「つい先ほどまで学会に参加していました。イェーイ!(飲み会の写真)」

↑みたいなのをSNSに上げると、
「国民の血税を出張費として浪費する悪党」
「飲み会の口実として学会を開いている」
「学会なんてオンラインで十分でしょ?w」
などと、瞬く間に炎上します。怖い世界ですね!
どうやら皆さん学会が何かご存じないようなので、今回は学会とは何かについて語ります。
その前に
ひとえに学会といっても、分野や時代によって文化が全然違います。
いわゆる「役に立つ研究」をしている分野の学会のほうがきっちりしており、そうでない分野の学会ほどきっちりしていないという話もありますが、実際のところどうなのか私にはわかりません。なぜなら植物系の学会のごく一部にしか参加したことがないからです! ゆえに今回参加した学会について(しかも一個人の観点から)書きます。なんて一面的な記事なんだ。
学会に参加するために
学会に参加するのは至極簡単です。年会費と参加費さえ払えばだれでも大体の学会に行くことができます。だから国民の税金が正しく使われているのか気になる人は、参加したらいいんじゃないかなーと思います!
話が終わってしまいました。問題は学会の会場です。学会の会場は各地域で持ち回りで運営しているため、いろんな場所で開催されます*1。学会の運営は大体の場合、開催される地域の大学とかの教員がもともとの業務でパンクしているのにもかかわらず(おそらく無償で)セッティングして現場を回すので、正直なところ誰もやりたくね~と思っているはずです(まれにやりたい人もいる?)。ゆえに同じ場所で連続して開催することは避けるわけですね。なので国民の血税を出張費として浪費するために開催地を転々としているわけではないです。
しかし研究者もしょせん人間、開催するならロケーションのいいところでやりたいと思うので、なんか観光地っぽいところにセッティングされる場合もままあります。ちなみに、学会会期の前後に延泊してバケーションを楽しむ輩もいますが、そういった輩にはその分の出張費は支給されません。これが一見浪費しているように見えてしまうのは、そうだろうとは思います。
発表する人は、演題登録を行います。大体webで登録が可能です。
演題登録の時点で情報戦(Science Battle)はすでに始まっています。

演題登録をするとき、基本的にAbstruct(発表内容の概要)の添付が必須です。このアブストラクトは参加者に支給されるだけでなく、全世界に公開されます。学会内に公開するだけなら、参加者には守秘義務が課せられるため内容をちゃんと書いても情報の漏洩は防げるのですが、これを学会に参加しない人、特に欧米や中国にいる同じ研究をしている人たちに見られると一瞬で真似をされて先に発表され、研究者人生が終わりかねません。
ではどうするのかというと、肝心なところはめちゃくちゃぼかして書きます。なので、当日実際に発表を聞いてみておっかなびっくりということが多発します。怖いですねー。
このとき、会場と比較して発表希望者が多いとかやべー奴(陰謀論・疑似科学・スピなど)が紛れ込む可能性が高い分野では査読があったりします。査読は通らないと発表できないんですねー。
ここまで進むと、後は当日まで実験とかスライドとかポスターとか作るだけです。easy。
学会で発表する
学会の発表方法には大きく分けて口頭発表とポスター発表の二種類があります。
口頭発表のほうがより多くの聴衆にアプローチできるので、大きな研究だったり、まとまりつつある研究の発表に使われることが多いです。逆にポスター発表は数人と密なやり取りをその場で出来るので、萌芽的な研究の発表の場に使われることが多いです。
ただこれはあくまで基本であって、例外もあります。例えば機密性の高いデータを発表したい場合、ポスターだとそれを長時間掲示することになり、情報漏洩のリスクが高まります。しかし口頭発表であればチラ見せするだけで済むので、インパクトのある研究をしていることをアピールしつつ、機密性を担保できるんですねー。要はケースバイケースです。
今回私は口頭発表でした。口頭発表では大体12分くらい発表した後に2~3分くらいの質疑応答があります。これで終わりです。しかもその場で質問が出ないことは国内学会ではザラ(マジでよくない)で、そんなとき前後の発表者にはたくさん質問が来ている場合はマジで悲しい気持ちになります。ですが、意外とちゃんと見られており、終わった後にフィードバックが来たり、数年後の学会でその時の言及があったりします(まあ、良い研究をしていればの話ですが)。この時competer*2が後でしつこく質問をしてくる可能性があるので、適当にあしらうための回答を事前に考えておきます。この辺かなり政治家っぽいことをしている気がするので、国会で答弁をしている政治家に対してかなり同情的な目で見てしまうようになりました。

