みなさん、合唱曲といえばどんな曲を思い浮かべますか?
多くの中学や高校では合唱コンクールがあるでしょうから、「コスモス」とか「青葉の歌」、「YELL」とかが定番かも知れませんね。
が。
「合唱曲ってキレイで感動するよね~~」
そう思っているアナタは、たぶん三善晃の合唱曲を聴いたことがないでしょう。
三善晃は、戦後の日本作曲家の大重鎮として、多くの合唱曲を残した人物です。
彼が作る合唱曲は軒並みヤバく、日本の合唱界隈に大きな衝撃を与えました。
今回は、そんな彼の作品からとりわけヤバいものを5つ紹介します。
精神を破壊してくるタイプの合唱曲を寄せ集めたので、心して聞いてください。
1.オデコのこいつ
まずは、こどものための合唱組曲「オデコのこいつ」です。
しっかりと「こどものための合唱組曲」と書いてありますが、歌詞の内容が尋常じゃないくらい重いです。
主人公のオデコに、ある日とつぜん醜い黒人の子供が住み着くところから歌が始まるのですが、第1楽章の終わりに
「……ビ……ア……フ……ラ……」
という不穏な歌詞が登場します。(意味は自分で調べましょう)
第3楽章(04:01)からはもう目も当てられなくなり、どんどん最悪になっていく一方。
歌詞→コチラ
2.狐のうた
童声合唱と語り、ピアノのための「狐のうた」は、「醜聞」「訓戒」の2楽章からなる合唱曲です。
もうタイトルだけで嫌な予感がしますが、これもご丁寧に「童声合唱のための」と書いてあるんですよね。
どういう性癖なんでしょうか。
土俗的な残酷さのある歌詞に鬼気迫る伴奏が乗り、とんでもない迫力です。
3.バトンタッチのうた
この曲は、4楽章からなる合唱組曲、男声合唱とピアノ(四手)のための「遊星ひとつ」の終曲を飾る曲です。
作詞は木島始、難解かつ熱情に満ちた詩を書く詩人ですが、この「バトンタッチのうた」はもはや元の詩を再構成して作られており、完全に三善晃ワールドに入っちゃってます。
今までの曲に比べるとキャッチーですが、最後の方はもうとんでもない荒れ狂い方です。
4.のら犬ドジ
次に紹介するのは、童声合唱とピアノのための組曲「のら犬ドジ」。
のら犬のドジをいじめて遊んでいる少年が主人公なのですが、実はドジの正体は……。
こいつも相当に歌詞が重く、どう考えてもトラウマ曲なのですが、やっぱり「童声合唱」だそうです。
ちなみに、この曲の楽譜を売っているサイトを覗いてみたところ、曲紹介はこんな風に書かれてました。
のら犬と少年の出逢い、のら犬であるというだけで殺されていくド
ジの死までの愛の交流を描いています。
もう最悪ですね。
ついでに、この曲の作詞者は蓬莱泰三です。
知ってる人は知ってると思いますが、有名なトラウマ合唱曲「チコタン」の作詞者でもあります。
なんなら「オデコのこいつ」の作詞者でもあります。
ヤバいですね。
5.生きる
さて、最後に紹介するのはピアノの無窮連祷による混声合唱曲 「生きる」です。
この曲、タイトルが「生きる」のくせに全く生きた心地がしません。
そもそも副題に「無窮連祷」ってありますがこれ本当に「生きる」なんですか???
そう、この曲は明らかに「死」をテーマに書かれており、実際に三善晃は死んだ友人に思いを馳せながらこの曲を書いたと語っています。
曲調はこれまでに比べるとかなり聞きやすいですが、メッセージの重みはこれまで通り相当のものですね。
歌詞→コチラ
どうでしょうか。
三善晃が合唱曲の革命児となったのも納得じゃないでしょうか?
しかし、やはり三善晃は詩の読解の深さと感性、作曲能力の全てが群を抜いています。
彼の合唱曲はどれをとっても素晴らしいので、是非他にも探してみてください。