名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

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アラビア語を軽い気持ちで学び始めた話

 皆さんこんばんは。岩附です。

 今回は私が大学でアラビア語を履修した時に苦労したことを簡単に話そうかなと思います。そんなに専門的な話できないので、軽く聞き流す感覚で見て頂ければ幸いです。

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1.きっかけ

 そもそも、なぜアラビア語を学ぼうと思い至ったのか、答えは単純でインターネットである曲に出会ったからです。

youtu.be

 当時高校生だった私は、歌詞はわからないけれど、この曲の物悲しいメロディーと、歌手の表情に引き込まれ、気づけば一日に何度もリピートしていました。

後から知ったのですが、この曲は「ザクロの歌」と言われ、オスマン帝国に支配されたイラクが今度はイギリスから解放という名目で再び占領されそうになっている状況を嘆いた政治的な暗喩が込められた歌だったようです。

ともかくこの曲の歌詞を知りたい!!というのがアラビア語を学ぶきっかけになりました。

 

2.文字・発音

さて、そんな訳で大学の第二外国語アラビア語を学び始めた訳ですが、まず最初の壁にぶち当たります。

文字です。

ビスミラ 慈悲あまねく慈悲深きアッラーの御名において

 最初は正直「文字の境目はどこだ…?」と単語を各文字に分解することさえ困難に感じました。というのもアラビア語の28文字のアルファベットは

独立形、語頭、語中、語尾で文字の形が微妙に変わるのです。

 例えば ك k の文字は右から頭、中、後で ككك というように変化します。中のsみたいなやつが本体だったのかお前。

さらには ب ت ث ن ي  これらも全部発音も全く違う文字です。試しに彼らをつなげてみましょう。

 بتثني

視力検査ですか?

アラビア語にはこんな感じで点の有無で発音が変わる文字が複数種存在するのです。なので初学者であった私はこれらのそっくりさんから、正しい発音は何か見分ける事から始めなければならなかったのです。

 

 

3.品詞の活用・動詞

 さて、そんなこんなで何とかアラビア文字を覚えた私は、先生に教科書例文を試そうと試みました。

 كَيْفَ حَالُكَ ؟  

   調子はどうですか?(カイファ・ハールカ?)

しかし、先生から微妙な反応。というのもこれは男性形で、先生は女性だったので正確には

 كَيْفَ حَالُكِ ؟

  (カイファ・ハールキ)

発音しなければならなかったのです。

と、こんな感じでアラビア語には男女と数(単数・双数・複数)によって単語が変化します。

つまり、人称代名詞だけでも3人称男女、2人称男女、1人称(区別なし)の5パターンだけでなく双数・複数合わせて12パターンの変化があるということです。また、「彼らの」など形容詞的に用いる場合は接尾形となり、それはそれで別の変化をします。

 

アラビア語の法則(冠詞 (dooo.jp))より引用

 正直多すぎて、会話の中でスムーズに使うのは未だに難しいです。でも。ここまでなら何とか覚えられるんですよ。そう、ここまでなら…

 まず、動詞も同じように活用します。大体一つの単語が13パターンに変化します。しかし、動詞は意味によって派生形というものが存在します。例えばكتبkataba(書く)という動詞はⅢ形でكاتبkaataba(文通した)という意味になり、派生形はⅩ形まであります。(昔はもっとあったらしい)

 つまり単純計算で一つの動詞に130個のバリエーションがあるわけです。加えてこれまでの話は完了形の話であり、動詞は文中で完了形以外に直接法、接続法、要求法、そして命令法のパターンに変化します。命令形のみ2人称だけなので5個ですが、それ以外は13個フルにあります。

 ここまでの話を整理すると

・動詞は主語によって13パターンに変化する。

・動詞は13パターンの完了形・直接法・接続法・要求法+命令形5パターンに変化する。

・動詞は意味によって10パターンの派生形が存在する。

計算すると、理論上一つの動詞に

(13×4+5)×10=570パターン もの変化が存在しうるのです。

もちろん派生形が全部使われている動詞の方が珍しいですが、可能性としてはこんなにあるということです。さらには動名詞や能動分詞なども含めるとさらに増えます。もう考えたくねえ…

頭を抱える フリー素材 に対する画像結果

 実際大学の文法の授業のうち3分の2ぐらいは動詞の活用法の授業でした。

 そしてこれの何が問題かというと、ほとんどのアラビア語ー英語辞書には基本的に完了形、単数、彼、Ⅰ形でしか記載されていないということです。つまりこれの意味するところは、文章の動詞を調べる時は、主語・語法・派生形などがごちゃごちゃに混ぜられた570パターンから自力で語根を見つけ出して辞書の形に直さなければならないということです。 適切な例えかは分かりませんが、日本語でいうなら辞書の項目が漢字の部首ごとに作られていて、知らない漢字に出会ったら自力で部首を判別しなければならないようなものです。

 気分は正に砂粒の中から宝石を探すよう。そもそも活用によって付け足された文字のせいで語根がわからない上に接頭語や人称代名詞接尾形もくっつくせいでもはやどこからが動詞で、何が活用なのかわからない始末。酷い時には一つの動詞を解読するのに2時間ぐらいかかったこともありました。

 

・まとめ

 そんなこんなでアラビア語の単位自体は何とか取れたものの、読めるようになったかと言われれば、まあ…その、一文30分かけていいなら辛うじてぐらいにしかならなかった訳ですが。このことをイラク人の友人に話したら一言、「まあ日本語も相当難しいね」と言われてしまいました。そりゃそうだ、「日」の読み方一つで何通りにも変わるのだからたまったもんじゃない。少し日本語を頑張って勉強している人達にも優しくなろうと思えました。

 そして結局最初の曲の歌詞は分かったのか、ということですが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ、ペルシャ語でした。