⬇韓国ポップスシリーズ前回記事⬇
前回に引き続き、いわゆるK-POP一辺倒の国内認知を憂い、韓国のおすすめポップアーティストを紹介していく。
Kim Doo Soo

Kim Doo Sooは、1959年生まれの韓国のシンガーソングライターである。
ギター、ハーモニカと歌のフォークな曲調が特徴で、特に4枚目のアルバム『自由魂』は「恨(ハン)」のサウンドをより押し出した最高傑作と評される。
恨(ハン)とは、朝鮮文化を象徴する思考・感覚の1つであり、慢性的な悲しみ・無常観や、抑圧された憎しみや怒りのエネルギーを表す。
たとえば本曲は、過去の夢や自己を捨て、危険な未知の海へ船出する決意(宿命)を苦しく描き出している。
Kim自身、体が弱く病に侵されていたためか、どうしようも無い運命と格闘する、"恨"的な詞が多く見られる。
こちらはKimの代表作『Bohemian』。
静謐ながら熱のあるフォークの弾き語りが沁みる1曲。
イ・ラン(이랑)

イ・ランは1986年生まれのシンガーソングライター。映像作家・イラストレーター・エッセイストとしても幅広く活動している。
日本でも活発な活動があり、2016年には日本のシンガーソングライター・柴田聡子とともに日本全国7か所のツアーを行ったりしている。
イ・ランは社会的・女性的な問題、社会から取りこぼされるような弱い存在を取り上げた発信が多く、現代特有のグローバルなインフルエンサーという印象を受ける。
一方で音楽や歌詞に感じる無常さからは、Kim Doo soo にも通じる恨の質感を思い出させる感もある。
바다의 왕이 큰 병이 나 고칠 방법이 없대요
내 친구 해미는 얼마 전에 복강경 수술을 받았고
바다의 왕을 고칠 유일한 방법은 토끼의 간이래요
유리의 강아지 담이의 암은 완치가 되었대요
海の王が大きな病を治す方法が無いそうですよ
私の友達のヘミはちょっと前に腹腔鏡の手術を受けたって海の王を治す唯一の方法は兎の肝だと
ユリの犬のダミの癌は完治したとのことです
アルバム『オオカミが現れた』の収録曲『よく聞いていますよ』。
パンソリの有名な話である『水宮歌』の話がモチーフとして登場している。病の竜王を倒すためにカメがウサギを海へ誘い、肝を奪おうとする。ウサギは機転を利かせ竜王を欺き、竜宮から逃げ帰るという話。
本曲では御伽話と現代の日常風景が交錯するような内容となっている。
私たちが先に死んでしまえば
仕事を解しなくてもよく
お金がなくてもよく
泣かなくてもよく
別れなくてもよく
会わなくてもよく
手紙を書かなくてもよく
メールを送らなくてもよく
メールを読まなくてもよく
首をくくらなくてもよく
火に焼かれなくてもよく
水に溺れなくてもよく
手首を切らなくてもよく
薬を一度にものすごいたくさん飲まなくてもよく
一度にすっぱりみんな逝ってしまう 滅亡だから
同じアルバムの収録曲『患難の世代』。めちゃくちゃ暗い内容だが、イ・ランはこれを、同胞に対する愛の歌であると言う。
女声合唱付きの本曲は、終盤悲鳴の交錯へと変わり、狂気的なクライマックスを迎える。
MVも素晴らしく、これは日本の写真家・志賀理江子がタイのバンコクで撮影した『Blind Date』という作品を利用したものらしい。
Meaningful Stone

Meaningful Stoneは、1996年生まれ、2017年活動開始のシンガーソングライターである。
アコースティックギターで弾き語るフォーク・ポップから、歪んだサウンドのシューゲイズまでを手掛け、韓国内でのインディーポップの音楽賞を受賞している。
彼女は自身の音楽を「人々の集合的無意識に触れるような」と表現しており、先述の2人のアーティストとは異なる温かさを持っている。どちらかというと、イ・ランの持つ繊細な優しさの感触に共通点があり、さらに幻想的な方向へ進化した作風といえるかも。
1stアルバム『A Call from My Dream』の表題曲。
浮遊感のある哲学的な歌詞が多いのが特徴。社会的な苦悩を明確に示すイ・ランとはまた全然異なる。
넌 믿지 않겠지만 어젯밤
파란 꿈결 사이로 들어가
구름이 된 걱정 사이를 헤치고
네 이마에 쪽 입을 맞췄어
君は信じないだろうけれど、昨晩
私は青い夢心地の世界に入って
雲になった心配事の間をかき分けて
君の額にキスをした
2ndアルバム『Angel Interview』の収録曲『_ () _』。このアルバム自体、シューゲイズやグランジなど様々なジャンルを開拓する野望的な構成になっていて面白い。
本曲は特に、テクノを取り入れた楽曲。1stアルバムで確立した作風を知っている者からすればギョッとするが、アルバムを通して聴くと不思議な納得感もあるような気がする。
これからさらにどのような方向に進化していくのか、興味深いアーティストである。
以上、今回はシンガーソングライター編ということで、3人の韓国シンガーソングライターを紹介した。また次回!