠の作品です。
 三善晃先生は言わずとしれた本邦を代表する作曲家。1933年東京生まれで平井康三郎、池内友次郎に支持して英才教育を受けました。その後東京大学文学部に進学後、渡仏。パリ国立高等音楽院でアンリ・シャランなどに師事して帰国、その後はあらゆるジャンルの音楽で飛び抜けた才能を発揮し日本音楽し塗り替えていきました。特に合唱への改革は凄まじく、その在り方の根本をすっかり変えたことでも知られています。一方ピアノの教育にも取り組み独自の三善メソードを作り、この曲集もそれに準拠した内容になっています。
 三善先生の曲はこどものための曲でも表現力を求めるものが多く、この曲集も素晴らしい内容の曲がたくさん詰まっています。しかしyoutubeをみると全曲まとめて作られた動画がなく、指導現場で選曲が偏っていることを感じたので、頑張って全曲を動画にしました。なお三善先生は2013年に亡くなられています。

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第4位
ソナチネ/丸田昭三
指定期間再生数233
トータル再生数233

丸田昭三

 第4位はこれまた渋い丸田昭三先生の書かれた「ソナチネ」でした。
 丸田先生は言わずとしれた大理論家で、教科書などの執筆者として名前を見ることはあっても中々作品を聴くことはありません。当チャンネルではゴリゴリの現代曲である「5つのバガテル」も紹介してこちらも好評でしたが、ソナチネは打って変わって優しい曲調です。
 丸田先生は1928年生まれで東京藝術大学で石桁眞禮生に師事し、渡独しハラルド・ゲンツマーに師事しました。厳密な理論家の側面は「芸大和声」の執筆者の一人というところにも現れており、また名伯楽としても知られました。ソナチネはもっと演奏されるべき曲ですので、この機会にしっかり聞き直してみましょう。

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 さて上位三作品を紹介する前に閑話休題
 今年は公私ともに大きな変化があってとてもつかれました。父の死と引越、持病と感染症の流行とすり減るだけすり減らされ、一時はやる気も枯渇してしまい多方面にご迷惑をかけてしまいました。しかし老いる身体とは対象的に、怒りは尽きることがなく、これが原動力になってなんとか乗り越えてこれました。一部では政府の救済策がなくなった今こそが本当のコロナ禍だなどと言われていますが、私も無傷で済む訳はなく、難しい舵取りも多くありました。おかげさまで今年は無事越せそうですが、そろそろ新たな動きも模索しないと干からびてしまいます。
 来年は更に尖りつつ、いよいよ再始動の年と位置づけて頑張っていこうと思います。とにかくバカとのやり取りは時間の損失ということが身に沁みてわかった年でもあるので、今後は蹴散らすことだけを考えてやっていきたいものです。

 

さてランキング上位3つ、行ってみましょう。



第3位
失われたものへの三章/有馬礼子
指定期間再生数283
トータル再生数799

有馬礼子


 第3位にランクインしたのは当チャンネルでもスーパーロングヒットとなっている、有馬礼子さんの書かれた「失われたものへの三章」です。どうしてこの曲がずっと再生され続けているのか不思議なところですが、たしかに非常に素晴らしい名曲であることは疑いようもありません。
 有馬先生は1933年東京出身で、東京藝術大学に学び、下総皖一伊福部昭に師事しました。子供用のピアノ曲などを多く手掛ける作曲家で、愛される曲は多い中、このちょっと難解な曲に人気が集まるのは、ひとえに有馬先生の力にほかありません。この機会にもう一回聴いてみましょう。

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第2位
ピアノ組曲/坂本龍一
指定期間再生数302
トータル再生数302

坂本龍一

 今年の音楽トピックの上位と言えるのがあの坂本龍一の死であったことは誰もが認めるところでしょう。そしてこの曲が上位に来ることはまったくもって妥当なことだと言わざるを得ません。クラシックだけではなく、劇伴、POPSとすべての音楽ジャンルで活躍した「教授」こと坂本龍一の死は日本音楽界の大きな損失でした。
 坂本は1952年に東京に生まれ、東京藝術大学に進学し、松本民之助に師事しました。しかしほとんど学校には行かず、バンド活動や、既存の現代音楽への抗議活動に明け暮れたそうです。その後様々な出会いの中から、真にオリエンタルな音楽を標榜し、独特のアジア性と、左翼的イディオムによる音楽を作り出しました。純音楽の仕事は多くはありませんでしたが、その中でもあまり取り上げられないこの曲を紹介できたことは、私自身とても良かったと思っています。

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さて栄えある第一位は何だったのでしょうか。


第1位
変奏曲-ピアノのために-/水谷一郎
指定期間再生数353
トータル再生数353

水谷一郎

 なんと第一はとても渋い曲となりました。水谷一郎氏による「変奏曲」です。音楽理論家として著名な水谷氏は1942年大阪生まれ。大阪音楽大学に学ばれその後は早くからシンセサイザーなどの電子楽器を導入しました。電車の発車音楽などを多く手掛け、一方では優れた教育者として母校に奉職されました。惜しまれつつも2014年に亡くなられましたが、この曲はパッサカリアとヴァリエーションの手法を織り交ぜた意欲作で、対位法の腕が光る名曲です。そもそもこのチャンネルはこういった本当に知られていない曲を紹介するのが本義ですので、この一位には驚きつつも、とても嬉しいい結果となりました。

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 ということで今年も皆様お世話になりました。
 当チャンネルはもちろん今後も収益化など度外視で、ひたすらにマイナーを掘っていく姿勢は揺るぎません。資料集めやデータ化は大変ですが、多くの人に知ってもらう、埋もれた曲に生命を取り戻してもらう、そしてレパートリーの参考になれば幸いです。

 

本年も本当にありがとうございました。

香水屋さんで変わった香水に出会う

こんにちは、なんすいです。

使っている香水が無くなってきたので、香水好きの友達と一緒に新しいものを買いに行ってきました。

 

私は香水ぜんぜん詳しくないので、友達に案内されるがまま、たぶん合計70種類くらいの匂いを嗅ぎ比べたと思います。

鼻がとても疲れました。

 

アートとしての香水「ニッチフレグランス」

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香水といえば、花とか石鹸といった心地良い香りがして、お洒落や身嗜みとして付けるイメージがあります。

しかし最近は、「自分らしさ」を纏うという目的で、より個性的な匂いの香水が増えているようです。

万人受けする「いい匂い」に拘らず、芸術性を押し出した香水のブランドは、「ニッチフレグランス」と呼ばれています。

 

名古屋駅には新進気鋭のフレグランスブランドを集めた「NOSE SHOP」というお店があり、そこでニッチフレグランスを体験することが出来ます。

g.co

 

私も友達に案内され、NOSE SHOPで色んな商品を試して来ました。今回はその中でも印象的だった2つのブランドを紹介します。

気になった人はぜひNOSE SHOPに寄ってみて下さい。

 

 

 

Maison Matine

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Maison Matine は、2019年に創設されたパリのニッチフレグランスメゾン。

自由さと親しみやすさを意識した現代的なフレグランスを作っているそうです。

以下のようなラインナップがあります。

 

アバン ロラージュ/嵐の前

プンプン/あるがまま

ワルニ ワルニ/こっちにおいで

エスプリ ドゥ コントラディクション/反駁の精神

あらしのうみ/あらしのうみ

バン ドゥ ミディ/真っ昼間の海

イントゥ ザ ワイルド/分け入っても密林

など…

 

おおよそ香水の名前とは思えないようなものばかりですね。

これらの香水はどれも、付けられた名前をイメージしたような匂いを持っています。

 


