名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

2022年良かった曲

オープニング

百姓娘 - 横須賀市立池上中学校生徒会 (1974)


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メリークリスマス! 今年もこの時期がやってまいりました。

12月は今年の総決算と一般的に考える人が多くいる月なわけですが、私も例に漏れず今年聴いた曲をピックアップしていきます。

 

もくじ

 

海外

Can't Stop the Show - Lauren Desberg (2015)


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LAのジャズシンガー。カーペンターズなどからも影響を受けているようで、ジャズシンガーとしてはかなりポップな歌唱です。

曲はKaren Tayarという映画音楽作曲家(?)との共作のようです。めちゃエモい。

特に意図とかはないんですが、このなんとも言えない多幸感がかなりクリスマスっぽくないですか? 特に意図とかはないんですが。

 

Dead Inside Shuffle - Louis Cole (2022)


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LAの超マルチプレイヤー。本業は一応ドラムだが基本何でも弾ける異能。

曲名の通りシャッフルビートですが、どこかおかしくて私の知ってるシャッフルではないです。確かにシャッフルビートではあるのですが。

この前の来日公演を見に行ったのですが、手と足が人間離れした動きをしており、このMVにおけるキモい動きは日々のドラム練習のなのだろうと賜物なのだろうと思いました。でも車は普通に運転してほしいです。危ないから。

 

 

The Soy Lentman Show - Jacob Mann Big Band (2022)


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主宰のJacob MannはLAの人です。KNOWERのサポートメンバーでもあります。Lauren DesbergもLouis ColeもLAだし、LAはすげえよ。私がLAの音楽シーンしかまともに追えてないというのもありますが。

さて曲ですが、全体的に多幸感溢れる明るいサウンドが特徴的ですね。サムウィルクスをはじめとしたLouis Coleの一軒家セッションにいたメンバーも多数所属しているため、これが現代のLAを象徴する音と言っても過言ではないでしょう。つまり私が幸福に飢えてるから多幸感溢れる曲ばかり選んでいるわけではないということです。

他の曲だとKogiとかも良いです。この曲(Kogi)はLouis Coleがドラムを叩いています。


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Only One (feat. Angelica Bess) - Machinedrum (2022)


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LAを拠点に活動するTravis Stewartのソロ・プロジェクト。お前もLAか、と思いきやノースカロライナに生まれで、NYなど拠点を転々としているようです。よかった~。にしてもLAには人を引きつける何かがあるのでしょうか。

Machinedrumの名前通りのいわゆるIDMではありますが、Hiphopや現代ジャズの影響も感じますね。こういうミクスチャーな部分はとてもLAっぽいような気がします。

 

ABC (feat. Sophia Black) - Polyphia (2022)


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テキサスのバンド。ようやくLAではない人たちの曲を紹介するわけですが、まだアメリカを脱出できていません。

PolyphiaはマスロックとEDMの融合といった感じで今までやってきていましたが、ついにKawaii Future Bassとも融合してきました。かわいい~。演奏は全然可愛くないけど。

MVに出てくる五十音が微妙に間違ってるのが、特に理解せずにマジで記号として扱ってんだなという感じがして良いと思います。

 

 

The Shrine - Jaga Jazzist (2020)


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Lars and Martin Horntveth兄弟によって結成されたノルウェーのジャズバンド。ようやくアメリカを脱出できましたが、まだ欧米圏を脱出できていません。曲を主に書くのもこの兄弟です。スカンジナビアのいわゆるニュージャズムーブメントを代表するアーティストとして広く認知されており、2002年にはBBCのJazz Album of the Yearに選ばれるなど人気なようです。

ニュージャズムーブメント代表と言うだけあり、クラブシーン、特にジャズ・ファンクの影響を色濃く感じますね。

 

Gobbledigook - Sigur Rós (2008)


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アイスランドのポストロックバンド。編成が(ロックバンドとしては)イカれている。バスドラム(?)何台あんねん。何気にビョークもいるのが面白いです。

弊会の会長も言っていましたが、この超シンプルなビートでめちゃくちゃかっこいいのは凄い。ビートの上に乗っている音がポリリズム且つ変拍子っぽいのが複雑性を担保しているんでしょうが、四分で打ち続けるだけでもキャッチーになりうるというのは発見でした。

 

 

Shenovo horo - Maksim bend (2018)


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ウクライナ(?)のクラリネット奏者Maksim Shen率いるバンド。伝統音楽をフュージョンでやってるのかな。Shenovo horoのhoroはブルガリア語でダンスという意味らしいです。しかしShenovoは調べても全然意味が出てこなくて謎です。造語?

