2021年2月22日、Daft Punkが解散を発表しました。
そしてその裏で、菊地成孔率いるDC/PRGもといdCprGもとい菊池成孔DCPRGもといDCPRGもといDATE COURSE PENTAGON LOYAL GARDEN (以下DCPRGで統一。名前がコロコロ微妙に変わりすぎ。)というビッグバンド も解散宣言を発表していました。
非常にショックでした。今までバンドの解散に対してショックを受けることが全くなかったため、二重に衝撃だったのですが、全くどうしてこうもショックなのでしょう。ちょっと思い返してみました。
ライブ唯一のMCで
菊地成孔「このツアー3時間コースなんだけど、名古屋だけ移動の都合で2時間ね」
と言っていたのに、ライブ後普通に打ち上げして普通に翌日の朝に大阪に移動してたせいかもしれません(3時間コースできるじゃん......)。
もしくは、サインしてもらうときに菊地が私の名前間違えたのを根に持ってるからかもしれません。
しかし、やはりそれはDCPRGから得られる音楽体験が、他ではなかなか得られないものだからだとおもうのです。
DCPRGの音楽
DCPRGの音楽はいわゆるクラブジャズにあたるものだと思われます。が、そうとも言い切れない部分も多く、巷ではよくわからない・ノれない・ジャズではない等の声も聞きます。ここではその音楽がいかなるものであったか、解散を機に思い返してみたいと思います。
菊地雅章・エレクトリックマイルス
DCPRGは菊池成孔によって1999年に結成されましたが、その目的の一つに菊地雅章のCircle/Lineを演奏する、というものがありました。
ちなみに菊地雅章はマイルスデイビスとセッションしたことがある数少ない日本人の一人です。
そしてみごとなる完コピ。
DCPRG - Circle/Line~Hard Core Peace
そしてコンセプトの主軸となったのがエレクトリック・マイルス。それはマイルス・デイビスが電子楽器とズンチャカやってたときのやつ。凄い怒られそうな書き方をしています。
M Davis Bitches Brew 1970Full Album] HD 1080p (1)
これらを軸にDCPRGは活動しました。特にマイルス・デイビスはDCPRGの活動、ひいては主宰の菊地成孔の中核になっています。
ポリリズム
アフロポリリズムやファンク、現代音楽を取り入れることで、クラブカルチャー/ダンスフロアに、従来とは異なる律動構造をもったダンスミュージックを提示することを音楽的な主眼として結成された。(Wikipediaより引用)
とあるように、ポリリズムはDCPRGの目的にとって欠かせないものでした。ここにはアフロ(=アフリカ)とありますが、アフリカ的なポリリズムからは外れたモダンな用例も多く見られます。
構造Ⅰ 現代呪術の構造
DCPRG - 構造Ⅰ (現代呪術の構造)~Live Version
最初は5/4拍子ですが、すぐに16分音符5つ分を一拍とする4/4拍子のリフが同時に演奏されます。
HEY JOE
2017年0124 新宿BLAZE DC/PRG「HEY JOE」
構造Ⅰの発展系とも言えるのがこれです。17/16拍子の上に4/4拍子のテーマを気合いで乗せています。最近理解しました。前ブログに載せた時よくわかってませんでしたが、理解してもよくわかりません。ちなみに17/16と4/4の組み合わせにはおそらくちゃんとした理由があります。
このように17/16を64分音符で分割して、64分音符17個で一拍とすると4/4にできるのです。結構綺麗に割れるもんですね(人間が演奏できるとは言ってない)。これらように拍を割ることで、複雑なポリリズムでありながらちゃんとフロアでノれるような律動を維持しているというわけです。多分。知らんけど。
さて肝心の曲ですが、前半の摩訶不思議な構造とは打って変わって、後半では超明快な4/4でカタルシスがすさまじいです。構造としては普通ですが、ライブ映えが半端じゃなく、筆者はライブでこれを聴きながら涙したといいます。
ちなみに元のアレンジはこう。
更にちなみに原曲はジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスです。
The Jimi Hendrix Experience - Hey Joe (Official Audio)
ずいぶん換骨奪胎してますね。
マイルスはジミヘンが大好きだったらしく、なんと一緒に録音する計画まであったようです。
マイルスイズム
ここまで私が提示する音源をちゃんと聴いてくれた(聴け)皆さんならおわかりだと思いますが、どう聴いても編成が所謂ビッグバンドのそれではないですね。キーボードが二台ある時点でなにやら不穏ですが、更にツインドラムにタブラ・パーカッション、CDJ、時にはチューバ、ホルンと、時代と共にメンバーを入れ替え、何でもありの様相を呈しています。
DCPRGはエレクトリック・マイルスを基軸にしている(というか主宰の菊地がマイルス大好き)ことから、これらは全てマイルス・デイビスの思想=自分より若い優秀なミュージシャンと活動しなければならないに影響を受けて意図的に行われているのだと思われます。特にメタルのギタリストを加入させたのは、マイルスがジミヘンと共同録音する計画を現世で実現させた場合どうなるのか知りたかったからなのではないか?と勘ぐってしまうほどです。(HEY JOEのカバーも同様の疑問から行っているのではないかと思います)
さらに演奏も何でもありのご様子で、坪口(Key)の緻密な音色を菊池のワウオルガンがぶち壊していますし、ギターはギターで場違いな高速メタルソロを披露しています。
調和しているとはとても言いがたく、要するに個が衝突しまくっています。この点が個人的に凄くジャズっぽい(というか、"らしい")と思います。
DCPRGはジャズではないと言われがち(だし、曲を聴くかぎりではそう思う)ですが、このような思想面を考慮すると非常にジャズらしいバンドだと言えます。
ちなみに~おわりに
DCPRGは2000年代前半に一度解散しています。なのでそのうちまた再結成するんじゃね~(ハナホジ)と思う自分もいるにはいますが、前回は解散しても裏では活発に活動していたのにくらべて、今回はコロナ禍ということもありライブもできず、レコーディングもしているわけでもないようです。
解散宣言に「伝統芸能化がポリシーにそぐわない」とあるように、DCPRGでやれることはやりつくしてしまったのでしょう。
バンド名がコロコロ変わったり、メンバー交代が激しかったのは、音楽的な行き詰まりをどうにかして打破しようというあがきだったのかもしれないと今になって思います。とはいえこんな希有なバンドがなくなってしまうのは本当に残念です。そしてさようなら。
DC/PRG結成20周年ツアー<20YEARS HOLLY ALTER WAR MIRROR BALLISM>トレーラー(over 30 min)