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「ワルニ ワルニ/こっちにおいで」

嗅いでみると、確かに、スパイスっぽい怪しげな第一印象の後に、引き込まれるような深い匂いがゆっくり顔を出してきて、何か誘われているような気分になります。

 


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「プンプン/あるがまま」

複雑な匂いではあるんですが、なかなかどうして、「あるがまま」な感じの素朴さが最後に印象として残ります。

 

こんな具合に、全部匂いを嗅いでみると確かに、とネーミングに納得出来るようになっていました。

共感性の高い高度な大喜利が、嗅覚の世界で行われているようです。

そして同時に、決して香水として万人受けする所謂「いい匂い」とは言い難いものばかりでした。

くさいとまではいかない、いい匂いなんですが、いい匂いでのみあることを目指してはいない感じがします。

 

The House of Oud

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2016年に創設されたイタリアのブランド。

「人生における魔法の瞬間」を「目と鼻で体感する」と謳っており、パッケージにも気合が入っています。

 

ザタイム/現在

ジャストビフォー/過去

リブインカラーズ/未来

エメラルドグリーン/愛の系譜

ルビーレッド/情熱的な愛

サファイアブルー/真実の継承

ワビサビ

ギャンブリング

など…

 

ネーミングが厨二病っぽくてくすぐられます。

先程のMaison Matineが情景的なテーマだったのに対して、こちらの方がやや抽象的な題材を扱っている感じがします。時間だとか愛だとか。


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「ワビサビ」。これにはなんと、香水としては珍しく本ワサビが使われているそうです。

ワビサビってワサビだったんだ、と思いながら嗅いでみると………意外とワサビの匂いはしません。

侘び寂びの匂い……も別にしないかもしれない。

どちらかと言えば、海外の人が「Wabisabi」という概念を聞いて思い浮かべたイメージ、の匂いがしました。地に足のついてない感じ。


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一方で、「ギャンブリング」はラインナップの中で最も「わかる!」となった商品でした。

トランプゲームの舞台が目の前に浮かぶよう、かなりギャンブリングって感じの匂い。

この匂いを毎日身に纏いたくはないですが、他人事に嗅いでいる分にはとても楽しいです。

 

アートとしての香水

これらのニッチフレグランスは芸術的でありながら、同時に独自性を求める人々のニーズに応えデザインされた商業作品としての要素も多分に含んでいます。

香水が芸術として認められるかどうかは議論が分かれる問題ですが、一般に匂いを主体とした「嗅覚アート」の分野は、歴史が浅いながらもいくらか発展しているようです。

 

嗅覚アートの第一人者であるMAKI UEDAは、食べ物や体臭などのありのままの匂いを香水化する自身の技術をもって、さまざまな嗅覚アートを発表しています。

 

MAKI UEDA

代表作「オー・ド・パルファン パーフェクト・ジャパニーズ・ウーマン」は4つの香水で構成されたインスタレーション作品で、各々の香水は「日本の社会が期待する女性像」を象徴する香りで出来ています。

それぞれ「糠味噌」「畳」「味噌汁」「石鹸」と名が付いています。米糠をアルコール抽出したり、味噌汁を蒸留したりと、かなりダイレクトな方法で匂いを香水化しています。

本人の解説ページもあり、作る様子の写真なども載っていて面白いので読んでみて下さい。

www.ueda.nl

 

糠味噌の香水は結構嫌だなぁ。

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というわけで、途中で香水繋がりのアート作品も紹介しましたが、いかがでしょう。

先の作品に比べればニッチフレグランスは全然商業的ですが、それでもかなり変わった匂いに出会えて、香水の固定観念が結構揺さぶられるのでおすすめです。身近に嗅覚アート的なものを体験してみたい人は行ってみると面白いと思います。

 

なお、色んな香水を試して回った結果、最終的にBon Parfumeurというブランドの「101」「201」を買うことにしました。

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ここのブランドは商品名が全部番号になっています。1桁目が1ならフローラル、2ならフルーティといった具合にカテゴリごとに番号が振られている感じです。図書館の分類番号みたい。

普通にいい匂いがします。

俺がエスペラントやる話〜検定受験編〜

皆さんお久しぶりです、ぎょくしです。そして今回は、またまたエスペラントの話です(深刻なネタ切れ)。

 

前回までのあらすじ

エスペラントにハマって、そして一度は離れたものの、「あんだけやったのに話せないの勿体なくね?」という天啓が降ってきたことにより再度勉強を始めた。ちょうど八ヶ岳エスペラントの合宿やってたのもあって行くことにした。合宿は結構面白かった(上記記事参照)。

 

それから何をしてたか

で合宿から帰った後は、電車の中でDuolingo単語帳やって、家帰ったら文法テキスト開いて、時にはサボって...というような日々を過ごしてました。

 

当面の目標はエスペラント検定4級に合格すること」と決めていたので、とりあえずやるべきことは試験範囲を抑えることです。エスペラント検定の4級と3級は単語の出題範囲が決められているので、4級の単語リストを公式HPからダウンロードして単語帳をコツコツ作りつつ、テキストを進めていきました。

 

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テキストはことのはアムリラートの言語監修であり、八ヶ岳エスペラント集中学習の主催者でもある藤巻先生の「はじめてのエスペラントを使用していました。4級の試験範囲は、分量的にはテキストの約半分なので7月頃には4級の試験範囲はあらかた終えることができました。テキストを終えた後は、定期的にテキストに目を通すようにしていました。

 

会話試験対策についてですが、単語・文章の読み上げ問題対策はあまりやりませんでした。というのも発音の仕方は、ことのはアムリラートをプレイしていたので、ある程度耳慣れていたからです。ただしcとĉの違いや、sとŝの発音は少し慣れないところがあったので、「初めてのエスペラント」に出てくる例文をできるだけ音読するようにしていました。あとはプロイェクトバベルのエスペラント集会には積極的に参加するようにし、会話力を磨くようにしていました(プロイェクトバベルについては下記記事参照)。

 

 

そんなこんなで、過去問も取り寄せたので早速やってみたところ...
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いや、めちゃくちゃギリギリやんけ!!!!(合格点は60点)

 

そもそもこの過去問が行われた時代には単語リストが公開されていなかったので、試験範囲が若干異なるというのはありますが、それにしてもギリギリすぎる!これは!マズい!!!!!!

 

こんなにもできていない理由はただ一つ:

単語が覚えられていない

 

そう、この時点では単語帳は試験範囲のまだ5分の3くらいしか完成していなかったので、これはよくない。大慌てで単語帳を作って覚えるのでした...(7月中〜下旬くらいには完成させました)。

 

自分流単語の覚え方

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単語の覚え方の話題が出てきたので、ここで自分の単語の覚え方をシェアしようと思います。受験生の皆さんは是非是非ご参考くださいませ。

 

①単語をまず一定数に区切る

一気に覚えるのは無理なので一定数に区切ります。ペラペラめくるタイプの単語帳ならこれはある程度自動的にできるので、その手の単語帳を使用すると良いでしょう。

 

②単語帳を作る

単語帳を、作ります。自分は紙の辞書をひきながら「これ、よく使いそうだな〜」ってものを書くようにしました「単語帳を作りながらもちゃんと単語を覚える!」なんて器用なことは自分にはできませんでした。

 

③単語の存在を知る

ようやくスタート地点です。まずは記憶を「無」から「なんかこんな単語あったなぁ」というレベルに持っていきます。とりあえずはエス→日を続けて、『その単語が存在してたな〜』ってことを頭に入れます。

 

④単語を覚える(エス→日)

