名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

RMCチャンネル人気動画ランキング2024

RMCチャンネル

 暑かった2024年もやっと年の瀬になって一気に寒くなってきましたね。私のブログ担当回も今年最後となりました。
 例年その年の最後は名作会との共同研究として続けているRMCチャンネルのランキングです。今年は例年とは違い、夏の自由研究を行うなど、かつてない挑戦も行いましたが、その結果はどんなものだったでしょうか。
 相変わらずの弱小チャンネルですが、その意義には誇りを持っておりますので、続けられる限り続けていく所存です。


 まず今年の全体の動向ですが、以下の通りとなりました。
尚、執筆時期の関係で期間は2023/12/1~2024/11/30までのものとします。

視聴回数 15,362回
総再生時間 616.9時間
現在のチャンネル登録者数 310名

 まずは2024年ランキング第10位の動画からご紹介します。

 

第10位
失われたものへの三章 - 有馬礼子
期間内視聴回数:213

www.youtube.com

有馬礼子

 今年もランキングに入ってきた有馬先生の作品です。
 有馬先生は1933年東京出身で、下總皖一、伊福部昭に師事しました。
ご本人曰く短い作品に縁があるとのことで、大規模作品は多くありませんが、しなやかな和声感と野性的なリズム感が合わさった独特の世界観をもっています。
このチャンネルでもいつも人気の作品です。


第9位
花に因んだ三つのピアノ曲 - 箕作秋吉
期間内再生回数:265

www.youtube.com

箕作秋吉

 箕作秋吉(1895-1971)は我が国を代表する作曲家の一人と言ってもいい重要な作曲家です。そしてこのピアノ曲は氏の考えが凝縮された側面のある曲で、演奏家にも人気の曲ではあります。
 それに比して録音は多くないのでデータ化しましたが、今回は人伝にお孫様のお耳にも当音源が届いたとのことで、とても誇らしく思っております。
 さくらさくらのテーマでフーガを試みるなど非常に内容の濃い作品であり、日本近代音楽史に燦然と輝く名作だと思います。


第8位
日本民謡による三つのパラフレーズ - 別宮貞雄
期間内再生時間:284

www.youtube.com

 今年は民族的な題材の作品が夜クランクインしている印象です。
 続いては別宮貞雄(1922-2012)の書いたこちらの曲です。
フランスで勉強したにも関わらず、ドイツ・ロマン派の書法こそ至高としてそのスタイルを変えなかった別宮先生の民謡を題材にしたピアノ曲です。
 いまや定番となった感のある民謡も含まれますが、流麗で見事な変奏技法により素晴らしい内容のピアノ曲に書き上げられた傑作です。


第7位
ピアノのためのソナチネ - 松平頼則
期間内再生回数:289

www.youtube.com

松平頼則

 松平頼則(1907-2001)も押しも押されもせぬ我が国を代表する作曲家であることは疑いようもありません。
 その技法は雅楽の言語に根ざしながらも独自に発展し、無調にすら至らしめるという斬新なものである上に、感覚的に構築した理論をわざと逸脱するという非常に独自のものでありました。
 大傑作である「ピアノ・ソナタ」の構想によく似た本曲もかなりの難易度が要求される難曲ですが、人気なのはとても納得です。


第6位
海の行進曲 - 菅原明朗
期間内再生回数:291

www.youtube.com

菅原明朗

 この曲こそ当チャンネル初の試み「夏の自由研究」としてデータ化した水槽楽曲です。
 菅原明朗(1897-1988)が書いたニ曲ペアの行進曲の一つで、おそらく当時の軍隊の委嘱で書かれたのではないかともいわれながら、詳細がわからない楽曲です。
 自筆譜やペアのもう片方の「空の行進曲」はどうやら戦災等で消失してしまったようですが、この作品は雑誌の付録にパート譜が残り、そこからあまりに多くの誤植を自力で校訂し、スコアに移してからDTMで再現演奏という方法で時間をかけて作りました。それだけにランクインは嬉しいものがあり、また忘れ去られていた吹奏楽曲をいつでも聴ける形にして残せたことは、とても良かったと思います。
 こちらも野口様のご仲介で、菅原先生のお孫様にスコアをお渡しできたこと、音源にお褒めをいただいたこと大変光栄の極みです。


 今年はいつにもましてマイナー作品の再生数が上がってきており、その点は大きな進歩だったかなと思いますし、案外好評だった「自由研究」についても定番化していけたらなと考えております。
 この曲を音源化してほしいと思われている方がありましたら、リクエストや楽譜資料の提供などいただけたら非常に助かります。
 このチャンネルでは本来は知られざる作曲家にこそスポットがあたってほしいものですが、まだそのあたりには障壁があり、このチャンネルの存在自体をもう少し広く知って頂く必要があるのだろうと思うところでありますし、それを来年の目標に掲げても良いかなと思うところであります。


閑話休題、後半上位5位の発表に戻りましょう。


第5位
プレスト - 佐伯武
期間内再生回数:335

www.youtube.com

佐伯武

 佐伯武(1940-?)は情報の少ない作曲家ですが、この曲はとても人気で安定した再生数が出ております。こういった知られざる作曲家の作品が聴かれることこそこのチャンネルの本分ですので、大変嬉しいことでもあります。
 この曲は日本の伝統的な音楽を意識しつつ、入試課題として書かれた作品であり、ある種の半音的装飾と、技術的な要件が付加された楽曲となっております。
 長年国立音楽大学に奉職された作曲家の作品ということですが、こういった形で再度世に出せた事自体とても良かったなと思っております。


