名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

万博で聴いた音楽2選

大阪・関西万博終了まであと15日

幼少期に愛知万博に何度も通ったことによってグローバリズムを植え付けられた私にとって、大阪・関西万博は渇望の対象でした。今後20年以内に国内で登録博が開催されない場合、私は干からびて死んでしまうかもしれません。

パビリオンの内容というのは見た目に反してまあ大したものではなくて、その内容よりはどちらかというと他国の人間と交流することで、自分や自国文化を相対して考えるいい機会だったのだと私は思います。世界中の国の人間が同時に俺に対して優しく接してくれるのは万博しかありません。万博の外はイデオロギーと闘争で満ち溢れていて怖いです。

とまあ刷り込み教育の結果、万博に対しては理屈を超えた並々ならぬ思いがあるのですが、なんといっても音楽がたくさん聴けたのがうれしかったです。世界各国の音楽家がその辺で演奏しており、夜になると、主要なパビリオンのほぼすべてでライブをやっている。こ、これを7000円ちょっとで観れていいのかー!?とかなり素直に思い、何か音楽が聞こえるたびに40℃近い炎天下でウキウキ小躍りし続けていたらめちゃくちゃ体調を崩しました。ありがとうございます。日本でフツーに暮らしていたら全然名前も知らなかったであろう人・楽器の音をたくさん聴けました。まあ、現代芸術がその辺にたくさんあった割に現代音楽がなかったのは残念ですが。。。

ということで、今日は万博で聴いた音楽をピックアップして紹介していこうと思います。

Bára Zmeková Trio(チェコ

チェコパビリオンは中空になっていて、そこに何があるかというとかなり立派な仮設ホールがあります。そして毎週末には文化プログラムとしてポップス・クラシックを問わずの楽器演奏やバレエなど舞踊が披露されています。チェコなので、オープニング当初はさすがにわが祖国を演奏していたようです。私が行ったときは6月でBára Zmeková Trioというジャズミュージシャンが演奏してました。

Bára Zmeková氏は2019年にLUNAVESというアルバムを発表し、チェコ・ミュージック・クロスロードで審査員賞と観客賞を受賞。チェコ音楽アカデミー賞の最優秀ソロアーティストと最優秀新人賞にノミネートされてから国際的なキャリアが開けたようで、Athens Jazz Festなどに出演。その後も国内外問わず演奏活動を行い、万博でどうやら初来日だったようです。

www.youtube.com

曲はメロディラインが中欧~東欧の民謡的でかつキャッチーなのがいいバランスだと思いました。全体的に暗い曲が多いのもヨーロッパという感じです(本当に?)。
チェコ語で歌うとアクセントやイントネーションが当然ながら英語とは異なるので、それだけでアメリカ的なジャズからは外れたグルーヴになるため、興味深く聴けてしまいました。あとドラマーがうまかったです(サンプリングパッドが全然起動していなくて、かわいそうでした)。

私が行ったときはチェコパビリオンはマジで空いており、係員(チェコ人)の「すぐ入れますよ~」という売り文句に予約なしにのこのこ付いていったのですが、今では予約制となり即完らしいです。運がよかった。

ちなみにパビリオンの展示についてですが、どの辺が万博テーマの「いのちかがやく未来社会のデザイン」に呼応しているのかはわかりませんでしたが、展示がチェコガラス作家作品で統一されるなど全体的にアート性が強く、他のパビリオンと比べて異彩を放っていました。

 

Ferenczi György and his band(ハンガリー

フランス館やアメリカ館といった超人気パビリオンの間には野外ステージがあり、そこで演奏や式典などが行われていたり、行われていなかったりするのですが、そこで演奏していました。

私はその時フランス館の待機列に並んでおり、すぐ後ろには20代前半と思われる女性と男性の二人組が並んでおり、男性のほうが大声かつ早口の毛量のさえないオタク然とした風貌にもかかわらず女性を必至で口説き落とそうとしており(内容が実に情けなかった)、その女性も断りはするもののまんざらでもなさそうな様子で殺さない程度に泳がせ続けており、その様子がマジでキモくて私の体調はどんどん悪化していたのですが、そのときに流れてきたので本当に助かりました。音楽に救われるってたぶんこういうことなんだなって、ようやくわかった気がします。

Ferenczi Györgyは1968年生まれのハンガリーのミュージシャンです。ヴァイオリンも演奏するようですが、YouTubeの動画を見ている限りハーモニカとギターを担当していることが多いです。1985年に演奏家としてのキャリアをスタートし、これまでに250枚以上のアルバムに演奏で参加するなどスタジオミュージシャンとしての活躍が目立ちます。2024年にはハンガリー功労芸術家賞を受賞するなど、ハンガリー国内での名声も高いようです。高いので、万博を機に日本に来てくれました。

カントリーミュージシャンなので、音楽自体にハンガリーぽさをかんじることはほぼないです。フュージョンもやっていたそうですが、最近はもっぱらフォークをやっているそうな。

youtu.be

全体的にあまりに上手すぎて、列に並びながら度肝を抜かされ続けていました。流石スタジオミュージシャンといったところか。後ろにキモい男女がいなければもっと楽しめたはずなので、かなり残念です。
特にFerenczi Györgyのハーモニカがマジでうまいです。ハーモニカでここまでグルーヴ感のある演奏ができるとは恥ずかしながら知りませんでした。と思って調べたら、Ferenczi Györgyはハーモニカ世界選手権で5位入賞したことがあるようです。この上が存在するのか!???

ここに示しているのは2010年の演奏動画ですが、2025年はさらに演奏技術が向上しており(高速化+ゴーストノートだらけ)、曲自体も2025年に合わせて特にリズム面がかなりチューンナップされており、やばかったです。

編成にホルンがいるバンドというのもかなり珍しいところですね。ハンガリーではメジャーなんでしょうか(和楽器バンドを見て日本では和太鼓や琴を含む編成がメジャーだと勘違いする外人しぐさすぎる)。

 

あとはバーレーンの宗教音楽(?)とか、ポルトガルのバンド(ハーディガーディがいる)とか、ポルトガルのギターデュオとか、ブラジルのサンバとか、ジャンベの合奏とか、インドネシアの合唱団とか、オーストラリアのギターデュオとか、フィジーのダンサーとか、タイの舞踊とか、韓国のテコンドーの演武とか、アメリカの歌手とか、スペインのフラメンコとか軍楽隊とか、オマーンの軍楽隊とかが歩いていると強制的に耳と目を刺激してきました。ありがとうございました。
あと15日で終わるらしいですが、こんなん半年も続けていたら情報量が多すぎてスタッフの気がおかしくなるのでそれでいいと思います。