次に単語帳をエス→日で答えられるようにします。コツは「どんな手を使ってでも覚える」こと。スッと覚えられるものはそのまま覚え、どうしても覚えられないものは語呂合わせ「この単語の次の単語はこれだったな」という覚え方を使っても構いません。とにかく覚えます。6-7割できるようになったら次のステップに進みます。

 

⑤単語を覚える(日→エス)

④ができるようになったらその逆です。次は日→エスが答えられるように覚えます。エス→日をちゃんと覚えていれば多少はできますが、それでもパッと出てこない単語はあるものです。これも6-7割できるようになったら次のステップへ。

 

⑥単語帳をシャッフルして答える&音楽を聴きながらやる

ここで一度単語帳をシャッフルして順番をバラバラにし、再度エス→和と和→エスにチャレンジします。単語の出てくる順で覚えているものをこれでつぶしましょう。また、音楽(できれば歌詞のあるもの)を聴きながら勉強するのも良いでしょう。音楽を聴きながら勉強すると、当然集中の妨げとなります。そんな状態でパッと出てこない単語は覚えられていないものなので、ここで覚えるようにしましょう。

 

エス→和で自分の実力をテスト

ある程度自信がついたら、一度自分の実力をテストしましょう。再度シャッフルして、和→エスで自分の実力をテストしましょう。ここでは、実際に書き取りを行い、書き取れなかったものやパッと出てこなかったものは単語帳から抜き出して「もう覚えた単語帳」と「出来なかった単語帳」に分けます

 

⑧新しい単語帳&出来なかった単語帳をやる、時々復習

ここらへんにきてやっと次の単語帳へ進みます。新しい単語帳をやる手順も上記の①から順番にやっていきます。で、それをやりつつ「出来なかった単語帳」をやります。「出来なかった単語帳」は和→エスエス→和を織り交ぜて行い、そして時々⑦の実力テストを行い、「出来なかった単語帳」を少しづつ減らしていきます。また、「もう覚えた単語帳」もたま〜に見返したり実力テストを行って、出来なかったものは「出来なかった単語帳」へ戻します。

 

このように少しづつ前進して覚えていきました。いや、この勉強方法、受験の時に知っておきたかったな...

そんなこんなで

そんなこんなで、単語を覚えながら過去問を解いていくと...

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おおおおお!だんだん高得点が取れるようになってきたではありませんか!!!68点を取っている写真もありますが、試験範囲をしっかりと頭に入れたことにより、「今回は試験範囲外のところも出てるしな」と割り切って試験勉強をしてゆくことができました。そうして試験日を迎えることになります...

そして試験日


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そしてついに明日は試験日。前日の夕方に会場近くのホテルへチェックインして、試験会場も下見し、準備は万端です。明日は頑張るぞ!(といいつつ部屋でスマホポチポチしてました...)

 

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で、当日試験会場へ向かい...

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うおおおお...

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うおおおおおお!ここが俺の戦場だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!

 

試験会場に入ると、思ったより若い顔ぶれでした。エスペラント大会にはご高齢の方が多い」という話を聞いていたので、少々驚ました。ま、高齢の方々は既にペラペラに喋れるもんな...

 

席についてソワソワしていると、問題用紙兼解答用紙が配られました。試験時間は、4級では60分。その後、終わった人から会話試験の面接を始める形式です。いよいよ始まります。

 

さあ、ついに試験が始まりました。「何か新しい出題形式はあるのかしら」と身構えておりましたが、特段変わった出題はなく、ほぼ公式サイトに載っている模擬問題や過去問の通りでした。

 

で、サクサク問題を解き進めていくと...

 

次の単語の意味を答えよ

vendilo

 

?????

 

フワッとした意味は分かります。vendiが動詞で「〜を売る」という意味で、ilo「〜する道具」という接尾辞。で、それを組み合わせると...

「売る道具」

 

?????????????????????????????

 

「売る道具」って何だよ、「売り物」のこと?でもそれ言うなら〜iloじゃなくて〜aĵoを使うべきだし。バーコードリーダーのことか?マジで何?

 

結局その答えが分からず、絶対違うであろう「売り物」と書きました...因みに正解は

 

販売機(自動“販売機”とかのそれ)

 

でした。マジで何なんだよ...

 

とりあえず筆記試験を早めに終えたので、次は会話試験です。会話試験は筆記試験の隣の部屋で行われます。これもまた、過去問や模擬問題とほぼ一緒の出題形式でした。

が、会話試験の読み上げ問題の文章中に「1945(mil naŭcent kvardek kvin)」という数字が出てきた時にはマジでビビり散らかしました。こんな長い数字の読み上げ出題しないでよ〜

 

こうして、私のエスペラント検定4級受験が終わったのです。

 

午後はエスペラント大会

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午後は試験会場と同じ会場でエスペラント大会が開催されていたので、そちらにも参加しました。

 

とりあえず開会式に出席し、「(単語力ねえから全然わかんねぇな〜)」と思いながらエスペラントの話を聞いていると全員が立ち上がり、「La Espero」の斉唱が始まりました。「La Espero」はエスペラント界では、いわば「国歌」のような立ち位置の歌で、こういう場で歌われることは知っていましたが、その場に初めて立ち会えて少し感動しました。なお、歌詞も前のスクリーンに出てるし、そもそもバリバリに予習してあったので自分もちゃんと歌いました。

 

その後は即売会のようなことをやってる部屋の、ことのはレルナード(ことのはアムリラートの最新作)のブースへ行きました。何やらこの会場でしか手に入れられない特典があるとかないとか...これは手に入れねば... などと思いつつブースへ行って話をすると、キャラクタが印刷されたデカいタスキと、「とあるミッション」を託されました。

 

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そのミッションとは、「会場にいる人に『どこの国に行きたいですか?』という質問をエスペラントでして、回答とその理由を聞いてこい」というものでした。なるほど、ことのはアムリラート作中で凛が異世界語でなんとかコミュニケーションをしようとするのを追体験しろということですね...(マジか)。まあ、今回のエスペラント大会のために必死で勉強してきたので、その実践ということでやってみることにしました。

 

会場では名札をつけるのですが、初心者だけど積極的に会話してみたい人は「金色のリボン」を、初心者に優しく対応してくれるベテランエスペランティスト「赤リボン(だったはず...)」をつけることになっているので、赤リボンをつけている人に狙って話しかけることにしました。

 

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...ということで回答が三人分集まりました。かくして私はことのはレルナードのポストカード全三種を手に入れることができたのです。

 

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その後は友人達+その場で知り合った方々と立ち話をしていました。かれこれ1時間半ほど、積もり積もったエスペラントや、その他の言語や、VRチャットの話をしていました。有意義で非常に楽しい時間を過ごすことができました。

 

そこから少しして、初心者向けの「エスペラントで話してみよう!」みたいなイベントがあったので参加することにしました。初心者向け、とは書いてあるものの初心者とは思えんレベルのエスペランティストが多数参加されてて、普通に面食らいました、いや、レベル高ぇよマジ...

 

大会二日目もありましたが、2日目はフラッと行って本だけ買ってそのまま帰りました。いつかはちゃんと講演とか聞こうと思いますね...

 

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合格発表

そこから数週間後、合格発表のメールが届きました。結果は...

 

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合格

 

筆記試験は、vendiloがわからなかったのと、試験終了直後に判明した凡ミスが一問(←くやしい)、ほかにももう一問間違えているところがあったようです。が、予想を超えて高得点をとることができました。また、会話試験が満点だったのには自分でも驚きました。や、ことのはアムリラート様様ですわ... みんな、ことのはアムリラート、やろう!

