名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

〈作曲ものまねシリーズ〉#5 クロード・ドビュッシー

どうも、名作会会長の冨田です。

自分は今年度大学を卒業してから、作曲家として活動すべくインプットとアウトプットを重ねる日々を送っております。

この連載は、クラシックの大作曲家たちの作風を研究し、ものまねで一曲書いてみようという趣旨です。

第4回からめちゃめちゃ間が空いてしまいましたが、最終回となる今回はドビュッシーのものまねに挑戦しました。

クロード・ドビュッシー - Wikipedia

 

クロード・ドビュッシーとは

クロード・ドビュッシーClaude Debussy)は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてフランスで活躍した作曲家で、当時非常に多くの作曲家に影響を与えた存在でした。

古典的な和声法をことごとく否定し、長調でも短調でもない旋法を用いた作曲や、機能和声に全く捉われない(どころか敢えてその逆を行く)和声を用いて作曲しました。

 

というわけで、今回モノマネをするにあたり参考にした曲は2曲です。

まずは、非常に有名な曲である「亜麻色の髪の乙女(La fille aux cheveux de lin)」。

そしてリストの「エステ荘の噴水」に霊感を得て作られたといわれる「水の反映(Reflets dans l'eau)」です。

 

特徴点の分析

なんといっても、ドビュッシーの特徴といえば和声です。

クラシック音楽の時代を生きていながら、彼はとにかく古典のルールを破りまくることに心血を注いでいました。

まず、古典では避けられていた3度進行

亜麻色の髪の乙女」5小節目~

「水の反映」17小節目~

 

連続5度・8度が生じるために避けられていた平行和声

亜麻色の髪の乙女」21小節目~

「水の反映」9小節目~

そして連続5度に、

「水の反映」16小節目~

亜麻色の髪の乙女」24小節目~

民族的な音階であるペンタトニック(連続5度)

亜麻色の髪の乙女」12小節目~

亜麻色の髪の乙女」おわり部分

クラシックではふつう用いられない4度堆積和音

「水の反映」15小節目

V→IV と進行してしまう禁則・弱進行

亜麻色の髪の乙女」27小節目~(主題再現)

ずれ和音

「水の反映」56小節目

「水の反映」82小節目~(おわり部分)

ホールトーンによる無調・・・

「水の反映」51小節目~

・・・などなど。

よくもまあこんなにアンチ古典を敷き詰めたな、というくらいの密度です。

とにかく古典的な和声理論に挑戦し、しまいには構成音をとにかく半音ずつずらして偶成和音を盛りまくる、という境地に至っています。

「水の反映」14小節目~の難解なコード進行や、

「水の反映」14小節目~

14小節目~の半音ずつずれていくようなコード進行などですね。

「水の反映」22小節目~

☆POINT☆

・とにかくありとあらゆるアンチ古典的なチャレンジ

 

なお、それぞれの曲についての個別解説はこちらの動画でしています。

 

ものまね曲、完成

……以上のポイントを踏まえてものまねをしてみました。

ドビュッシーの難解な和声を意識しつつ、発展的な変拍子を取り入れて作曲しました。

単純なドビュッシーの模倣ではありませんが、随所にドビュッシーっぽい香りが散りばめられているのが分かると思います。

ドビュッシーはとにかく反逆的な和声を愛用していて、分析を受け付けないところがあります。

非常に独特で難解ですが、とにかくアンチ古典を徹底しているということができます。

皆さんもぜひ、ドビュッシーっぽい曲を作って僕に聞かせてください。

2022年に観たアニメ

【2021年版】

nu-composers.hateblo.jp

 

 

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。

さて、今年もやって参りました、私がこの一年間で観たアニメをダダダっと振り返るコーナーのお時間です。去年と同じく、まずはルール説明から。

 

〜ルール説明〜

①これは2022年内に視聴終了した作品のリストである。年を跨ごうが2022年に視聴終了したらリストに追加される。

②過去に一回観た作品をもう一回観た場合などはリストに追加しない。

②基本「面白かった」しか言わない人間なので評価基準は大雑把に以下の通り

★☆☆☆☆→そこそこ面白かった、一度観れば充分

★★☆☆☆→まあまあ面白かった、印象に残っている

★★★☆☆→面白かった、観られて満足している

★★★★☆→とても面白かった、オススメできる

★★★★★→非常に面白かった、是非観るべきだ

 

それではスタート!

 

天地無用!魎皇鬼

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AIC制作のOVA作品。この作品から始まって、続編のOVA・TVアニメ・小説、果てにはスピンオフ作品まで相当数出ているという、実は超一大コンテンツなのです。続編は全然観れていませんが、普通に面白い作品だったので時間に余裕がある人は追ってみては。因みにOPがインスト曲でめちゃカッコイイです。

一大コンテンツらしく普通に面白い★★★☆☆

 

かみちゅ!

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舛成孝二監督作品。「神様で中学生!」、略して「かみちゅ!」。ある日突然神様になってしまった少女、一橋ゆりえとその周りの人々のちょっと不思議な日常を描く。いつも通りの日常と不思議な神様の世界が上手く混ざり合っていて、そして毎回ほっこりする終わり方をするので観ていてとても楽しかったです。因みにこの作品の聖地は尾道です。

こころに優しい素敵な作品★★★★★

 

天体戦士サンレッド

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神奈川県川崎市を舞台に、正義の味方サンレッドと世界征服を企む悪の秘密結社フロシャイムの戦いを描く......ギャグ作品。ヒーローのサンレッド、そして特に怪人達がクッッッソ庶民的で人間くさいのがクソ良い。たまに実写のお料理シーンが入るので、それには毎回笑ってました。因みにサンレッド宿敵の「ヴァンプ将軍」のCVは山田ルイ53世がやってます。

怪人達のザ・庶民感が好き★★★☆☆

 

PERFECT BLUE

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今敏監督作品。アイドルから女優に転身した霧越未麻の身に起こる事件を描いたサイコ・ホラー(?)。今敏監督が得意とする、現実と虚構が入り混じる描写がはちゃめちゃに良い反面、それが原因でちょっと分かりにくいシーンもあったので、全部が分かった今もう一回観たい作品であります...

