名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

歌詞っぽさ考(かしっぽさこう)

こんにちは!なんすいです。

歌詞、書いてますか?

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考えてみるに、歌詞とは結構特殊な文学だと思います。

 

「詩と一緒じゃない?」

 

確かに、歌詞の書き方に本来制約は一切無いはずですから、自由な詩との違いは無いはず。

 

一方で、何かの曲の歌詞と一般の詩が並べられていて、どっちが歌詞でどっちが詩か?と聞かれたら、たぶん分かる気がしませんか。

もし区別が付くとすれば、歌詞には歌詞特有の「歌詞っぽさ」が潜んでいて、そのために詩とは一線を画しているのではないでしょうか。

 

メロディ、音楽が付けられることを前提に、先に作られたメロディに言葉を当てはめていく。この縛りの中で、歌詞は書かれます。

その中で歌詞が孕んできた「歌詞っぽさ」とは何なのか?

今回、実際にいくつかの曲の歌詞を分析して考察してみました。

 

ただし、ぶっちゃけ歌詞のテイストは作詞者によって全然異なっていて、中には詩みたいな歌詞もあったり、口語で喋ってるだけみたいな歌詞もありました。本来歌詞は自由なものですからね。

では今回私がやったことはというと、その中でも、私の中の「歌詞っぽさ」に照らし合わせてビビッと反応した要素をまとめ考察した、というものになります。

つまり、極めて信憑性が無い考察かもしれません。全然共感してもらえなかったらどうしよう。

 

 

「歌詞っぽさ」6項目

色々歌詞を分析して、「歌詞っぽいな」と思った要素を、6項目にまとめました。

順に解説します。

 

1.段落ごとや行のまとまりごとに文体を変えてメリハリを作る

何時しか言の葉は疾うに枯れきって
事の実があたしに熟れている
鏡に映り嘘を描いて自らを見失なった絵画


パパッパラパッパララッパッパ
謎々かぞえて遊びましょう
タタッタラタッタララッタッタ
何故何故此処で踊っているでしょう

ツミキの「フォニイ」という曲の歌詞の一部です。

一段落目は普通の詩みたいな文体なのに対して、二段落目は擬音と呼び掛け文で構成されています。

 

他には、「名詞1単語~3単語くらいの短いフレーズをぶつ切りで並べた文体」もよく見られます。

 

思い出の宝庫
古いものは棚の奥に
埃を被っているのに
誇りが光って見えるように


されど
By my side
不安 喝采 連帯
濁ったりの安全地帯
グワングワンになる
朝方の倦怠感
三番ホーム 準急電車

MrsGreenAppleの「ライラック」の一部です。

二段落目がぶつ切りセクションになっていますね。

この文体はかなり「歌詞っぽい」と感じます。

 

2.「省略」を積極的に使う

これは、メロディに言葉を当てはめていく段階で自然に行われているものと思うのですが、特に主語はガンガン省略される傾向にあります。

逆に主語があると、完全な文章として「歌詞っぽさ」を損なった印象を強く受けます。

 

どこから春が巡り来るのか

知らず知らず大人になった
見上げた先には燕が飛んでいた

気のない顔で


もしもわたしに翼があれば

願う度に悲しみに暮れた
さよなら100年先でまた会いましょう

心配しないで

米津玄師の「さよーならまたいつか!」の一部です。

省略を補完するとこんな感じ。

どこから春が巡り来るのか

(わたしは)知らず知らず大人になった
(わたしが)見上げた先には燕が飛んでいた

気のない顔で


もしもわたしに翼があれば

願う度に(わたしは)悲しみに暮れた
さよなら100年先でまた会いましょう

心配しないで

「わたし」が徹底的に省略されていることが分かりますね。

唯一使われている行は「もしもわたしに翼があれば」と「わたし」が願っている台詞です。

 

ようこそ 早く入りなよ家に
風呂場のシャンプーリンスどれでも
冷蔵庫の中こっち麦茶
こっちそば茶まぎらわしい色

柴田聡子の「ようこそ」の一部です。

後ろ3行、意味が伝わる最小限にまで言葉を省略しています。

 

3.言葉の順番を並び替える

どこから春が巡り来るのか

知らず知らず大人になった
見上げた先には燕が飛んでいた

気のない顔で

さっきの「さよーならまたいつか!」の一部。

「わたし」の心情と重ね合わせた「気のない顔で」という部分を、倒置法で最後に持ってきています。

 

過ぎてゆくんだ今日も
この寿命の通りに
限りある数字が減るように
美しい数字が増えるように

こちらは「ライラック」の冒頭。

「過ぎてゆくんだ今日も」(倒置)という強調したい事を最初に言って、その後修飾を付けていくという並びになっています。

 

