名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

チャーチスケールの近縁を探す

へぇ、ここがメイド喫茶かー。入ってみよう

ウィーン

 

「おかえりなさいませ♡ご主人様♡」

 

テンション上がるなあ

 


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『名古屋萌え作曲の会』

 

 

「お待たせしました♡妖精さんの気まぐれランチです♡」

 

「今からこちらのごはんに、もっとおいしくなる『魔法』をかけたいと思います!」

 

「この魔法はご主人様と二人でやらないと効果が無いので、一緒に真似してくださいね♡」

 

え!?俺も!?

 

「いきますよ〜?」

 

まってまって!!!心の準備が!!!!!

 

 

 

 

 

「おいしくなーれ♪」

おいしくなーれ♪

 

「萌え萌え♪」

萌え萌え♪

 

「わくわく♪」

わくわく♪

 

「どきどき♪」

どきどき♪

 

「ふりふり♪」

ふりふり♪

 

「ゆめゆめ♪」

ゆめゆめ♪

 

きときと♪」

きときと

 

「まちまち♪」

まちまち♪

 

「おいしい魔法♪萌え萌えずっきゅーん!!」

きゅーーーん!!!

 

 

やったーーーーーー!!!!!!!

 

 

「完成です♡萌えが冷めないうちに、召し上がれ♡」

 

いただきます、、、♡

 

 


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ドリア

 

 

 

ドリア旋法とは教会旋法の一つで、「レミファソラシドレ」のスケールによる旋法です。

教会旋法の各スケールは、「ドレミファソラシド」の音程関係をそのままに、各音が中心音にくるようにぐるっと"巡回"させたものになっています。例えば、ドリアンスケールはレを中心に巡回させたスケール、というふうに。f:id:nu-composers:20231015152710j:image

 

巡回同値類

ここで、2つのスケールを適当な巡回によって一致させることが出来るとき、これらのスケールは「巡回同値関係」で結ばれている、と言うことにしましょう。

例えば、先程上げたドリアンスケールだけでなく、教会旋法のスケールであるリディアン、ミクソリディアン、フリジアン、…なども全て巡回によってアイオニアンスケール=「ドレミファソラシド」に一致しますから、これらは全て巡回同値になります。f:id:nu-composers:20231015152722j:image

 

さてこの時、巡回同値なスケールたちをまとめたグループを同値類と呼び、グループを代表するスケールを何か1つ取ってきて括弧でくくり、例えば[Ion]のように表記します。(アイオニアンスケールを略してIon、と書くことにします)

したがって、[Ion]はIonと巡回同値な全てのスケールが集まった集合…つまりドリアンとかリディアンとか、各種教会旋法のスケールの集まりになっています。

巡回同値関係による同値類は、ジャズでいうところのアレントスケールみたいな概念と言えます。f:id:nu-composers:20231015152736j:image

 

さて、これらの用語を使って、ちょっとしたパズルをしてみましょう。

 

先程の[Ion]は、私たちが普段最も馴染み深い同値類であり、和声理論など調性音楽理論の多くはIonやそれに巡回同値なスケールを土台に組み立てられているものがほとんどです。

さて、そんな[Ion]は既存の音楽理論に馴染む様々な性質を持っています。今回はそのうちの1つに注目して、[Ion]に"近しい"スケールを探してみたいと思います。

 

正規条件

スケールに対して、各「インターバル」…つまり、隣接音程を考えてみます。

例えば、[Ion]は「半音」と呼ばれる長さ1のインターバル(隣接音程)、または「全音」と呼ばれる長さ2のインターバル、これらの2種類のインターバルで構成されています。

 

ここで、12音律の1オクターブ内の全ての音(ド,ド#,レ,レ#,ミ,ファ,ファ#,ソ,ソ#,ラ,ラ#,シ)を整数によって(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11)と表せば、数列としてスケールを表すことが出来ます。