 

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そこから一週間ほどして合格証も届きました。マジで嬉しいです...これからも頑張ります...!!!

 

おわりに

てなわけでエスペラント検定を受験&大会に参加したわけですが無事合格することができました。4級を受験して、単語力を含めた自分のエスペラント基礎力がグッと高まった気がします。これからエスペラントを学習される方は、まず4級合格を目指してはいかがでしょうか。また、これから検定を受験されたり大会に参加される方は、本記事が少しでも参考になれば幸いです。これからも勉強頑張るぞ...!

 

ではまた!

ヒットチャート世界一周2023 アフリカ・アメリカ・オセアニア編

~前回までの記事~

nu-composers.hateblo.jp

 

nu-composers.hateblo.jp

 

というわけで今回で最終回です。アフリカ〜オセアニアまでサクッと回って日本に帰りましょう。なぜサクッとかというと、アフリカのチャートが南アフリカ共和国しかないからです。サハラを突っ切るぜ!

 

南アフリカ

Mnike - Tyler ICU & Tumelo.za

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なんともいえない低予算MVですが、、この後これを更に上回る低予算が我々を襲います。MVに金をかける時代は終わったのです。

そしてこの曲はマジでなんなのか? 脈絡が、脈絡がないまま終わってしまった.......

 

Sgudi snyc -De Mthuda, Da Munziqal Chef, Emoh

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フルハウスとかその辺のノリのMV。内容がカオスすぎて普通におもろいです。

それはそれとして音楽としても黒人的なノリが感じられてまあまあ面白いです。

 

バルトロメウ・ディアスよろしく喜望峰へ到達したら、コロンブスよろしく新大陸へとまいりましょう。

まあ、アメリカのチャートはないんですけどね! アメリカのチャートが世界基準ってか?

 

メキシコ

Lady Gaga -Peso Pluma

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QueenのRadio Gagaから名前をとったことで有名なLady Gagaも、名前が引用される時代に突入したようです。まあまあ本望なことなのではないでしょうか。

めちゃくちゃラッパーみたいな格好とMVなのにやってることはめちゃくちゃアコースティックで面白いです。どうなってるんだ。

 

El AMOR DE SU VIDA - Grupo Frontera x Grupo Firme

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レゲエにしては爽やかなラテン色の強い一曲。にしても中南米ではアコーディオンはそんなにメジャーな楽器なのでしょうか? こんな蛍光イエローの楽器初めて見ました。

 

ブラジル

Ta OK - Dennis e Kevin O Chris

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流石に短すぎるのではないか? 何これ。マジでどういう文脈で売れているのかが謎です。TikTokとかかな。

そしてヨーロッパと比較して明らかにビートがラテンのノリで面白いです。こんなに違うことあるんだ。

 

Seu Brilho Sumiu - Israel & Rodolffo

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なんというか、このクッソスカスカの音楽で会場がバキバキに盛り上がる文化圏が自分から遠すぎてまるで遠い異国の話かと思ったら遠い異国の話でした。遠い異国だからという問題なのか?

 

チリ

次はアンデス山脈を挟んでチリへ。山脈の西側の音楽は有名ですが、チリの音楽と言われるとパッと思いつかないので気になるところです。

Columbia - Quevedo

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なんというか、曲名がすごくないですか? Columbiaて。日本で「韓国」という曲が流行るみたいなもんですよ。どういうナショナリズム

 

Amargra - Karol G

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さっきから愕然としているのですが、南米には同じリズムの曲しなかいです。このリズムの曲以外全て駆逐されてしまっています。やべ〜、飽きないのか? チリ人「じゃあ日本人はアニソンばかり聴いてて飽きないのか?」そうですね。私は飽きるんですけど、飽きない人もいるみたいですね。

 

そして大洋を渡り、オセアニアへ。

 

オーストラリア

音楽は実質イギリスなのではないかという疑念が拭えない国。実際はどうなのか。

イギリスでした。

 

 

帰国

いかがでしたか?

全体を通して、差があるようなないような。山脈とかの地理的隔離によって違いがあるのではないかと期待したのですが、あんまり関係ないようです。それよりも民族的なアイデンティティが現在も維持されているかどうかの方が音楽性の差には重要なのかもしれないです。

そしてヒップホップが流行っているのは前回と変わらず。果たしてこの潮流はどこまで続くのか、あるいは他の潮流が生まれるのか楽しみです。ではまた数年後。

 

人は鳥に憧れる

 作曲家といっても何も特別なことはなく、単なる人なのだ。だから多くの人と同じように、感動や内発的な表現の対象が偏ってくる。風に何かを感じ、花の匂いに季節を見て、鳥の姿に憧れを抱くのだ。もちろん多くの人と感動のポイントが違ったり、そう言った感情的な動きを音楽に盛り込むことを否定する作曲家もいる。
 しかし多くの作曲家はあなたと同じただの人であることがほとんどである。だからこそ多くの人に対して、抽象的な音楽という方法論を通じても、感動を共感し、分かち合うことができるのかもしれない。
 今日はそんな共感しうる世界の中から、代表者として鳥を選び、いくつかその表現の在り方に迫ってみようと思う。


古い例として有名なものをまずは見てみよう。

ルイ=クロード・ダカンの例

ルイ=クロード・ダカン

 ルイ=クロード・ダカンはフランスの作曲家で1694年に生まれ、1772年に没した古い時代の作曲家である。彼自身がクラブサン、オルガンの名人で、最終的にはノートルダム大聖堂オルガニストまで上り詰めた人物であったこともあり、その作品の多くが鍵盤楽器のための作品である。
 そんなダカンの名作として世界中で弾かれ続けている作品に「かっこう」がある。これはクラブサン組曲の第16曲にあたる曲であるとのことだが、おそらく多くの人は知っている曲なのではないだろうか。

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 この曲は聞けば分かる通り、かっこうの鳴き声をモチーフとして書かれたロンドである。右手と左手にそれぞれかっこうのテーマが鳴らされ、極めて効果的かつ、どこか物悲しく進む秀逸な楽曲である。
 難度が低いことから現代では子供のレパートリーとして好まれているが、ちゃんとした解釈の上に聴きたい一曲でもある。

「かっこう」の冒頭

 この様に鳴き合いを模したように両手にテーマが展開され、その後変奏してゆく。かっこうの声とは里山の象徴みたいなところが人で強いが、やはり自然描写の対象として登場していると思う反面、この曲の持っている暗い雰囲気は、かっこう自体に何かしらの感傷的なものを作者が感じている、あるいは投影していることの現れのように感じる。
 こういった古い時代から「鳥」というテーマは普通に存在していた。ヴィヴァルディの四季の春の楽章にも鳥の鳴き合いが表現されていることは多くの人の知るところだろう。

 

もう少し時代を下ってみよう。


今度はあのベートーヴェンの鳥の使い方だ。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

 ベートーヴェンと聴力の問題はよく語られるところであるが、耳の異変を察知したのは日頃の散歩のなかで聴こえる音が変わっていったことだとも言われている。そして本来そこにたくさんあふれていた音を織り込んだとも言う作品が交響曲第6番「田園」である。

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 絶対音楽の代表格されてきた交響曲にはハイドンが大規模なメスを入れて、その世界を大きく拡張したのは多くの人の知るところだが、その次のメスはベートーヴェンによって入れられたと言ってもよいだろう。
 この曲は完全に描写音楽であり後の交響詩につながるような書き方がされているが、田園の風景は神の齎した奇跡であるという捉え方に立つと、そこには立派な絶対音楽としての質も持ち合わせていることがわかる。その一端だけでも彼の天才ぶりがわかるが、この曲には様々な自然音のメタファーが導入されていて、教会の鐘や、鳥の声、嵐などライトモチーフの走りとも言える方法で散りばめられている。