このように、強調したい言葉を最初や最後に持ってくる方法がよく見受けられます。

 

4.時間的描写

絶望の雨はあたしの傘を突いて
湿らす前髪とこころの裏面
煩わしいわ

「フォニイ」の一部です。

絶望→雨が傘を突く→髪が湿る→心も湿る

という、ドミノ倒しに順に事が運ぶように、描写に合わせて言葉の順にも気が遣われています。

時間の流れを感じさせる描写は、時間芸術の伴う歌詞を引き立たせるに納得の手法です。

 
5.「呼び掛け」「問い掛け」の文体を使う

淡々と物を述べているだけだと、歌詞としては単調になりやすいです。

そのため、「呼び掛け」や「問い掛け」が多くの歌詞の中で使われています。特にサビ。

 

誰かと恋に落ちて また砕けて やがて離れ離れ
口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く
瞬け羽を広げ 気儘に飛べ どこまでもゆけ
100年先も憶えてるかな 知らねえけれど さよーならまたいつか!

「さよーならまたいつか!」のサビ。使われてるね。

サビ以前は対比的に説明口調で淡々とした歌詞ですが、アクセント的に一行だけ「さよなら100年先でまた会いましょう 心配しないで」と呼び掛けが挿入されています。これによりそこだけが台詞として浮き上がる効果が出ています。

もしもわたしに翼があれば 願う度に悲しみに暮れた
さよなら100年先でまた会いましょう 心配しないで

 

6.直喩や暗喩を用いる

こんなん一般の詩でも小説でも当たり前の技法ですが、一応要素として入れておきました。

というのも、メロディに合わせて言葉を当てはめていく上で「言葉の言い換え」は必然的に必須になってくるためです。比喩が無くても詩を作ることは可能ですが、歌詞を作るのは結構大変なんじゃないでしょうか。

 

実際に詩を「歌詞化」してみる

Chatgptに詩を書いてもらいました

 

ーーー「名古屋での生活」「忘れられない恋」というテーマで詩を書いて下さい。

 

雑踏の音、駅前の風
ビルの影に沈む夕焼け
あの交差点を渡るたび、
君の笑顔がよぎる

 

路地裏のカフェ、ひとつ残る席
君がいつも頼んだコーヒーは、
今でも苦いままだ

 

季節は巡り、街は変わる
見慣れた景色が遠くに感じる
けれど、あの恋は消えない

 

夜空に浮かぶ名駅の灯り
手を伸ばせば届きそうで
もう一度だけ、あの日々に帰りたい

 

良い感じの詩が出来ました。でも、歌詞っぽくはあまり無いですね。

そこでこれに、上述した「歌詞っぽさ」の6項目を適用させて、chatgptに改訂してもらいましょう。

果たして歌詞っぽくなるのか?

 

【6項目おさらい】

1.段落ごとや行のまとまりごとに文体を変えていく

2.省略を使う

3.言葉の順番を並び替える

4.時間的描写

5.呼び掛け、問い掛けをする

6.直喩や暗喩を使う

 

Chatgpt頼む

 

【改訂版歌詞】

雑踏の音 駅前の風
夕焼けに沈むビルの影
あの交差点を渡れ
君の笑顔 思い出す

 

路地裏のカフェ 空いている席
君が頼んだあのコーヒー
苦さが心に残っている

 

季節は巡り 街が変わる
見慣れた景色 遠くなる
消えない恋 抱きしめていこう

 

夜空に浮かぶ名駅の灯り
手を伸ばせ 届きそうで
あの日々に帰れ 願い込めて

 

皆さんはどう思うか。

 

歌詞考は続く

歌詞っぽさを形成するものとして、私の中で当たり前だったので敢えて書かなかった、韻踏みとかの要素も他にあります。

あと、「いつしか」みたいな、会話では滅多に使わないけど歌ではよく使う、みたいな歌詞特有の頻出語彙、あるいは全然使われない語彙とかも、歌詞っぽさに一役買っていると思われます。

 

そもそも、考察してきた歌詞っぽさとは、おおよそ限られた一時代のポップスによく見られる傾向であるため、それを模倣して私たちが歌詞を書く必要は全く無いと思います。

じゃあなんで考察したのか、それはむしろ、一時代の歌詞の定型に私たちが無意識に囚われている気がしたからで、それが具体的にどのようなものか認識出来てこそ、初めて真に自由な歌詞が書けるのではないかと考えたからです。

私の歌詞考は今後暫く続きます。続け 私の歌詞考

 

何にでもなれる、グミもお歌詞も、さようなら!

 

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