第4位
子供のためのリズム遊び - 伊福部昭
期間内再生回数:415

www.youtube.com

伊福部昭

 やはり人気の作曲家の作品はよく聴かれます。これはどうしようもない事実ではありますが、この作品の楽譜が出版され、音源もすぐに出てくると思いきや、まったく音沙汰がなかったので思い切ってデータ化したものです。
 この作品を書くにあたっての伊福部の苦悩のようなものが垣間見える瞬間がある作品という点でもユニークですが、芸術作品として取り上げるべきだったかは議論の分かれるところでもあります。ともあれ、片山先生、Salida様のご尽力で再評価が進み、カルト的人気を誇る作曲家となった伊福部昭を取り上げられたことは、このチャンネルにとってもとても良かったと思っております。


第3位
ピアノ・ソナタ - 松平頼則
期間内再生回数:497

www.youtube.com

 松平頼則の「ピアノ・ソナタ」もランクインとなりました。「ソナチネ」と合わせて考えると当チャンネル的には松平イヤーだったと言っても過言ではないランキングとなりました。
 もともと人気の作曲家ですが、再評価が進んでいると感じさせる結果でもあります。雅楽から無調へという氏の眼差しの斬新さ、そして非常に難しい技術を要求する作品で、録音数も必ずしも多くはありませんが、本当に日本の誇るべき傑作と言って良いと思います。

 さて残りはTOP2ですが、ここで来年の展望を少し書いてみたいと思います。今年の結果を踏まえると松平頼則作品、伊福部昭門下作品に関心が強いという動向がわかるので、これらは引き続き追いかけたいと思っています。
 またピアノ作品から外れた大合奏系のものも大型連休などを利用して発信していけたらと思っています。とくに戦中作品はその性質上、演奏には余計なイデオロギーによる批判を恐れて躊躇するということも多いでしょうから、戦中マーチなどの復興にも繋げられたらという思いはあります。またこれと同じように、イデオロギー的に今の時代に打ち出すのが難しい作品としては「うたごえ作品」という種類のものもあり、この世界で活躍した作曲家の音も再興出来たらなと思うところです。
 若い人はすでにイデオロギー闘争は過去のものと捉えて、そういった思想のしもべであることより、個人の良し悪しで動くことを基本としていますから、このチャンネルはそういったものを過去の文化としてしっかり刻んでおくべきだろうということを、一つの信念に2025年のチャンネル運営をしていきたいと思います。

 さて2024年RMCチャンネル再生数ランキング上位2つを紹介いたします。


第2位
ピアノ曲集「音の栞」 - 三善晃
期間内再生回数:518

www.youtube.com

三善晃

 こちらも我が国を代表する大作曲家三善晃(1933-2013)の作品となりました。三善作品は常にあらゆるジャンルにおいて普遍的人気を誇っていますが、やはり現代のヤマカズ先生が反戦三部作を指揮されてからは、再評価に火がついた感じがあります。そしてこの曲集はピアノ教室で人気の作品である割に、全曲まとめての音源がなかったことが再生数の高さにつながったのでしょう。
 表現という物の本質までを問うという意味では、教室で教える先生方にとってはそう簡単な曲ではないでしょうし、そこまで考えずに教えている先生も大いにたくさんいるとは思いますが、この曲を通じて解釈とは何かということをじっくり生徒さんと話し合ってみてはいかがでしょう。そんなことをこの曲は求めている気がするのです。


第1位
ピアノのための二つの小曲 - 石田純雄
期間内再生回数:1601

www.youtube.com

石田純雄

 さて2024年再生ランキング晴れある一位はこちらの作品でした。再生回数はぶっちぎりのもので、なぜこの曲がそんなに再生されたのか全く見当もつきません。
 作者の石田純雄は1939年生ということ以外情報が乏しく、国立音楽大学に奉職されていた作曲家のようです。普段は合唱曲などのジャンルでの創作が多かったとのことですが、全く知られていいないにも関わらず、これだけ聴かれたということは副次的要因があったに違いないと思っているのですが、何をどう見てもよくわかりません。
 なにか理由に心当たりがある方がいらっしゃいましたら教えていただけたら幸いです。ともあれ、これだけこの作品が聴かれたことは、当チャンネルの大きな誇りであることに相違はありません。

 

 ということで2024年RMCチャンネルのランキング発表は以上です。
 意外な作品が多くランクインした年となり、チャンネルの意義は増したのかなと個人的に思っているところですが、来年もまた様々な曲を研究により発見し、音にしていく活動を加速化させていきたいと思っています。
 そろそろ外国作品も交えても良いかも知れませんね。すでに2月分くらいまではストックを用意しておりますので、どうぞお楽しみになってください。
 末筆ながら本年も口の悪い記事を量産しながら、皆様に呼んで頂き、また名作会の活動をご支持、ご協力いただきましたこと、ここに深く御礼申し上げます。また来る年が皆様にとって良い年でありますことを、ここにお祈り申し上げて、本年の私の記事の最後のご挨拶とさせていただきます。

 

それでは皆様、良いお年をお迎えください。