「田園」における鳥の描写

 第1楽章の一部の切り出しだが、フルートのパートに鳥の声を模したフレーズが使われている。田園の木立の中を抜ける道を行くと鳥の声が聞こえてくるという描写である。体系付けるとすれば、風景描写の効果としての鳥、ということができるだろう。そこにある音を描く、いわば効果音である。

 

次に一気に時代を下ってラヴェルの作品を見てみよう。

モーリス・ラヴェル

 モーリス・ラヴェルは言わずとしれたバスク系フランス人で、その手腕は天才的、非和声音の拡大や大胆なオーケストレーションを武器に時代を変えた作曲家と言えるだろう。本人がピアノが得意であった影響で、ピアノ作品にも近代フランスの代表的な名作が書かれている。その中に「鏡」というピアノのための組曲がある。どの曲も名曲だが、ちょっとその中ではあまり演奏人気の高くない「悲しい鳥」という楽章がある。

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 この曲集はちょっと不思議な設定になっていて、すべての楽章が具象的、表面的なものから引き剥がされている。その引き剥がしのツールとして「鏡」を用いているのである。つまりは、鏡に映ったものを主題として扱うことで、誰かが見たものという当たり前の風景を、鏡が映し出しただれにも見られることのない世界に仕立て上げたということである。このことでそれぞれの楽章のもつ表現の深さが際立ってくる。
 さて鏡に映る悲しい鳥とはなんだろうか。様々な表現ができるが、例えば飼われている鳥の悲しみを主題としたとして捉えることもできるだろうし、もう一歩奥深く囚われの人を自由を失った鳥になぞらえたとしてもまた違う世界が見えるだろう。
 冒頭に作曲家も人だから、皆と同じ思考をしていると書いたが、語弊を恐れずに言うとベースは同じだが、感じ方や表現の仕方はもっと深く繊細であることが多い。なので現代にあふれるアレンジ曲やDTMの類は音楽ではないと帰結することもできてしまうところがあるのかもしれない。そこにあなた自身の表現があれば別ではあるが、表現や感覚というものは理論よりももっと磨かなければ使い物にならないものなのである。

「悲しい鳥」の冒頭

 これがこの曲の冒頭部分だが、ぱっと三種類ほどの鳥の声が短いライトモチーフとなって組み合わされていることがわかる。それぞれの鳥が具体的に何なのかではなく、そこに鳥が数種類いるという観念が表されれば良いだけなので、架空の鳥の鳴き声でもそれと聞こえればよいのである。
 鳴き合いは悲しく、明るい未来へ誘ってくれる、我々のあこがれの鳥ではない。むしろ我々によって自由を奪われたものの悲しみを、人のいないところでそっと垣間見せた瞬間なのである。非常に味わい深い。
 この様に、鳥自体が何かのメタファーとして使われる例というのも我々人と鳥との関わりの多用さを示す良い例だろう。


 さて鳥と作曲家といったときに欠かせない作曲家がいる。そしてこれまでのどの作曲家とも違う形でそれを音楽に取り込んだ点でも見逃すことができない。それがフランスの現代の重鎮であったオリヴィエ・メシアンにほかならない。

オリヴィエ・メシアン

 オリヴィエ・メシアンは1908年にフランスのアヴィニョンに生まれ、その類まれな才能は音楽にとどまることなく、演奏家神学者そして鳥類学者としても知られる存在であった。また12音技法の概念を他の音楽のパラメータにも応用したトータルセリエリズムの創始者としても非常に知られているところである。緻密な数的構造とそれを破綻させる要素を混在させることで、独自の音楽のスタイルを築きあげ、その後の現代音楽の歴史に極めて大きな影響を与えた。大変長命であったが1992年フランスのクリシーにて83歳の生涯を閉じた。

 彼が鳥類に詳しかったことは前述のとおりだが、何がこれまでと違ったのか。自著の中でその方法論について詳述している。曰く「鳥のセリー」である。

 まず鳥の鳴き声を卓越した絶対音感を駆使して聞き取り、譜面に起こす。これを基本的な音列、リズム素材としてセリエリズムの音楽に取り込んでゆくのだ。ここにフーガ的な技法の応用から得られた音列変形や、付加、脱落等といった操作を用いてリズム変形していく。このようにして鳥の声そのものから、音楽を計算的に作り上げてしまうというものだ。
 この手法はその後スペクトルの技術が発達してからさらにその倍音成分の変異を伴う形でも発達した。いわば自然の音を人の手で加工して音楽にするタイプである。

 まずその音楽を聞いてみよう。フルートとピアノのために書かれ、現代ではフルートのレパートリーとしてごく普通の曲ともなった「黒つぐみ」である。

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 なるほど鳥の鳴き声であることがはっきりわかると思う。しかしそれを音楽化してゆくプロセスにセリエリズムの技法を用いるとは驚きである。

「黒つぐみ」の冒頭

 楽譜の冒頭は上の用になっており、フルートによる「鳴き真似」からスタートする。その後は得られた音列をもとに構成された音形にリズム的な付加・脱落、ハーモニー的付加・脱落などを経て、あるときはカノン的に進行してゆく。
 実に斬新であり、また自然の音を題材にしていることから、その音楽は現代的ではあっても、何故か心地よさを伴った美しさがある。この様に鳥そのものを題材にする手法も完成されてきた。


 では本邦で鳥と言ったらだれだろう。
 まっさきに二人の名前が思いつく。一人目は武満徹、二人目は吉松隆だろう。彼らの鳥の使い方も見てみようと思う。

武満徹

 武満徹は1930年に東京は本郷に生まれた日本を代表する作曲家である。音楽的起源は父のコレクションしていたレコードであったそうだが、恐ろしく感受性の強い人であり、幼い頃に聞いたシャンソンの記憶を生涯追いかけたことは忘れてはならない。
 その後、武満は実験工房に所属するなどしたが、作曲については音大組ではなく、清瀬保二について勉強した時期もあったが、殆どは彼自身の独学である。その結果独自の方法論を自己研究から導き出していった。その過程でメシアンの方法論に触れて極めて触発され、メシアンの発見した移調の限られた旋法をよく用いる他、和音の制御に数理性を持ち込んでいたりもする。しかしそれらは厳密ではなく、適宜自由に崩され、本人曰く音の海に僅かな方向性を与えるだけという独特の汎調性的な音楽に進化してゆく。常に詩的で繊細、メロディアスであることを大切にした作曲家であったが、1996年惜しくも65歳にして病魔に負けてしまった。

 武満はその作品に「シリーズ」ものが多いことでも知られるが、鳥についても「鳥シリーズ」的なものがある。その中でも最も鳥を意識して書かれたと言っていいものが「鳥は星形の庭に降りる」であろう。この曲は、マン・レイ円形脱毛症の写真展を見たあとに、珍しく夢を見て、その円形脱毛症の部分が星型になったところに、鳥が舞い降りてくるという内容に触発されて書いた作品だという。星型ということからこの曲は「5」という数字に緩く支配されている。本人曰く汎ペンタトニック的な作品だというが、鳥のモチーフがはっきりと登場することでも有名である。
 武満徹という作曲家は作品をまたがってモチーフを流用し、そこに意味をもたせる作風であったから、この「鳥のモチーフ」も他曲でも聞かれるわけである。

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 冒頭にすぐ「鳥のモチーフ」が現れるのがおわかりだろうか。

