|タイトルとは
芸術家にとって最も大切かつ最も厄介な問題が
「タイトル」
である。
熟慮に熟慮を重ね、言葉を手繰り寄せ、
自作を表現するにふさわしいものを撚る。
あるいは至極適当に意味もなく。
色々なスタイルはあれど、
タイトルを付けないと始まらないのは変わらない。
筆者も若い頃、
タイトルには苦戦して、
むしろタイトルを付けるプロセスを
「偶然性」
に頼って、
出来上がった言葉の羅列を
一心不乱に表現しようとする
シリーズをやったこともある
(なにやってんだよ)
そんなやり方だから
当然変な言葉のオンパレードになる。
「Night Device -金管五重奏のための」
「死神の顔を見に行こう -トロンボーン四重奏のための」
|題名のない音楽会
いつだったか自分の若い頃、
まだ黛敏郎先生がお元気だった頃の
「題名のない音楽会」で
変なタイトルの曲というのを
特集していたのを思い出す。
あの頃の題名のない音楽会は、
日曜の朝から容赦なく
現代音楽を発信しまくる
超過激番組だったが、
この回でもたしか黛先生の自作品
「スフェノグラム」
を抜粋ながら演奏したり、
武満徹の
「鳥は星型の庭に降りる」
の触りを演奏したりと、
オール現代音楽であったのを覚えている。
|珍タイトル巡りの旅 前編
変なタイトルの曲って
現代音楽にしか無いのか?
いやいや全然そんなことはなく、
大昔からタイトルは難問であったことは変わらないらしく、
歴史的「珍タイトル」曲は
たくさんあるのだ。
今は便利な時代で、
気になればすぐに
を探してみれば良い。
結構な曲が実際に聞けてしまうのだから。
さてとりあえず一曲聞いてみようか。
この曲のタイトルは
「Leck mich im Arsch」である。
え?ドイツ語わかんないって?
日本語では
「俺の尻をなめろ」と約さ…
お断りします!
実はこれかの有名な
が書いた曲である。
当時の貴族たちの
下賤な趣味に応えるために、
半ば遊びで書かれたとか。
それにしてもこんなタイトルなのに
素晴らしいカノン
に仕上げられていて
むしろ才能の違いを痛感させられる。
せっかくなので
モーツァルトより古い例も
見てみよう。
1656年生まれ1728年に亡くなった
マラン・マレが書いた
「Le Tableau de l'Opération de la Taille」
をご存知の方はいるだろうか?
え?またわからないって?
日本語では
「膀胱結石手術図」と約さ…
お断りします!
いや病気は断れないでしょう。
私も胆嚢炎はやったことがあって、
あまりの激痛にのたうち回ったわけですが、
膀胱結石や尿管結石は
ものすごい痛みだt…
お断りします!
|珍タイトル巡りの旅 後編
ここらへんで気分を変えてみましょう。
「正露丸の主題による4つの変奏曲」
お断りします!
いやいやまあとりあえず聴いてみようじゃありませんか。
ご覧のように
トランペット五重奏曲になっています。
それもそのはずこの曲を書いたのは
ケンツビッチとありますが、
これはあるとても高名な
日本人トランペット奏者の
ペンネームなんですよ。
それと現在は
「胃腸薬の主題による4つの変奏曲」
と改題されているようですね。
多分大人の事情ってやつでしょうね。
じゃあこの曲は
大人の事情には触れないんでしょうかね??
「ケンタッキー・フライドモンキー」
いやいやいや猿揚げちゃだめでしょ!!
まあ可愛い曲なので聴いてみましょう。
これは三枝成彰作曲の
こどものためのピアノ曲集「ブルドックのブルース」
に入っている一曲です。
実は子ども向けの曲って
変なタイトルの宝庫なんですよね。
可愛いかったり
面白かったりしないと
弾いてくれないじゃないですか。
だから作曲家も
ちょっと洒落を効かせるんですね。
さて今回の最後を飾るのはこちら!!
歌曲集「歳をとるほど大胆になるわ」
お断りします!
まあまあ聴いてからでも遅くない!
とはいえこの曲は全曲の音源が見つからないのでその中の一曲
「失うものはなにもないわ」
をお聴きいただきましょう。
まあこれは歌曲なので作曲した
加藤由美子さん
に罪はないですね。
元の詩はイギリスの詩人アストラで、
これを岡田宏子が約したもの。
ちゃんとこの訳詞で出版されているんですね。
この詩集は女性と老いをテーマにした作品で、
びっくりするタイトルの連続です。
「淑女って誰?」
「閉経の安らぎ」
「貧乏人は殺せ」など。
え?もうお腹いっぱいだって?
た、たしかにそうですね。
今回はこのへんで終わりにしましょうか。
ということで今日紹介したのは
氷山の一角もいいところ。
変わったタイトルの曲は
まだまだ山のようにあるので、
これはシリーズ化して
また書いてみようと思います。
お断りします!
え?