はじめに
こんにちは。Niynuh Swidffel(にーぬ・すうぃどぅふぇる)です。
先日自室の片付けをしていたところ、こんなガジェットを見つけました。

mp3プレイヤーですね。おそらく私が小学生だった頃に、進研ゼミで答案を添削してもらうたびにもらえるシールを集めて交換した代物だと思われます。 wavやそれ以上の高音質なフォーマットで音楽を聴くことが当たり前になった現代においてmp3プレイヤーの存在価値はほとんど無いに等しいと思いますが、せっかく発掘したのだから何かに使えないものか。そう考えて、

買っちゃいました。
これでmp3プレイヤーから出力された音をDAWに取り込むことができるようになりました。まず比較対象となるmp3データをそのままDAWに貼り付け、同じ楽曲のデータが入ったmp3プレイヤーを上記の変換ケーブルでPCに接続し、録音します。なお、そのままではゲインに大きな差が合ったため、後者を20.6dBほどブーストしました。
それでは、Let's 分析!!

youtu.be
1. LoudnessとLevelの差異
0:30付近や終盤に、左右のラウドネスメーターに差異が確認できます。- True Peakの違い: 動画全体を通して最も顕著な違いの一つがここです。
- 左側のTrue Peakは再生中2.4~2.7で変動しています。
- 右側のTrue Peakは早い段階で3.2という高い値を記録し、そのままホールドされています。
- なぜアナログを経由するとピークが高くなるのか?: これはインターサンプル・ピークとアナログ回路のオーバーシュート(信号の波形が目標とする閾値を一時的に大きく超えてしまう現象)の複合的な結果だと考えられます。mp3に圧縮する際、波形が変形し、(デジタル上では0dBを超えていなくても)D/Aコンバーターがアナログの連続的な波形に復元した際に、サンプルとサンプルの間で本来のピーク値が跳ね上がる現象(インターサンプル・ピーク)が起きます。mp3プレイヤーのDACはこれをそのまま出力し、さらにプリアンプ等のアナログ回路を通ることで波形が僅かに歪み、結果としてA/D変換でDAWに戻した時には、元のmp3ファイルよりも高いTrue Peakを記録してしまう。
2. Spectrumの差異
下段中央のSpectrumアナライザーの波形からも、両者の違いが読み取れます。- mp3特有の高域のカットオフ: 両トラックともに、16kHz〜20kHz付近でスッパリと周波数が切り落とされている(ローパスフィルターのような状態になっている)のがわかります。これは非可逆圧縮形式であるmp3フォーマットが、人間の耳に聴こえにくい高域のデータを間引くことでファイルサイズを軽くしているという仕様そのものです。
- ノイズフロアの違い: グラフの最下部(-80dB〜-100dB以下の暗い部分)の挙動をよく見ると違いがあります。左側は、信号が存在しない帯域は完全に無音になります。しかし右側は、Spectrumの下部に常にかすかな揺らぎが存在します。これはmp3プレイヤーの回路ノイズ、ケーブルのグラウンドノイズ、オーディオインターフェイスのADC(アナログ・デジタル・コンバーター)の熱雑音などがホワイトノイズやというハムノイズ(交流電源の周波数が音声信号に混入し、再生機器から低い音が鳴り続ける現象)として乗っているためです。
- EQカーブの変容: アナログ回路は、完全にフラットな周波数特性を持っているわけではありません。多くの場合、低域がわずかにブースト気味に設計されていたり、高域が減衰していたりします。両方のSpectrumを見比べると、右側のほうが中低域の山の起伏が僅かになだらかになっていたり、逆に特定の帯域がアナログのサチュレーション(倍音付加)によって僅かに厚みを持っている。
3. Sound Fieldの差異
下のPhase Correlation(位相相関メーター)の分析。- 位相の僅かなズレにより、Phaseメーターの揺れ幅が、右側の方が僅かに大きくなる、あるいは中心に引っ張られる傾向が出ています。純粋なデジタルのステレオ感に比べ、アナログのプレイヤーを経由させると、「音像が僅かにぼやける、しかしそれが暖かみとして感じられることもある」現象が、このメーターの挙動に表れています。
総括
この比較で、「デジタルデータとしては全く同一であっても、物理的な再生デバイスとケーブルを経由させることで、オーディオ信号は不可逆的な変化を起こす」という事実を可視化することができました。右側のトラック(mp3プレイヤー経由)で起きている「True Peakの増大」「ノイズフロアの上昇」「位相の乱れ」「周波数特性の変形」は、言ってしまえば「音質の劣化」です。しかし、現代の音楽制作(特にLo-Fiヒップホップやエレクトロニカ など)においては、この「デジタル特有の冷たさ」をあえて壊し、「アナログ機器を通した際の歪みやノイズ」を付加することで、楽曲に温かみやキャラクター、空気感を与えるという手法が日常的に使われています。おわりに
この記事は以上です。ここまでご覧いただきありがとうございました。
では、また次の記事でお会いしましょう。
それでは!