武満の「鳥のモチーフ」

 冒頭部分のオーボエパートは上記のようになっている。
 彼の鳥の表現は独特であり、替え指による同音の吹き直しや、ハーモニックスとそうではない通常の音で同音を鳴らすなどの方法で描かれる。海鳥の鳴き声のような物憂げな雰囲気を持つ。これは彼が生涯のテーマとした「愛」と「海」の関係にも由来するのではないかと考えられるが、それまでの鳥の描かれ方とは一線を画している。
 詳しく説明すると長くなるのでこれくらいにするが、観念的でその存在が何か別のメタファーを呼び起こすというちょっと高度な表現である。


最後は吉松隆である。

吉松隆

 吉松隆は1953年に東京は代々木の生まれ。
 この人も非音大系作曲家であり、出身は慶應義塾大学工学部である。しかし学生時代からプログレッシブ・ロックにのめり込み、作曲家になりたいと思うようになった。大学在学中に松村禎三に弟子入りしている。ところが松村の紹介で対位法と和声について川井学について学び始めたが、まったく体が受け付けず放り出してしまった。
 また難解で一部の人のものになってしまっている現代音楽に嫌気を催し、当初「世紀末耽美主義」などといって、旋法性とプログレ由来の変拍子を武器に独自の姿勢で音楽を書くようになる。
 このことで楽壇には嫌われ、正当な評価をなされなかったが、大衆や一部の演奏家からの寵愛を受けて次第に知名度を獲得、日本を代表する作曲家の一人となった。そんな吉松は非常に多くの作品で「鳥」をテーマにしていることでも有名だ。その中でもとりわけ有名な曲としてアルト・サックスとピアノのために書かれた「ファジー・バード・ソナタ」がある。

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 美しくややPopの匂いがある中で、架空の鳥が歌いまくっている。この曲の鳥には特定のモデルない。鳥を感じればいいのである。

「Fuzzy Bird Sonata」冒頭部

 楽譜の冒頭は上記のようになっている。
 旋法の上を鳥の鳴き声のような音形が縦横に走る。鮮烈でどこか冷たさを持っている。変拍子との組み合わせも斬新で非常に格好良い。この曲は随所にこのような形で架空の鳥の声が敷き詰められている。幻想的でクールな描写であると同時に、他の曲では悲劇を囁く存在であったり、彼の書く架空の鳥はいつでも代弁者なのである。

 

 どうだろう作曲家と鳥の関係をざっくり見ると古来から関係していることがわかる。まあその声の美しさを音楽の手本と見るなら、人間より前からそこに音楽があったとも言えるわけで、そこに深い関係が生まれるのはごく自然なことである。

 武満徹が御代田のアトリエで作曲をして、そのまま徹夜になり「今回は中々良く書けた」と思ったその時に外でさえずる鳥の歌が聞こえてきて、私の作品など大したものではないと意気消沈したというエピソードがある。
 人は何かを感じようとする生き物である。そしてそれをどのような方法でか音楽化するのが作曲家なのであって、表現というものが徹底的な深い探求をベースにしていなければならない一つの証左でもある。

鳥っていいね!ぐらいのノリで書かれるものは芸術ではないのだ。

感情の鍛錬を忘れてはならない。

音列からスケールを生成する(べき生成スケール前編)

こんにちは。なんすいです。

 

今回の記事では、前回「チャーチスケールの近縁を探す」で紹介した用語を一部断りなしに使うので、記事最後の用語集を眺めてから読むのをおすすめします。

https://nu-composers.hateblo.jp/entry/2023/10/15/190000

 

前回の記事では、スケールに「正規性」という条件を導入し、チャーチスケールに近しいスケールを探してみました。

しかし、実は重要なポイントをすっ飛ばしていたのに気が付いていましたか?

それは…

 

「スケールって何?」

f:id:nu-composers:20231112133546j:image

 

前回の段階では説明しなくても特に問題無かったのですが、今回はどうしても触れなければいけません。

これまでなんとなくの定義でスケールという名前を使っていましたが、改めてスケールとは何なのか、ここでの数学的な定義を明確にしておきましょう。

 

スケールの定義

スケールとは、ある特別な条件を満たす音列であると言えます。

------------------------------

★n音律のスケールとは、次の3条件を満たす音列である:

①要素に0を必ず含む

②全ての要素が0以上n-1以下の相異なる整数である

③要素が左から小さい順に並んでいる

------------------------------

 

例として、n=12(12音律)のもとで、音列a=(0,3,5,6,9,10)を考えてみます。

これは要素0を含んでいるので条件①を満たしています。

また、全ての要素は0以上11以下、さらに相異なる数になっているので②もOK。さらに0<3<5<6<9<10より③もOKです。

したがって、音列aはスケールと見做すことが出来ます。

 

スケールとは言えない例も見てみましょう。やはり12音律のもとで考えます。

b=(0,3,5,5,9,10)とすると、bは要素0を含み、さらに小さい順に並んでいるので①③はOK。

しかし、要素5が重複して含まれているため②は満たしません。

よってbはスケールと見做せません。

 

またc=(0,3,6,5,9,10)とすると、cは①②を満たしますが、今度は0<3<6>5<9<10と小さい順に並んでいないため③が満たされていません。

よってこれもスケールではありません。

 

 

…いかがでしょうか。例を取ってみると何てことはないかなと思います。

前回紹介した各種「スケール」と名の付くものたちも、もちろんこの条件を満たしています。

 

 

 

スケール化可能な音列

さて、以上を踏まえた上で、「より一般の音列からスケールを生成する」というのが今回の本題です。

------------------------------

★n音律のもとで音列aが次の条件を満たすとき、スケール化可能であるという:

①要素に0を必ず含む

②各要素a_jに対してMOD(a_j)が相異なる

ただしMOD(a_j)=(a_jをnで割った余り) である。

------------------------------

 

n=12(12音律)のもとで、例を見てみましょう。

a=(0,10,20,30,40,50)とするとき、

MOD(0)=0

MOD(10)=10

MOD(20)=8

MOD(30)=6

MOD(40)=4

MOD(50)=2

より各要素のMODは相異なり、また要素0も含まれています。

よってaはスケール化可能な音列です。

 

一方、b=(0,10,20,30,40,50,60)の場合、

MOD(0)=MOD(60)=0

より重複項が存在するため、スケール化可能ではありません。

 

ここで、音列がスケール化可能ならば、各要素のMODを小さい順に並べ替えることで、「スケールの生成」が出来ることになります。

 

先程のa=(0,10,20,30,40,50)からスケールを生成してみると、

MOD(a)=MOD(0,10,20,30,40,50)

=(MOD(0),MOD(10), ... ,MOD(50))

=(0,10,8,6,4,2)

より各要素を小さい順に並べ替えて、

→[0,2,4,6,8,10]

となります。

すなわち、音列aから[0,2,4,6,8,10]というスケールが生成出来ました。

これは音列aに対して一意的に導かれたものになっています。

 

このスケールの生成をイメージしやすく図示すると、下図のように何オクターブもある鍵盤から音をいくつか拾ってきた時に、これらの音を1つのオクターブ内に配置し直してスケールを構成する、という作業と等価です。

各要素のMODを取るという操作が、鍵盤上の各要素をオクターブ違いの同じ音に移す操作に対応しています。

 


f:id:nu-composers:20231112132824j:image

 

一般の音列のスケール化

以上から、スケール化可能な音列からはスケールを生成出来るようになりました。

さらにこれを広げて、一般の音列に対してスケール化を考えることも出来ます。

 

