どうも、会長のトイドラです。
今更気づいたんですが、僕今んとこブログに音楽関連の記事を何一つ上げてないんですよね。
作曲同好会の会長のクセに、音楽系の記事を書けないと思われるのはマズい。
というわけで、そろそろ会長っぽい記事を書くことにしましょう。
今回の内容は、まさに僕が研究領域としている
「日本民謡の真実」
についてです。
〈もくじ〉
国歌「君が代」
日本には、国家として「君が代」という歌がありますね。
僕はこの「君が代」が大好きです。
というのも、別に「君が代」の歌詞が好きなわけでは全然なく(僕は政治的右翼思想はこれっぽっちも持ってません。その辺の話は面倒なので、誤解なきよう……)、その極めて日本的な響きが好きなのです。
他国の国家を聞いてみても特に国ごとの個性を感じられない気がするのですが、「君が代」からはビンビンに日本を感じませんか?
実は、それもそのはず。
「君が代」のメロディラインには、日本特有の音階・陽旋法が使われているのです。
陽旋法とは、別名「ヨナ抜き音階」とも呼ばれる日本民謡の音階です。
「ヨナ抜き」の名の通り、
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」
という普通の音階から4番目と7番目の音を抜いた
「ド・レ・ミ・ソ・ラ」
の5種類の音からなる音階です。
演歌にとてもよく使われる音階で、温かく野暮ったい田舎のような雰囲気がありますね*1。
さて、それを踏まえて「君が代」のメロディを見てみると……
確かに、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」の5音だけしか使われていませんね*2。
つまり、国家「君が代」は日本に固有の音階・陽旋法に従って書かれた歌なのです。
「ハ長調」で浸透した国歌
さて、ここで先ほどのオーケストラ版「君が代」をもう一度聞いてみましょう。
いやー美しい響きですね。
個人的には、「千代に八千代に」あたりの滑らかなハモリが好きです。
最初はメロディが一本に結集した単旋律から始まって、「千代に」からブワアーっとハーモニーが生まれていって、最後の「むすまで」で再び単旋律に収束していく構成は見事だと思います。
話は変わりますが、この「君が代」は言うまでもなくハ長調です。
言い方を変えれば、「ド(C)を主音とするメジャー・スケール」とも言えます。
ともかく、このことはハモっているところを聞けば特に分かりやすいと思いますし、楽譜を見ても調号は付いていませんから当然ですよね。
もしあなたが突然
などと思い始めたとしたら、多分耳鼻科か精神科か脳外科にでもかかった方がいいでしょう。
ところが……
「ハ長調」という罠
ここで思い出してください。
ハ長調とは、いったいどういう音階だったでしょうか?
答えは僕が上に書いた通りですが、
ド(C)を主音とするメジャー・スケール
これが当然ハ長調の定義です。
さて、ここで注目してほしいのが、「ドを主音とする」という部分です。
主音とは、ある音階の核になるような音で、一般的にメロディは
「主音から始まって主音に終わる」
ことが多いです。
さあ、ここで改めて「君が代」の楽譜を見てみると……
えっ全然ドがないじゃん…
そもそもドの音が〇を打ったたった4か所にしかない上、メロディの最初や最後というより大体なんか中途半端な場所にあります。
ハ長調のはずなのになんで???
いや、それより気になるのが……
なんかレ多くねえ?????
「君が代」の主音は〈レ〉
というわけで、なんと「君が代」の主音はドではなくレでした。
そんなこと言われても信じられないかもしれませんが、そんなあなたは好きなだけ楽譜とにらめっこしてください。
曲の始まり、終わり、そして各フレーズの始まりや終わりに至るまで、キリのいいところに高確率でレが置かれていますよね。
この事実を前にすれば、どんなに信じたくなくても
「ドではなくレ」
という現実は認めざるを得ないでしょう。
さらに、ここでもう一つ思い出してください。
……
最初はメロディが一本に結集した単旋律から始まって、「千代に」からブワアーっとハーモニーが生まれていって、最後の「むすまで」で再び単旋律に収束していく構成は見事だと思います。……
勘がいいあなたは気づいてしまいましたね。
そうです。
オケ版「君が代」の編曲者もうすうす感づいていたのです。
でなければ、どうして曲の最初と最後を単旋律で済ませるのでしょう。
「中間部分はハモりでごまかせたけど最初と最後はダメだった」
という編曲者の声が聞こえてくるかのようです。
……ところで、僕は上で
オケ版「君が代」
という書き方をしましたよね。
そうなのです。
あまり知られていないのですが、実は僕らが慣れ親しんでいるオーケストラ版の「君が代」は原曲ではないのです。
原曲はこっち。
いやクッソ和風だなあ
次回予告
さあ、謎は深まるばかりですね。
いったいどうして「君が代」の主音はレなのでしょうか。
そしてこのクッソ和風な「君が代」はいったい何なのでしょうか。
次回までの繋ぎとして、この言葉を残しておきましょう。
――現代の日本で、陽旋法は曲解を受けている。
――勘違いされた”陽旋法”は歌謡曲などに乱用され、いかにも”日本古来の”顔をして居座っている。
――真の〈陽旋法〉は、僕らの常識から全く外れた力学で動く。
――――それは、「日本和声」と呼ばれる。
はい次回予告終わり。
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