名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

日本のエクストリームミュージック⑨名古屋大学 音楽殺人

6月某日、名古屋大学で行われたエクストリームフリーダム音楽イベント「音楽殺人」、その中で大小様々な音楽グループによる発表が行われたという。果たしてどんな企画だったのか、そしてどのような意図のもとそれらの企画が行われたのか。私はそれぞれの企画者にインタビューを敢行し、これを明らかにしようとした。

 

音楽殺人

ー 本企画の意図を教えてください
企画者 「ありません」
ー 「音楽殺人」という演題は、故・高橋幸宏の作品を想起させますが、何か関係はありますか?
企画者 「ありません。高橋幸宏の『音楽殺人』は聴いたことありますが、つまんないなと思いました。」
ー ありがとうございました。
企画者 「しいたけ」

 

特殊音楽研究会

かつて名古屋大学に存在していた異色の音楽集団(あるいは個人)特殊音楽研究会、その演奏を6年の時を経て復活させるという試みが行われた。果たして名古屋大学にノイズは生きているのか、謎に迫った。

nu-composers.hateblo.jp

ー 本企画の意図を教えてください
冨田 「かつて名古屋大学にはキタダという、全身黒尽くめの、長髪の、悪魔崇拝者みたいな男がいました。私は彼に名古屋大学での生き抜き方を教わりました。そのおかげで、私は名古屋大学での学生生活をたった1人で送ることになりました。
彼が作った特殊音楽研究会は最大人数が4人で、最小人数は1人でした。音楽というよりはもっぱら哲学的な思索をしていました。しかし特殊音楽研究会はキタダの卒業に伴い自然消滅しました。なので復活させました」
ー かつての特殊音楽研究会のステージにはいなかったギターもいましたね
榊原 「当時の特殊音楽研究会にはキタダ・冨田の他にメタラーの男・榊原も在籍していました。なので彼が参加していた場合のステージを想像してギターを追加したというのは建前で、本当は、当時観客にすぎず、入学した時には特殊音楽研究会が解散しており在籍することができなかった18歳の私の亡霊を祓うのが目的でした」
ー 実際に弾いてみてどうでしたか
榊原 「指が血だらけになって痛いなと思いました」
ー ありがとうございました

 

カウベル演奏会

陽気な音楽に合わせて、無表情かつ微動だにせずひたすらカウベルを叩き続ける謎の男が出現した。果たして彼の目的は何なのか。真相を究明するために独自取材を敢行した。

ー この企画の意図を教えてください
二ツ島 「カウベルを曲を流しながら叩いたら、面白いんじゃないかって思いました。あと、カウベルを欲しいけどちょっと勇気いるなっていうのがあって、その踏ん切りの一歩をつけるために企画しました」
ー 本日流してもらった音楽について教えてもらってもいいですか
二ツ島 「『ファンコット』というジャンルの曲をメドレーで流しました。ファンコットインドネシア発祥のハウスミュージックです。ハウスミュージックゆえの陽気さと、(インドネシア特有かはわからないんですけど)声ネタが豊富に使われているのが特徴です」

ja.wikipedia.org

ー なぜファンコットカウベルを叩いたんですか?
二ツ島 「むしろ順序が逆で、ファンコットというジャンルではカウベルが多用されています。なので、カウベルを叩くならファンコットに合わせるべきだろうということです」
ー ありがとうございました

 

HASAMI group (cover)

一部でカルト的な人気を誇るHASAMI groupのカバー。一体なぜ行われたのか。その謎に迫るために私はある男に取材した。

ー この企画の意図を教えてください
榊原 「世の中にはHASAMI groupのコピバン動画が存在するのですが、正直言ってあまりにしょぼすぎます。というのもHASAMI groupの曲はチープな音、最悪な帯域バランス、一定のベロシティなど、DAWでしか再現できない奇妙さが楽曲の完成度に大きく貢献しているからです。すなわち生楽器で演奏する意味があまりありません。
また、選曲も大体『病気が治ったら』や『Waiting more』など、正直あまり良いとは思えないものが多いです。HASAMI groupはここ数年でユーモアと音楽性の融合が進み、最新作『パルコの消滅』ではかなりの完成度に達しています。なのでここ数年の曲のうち白眉の出来のものを中心にDAWでoff vocal版を作成しセトリを組みました。というのは建前で、歌って気持ちよくなりたかっただけです」
ー 歌われた「ピッチング寿司願望」はあまり良い出来とは思えませんが?
榊原 「ありがとうございました」

やることリストダウン

全てが謎に包まれている匿名音楽グループ「やることリストダウン」。音楽とも雑音ともコラージュとも言えないような音を垂れ流し続けた彼らは一体なんだったのか。兎にも角にも取材した。

ー この企画の意図はなんだったんですか
やることリストダウン一同 「......」
ー ......やることリストダウンはどういう企画だったんですか
やることリストダウンA 「......すごく増えるワカメ」
やることリストダウンB・C 「......」
ー 企画しようと思った動機はなんですか
やることリストダウンA 「イナバの物置です」
やることリストダウンB 「面白そうだったからです」
やることリストダウンC 「破壊」
ー みなさんセトリにある曲を作曲されたと思いますが、何を考えたらあのような曲になったんですか
やることリストダウンA 「すごい概念です」
やることリストダウンB  「あれは全てレクイエムのつもりで書きました」
やることリストダウンC 「嗜虐」
ー ありがとうございました

 

これらの企画のうちいくつかは映像や楽曲が公開されるかもしれない。しかしそれを期待するのも野暮というものだろう。そこには意味など全くなく、曠野のような虚無が広がっているだけである。