名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

レコードを買って聴いた

私が生まれた時にはレコードもベータマックスレーザーディスクも既になくなっていて、物心ついた時にはVHSもMDもなくなってしまった。そして今やCDもDVDも、もしかしたらBDもなくなりつつある世の中である。時代の流れとともに何もかもなくなっていく。流れはどんどん速くなっていて、明日の朝起きたらパンツ以外家も街も何もなくなってしまっても驚かないほどだ。嘘、全然驚く。

そんな時代だからか、失われつつあるものに心を惹かれる自分がいる。周りがLEDに置き換わるなか蛍光灯が点り続ける街灯だったり、再開発される街に佇むレトロフューチャーな建物だったりの写真を撮りそれを愛してやまない。

その眼差しは無論レコードにも注がれる。

初めて見て鳴らしたのは祖父母宅だったと思う。かつて父の部屋だった(と思われる)部屋にあった昭和アイドルのレコードやゴレンジャー主題歌のソノシートを鳴らした。アイドルにもゴレンジャーにも興味がないため、なんかやたら古いなという感想しかなかったが、それはそれとして面白い体験として記憶には残っている。

 

初めてレコードを買ったのは2017年冬だったと思う。コーネリアスが11年ぶりに新譜を発売したときのライブで買った。2曲しか入っていないシングル盤を買ったのにCDより大きくて、なんて効率の悪い音声記録媒体なんだと思った記憶がある。

そして大学2年の頃、友人からYMOのレコードを2枚もらった。

そして今年ようやくプレーヤーを買ったのである。今まで買わなかったのはマジで金がなかったから(今もない)。そしてレコード盤に針を落として流れてくる音に耳を傾けたときに今まで述べてきたレコードに関する記憶が思い出されたわけですよ、プルーストの言う無意識的記憶じゃないですか、エモいですね。エモいと言え!!!!

 

ということで普通に色々聴きたくなったので買ってきました。

 

John Coltrane / Live at Birdland

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言うまでもなく名盤ですね。私はコルトレーンが好きなのですが、彼の作品はどこに行っても売っているので逆に全然手元になく、気が狂っていた時期に買ったascensionしか持ってなかったので買いました。60-70年代くらいまでの音源はスピーカーで聴くことが前提のためか、ステレオの振り方が極端だと思います。今回イヤホンではなくスピーカーから聴くことで想定されている音響で聴くことができ、感動しました。レコード関係なくね?

 

United Future Organization / United Future Organization V

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UFOは前に当ブログで紹介したのでそちらを参照していただくとして、内容は普通のクラブジャズで特に言うことがありません。良いわけでも悪いわけでもなく、なんか普通でした。

 

山下洋輔 筒井康隆 / 筒井康隆文明

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ジャズピアニストの山下洋輔と小説家の筒井康隆がそれぞれ大好きで、そのコラボだからそりゃ良いに決まってるだろうと思って買ったらやはり最高でした。A面(!!!!言ってみたかった言葉)は筒井康隆の「バブリング創世記」を音楽化したもので、そのバブリング創世記というのが

ドンドンはドンドコの父なり。
ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み、ドンドコドン、ドコドンドンとドンタカタを生む。
ドンタカタ、ドカタンタンを生めり。
ドンタカタ、ドカタンタンを生みしのち四百六年生きながらえて多くの子を生めり。
カタンタン、ドカドカとドカシャバを生み、ドカシャバ、シャバドスを生み、シャバドス、シャバドビとシャバドビアを生む。
シャバドビア、シャバダを生み、シャバダ、シャバラとシュビラを生む。
シュビラ、シュビダを生み、シュビダ、シュビドゥバを生み、シャバダ、シャバラとシュビラを生む。

というジャズスキャットに使われるバブリングを用いた聖書パロディ小説なのですが、当然ジャズと相性が良いわけです。嘘です。めちゃくちゃです。この曲、めちゃくちゃすぎる。引用文の朗詠に続きフリージャズの即興演奏が始まったかと思うと、山下洋輔のGUGANが引用され、気づいたら筒井康隆の熊の木本線が引用されたと思ったらピンクレディーが登場して......この感じ、どこまでいっても筒井康隆らしすぎます。

B面「寝る方法」は筒井康隆がひたすら寝る方法について解説してくれるわけなのですが、安眠するアドバイスとかではなく本当に純粋に寝る方法を解説しているのでめちゃくちゃシュールです。

どんな感じかというと、

寝る時は、まずベッド側面部を背にして立ち、ゆっくりと膝を曲げ尻をベッドの上に乗せる。
この時、尾てい骨より垂直におろした架空の直線が少なくとも25センチは奥になければならない。
何故ならベッドの上にはマットレス、シーツ、毛布といった睡眠用具が置かれているため、
両側面から二人の人間が同時に寝ようと試みる場合を除いて、ベッドの端に尻を置くという行為が
当人の上半身を極めて不安定な状態にするからである。

なんなんだ???????

 

とまあこんな感じで非常に満足でした。特にこの筒井康隆文明は現在廃盤らしいので買って得しました。

 

これは反省なのですが、普段ストリーミング配信で音楽を聴いているとこのような廃盤作品に目が全くいかなくなってしまった自分がいることに気付きました。多分同じような人は多い気がします。ストリーミング便利だし。レコードなどの再生が不便な媒体にもに名作が存在していることを頭の隅に置いておきたいですね。おわり。