この辺の意見交換がリアルタイムに行いやすいので、オンサイト開催のほうが好ましいと個人的には思うんですよねー。あとオンライン開催だと大体zoomでやるのですが、同時に何百人が接続するため発表スライドがしばしば落ち運営が困難なので、そういう意味でもやはりオンサイト開催のほうが好ましいです。だからオンラインじゃないことにも一応理由があるんですねー(と言いつつ、今学会ではオンラインを併用していましたが......)。
発表を聞く
今回行った学会は規模がでかいので、発表会場が複数あります(小さいと一会場だけだったりします)。したがって事前に配られるタイムテーブルや要旨集に一通り目を通して聞きたい発表を洗い出し、どう会場を回るかを決めます。人気の出そうな演題を見たいときは、数個前の演題から見ることで座席を確保します。つまり、やってることは音楽フェスと一緒です、行ったことないけど。
人気の演題では立ち見が生じることも多く、発表中は当然集中しているので結構体力を使います。疲れた場合、その辺を散策してリフレッシュしたりもします。今回は都会だったので、リフレッシュには困りませんでした。周りに何もない陸の孤島のような田舎が会場だと、文字通り缶詰です。
意識が高い(意識高い系ではない)人は高名な先生を捕まえて話をしたりします。私はコミュ障なのでしませんでした。。。その代わり、自分のラボOBの研究者やその周りの研究者といっぱい話しました。人脈の広げ方は人それぞれだということです(そうなのか?)
飲む
発表が終わったら飲みます。別に飲まなくてもいいです。
理由は不明ですが、アカデミアは競争が激しく、年を取ると大半が死滅していくので横や縦のつながりが自然と強くなり、だからこそ飲むのではないでしょうか。狭い世界ですし、そのほうが仕事にもつながって悪いことがないです。なので、飲み会の口実として学会を開いているというのは2割くらい正解だと思っていますが、ただその2割は普段の実務に間接的に反映されているので必ずしも無駄ではないと思うわけです。要はサラリーマンの飲み会と同じです。
大体おじさんたちが飲み会を開いているのでそれに参加したり、若手は若手で飲んだりします。若手はおじさんの飲み会に参加すると飲み代が浮くので、積極的に参加すればするほど食費が0に近づきます。魔法のような話。
個人的な集まりとは別に、学会が主催する懇親会もあります。
懇親会への参加は任意で、おじさんとおばさんがたくさんいます。学生はおじさんとおばさんにビビっているのであんまりいません。せっかくの懇親会ですが、大体知り合いとかたまっています。とはいえ、普段話さない人と話すチャンスなので、意識高い人は話しかけに行きます。私も話しかけに行きたかったのですが、話したい人が参加していませんでした。。。あるいは話しかけたい人は大体人気者なので、常にだれか(偉い人の場合が多い)としゃべっており、そこに割って入るのが困難な場合もあります。こういった背景からコミュニケーション能力の低い研究者は淘汰され、コネクションと会話力を兼ね備えた強者が残ります*3。音楽家や芸人、スポーツ選手など、どの世界でも起こることが、研究者にも起こります。研究者はサラリーマンと比較するとちょっと競争が激しくてセーフティネットが少ないので屍が多いだけです。
学会後
学会が終わっても学会は終わっていません。事務に学会の報告をする必要があります!いろいろ書きます。実は事前に出す書類とかもあります。たまに突っ返されます。
昔カラ出張などした奴らのせいで証明のためにいろいろしなければならないようになりました。そういった不祥事があるとガバナンスが強化()され続けるので、書類仕事が増え、多すぎるので間違え、そうすると突っ返され、教員の業務がさらに圧迫されていきます。かわいそう......。
これでようやく学会は終わります。運営側はもっと大変なのでしょう