名大作曲同好会

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「机上の空中散歩」収録曲を語る⑧ 「Daydream on the Line」by Red Cat Theater

どうもこんにちは。Red Cat Theaterの榊原ですよ。

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またしてもネコ。

 

ということで今日も今日とて「机上の空中散歩」の収録曲について語っていこうと思いまして、えてして、さてはて。

はい。

 

 

今回は「Daydream on the Line」についてお話しさせていただきます。

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私は高校三年生時にメンタルが壊れてからというもの、定期的に病んではめちゃくちゃ楽しくなるのを繰り返しているんですが、2019年6月上旬、結構な谷がやって参りました。そのときはもう完全にダメになっていまして、何をするにも辛く悲しい。生きがいでもある音楽を聴くことが一切できなくなってしまい、たまの休みにすることが定点カメラごっこだけになりました。

 


Tokyo Live Camera Ch1 東京 汐留 鉄道 ライブカメラ

 

定点カメラごっこ、というのは部屋のある位置に座って、部屋全体をぼんやりと見る遊びです。時間によって微妙に変化していく部屋を見ながら今までの人生を振り返ります。楽しいですよ。オススメです。


また当時、夜に見た夢を覚えてる限り詳細に記録していまして、コレをすると徐々に現実と夢の境目が無くなっていって楽しいのです。


定点カメラごっこは部屋だけでは飽き足らず、毎日の通学時にも行われました。現実と夢の境目がないので定点カメラこと私は定点カメラの役割を果たしておらず、虚な目に映るはランダムに再生される現実、過去、夢、虚構......。

もはやごっことかじゃなくて、タチの悪い白昼夢だべさだべさ。

 

......的な状況を描写したのがこの曲です。いや、明らかに通常の作曲とは異なるので、曲というよりは音で描いた絵という方が適切かもしれません。

 

とか言ってると、病んだ人の曲にしか聞こえないですよね。

 

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病んだ人

まあ病んだ人の曲なんですが、ただそれだけだと思われるのも厭なので、ここでこの曲のもう一つのテーマを述べます。

それは「二択の決断を先送りにし続けてぐだぐだ既定のレールの上を生きる人生」です。

 

なんだ、それは。

 

定点カメラごっこをしているとき、僕の中の理性が己の人生について考えているわけですが、「ああ~決断いつもミスってんな~そしてドロップアウトを恐れて無難にここまで来てしまった我が人生」みたいなことを考えていました。

しかし、そんな言葉は完全にダメになってしまった僕の感情には届きません。ダメになってしまった人間にあるのは白でも黒でもなく漠然としたグレースケールだからです。そしてそのグレースケール上に霧散した二択の問いを、あーでもないこーでもないと白と黒の境界線上で考えている間に電車は目的地に着いて、いつもと同じように1日が終わって、また明日も明後日も一年後も十年後も同じことを考えて人生が終わるわけです。

( CDに付属している小冊子にも同じようなことを書いたんですが、そっちはもっと回りくどい文章である上に、カットアップという手法により文章がめちゃくちゃになっているので、そうは読めません(は?)。)

 

まあそんなことがこの曲で7分28秒(アルバム最長)も繰り広げられています。この曲がやけに長いのはそういった当人以外には無意味なクソ長い問答を表しているからです。長いことには意味がある。本当は自分の通学時間である59分間の曲が作りたかったんですが、そんなことをしてしまうと長すぎてCDに入れてくれないのでやめました。あと多分誰も聞いてくれない。

 

そしてその問答ですが、僕はハッピーエンドが大嫌い(死ぬときは誰しも一人淋しく死ぬからハッピーエンドなどない)なので、明確な結論を出すことは避け、電車が目的地に着いて、答えに至らぬまま思考が中断するところで曲を終了しています。

(正しいハッピーエンドの例。ハッピーエンドはこのように悲劇的であるべきだ。)

 

でもこれでいいのです。なぜならば結論は現実世界において下されるべきものであり、虚構である音楽の世界で下されるべきものではないからです。

さあ、目の前の現実においてどういった選択をしていきましょうかね~?という、曲、でした。実はそういう曲です。意外と普通の曲でしょ?