まず、スケール化可能条件の②は取っ払ってしまって、①…「要素として0を含む」だけを満たす音列について考えてみましょう。

このとき、条件②が無いので、要素のMODが重複する可能性があります。

例えば、n=12(12音律)のもとで、先程の例で使用したb=(0,10,20,30,40,50,60)は条件①を満たしますが、MOD(0)=MOD(60)=0と重複項があるため②を満たさない音列になっています。

 

こういう時は、重複している要素を1つだけ残して他を消去することで、スケール化可能条件を満たす音列にすることが出来ます。

すなわち、bの場合は0と60が重複していますので、0だけ残して(0,10,20,30,40,50)とし、これをスケール化すればOKです。

 

以上の方法により、条件①さえ満たせばどんな音列でもスケール化出来るようになりました。

 

では、①すら満たさない音列の場合はどうでしょう。

このときは、各要素を同じ数ずつマイナスし、特定の要素が0になるようにすればOKです。

カラオケの移調みたいなイメージですね。

 

例として、n=12(12音律)のもとで、c=(4,14,3,6,10,15,28)という音列を考えてみましょう。

とてもスケールとは程遠い音列ですが、上の手順を踏めば必ずスケール化出来るはずです。

 

まず、cを「移調」することで要素0を作ります。

今回は最初の4を0にするために、各要素をマイナス4します。

 

(4,14,3,6,10,15,28)

(0,10,-1,2,6,11,24)

 

これで条件①が満たされました。

次に、各要素のMODを取って、重複を解消します。

 

(MOD(0), MOD(10), ... , MOD(24))

=(0,10,11,2,6,11,0)

0,11の重複を解消

(0,10,11,2,6)

 

これで②が満たされ、スケール化可能な音列になりました。

先の操作で既にMODを取っているので、あとは小さい順に並べ替えると…

 

(0,10,11,2,6)

[0,2,6,10,11]

 

となり、無事スケールが生成出来ました。やったー!

ここで、最初の音列は位数が7だったのに対して、出来たスケールは位数が5になっています。ちっちゃくなっちゃいましたね。

当たり前ですが、スケール生成の操作でMODの重複項を消去する過程を踏んでいるため、スケール化可能条件②を満たさない音列からスケールを生成した場合、位数が生成前と後で一致しないということが起こってしまいます。

 

さらに、先の生成では最初の「移調」操作で、全体をマイナス4することで要素0を作り出しました。

しかし、移調の仕方は一通りではありません。

例えば、先程のc=(4,14,3,6,10,15,28)に対して、今度は3が要素0になるように全体をマイナス3してみましょう。

 

(4,14,3,6,10,15,28)

(1,11,0,3,7,12,25)

 

ここから同様の操作でスケールを生成してみると…

 

MOD(1,11,0,3,7,12,25)

=(1,11,0,3,7,0,1)

重複を解消

(1,11,0,3,7)

並べ替え

[0,1,3,7,11]

 

あれ?最初のスケール生成とは異なるスケールが出てきてしまいました。

全体をマイナス4したものから作ったスケールは[0,2,6,10,11]、マイナス3したものから作ったスケールは[0,1,3,7,11]となっています。

すなわち、条件①を満たさない音列からスケールを生成する場合、作り方によってその結果は一意に定まらないことが分かります。

 

しかし、まだ言えることがあります。

[0,2,6,10,11]と[0,1,3,7,11]はよく見ると、巡回によって一致します。すなわち巡回同値関係にあると言えます。

一般に、条件①を満たさない音列からスケールを生成し、異なる0の取り方によって2通りのスケールs,tが生成された場合、sとtは常に巡回同値関係で結ばれています。

つまり、一般の音列からスケールを生成した場合、生成されるスケールが属する巡回同値類は必ず一意に定まる、ということになります。

 

 

 

べき倍音列によるリディアンスケールの生成

私たちにとって最も馴染み深いチャーチスケール、実はこれも、特殊な音列から生成されたスケールとして考えられます。

 

何かと無限に擦られるジョージ・ラッセル提唱の「Lydian Chromatic Concept」では、チャーチスケールの1つであるリディアンスケールが、「べき倍音列」から自然に構成される"根源的なスケール"である、というようなことが言われています。

 

べき倍音列とは、「ド、ソ、レ、ラ、ミ、…」と完全五度音程で堆積される音列のことです。

すなわち数列で表すならば、(0,7,14,21,35, ...)と7の倍数が並んでいくようなものになります。

このべき倍音列から、リディアンスケールを生成してみましょう。

 

まず、上のべき倍音列を位数7の所までで区切ります。

(0,7,14,21,28,35,42)

 

これにスケール化を施してみると…

 

MOD(0,7,14,21,28,35,42)

=(0,7,2,9,4,11,6)

並べ替え

[0,2,4,6,7,9,11]

 

このように、ちゃんとリディアンスケールが出てきました。

これは従来説明されるスケール生成の手順を、ちょうどそのまま数列の変換として書き直したものになっています。

 

いかがでしたか?

最後に断っておくと、このような手順によりリディアンスケールが生成されたということで、「これがリディアンスケールの絶対的な正体だ!」みたいなことを主張するものではありません。(逃げーる)

 

感覚が先立つ音楽の世界でその仕組みを論理的に解明しようとすると、どこかで必ず「飛躍」を生じざるを得ません。

したがってむしろ、論理的な手法は飛躍を含む既存の音楽理論の解剖、あるいは拡張していくための「道具」として使われるのが適当だと思っています。

 

すなわち、ここでのリディアンスケールの場合、これをべき倍音列による生成スケールとして見ること"も"出来、そしてそれが既存の理論にどのような影響を及ぼしているのか、どのように拡張されうるのか、について、話を進めていきたいところです。

次回後編ではそんな感じのを書く予定です。

 

 

 

【定義・表記集】

数列によって音列を表記する方法:インターバル構成など単に音列のときは()、スケールを数列で書くときは[]で囲むことで区別する

 

スケールのインターバル構成:スケールの各インターバル(隣接音程)を順に並べた数列

 

巡回同値関係:2つのスケールを適当な巡回によって一致させることが出来るとき、2スケールは巡回同値関係で結ばれているという

 

巡回同値類:どの2スケールを取っても巡回同値関係で結ばれているようなスケールたちの集合を巡回同値類といい、そこに含まれるスケールを1つ取ってきて括弧でくくり表記する

 

位数:スケールに含まれる音の個数

 

正規条件:①各インターバルが長さ2以下②長さ1のインターバルが連続しない

正規条件を満たすスケールを正規スケールと呼ぶ。

 

------------------------------

 

スケール:  n音律のスケールとは、次の3条件を満たす音列である:

①要素に0を必ず含む

②全ての要素が0以上n-1以下の相異なる整数である

③要素が左から小さい順に並んでいる

 

スケール化可能性: n音律のもとで音列aが次の条件を満たすとき、スケール化可能であるという:

①要素に0を必ず含む

②各要素a_jに対してMOD(a_j)が相異なる

 

スケール化: スケール化可能な音列に対して、その音列の各要素を小さい順に並べ替えてスケールを生成することをスケール化、生成したスケールを生成スケールと呼ぶ。

 

MOD: n音律のもとで、MODは次のように計算される:

単音eに対して

MOD(e)=(eをnで割った余り)

音列a=(a[0], a[1], ... , a[m-1])に対して

MOD(a)=( MOD(a[0]), ... , MOD(a[m-1]) )

東方曲紹介~東方幻想郷・東方紅魔郷編~

 こんにちは。夜の人はこんばんは。朝の人はドブレーラーノ。名作会では東方企画が動き出しそうなので、今回は自分の好きな東方の原曲及びアレンジ曲を挙げていきたいと思います。好きな曲と言いつつ紹介したいだけの曲も含まれていますが、そこら辺はご了承ください。ただ、全部紹介するには時間が足りな過ぎるので今回は東方幻想郷東方紅魔郷という二作品から紹介していきたいと思います。

 

 まずは、東方幻想郷です。

 

・BadApple!!