謎といえば、Maksim Shenをウクライナ人としている根拠は動画のタイトルをDeepLにかけたらウクライナ語と出たからなのですが、キリル文字の判別が全然つかないので正直よくわからないです。マジでラテン文字以外の文化圏の音楽を調べるのがムズすぎる。言語マスターになるしかないのか。

にしてもキメがバキバキですね。あと装飾音符がエグいほど付いていてめちゃ面白い。自分では絶対に思いつかない音選びの連続なので見ていて楽しいです。

 

Requiem for Molly, Pt. 2 - John Fahey (1967)


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イカれサイケ・フォークギタリスト、John Faheyの作品のなかでも特に異常な作品です。サブスク解禁されたので記念に紹介します。

他が強烈すぎて埋もれてしまいがちですが、そもそもギターのメロディラインが希薄な上にスライド奏法(ボトルネック奏法?)を多用しまくっており、既に不安を醸し出しています。そして過剰なサンプリング。67年にこれをやるのは相当大変だったと思います。ちなみに曲名はレクイエムですが、Fahey曰く「まだ生きているが心が狂ってしまった女性への個人的な賛辞」だそうです。

 

結局西洋しかまともに聴けなかったです。

というか、欧米以外の国の曲(特に現地でしか認知されていないポップス)を検索するのが難しすぎます。マジで一生探せる気がしない。

一応インド古典とかラヴィ・シャンカルのジャズ組曲とかは多少聴いてました。あと東・東南アジアあたりの音楽も多少追ってはいますが、検索しようがないのもあり面白いものは見つけられなかったです。というか、かっこいいんだけど、かっこいいね〜で終わる感じですね。すまん、それで終わらせてしまって。でもSweet Johnの新譜は割とよかったと思います。

 

日本

IQ500の蕎麦屋 ー HASAMI group (2022)


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青木龍一郎によるアマチュア音楽グループ。この曲が収録されている最新アルバム「パルコの消滅」はとてもいいアルバムでした。今までのアルバムにあった軽さがほとんど感じられず、もうこれ集大成だろと思ってしまいました。でもそれを裏切って予想の斜め上を行くのがHASAMIだとも思います。

21枚アルバムを出してもまだ進化を続ける音楽グループはそうそうないので、今後も注目していきたいと思います。

 

愛 - 性闘士☆準矢 (2018)


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音楽は最悪ですが、こういう音楽が許されているアングラ音楽シーンは寛容でとっても良いなと思いました。あと音楽をエンターテイメントとして振り切るなら、こういう感じになりうると割と真面目に思うんですよね。世のエンタメ音楽は振り切り足りないです。

 

踊れる - かさねぎリストバンド (2021)


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フリーランス作曲家、増田義基が主宰する音楽合奏集団。「踊れる」はまさにそうですが、ポリリズムとミニマルを基調とした作品が多いです。

大人数ということもありここ2年くらい活動がないので悲しいですが、新たなる活動を私は待っています。

 

ちなみに増田義基氏は個人でも音楽活動をしています。

なれたよ - 増田義基+田上碧 (2020)

なれたよ

なれたよ

  • yoshikimasuda+田上碧
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

これなんかはちょっと矢野顕子っぽいですね。

2022年には最新アルバム「ビオトープ探して」もリリースされておりましたのでそちらも是非。

 

蕾に雷 - 花譜&長谷川白紙 (2022)


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バーチャルシンガーの花譜と長谷川白紙のコラボ。完全にただの長谷川白紙になっているので花譜氏にはもっと頑張ってほしい。まあこの甘い雰囲気が花譜っぽさなのかな。

にしてもバーチャルシンガー界隈はコンポーザーに割と攻めた人選をすることがままあり、一体どうなってんだという感じです。

↓の一曲目とかASA-CHANGですし。


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マスに訴えかけるよりは一部の音楽オタクに刺さる曲出した方がコスパ良いってことなんでしょうか。

 

バブリング創世記 - 筒井康隆山下洋輔トリオ (1978)


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鬼才・筒井康隆によるパロディ神話「バブリング創世記」を、これまた鬼才・山下洋輔率いるジャズトリオが音楽化したものです。「バブリング創世記」自体が既になんでもありのカオスなのですが、そこに山下洋輔のフリージャズ的解釈と過剰な引用(山下の「GUGAN」や筒井康隆の「熊の木本線」、しまいにはピンクレディーの「UFO」が引用される)が加わることで、この上なく筒井康隆らしい作品になっています。さすが盟友といったところでしょうか。正直原作ありきの曲な気はしますが。