 

( ちなみにこの曲作ってる途中で精神状態が回復していきました。私は元気です。超元気〜。)

 

明らかに通常の作曲とは異なる、というのは先ほど述べたとおり、当時辛すぎて音楽が一切聴けなかったので、楽音らしい楽音の使い方は一切しませんでした。というかそう使うのが苦痛だったので使えませんでした。

じゃあどうするのか、というとチャンス・オペレーションで作曲します。当時これを意識していたわけではありませんが、結果的にこの手法を用いていたと言えます。

 

チャンスオペレーションというのはクッソ適当に説明すると「作曲は偶然性によって行うンゴ!(演奏は偶然性に依らない)」というものです。サイコロ投げて音を決めたりします。

ただこの方法を使うとマジで意味のわからないものができてしまいます。

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今回の曲は鬱屈とした気持ちを表現したかったので、ある程度は色が欲しい。ということで多少ルールを設けました。Cフリジアンスケールをランダムに鳴らしたものを再構成するというものです。不確定性と確定性のハイブリッドみたいな感じですね。

 

(にしても此処らへんの流れは特に意識していなかったのもありやや適当だったので、もっとちゃんとやるべきでした。特にベロシティとかは不確定性に依存させても良かったな〜と今思いました。DTMだとパラメータ全部数値化できるので。)

 

このルールはブライアン・イーノ「Music for Airport 」を参考にしました。


Brian Eno - Ambient 1: Music for Airports [Full Album]

↑この曲はテープをランダムに再生したのを再構成しています。(ざっくり)

 

それでも若干苦痛だったので、ピッチを時間をかけてゆっくり変化させることにしました。そしてその音を普通の楽音とぶつけるとクッソ唸ります

うん、心地いい!当時の完全に終わった精神状態を表すにはうってつけの音ですね。無論採用しました。細かいピッチ変化はDTMが得意とする表現でもあるので楽しいですね〜。

 

楽音の出番はここまでで、後は具体音を用いて作ります。いわばミュージックコンクレートのような作品を目指しました。

ミュージックコンクレートとは、これまたクッソ適当に解説すると環境音や騒音などを録音・加工して作る音楽のことです。


この曲においては白黒二択を決めることが重要なので、二項対立を表すような音が随所に散りばめられています。一番わかりやすいのが地下鉄とJRの音ですね。この二つはほぼ全編にわたって左右で鳴り響いております。ちなみに鉄道は題名のLineの由来の一つでもあります。


ミュージックコンクレートなのでこの曲もこの曲でサンプリングまみれですが、Illegal Utopia Nagoyaと違うのは身の回りの音を主軸に作られているということです。つまり音素材を集めるのが大変でした。

ネットで録音、CDから録音というのももちろんありますが、水の入ったヤカンを叩いた音を録音、風呂に入りながら録音、高校で録音、部室の扉にマグネットを打ち付ける音を録音などなど。家の中、出向いた先で片っ端から録音しまくり、使用しなかったサンプルを含めると200くらいの音ネタを3ヶ月かけて用意しました。もう二度としません。

 

なぜこんなにも集めたのかというと、もちろん自分の見ている景色を正確に伝えるというのが大きいのですが、それに加えて聴く人を飽きさせないというのもあります。

 

先ほど述べたようにこの曲は7分28秒あるので、59分ではないにしろよっぽど飽きます。

飽きられるとどうなるか、そう、アルバム通して聴くときにこの曲が飛ばされます。

でもそうすると僕は大変悲しいのでそれを阻止したい。ということで最長でも20秒以内に曲調が変化するように作りました。ということでサンプルが200も必要だったんですね~もう二度とやらねえ~。


またこのサンプルの中には白昼夢に出てくる現在・過去の象徴として、自分が過去に作った(ボツ)曲、会長の曲も登場しています(ただし死ぬほど編集されています)。

入手可能なものだと

Autumn Lullaby / トイドラ

花にワルツを / Red Cat Theater

Illegal Utopia Nagoya / Red Cat Theater

などがあります。よかったら確認してみてくださいな。

本当は「机上の空中散歩」の曲を全部ぶち込んでアルバムをメタ的な作品にする野望があったんですが、それができなかったのが無念です。まああんまりコンセプトぶち込むと飽和するし、いっか。

 

 

ところで、DTMでは人力と違って規則正しいリズムを鳴らすことができます。これは主にグリッドと呼ばれる、時間軸・小節に合わせた編集が可能にしています。

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これは逆に言えばこの機能をオフにしてしまえば時間軸・小節に囚われない編集が可能であるわけです。というかそもそもなぜグリッドなんかに縛られなきゃいけないんだ俺の心はグリッドで縛られるような不自由なものなのか俺はグリッドなんかで縛れるような人間じゃねえんだよアクセスフラーーーーッシュ!!!!

 

ということで、グリッドを廃止してテンポ感を無くしました。さらばグリッドマン

無論、心象風景がポツポツ現れては滲んで消えていくような演出をしたい!というような意図があっての上ですが。

 

という曲です。まあ色々実験的な試みをしました。買ってちょんまげ。

 


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