イオニアンスケール(ドレミファソラシ)の場合を取ると、[0,2,4,5,7,9,11]という風に表され、インターバルを見るには隣接する2音の差を見ればOKです。

イオニアンスケールのインターバルは左から2,2,1,2,2,2,1で一周回って最初の音に戻ってきます。

スケールに対してそのインターバルを順に並べることで、インターバル構成を(2,2,1,2,2,2,1)のような数列としてやはり表すことが出来て、こちらも有用になります。

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イオニアンスケールと巡回同値関係にあるドリアンスケールは[0,2,3,5,7,9,10]となり、インターバル構成は(2,1,2,2,2,1,2)となります。

巡回同値関係の定義から、ドリアンスケールの数列はアイオニアンスケールの数列の2を中心0とみなして巡回させたものになっています。それに伴って、インターバル構成の数列もぐるっと1つ分巡回した数列になっているのが分かるでしょうか。

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すなわち、あるスケールを巡回させて別のスケールを作っても、どこが中心音になるかが変わるだけで、インターバル構成の並び順は変化しないということになります。

これは巡回同値関係の定義に従っています。

 

さて次に、[0,2,3,4,6,8,10]のようなスケールを考えてみましょう。インターバルは(2,1,1,2,2,2,2)となります。

先ほどの[Ion]のインターバル構成と違って、1が連続している箇所があります。

この時、(2,4)はスケールの中では「跳躍」していますが、(6,8)は「順行」になっています。同じ長さ2のインターバルなのに、ある所では跳躍、ある所では順行になってしまうのは、何かと勝手が悪そうです。

一方、[Ion]のインターバルは(2,2,1,2,2,2,1)ですから、1が連続していません。このため、長さ3以上の音程は跳躍、2以下なら順行という風に、明確に跳躍と順行を音程の長さによって区別出来ます。

 

そこで、[Ion]と近しい性質を持つスケールとして、次の条件を満たす「正規スケール」を12音律から探してみましょう。

 

《正規条件》

①各インターバルが長さ2以下である

②長さ1のインターバルが連続しない

 

まず、この正規条件はそれぞれのインターバルとその並び順について指定しているため、スケールの正規性は巡回によって変化しません。

すなわち、スケールAとAを巡回したスケールA'があるとき、「Aが正規⇔A'が正規」「Aが非正規⇔A'が非正規」が成り立ちます。

そこで以下では、スケールを同値類でまとめてしまって、「正規なスケールの同値類」を探していくことにします。

 

さて、以下ではスケールに含まれる音の個数をそのスケールの「位数」と呼ぶことにします。

例えばアイオニアンスケールの場合、[0,2,4,5,7,9,11]と7個の音で構成されていますから、位数は7となります。

 

これを用いて、正規条件をみたすスケールの位数を考えてみましょう。

まず条件①から、位数の最小値は6だとわかります。

つまり、すべてのインターバルが長さ2であるホールトーンスケール[0,2,4,6,8,10]は正規条件を満たしており、また、これより位数の小さいスケールは長さ3以上のインターバルを必ず含むため、正規スケールにはなり得ません。

 

さらに、各インターバルは長さ2(全音程)か1(半音程)になるわけですから、スケールの位数によって全音および半音のインターバルがそれぞれ何個ずつ含まれるかが確定します。

 

位数6→全音程6個

位数7→全音程5個、半音程2個

位数8→全音程4個、半音程4個

 

ここで、位数8の場合を見ると、全音程と半音程が同数ずつ含まれることになっています。したがって、このスケールが条件②を満たすためには、インターバル構成が(2,1,2,1,2,1,2,1)という風に、全音と半音が交互に並ぶものしかありえないということになります。

すなわち、位数8の正規スケールは[0,2,3,5,6,8,9,11]の同値類のみです。

また、これより位数が大きくなるとどのようにインターバルを並べても絶対に半音程の連続が生じるため、位数9以上のスケールは正規条件を満たさないこともわかります。

 

以上を整理すると…

正規条件を満たす同値類は位数6のとき0,2,4,6,8,10のみ、位数8のとき[ [0,2,3,5,6,8,9,11] ]のみで、あとは位数7のときだけ調べればOK、ということになります。