ちなみにこの曲が収録されているレコード「筒井康隆文明」のB面には、筒井康隆が寝る方法を論文調で仰々しく講演する、その名も「寝る方法」が収録されていてこれまたシュールです。

 

overdone - Limonène (2020)


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トラックメイカー サノカモメとシンガー 月島春果によるユニット。

サノカモメ氏は渋谷系、とりわけフリッパーズ・ギターの影響を公言しており、たしかにその影響が感じ取れる内容になっています。この曲はCymbalsの方が影響強そうですが。

その辺の影響もそうなんですが、ボカロなどの10年代のインターネットミュージックの影響もかなり感じられそれはそれで興味深いです。そもそも渋谷系アキバ系と融合してアニソンに発展解消していった(と解釈している)ので、今渋谷系が存在するとしたらこのあり方はとても自然なことのように思います。

 

 

奇妙な印象 - あめあめもと (2022)


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それっぽいタイトルとアーティスト名を付けられていますが、これはおそらくAIによって生成された曲です。サブスクは再生回数に応じて作曲者とか歌手に金が支払われる仕組みになっているんですが、その金目当てのクズがAIで生成した曲が大量にあります。マジでビビります、想像より遥かに多く存在するので。

こういうAI生成曲が蔓延らないようにAppleSpotifyは対策を講じているのですが、こうやってある程度起伏をつけてしまうと人間が作った曲と判別がつかないようで、野放図になっているのが現状です。そしてそこまでリジェクト避けのために起伏をつくっているのなら、それは普通に創意工夫と認めても良い気がしないでもないです。そして区別がつかないのだとしたら、人間とAIの作った曲の違いとは音響的に何なのでしょうか。別に作った人間はそんなこと考えてないでしょうが、なんとなくそんなことを考えてしまいますね。

 

ねむねむ天使 - 伊藤真澄 (2003)


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バンダイナムコの音楽レーベル、ランティスに所属する職業作曲家。主にアニソンとその劇伴を書いているので、アニオタの皆様におかれましては有名です。

いろいろな名義がありますが、伊藤真澄名義の時は主に歌っています。最近は過去作のデジタル配信をしたり初のピアノアルバムをリリースしたり精力的に活動している様子で、この曲も配信されていました。

個人的な00年代エモブーストがかかっていることは否定できないんですが、少し感傷的で印象的なメロディライン、Bメロの裏切りとかはとても良いなあと思います。

 

暗闇でDANCE - BARBEE BOYS (1984)


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日本の男女ツインボーカルバンドの先駆け的な存在(そもそもそんなにいませんが)。女性がいるのにボーイズという名前をつけてしまったことを後悔しているらしいです。でも女1人で他全員むさい男なのにGIRL がついてるバンドがあったくらいなので、今となっては全然良いのではないでしょうか。

ツインボーカルになるとなんでみんな「3年目の浮気」みたいな歌詞になるんだ、とは思いますが、音がかっこいいので良しとします。

この曲は記念すべきメジャーデビュー曲でもありまして、「台風クラブ」という映画の冒頭でかなり印象的な使われ方をしています。ちなみに「台風クラブ」はかなりイカした映画なのでおすすめです。

 

 

大阪より愛を込めて - チャンチキトルネエド (2009)


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現代音楽家チンドン屋の本田祐也氏が設立したバンド。連続テレビ小説あまちゃんの劇伴を演奏していたので、知らず知らずのうちに耳にしていた人も多いでしょう。

チンドン屋みたいな音がベースで鳴りつつも、様々な地域の音楽の要素がミックスされています。そしてジャズ畑ではない人間がアドリブをすることによって生まれるこのパチモンジャズ感が最高です。チンドン屋ベースじゃなかったらこうはカッコ良く収まらないでしょう。

 

とまあこんなかんじで。

毎度のことながら今年発表されたタイトルが少ねえな、と私は思いました。できれば全部今年出た曲で埋めたいんですけどね。

ちなみにクラシックや現代音楽ではプーランクの15の即興曲第1番ロ短調や、リゲティのAtmospheres、WennakoskiのNosztalgiaimなんかもいいなあと思ったのでした。


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クロージング

Silently Sharing - F.S. Blumm & Nils Frahm (2013)


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ではまた来年、良いお年を。