名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

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「君が代」はハ長調ではない 〜日本音楽の真実を暴く〜 その②

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「君が代」はハ長調ではない 〜日本音楽の真実を暴く〜 その① - 名大作曲同好会

 

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――現代の日本で、陽旋法曲解を受けている

――勘違いされた”陽旋法”は歌謡曲などに乱用され、いかにも”日本古来の”顔をして居座っている

――真の〈陽旋法〉は、僕らの常識から全く外れた力学で動く。

 

――――それは、「日本和声」と呼ばれる。

 

 

 

 

というわけで、今回は真の「陽旋法について解き明かしていきましょう。

結局のところ「君が代」の正体とは?

 

 

 

 

 

君が代ニ短調

前回明らかにした通り、「君が代」の主音は〈レ〉でしたね。

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衝撃的事実

ということは、この曲は少なくともハ長調ではありませんよね。

音階の主音は明らかに〈レ〉(=ニ音)にあります。

 

前回の記事で、

陽旋法とは、別名「ヨナ抜き音階」とも呼ばれる日本民謡の音階です。

「ヨナ抜き」の名の通り、

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」

という普通の音階から4番目と7番目の音を抜いた

「ド・レ・ミ・ソ・ラ」

の5種類の音からなる音階です。

と説明しましたが、「君が代」の主音が〈レ〉だということを考えると上の説明は間違っています

そもそも前提として「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」という〈ド〉から始まる音階を置いているのが誤っていますよね?

もうお分かりだと思いますが、正しくはこうです。

 

陽旋法とは、

「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ♭・

という普通の音階から3番目6番目の音を抜いた

「レ・ミ・ソ・ラ・ド」

の5種類の音からなる音階です。

 

どうでしょうか。

何がヨナ抜き音階だって感じですよね。

実際に抜いている音は3と6なんだから、正しくはサブロー抜きとでもいうんでしょうか。

(なんかエロティックですn)

今後もし

「おっ、この曲はヨナ抜きだねえ」

などとインテリぶっている人を見つけたら、読者の皆さんは

「そっすねw」

と冷笑して差し上げましょう。

 

というわけで、陽旋法の正しい音順は「レ・ミ・ソ・ラ・ド」だということが分かりました。

これはニ短調レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ♭・から音を抜いたものなので、一見ニ短調のように見えます。

ただ、厳密にはニ短調ではありません

なぜなら、日本の民謡音階である陽旋法は、そもそも西洋音楽的な長短の音階とは構造が違うからです。

そして、その構造の違いこそが日本和声の神髄なのです。

さっそく説明していきましょう。

 

真の「陽旋法」の和声構造

まず、陽旋法が西洋音楽と最も違っている点はどこでしょうか。

そう、陽旋法には大事な大事な第3音がないですね。

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ニ調 陽旋法

西洋音楽の和声理論では、主和音(Iの和音)の第3音が欠如することは禁じられているので、西洋和声的に考えるとこの音階は主和音を持たないルール違反の音階です。

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「レ・ファ・ラ」の〈ファ〉がない

しかしご安心を。

日本和声的に考えると、ちゃんとIの和音は成立するのです。

それはズバリこう!

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「レ・ソ・ラ・レ」

これこそが日本和声における主和音なのです。

ちなみに、この和音に向かって解決するドミナント・属和音)の役割を持つ和音はこのように定義されます。

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「ミ・ソ・ラ・ド」II4という聞いたことない名前の和音

つまり、基本的なカデンツ(コード進行)はこんな感じになります。

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「T-D-T」のカデンツ

というわけで、陽旋法は根本的な構造が完全に西洋和声とは一線を画しています

これこそが、ざっと「日本和声」の正体なのです。*1

 

君が代」を編曲し直す

さて、ここまでで何となく

確かに『君が代』は曲解されてたんだなあ

と分かってくれたかと思います。

しかし、具体的にはどう編曲されれば良かったのでしょうか。

実際に君が代」を日本和声的に正しく編曲することはできるのでしょうか?

 

 

 

 

 

………ということで、編曲してみました。

 


【研究】日本和声による「君が代」の再編曲

 

 

 

 

 

どうでしょう。

確かにめっちゃ日本的じゃないですか?

私たちの国家「君が代」、本来持つ響きはこういうものだったのです。

 

留まるところを知らぬ曲解

とはいえ、現在一般に知られる「君が代」はあんな感じに編曲されたものです。

それどころか、そもそも日本和声なるものが存在するらしいという事実すら、多くの日本人音楽家は知らないことと思います。

その結果、実は「君が代」に留まらず多くの日本民謡たちが西洋和声的に捻じ曲げられ、誤った形で後世に伝えられようとしているのです……。

 

 

というわけで次回予告です。

 

 

 

 

――日本の民謡は、具体的にどんな風に損なわれているのか?

 

 

――なぜ、そんなことが起こってしまったのか?

 

 

――真の黒幕はなのか?

 

 

 

 

 

――そしてトイドラは、広げに広げた大風呂敷をちゃんと畳めるのか(知らん)。

 

 

つづき↓

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*1:本文では日本和声のほ~~んの一部にしか触れていない。興味がある方は、小山清茂・中西覚著「―日本の音を求めて― 日本和声 ―その仕組みと編・作曲へのアプローチ―」を参照のこと。(絶版だけど)