名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

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謎のCDを聴く 〜大学の古本市編①管弦楽金曲集〜

丁度一ヶ月前くらいに大学祭がありました。

大学祭では毎年古本市が開かれているんですが、そこで本に紛れて中古のCDが売っているんですよね~。しかも全く知らないミュージシャンの。

これが1枚3000円とかだったらまあ買わないんですが、100円なので今回はいろいろ買って聴いてみました。

書いていたら思ったよりボリューミーになったので、今回は1枚目「管弦楽金曲集」のみです。

 

管弦楽金曲集

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なんだかとても中国の香りがするジャケットですね。めちゃくちゃ中国人が作曲して中国人が演奏してそうです。あと「金曲」なので、少なくとも中国国内ではメジャーな曲が演奏されてそうです。

そうなるとCD内容の可能性としては

①民謡をオケでやる

②オケ用の曲

の2パターンが考えられると思いますが、中国語全然読めないのでわかりません。でもどっちかというと①のような気がしないでもないです。

ということで聴いてみます。

 

~♪~

 

聴きました。結論から言うと①②両方ありました。ぬかりねえな。それでいいと思います。

 

ピックアップ

1曲目「思乡曲」 马思聪(1912-1985)


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いわゆるロマン派の西洋音楽を彷彿とさせる穏やかな曲。中国音楽集の1曲目ということもあり、コテコテのステレオタイプ的な中国音楽を想像(期待)していたので、やや意外でした。まあヴァイオリンはかなり二胡っぽい使われ方をしていますが。

 

作曲者の马思聪は11歳の時にヴァイオリンを学ぶためにフランスに留学しました。その後パリ音楽院に入学し翌年帰国。1949年には中国の芸術系大学のトップに君臨する中央音楽院の初代院長に任命されるなど、かなり高名の様子です。

しかし1966年の文化大革命のときに迫害され、翌年アメリカに亡命します。

 

ヴァイオリニストということもあり、ヴァイオリンのための作品が多いようですが、管弦楽に加えてバレエ音楽やオペラの作曲もしているようです。個人的には「アジア・アフリカ・ラテンアメリカ反帝行進曲」が気になります。思想が強そうだから。

ちなみに今回収録されている曲名の「思乡」とはホームシックのこと。彼の人生と重ね合わせると、なかなか泣ける話ではあります。

 

 

5曲目「春节序曲」李焕之 (1919-2000)


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出ました、いわゆる中国音楽です。普通にかっこいい。

作曲者の李焕之は1919年香港生まれ。1938年に魯迅芸術学院音楽科に入学し、冼星海のもとで作曲と指揮を学びました。

中華人民共和国建国後は马思聪同様中央音楽学院に勤務し、その後、中央歌舞団に移籍、1960年に中央中国管弦楽団の初代監督、初代首席指揮者となります。その後は世界中で指揮を振っていたようです。

作曲家としては「春節組曲」というのが有名らしく、そのなかでも第1楽章は春節の時期になると公共の場やメディアで流れまくるそうです。日本でいうところの宮城道雄「春の海」的なポジションでしょうかね。

 

ちなみに師の冼星海はヴァンサン・ダンディとポール・デュカスに師事していたらしいです。意外なところに繋がるもんですな。

 

7曲目「火把节」王西麟(1937-)


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5曲目と同様いわゆる~という感じがしますが、より西洋音楽的な気がします。シネマティックで劇的な展開がかっこいいですね。この曲のことは全然知りませんでしたが。

 

作曲者の王西麟は1937年に河南省に生まれました。10代の頃、西洋のクラシック音楽に触れ、教会学校中国人民解放軍文化技術団第11分団で音楽理論を学んだそうです。 その後、上海音楽院で学び、丁善德、瞿维、刘庄、陈铭志などに師事しました。彼の作品は長い間注目されませんでしたが、近年中国の音楽界で広く受け入れられ、国際的に最も影響力のある中国作品の一つとなっているそうです。そんでもってこの「火把节」は中国で最も有名なオーケストラ作品の一つらしいから俺は今すぐ自殺した方が良いかもしれないな.......。ごめん全然知らなくて......。

そして交響曲四番はペンデレツキから高い評価を得るなどしているらしいです。ちゃんと聴いてみようかな......。

 

総評

中国における西洋音楽の黎明~発展を窺い知ることができて、良いCDだったな~と思います。とても勉強になりました。それはそれとして、ステレオタイプ的な中華風音楽という雰囲気のかっこいい曲も多くて満足感もありました。

まあ取り上げられている作曲家の時代が時代なので、もっと現代的な曲も入っていたらより良かったのかな~とは思います。

 

次回「清水碩二 Memorial Recital」編に続く!