名大作曲同好会

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trace of rei harakami レイハラカミの思い出

レイハラカミが亡くなってからもうすぐ10年が経つことを知ったのは、ユリイカで彼の特集が組まれていたからだった。

思えば私の音楽人生は、彼にかなり影響されている。たまには思い出話でもしてみよう。マジで思い出を書くだけなのでオチとかないです。

 

私が彼のことを知ったのは今から7年前、2014年の夏頃のことだ。
当時の私はサカナクションを起点にテクノポップ渋谷系、テクノにエレクトロニカを聴き漁っていた。そこで出会った音楽の一つがレイハラカミの「にじぞう」だった。


サイケデリックでシュールなMVとポリリズム、チープだが暖かみのある音色、すべてが14歳の私には衝撃的だった。

とはいえ日頃ハイファイな音を聴いていた14歳にとってSC-88pro(以下ハチプロ)の音はあまりにちゃっちく聞こえたのもまた事実である。これを受容できるようになったのは同時期に出会ったHASAMI groupの影響が大きい。

特に秘密の科学は当時よく聴いていて、14歳は多少音がチープでも全く気にしなくなった。むしろチープでないと不安になるくらいには毒されていた。

 

まあそんなこんなでローファイな音楽に触れて、レイハラカミの良さを少しずつ理解できるようになっていったのだ。彼が故人であることを知ったのもおそらくこの時期だったように思う。

  

それからは彼の作品でYouTubeに載っている音源はほぼすべて聴いた。自分の知らないレイハラカミの曲が減っていくにつれて「もう彼の新曲が出ない」という現実が立ち現れた。

 

当時のお気に入りはafter next joyで、これは今でも変わっていない。

iTunesの存在を知ってからは、彼の作品をいつか揃えたいと常々思っていた。しかし14歳の小遣いではアルバムを購入するのは難しかった。そして当時はCorneliusの方が好きだったため、14歳の手によってレイハラカミは後回しにされたのである。

 

これは大変な間違いだった。なぜなら翌年2015年、彼の音楽はこの世から忽然と姿を消したからである。所謂廃盤というやつだ。iTunesから彼のアルバムは残らず消えて、ペチカのアレンジともう一曲だけが残った。


以来レイハラカミ関連の商品は見つけ次第片っ端から買いそろえるようになった。とはいえなかなか町中で出会えず歯がゆい思いをしていた。

当時、近所の寂れたレンタルCD店に通う習慣があり、そこでred curbを見つけた。このときの喜びは計り知れないものがあった。サブスクでいつでも聴ける今となっては、おそらくもう体験できない類いのものだろう。ウォークマンにいれて毎日のように聴いていた。

 

そしてその約2年後、レイハラカミの版権はringsというレコード会社に移り、再度発売・配信されることになった。
しかしiTunes限定で配信されていたafter next joy、にじぞう ミニなどは配信されなくなっていた。

ウォークマンもなくしてしまった私は、大学受験に打ち込むという名目で音楽から一旦離れることとなった。

 

さらに2年後、晴れて大学生となった私はApple Musicを使うようになり、今までとは比べものにならないくらい彼の音楽を聴くことになる。所有欲は満たされたが、だからといって彼の音楽への興味は尽きることがなかった。


彼が手がけたremixも集め始めた。DC/PRGというバンドのライブに行ったときにpan american beef stake federationという曲の奇っ怪な曲のこれまた非常に奇っ怪なremix、「pan american beef stake federation Rei Harakami 餅米 Re-Arange(メッセージ付)」が収録されたremixアルバムを買った。

youtu.be

DC/PRG主幹の菊池成孔がサイン(思いっきり名前を間違えられたのを私は忘れない)をしてくれたのだが、そのとき菊池が「おおこれか、これはね~良いアルバムなんだよ」と言ったのを良く覚えている。菊池はアルバム全体に対して言及したのだろうが、私はレイハラカミのremixに対して言ったかのように受け取った。(実際アルバムの中で一番良い)

今やそのDC/PRGも解散してしまった。

 

かつて15歳がred curbを借りたレンタルCD店は、サブスクリプションサービスに押され、過去作のレンタルCDを売り払うようになっていた。

その棚にはかつて自分が借りたred curbも存在していた。ここで再び出会ったのも何かの縁だと思い、購入した。


ハチプロを模したSound Canvas VAというプラグインDAWに導入した。使ってみて思うのは、逆再生やピッチシフトこそ行うものの、音色自体はそこまで弄っていないことが多いということだ。逆に弄りまくってる音はどうやって出してるのか全然わからない。

ただ音色云々よりかは、ディレイによる空間演出や、ハチプロとは一切関係の無いクラシカルな作曲方法が彼の個性に繋がっているのを改めて感じた。

 

そしてユリイカのレイハラカミ特集を見つけたのだ。
ここ数年忘れかけていた「レイハラカミが本当にこの世にいない」という感覚を思い起こさせる文章群だった。寄稿されてる文章の多くが弔辞のようで、文字を眺めているだけで葬式に行った気分になる。

 

最近彼の映像作品(彼は映像系の短大に通っていた)を載せているYouTubeアカウントを見つけた。とりあえず机の女という短編を見たが、何を意味しているのかさっぱりわからなかった。


さっぱりわからなかったが、このわからなさは彼の音楽に表出しているようにも感じられる。この二つの共通項を探すのは興味深いし、おそらくその部分が未だ明文化できない彼の音楽の魅力なのではないかと思う。

 

そして没後10年になる今、ハチプロの音を使って一曲作ってみた。表面的には模倣してみたが、どうにも納得のいく音楽には近づけない。そのうちリベンジをしようか、既に思案中だ。

レイハラカミの音楽を模倣しようとするのはある意味ナンセンスな行為だという自覚はあるが、彼の音楽への探求はやめられないのである。