音楽は時代と共に変化しています。
その変化には2つの側面があって、それは文化的な変化と技術的な変化。
つまり、時代の流れの中で過去の価値観が新しい価値観に塗り替えられていくのが前者、
技術が発展して昔できなかったことができるようになるのが後者です。
最近流行っているDTMなんかは、まさに後者の代表例ですね。
今回は、そういった技術的な発展によって実現された作曲法として、スペクトル学派の作曲法を見てみます。
入門編なので全然難しくないよ。
【もくじ】
スペクトル学派とは
スペクトル学派とは、ひとことで言えば
ある音の倍音構造に注目して作曲を行った人々
のことです。
ふつう、1つの音(に聞こえる音)にはたくさんの倍音と呼ばれる音が混じっています。
上の図で基音と書いてある音が、我々の耳に知覚される音です。
上の図では「ド」ですね。
ピアノで「ド」を弾いた場合、耳で聞いても「ド」の音しか聞こえないかもしれませんが、じっくり聞くとその1オクターヴ上の「ド」(第2倍音)、その上の「ソ」(第3倍音)、その上の「ド」(第4倍音)、……なども同時に鳴っている、というわけ。
こういった倍音たちがどういった比率で含まれているかによって、その音の音色が変わって聞えます。
例えば、クラリネットの音には奇数倍音が多く含まれ、偶数倍音はあまり含まれません。
要するに、我々が普段1つの音として聞いている音は、実はたくさんの音のかたまりでできているということです。
この音のかたまりを分解してみたり、逆に人為的に音のかたまりを作ってみたりするのが、スペクトル学派の特徴です。
特徴と実例
スペクトル学派の音楽は、上で紹介したように自然倍音列に基づいています。
時として激しい不協和音を含むものの、自然倍音列に従った不協和音なのであまり厳しい響きにならず、むしろ美しく感じられます。
また、厳密に自然倍音列を再現する場合は微分音を含む場合があります。
この例はJonathan Harveyの「towards a pure land」を聞いてみましょう。
方法
スペクトル学派の最も典型的な作曲法は、まずある音を素材と決め、スペクトル解析することから始まります。
スペクトル解析にはコンピュータが必須です。
自分は「Sonic Visualiser」というフリーソフトを使っています。
スペクトル解析を行うことで、その音がどういった音のかたまりなのかが分かります。
たとえば、川のせせらぎを解析すると次のようになります。
上の方が全体的に黄色いですね。
つまり、高音がまんべんなく全体的に鳴っている状態ということになります。
これをピアノで再現しようとすると、こうなります。
流石に聞けたもんじゃないですね。
ということで、せせらぎは素材としては使えなさそうです。
では、トライアングルの音はどうでしょうか。
しかも、めっちゃいい音がするということで話題の北山トライアングルの音を解析してみましょう。
黄色い部分がだいぶはっきりと表れましたね。
黄色くなっている部分の音だけを拾ってみると、こうなります。
かなりの不協和音ですが、聞いてみると確かに北山トライアングルの音に似ていませんか?
というわけで、この和音を素材として作曲すれば、立派な(のかは分からないけど)スペクトル学派の音楽になるはずです。
まあ、実際にはこれだけだと素材が貧弱すぎるので、もう少し工夫する必要がありますが……。
というわけで完成した楽曲がこちら。
次回に続く!