 

位数7のときは、全音程5個、半音程2個のインターバル構成になります。

ここで、半音程を隣接させないという条件を守るために、5個の全音程の間に半音程2個を挟み込むという方法でインターバル構成を作っていきます。f:id:nu-composers:20231015153027j:image

この作り方によって、巡回させても一致しない挟み込み方は次の2通りのみであることが分かります。f:id:nu-composers:20231015153035j:image

 

つまりインターバル構成は(2,1,2,1,2,2,2)と(2,1,2,2,1,2,2)、スケールに直すとそれぞれ[0,2,3,5,6,8,10]と[0,2,3,5,7,8,10]になります。

前者を巡回させると[0,2,3,5,7,9,11]、階名にすれば[ド,レ,ミ♭,ファ,ソ,ラ,シ]すなわちロディックマイナースケールに一致します。

そして後者を巡回させると[0,2,4,5,7,9,11]すなわちIonに一致します。

 

これで全ての正規スケールが見つかりました!

 

位数6→[ [0,2,4,6,8,10] ](ホールトーン)

位数7→[ [0,2,4,5,7,9,11] ](教会旋法)、[ [0,2,3,5,7,9,11] ](メロディックマイナー)

位数8→[ [0,2,3,5,6,8,9,11] ]

 

最後の同値類にも名前が付いていて、減七の和音を2つ重ねた「コンビネーション・オブ・ディミニッシュト・スケール」として、ジャズなどでよく知られているスケールと一致しています。

メシアン「移調の限られた旋法」の第2番とも一致しており、なるほど、インターバル構成は(2,1,2,1,2,1,2,1)と同じものの反復になっています。

 

発展

こうして見つけたスケールたちは教会旋法に近しい性質を持っているので、これらのスケールを基礎にして既存の音楽理論的概念(対位法、ダイアトニックコード…)を考えても、齟齬が少ないものを構築出来そうです。

 

また、正規条件は12音律でなくても当てはめられる条件なので、他の音律で同様に正規スケールを探す事も出来ます。

例えば、13音律で正規条件を満たす同値類を探すと次の3つになります。

[ [0,2,4,6,8,10,12] ]

[ [0,2,4,6,7,9,10,12] ]

[ [0,2,4,5,7,8,10,12] ]

 

これを利用すると、13平均律を使って音楽を作りたい、となったときに、音響的なアプローチではなく音楽構造的なアプローチ微分音音楽に取り組める可能性があります。

 

もちろん、正規条件自体を改変することで発展させる方法も考えられます。本記事では12音律で正規条件を満たすスケールを探してみましたが、正直真新しいスケールは無く、既に頻繁に使われているスケールたちが見つかりました。

しかし、正規条件を適当な形で緩めることで、もっと変わったスケールを扱うことが出来ます。

 

以上のように、音楽構造を数学的に見ることで、問題がより一般的に扱いやすく、柔軟に理論を発展させられたりするので、こういうのも良いんじゃないかなーと思います。

皆さんも色々遊んでみてください。

 

 

 

【定義/表記集】

数列によって音列を表記する方法:インターバル構成など単に音列のときは()、スケールを数列で書くときは[]で囲むことで区別する

 

スケールのインターバル構成:スケールの各インターバル(隣接音程)を順に並べた数列

 

巡回同値関係:2つのスケールを適当な巡回によって一致させることが出来るとき、2スケールは巡回同値関係で結ばれているという

 

巡回同値類:どの2スケールを取っても巡回同値関係で結ばれているようなスケールたちの集合を巡回同値類といい、そこに含まれるスケールを1つ取ってきて括弧でくくり表記する

 

位数:スケールに含まれる音の個数

 

正規条件:①各インターバルが長さ2以下②長さ1のインターバルが連続しない

 

正規スケール:正規条件を満たすスケール

 

Ion:アイオニアンスケール[0,2,4,5,7,9,11]