Happy New Yearから1か月弱が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
去年の私は研究(生物)に完全に支配されており、電通にいたら過労で自殺が2回できるくらいには実験をしていました。今年は実験以外のこともしたいです。
ということで、実は2025年はこれまでと比較するとあまり音楽を聴けていないのですが、2025年に聴いたなかから良かったと思った曲を僭越ながら発表したいと思います。
樹氷 - V/R Converters
V/R ConvertersはTalich Helfen、ゐつぺゑ、綿菓子かんろの3人による音楽ユニットです。2020年ごろから活動をはじめ、2023年に活動を一旦停止したものの、2025年にヴァーチャル・シンガーの綿菓子かんろをボーカルに迎え再始動しました。この曲は再始動一発目のシングルです。
再始動後のV/R ConvertersはTalich Helfenが主に作編曲を手掛けており、彼の趣味(渋谷系、印象派、プログレ、ノイズ)が前面に押し出されています。この曲はもともと綿菓子かんろのソロアルバム用に作られた曲のためか、ノイズ成分は少なく、他の曲と比較するとポップめです。
コンコード - 綿菓子かんろ
綿菓子かんろ(略称・わたかん)はヴァーチャル・シンガーです。配信でよく黒本の話をしているのでおそらくジャズ畑の人間だと踏んでいるのですが、いかんせんヴァーチャル・シンガーなので詳細は不明です。
昔はいざ知らず、近年はTalich Helfenによりプロデュースされています。作詞作曲はわたかん自身が行っており、おそらくわたかんによる注文があるためかV/R Convertersのときよりは生っぽい編曲やポップな内容になることが多いです。
コンコードはブラジル音楽を基調としながらもTalich Helfenらしいプログレ風味に仕上がっており、V/R ConvertersなどのTalich Helfenの活動をまとめて聞くとより楽しめるのではないかと思います。
Etage A41 - Mats/Morgan
Mats/Morgan は、キーボーディストの Mats Öbergとドラマーの Morgan Ågrenからなるスウェーデンのデュオです。この動画はバンド形態でのライブ映像なので、サポートが数人います。
Etage A-41はコンコードに引き続きプログレです。思えば2025年はプログレをよく聞いていたような気がします。
インプロ以外メロディーと呼べるものはほぼなく、ほぼ全編が変則的なリフで構成されています。リフはA-Bの構成になっているので(インプロ後の再現は謎ですが......)、もはやテーマといってもよいくらいです。
ベラスケスは遠く - 北園みなみ
昔、音沙汰がなくなったミュージシャンとして紹介した北園みなみが新アルバムを携えて帰ってきた!!!!
(CHONとLOW POP LTD.は実質解散しました......涙)
かつてはポスト・キリンジ(というかスティーリー・ダン)のような作風でしたが、今作ではそこからだいぶ離れたような印象を感じます。
コード進行自体の複雑性は相変わらずありますが、エモさが失われたというか、全体的に音遣いがドライになりました。
またリズムが明らかに複雑化しており、そこも含めてファンクへの傾倒が見られます。
海と国道 - 婦人倶楽部
婦人倶楽部からも9年ぶりにアルバムが出た!!!!
婦人俱楽部は佐渡の覆面主婦5人と佐渡在住の音楽家ムッシュレモンによるユニットです。主婦はボーカル一名を除き演奏に参加せず、人形を動かしたりします。
相変わらずピチカート・ファイヴ風の粋な曲で、ムッシュレモンの作曲技能がいかんなく発揮されています。とはいえこの曲に関してはどちらかというとcymbalsの趣が強いでしょうか。ムッシュレモンこと佐藤がこの9年の間に始めた別プロジェクトplanterで培ったと思われる、室内楽的な編曲がところどころに顔を出すことに9年の経過を感じます。
ですから、灼けました - 笹川真生
笹川真生は1995年生まれのシンガーソングライターです。中学生時代にDSの「大合奏!バンドブラザーズ(バンブラ)」で音楽制作を始めたそうです。
バンブラで作曲を始めた人は近くにもいます(トイドラ)が、となるとDS世代で作曲している人の中にはバンブラを通過した人が相当数含まれていそうです。
この曲はMVも含めていかにも最近のポップスという感じで、原口沙輔や長谷川白紙が切り開いた道の上に立っているなあと思いました。ただそれらと比べると幾分大衆的だなとも思います。全体的にかなりキモい音を使用してはいますが、サビになると途端に流麗になりますし、そもそもメロディが全体的にキャッチーで、全部サビに聞こえます。頭サビかな?と思ったらAメロだった、みたいな曲が好きです。
藤子 - 野口文
かつてC子あまねという音楽グループを紹介したことがありましたが、野口文はこのC子あまね解散後にソロとして活動しています。
とはいえ、C子あまねはそもそもバンドなのか誰が作っているのかわからない(本人談)グループなので、制作体制自体は特に何も変わっていないとのことです。体制は変わらないのですが、徐々にDAWによる編集から逸脱し、演奏・即興主体な楽曲制作へと移行しているようにも見えます。恐らくそういった類の実験にライブを使っており、野口の最近のライブは既存曲を演奏せずに1時間丸々アドリブというのもあります。従ってこの曲は、将来的にみてその過渡期にあたる作品になるのではないかと思います。
個人的にはDAWにより作りこまれたトラックが徐々に発散していく現在の形(藤子)が心地よいのですが、今後どうなるのかも楽しみです。
Wanna Girl - Jeremy Jordan
NewJeansがニュージャックスウィングの曲を発表したり、近年ニュージャックスウィング・リバイバルの兆しがあるなあと思い、過去に作られたニュージャックスウィングを一時期ひたすら聞いていました。(結果として今のところ来ていませんが)
そのとき特に聴いていた曲の一つがこのWanna Girlになります。じつはこのVerはカバーで、原曲はTrey Lorenzという黒人シンガーによるものです。
www.youtube.comただ私にとってニュージャックスウィングは富と繁栄(と90年代アイドル)の象徴なので、ビバリーヒルズに出ていた白人のイケメンが歌っている方がしっくりくるなあと思ってついこのVerを聴いてしまいます。
ケイティ・ペリー宇宙へ - HASAMI group
青木龍一郎による新解釈J-R&B。彼が毎年行っている、その年に発表された日本の曲を全部聞きランキング化する、その年に発表された海外の曲をランキング化するという狂気の活動のせいか、R&Bとひとくくりにはできないミクスチャー性を有しています。
全体的に抑制が効いている中で、大サビ「今決めた 宇宙には行かない この星で君と薬を買い続ける」でようやく盛り上がるのですが、メロディの音域がそこまで上がらず、妙に盛り上がり切っていないところが逆にこの曲には合っているというのが面白いです。
この絶妙な盛り上がり切らなさが「この星で君と薬を買い続ける」という庶民的な風景の歌詞をパンチライン足りえるものにしています。「景色がほしい」におけるサビ「この町では犬や猫が売られているから老後も心配ないよ」もそうですが、庶民的な幸せに対する解像度が異様に高く、毎回驚かせられます。