 

 

 言わずと知れた有名曲の原曲です。

 

 

 こっちがアレンジ版ですね。MMDでのダンス動画とかもあります。今はどうか分かりませんが、東方MMDは、MMD界隈で確実に三本の指に入るような強力コンテンツなので、東方をよく知らなくてもある程度インターネットに精通していれば一度は聞いたことがあるんじゃないかな? という曲です。上に挙げた影絵の奴は普通に映像のクオリティが高く、曲とは別でそちらも注目です。

 BadApple!! はアレンジがあまりにも有名なため、当然ですがアレンジは知っているけど原曲は知らないみたいな人が出てきます。それが一部の原曲勢からすると許せねーみたいで論争(?)が起こったり起こらなかったりしており、原曲のコメント欄で原作も二次創作もどっちも楽しもうよニキが出現しています。皆仲良くやろうよ。ラブあんどピンフ

 

 どうでもいいですが、あの有名YouTuberのヒカキンさんもビートボックス動画を出してますね。ふふふ。

 

 

 

・少女綺想曲

 

 

 冒頭の「うにょーん」みたいな音が好きです。でも、リプレイ回数が最も多い箇所は全然違う所でした。皆もっと冒頭も聞こうよ。

 ちなみに私は「東方ゲームセンター」というクソおもろい東方の二次創作があるんですが、そこで使われていて知りました。

 

 

 

 お次に、東方紅魔郷です。

 

妖魔夜行

 

 

 これは、東方紅魔郷1面ボスのルーミアのテーマ曲です。

 サビのメロディーの音色が独特で、なぜか少し懐かしさを感じます。やはり1面ということで、曲調もそこまで重くなく楽しさがまだ残っています。元気に飛び回っている感じですね。「妖魔夜行」という結構重々しい題とのギャップがあります。でもコメント欄見たら、「壮大な曲」という意見もあったりして訳が分からなくなってしまったのでとりあえず今はわかめを食べています。わかめとこんぶの違いも分からないのに、わかめを食べています。死にたい。



おてんば恋娘

 

 

 これは、東方紅魔郷2面ボスのチルノのテーマ曲です。昔、弾幕遊戯というスマホでできる弾幕ゲームがあったんですが、そこにチルノがいたためにめちゃくちゃ聞いたので思い出深いです。こんな思い出でいいんだろうか。
氷の妖精ということで、どこか冷たい印象もありつつ、でも妖精らしいおてんばな感じも見事に表現されています。妖精って何? 妖精って何? ってか妖精って何だよ!!! そんな概念持ち出すなよ!!!

 

 好きなアレンジはこれです。

 

 

 東方知りたてくらいのとき、東方に詳しい友達に「この歌詞見てだれのアレンジ曲か当ててみて」と言われたのですが、分かんなかったので「分かんない」と言ったら死ぬほど馬鹿にされたというトラウマ曲です。そんな馬鹿にしなくてもいいだろ。でもそれとは関係なく普通にいい曲です。これは、幽閉サテライトという音楽グループの曲なんですが、幽閉さんの曲は良曲が多いです。
 ただ、これはいわゆる二次創作なので、歌詞については解釈違いとかあるかもしれませんね。まあ東方はそういう感じのゲームでもないのであんまり歌詞がどうとかの問題はなさそうですが。

 

・メイドと血の懐中時計

 

 

 いきなり飛びますが、これは東方紅魔郷の5面テーマの曲です。5面ボスは十六夜咲夜という人なのですが、咲夜に至るまでの道中曲ですね。なんだかさっきから東方のゲームをよく知らない人に全く優しくない説明しかできてない気がしますが、許してください。5セントあげるので。トイプードルあげるので。そしてチワワになって天に昇るので。

 

 先ほどまでのルーミアやチルノと比べて、やはり曲調がちょっとシリアスな感じになっています。特にサビがいいですね~。何と言ってもサビがいい。この軽やかでちょっとポップな感じの音で、余計なものがあまり入っていない洗練された雰囲気が好きです。さすが完全で瀟洒な従者十六夜咲夜の道中テーマといったところでしょうか。

 

・月時計~ルナ・ダイアル

 

 

 続いても咲夜のテーマ曲です。こちらもいい曲ですね。オシャレで。特に冒頭が好きです。冒頭の一秒で相手が強敵であることを悟ることができます。強敵であることが分かりながらも、激戦という感じではなくて、あくまで一歩引いた感じなのもとても良いなと思います。
 咲夜はナイト・オブ・ナイツというアレンジがめちゃくちゃ有名なので、咲夜の原曲と言えばフラワリングナイトなんじゃね? みたいに思う人もいるかもしれませんが、個人的にはメイドと血の懐中時計とかルナ・ダイアルの方が好きです。まあでもこれは好みの問題なのであれなんですけど……ごにょごにょ……

 

亡き王女の為のセプテット

 

 

 続いてこちらは、6面ボスのレミリア・スカーレットのテーマ曲です。これも個人的にはだいぶ有名な方なんじゃないかな~??と思うんですが、どうなんでしょう。恐らく東方知っている人で知らない人はいないと思うんですが、外はどうか分かりません。東方の人気投票の音楽部門では毎年妹さんと一位争いを繰り広げています。そういえば、スカーレット姉妹丼とかいう言葉があったなぁと思い出す今日この頃です。でも今はスカーレットって言うと、ポケモンの方が出てくるんだろうなぁ、と思い、秋の夜風を感じます。なんこれ。

 

 ただ、一応有名どころということで紹介しましたが、実を言うとそこまで好きな曲というわけではないので、そこまでの感想が出てきません……。ええ曲やとは思いますがね。

 とりあえず、おすすめのアレンジを貼っておきます。これはめちゃくちゃ良いアレンジです。

 

 

魔法少女たちの百年祭

 

 

 これは、東方紅魔郷extraボスフランドール・スカーレットの道中のテーマです。これも結構お気に入りです。ただ、今改めて聞いてみると結構メロディーラインに依拠してる曲なんだなということに気が付きました。
 33秒からのところが謎に中華っぽいような気がしているんですが、美鈴と何か関係があるんでしょうか。いや、多分関係ないとは思いますが。

 

U.N.オーエンは彼女なのか?

 

 

 来ました。ラスボスです。もうこれはさすがに知ってるんじゃないかな。知っててくれ。東方の原曲で一番有名かもしれませんね。私も好きです。
 一応フランドール・スカーレットのテーマ曲なんですが、もはや有名過ぎて、フランのテーマ曲というところから離れている気もします。私の中のフランのイメージは「無自覚サイコパス」なのですが、それが上手く再現されていると感じます。
確かに狂気性みたいなものはありつつも、どこか気の抜けた印象もあって、可愛らしい感じもあって、狙ってやってる感じでもないのが「さいこぱす~」というフランの雰囲気に繋がっています。

 

 こういう風に見ていくと、一つ一つの曲がきちんとキャラの特性を表現できているのですごいなあと思います。曲としての完成度も高いですし。

 

 きりがいいのでここら辺で終わります。東方はまだまだゲームがいっぱいあるのでまた機会があれば紹介したいです。私が一番好きな作品は永夜抄なのですが、せめてそこにはたどり着きたい。この大海原に一輪の花を携えながら、どこまでも歩んで、そして泳いでいきたい。そうして時には夕日を見て語らい、そしてポテチを砕いて死者と向き合いたい。わあ~~~