入り混じる虚構と現実★★★☆☆

 

・ひげを剃る。そして女子高生を拾う。

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小説投稿サイトの「カクヨム」からアニメ化された作品。IT企業勤めの吉田はある夜、女子高生の沙優と出会う。酒に酔っていた吉田は彼女を家に招き入れ、そこから共同生活が始まるのだが...... ジャンルは所謂ラブコメだが「“コメ”要素はどうした!“コメ”要素は!」と叫びたくなるくらいストーリーが重いです(特に沙優の過去とか)。素晴らしい作品ではあるけど、いやぁ俺は一回観れば満足です....

良い作品(色々と重すぎるが)★☆☆☆☆

 

・わすれなぐも

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若手アニメーター育成プロジェクトアニメミライ」に出展された作品。Production I.G制作。作画も結構綺麗でええ作品やなぁ、と思ってたらラストで「は????????????」ってなっちゃいました。多分誰しも「は????????????」ってなると思います。感想は以上です。

衝撃のラスト()★☆☆☆☆

 

ゴーストハント

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小野不由美のホラー小説「悪霊シリーズ」のアニメ化。主人公・谷山麻衣はある一件から「渋谷サイキックリサーチ」という心霊現象の調査事務所の手伝いをすることになるのだが... キャラクターの扱いが非常に丁寧なのが素晴らしい。で、ストーリーの方も意外としっかり「「「ホラー」」」していてちゃんと怖く、そしてめちゃくちゃ面白かったです。

本格ホラーアニメ★★★★☆

 

たまこまーけっと

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京都アニメーション制作のオリジナルアニメ。うさぎ山商店街に住む餅屋の娘、たまこが言葉を話す謎の鳥、デラ・モチマッヅィと出逢うところから始まり、一年を通して巻き起こる様々なドラマを描いた作品。キャラデザも可愛く、また商店街の人々も人情味溢れる感じで、非常に観てて楽しい作品でした。流石は京アニ

やさしく楽しい、餅屋のおはなし★★★★☆

 

・アンドロイド・アナMAICO2010

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舛成孝二監督作品。元はラジオドラマで、その後コミック化し、その後アニメ化。近未来、ニッポン放送で業界初のアンドロイド・アナウンサーとして“MAICO”が採用されるのだが...基本的にはドタバタコメディといった感じだが、終盤はドラマチックで大きな展開もあって、そのストーリーに非常に驚かされた作品。OP曲の「MAICOは踊る」は絶対音感殺しとして名高い(?)です。普通に良い曲なので良ければ聴いてね。

終盤のストーリーにビックリ!★★★★☆

 

十二国記

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小野不由美による小説のアニメ化作品。その昔、NHKでやってたアニメ。中国風の異世界を舞台にしたファンタジー作品、と言ってしまえばそれまでだが、その世界観の重厚さは他の“異世界もの”を抜きん出ている(いや、異世界モノって言ったらこの作品に失礼かもしれん)。ストーリーも(割と重くはあるものの)非常に素晴らしいので一見の価値あり。梁邦彦作曲のOP楽曲は必聴。

超大作中国風異世界作品★★★★☆

 

・ちびねこトムの大冒険

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元は児童文学作品。バブル期に制作されるものの結局は大っぴらには公開されずにずっとお蔵入りになっていた、というまさに幻の作品。わざわざ東京と大阪にまで行って視聴したけど、いやぁ良い作品でした... キャラクターの一挙一動に魂が籠っていたし、ストーリーも子ども向きではあるものの、大人が観ても十分に満足できる作品だと思いました。一生に一度は是非、観て欲しい作品です...

みんなに観て欲しい、幻の作品★★★★★

 

人狼JIN-ROH

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Production I.G制作。原作と脚本を押井守がやっている作品。押井作品らしくめちゃくちゃカッコイイのですが、その分ストーリーや人物関係がめちゃくちゃ難しくて一回観ただけでは消化不良感がありました。ネタバレ10回読んでからまた見直します。

カッコいいけど難しい!★★★☆☆

 

銀河鉄道の夜

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皆さんご存知、宮沢賢治原作。それをますむらひろしがマンガ化し、それを原作として作られたアニメ作品。ジョバンニやカムパネルラは猫化されており、見やすい作品...かと思ったらそうでもなかった。というのは、セリフとセリフの間の「〇〇は××と思った」といった“行間”を知っていないと、表情があんま豊かでないキャラクターからその感情を読み取るのは結構難しいからだ。これもまた、原作読んでから出直してきます... あ、因みに音楽は細野晴臣がやってます。

原作知ってる方が100倍楽しめると思う★★☆☆☆

 

臣士魔法劇場リスキー☆セフティ

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臣士れい原作の漫画のアニメ化作品。中学生の桂木萌、そしてある事件をきっかけに一体となってしまった死神のリスキーと天使のセフティの、(基本的には)ほのぼの作品。ただ、異世界行ったり宇宙行ったりとストーリーがだいぶフリーダムです。また、終盤に大きな展開があったりして、最後まで楽しく視聴することができました。声優のセリフが一切無い、サイレント風に作られた第16話が個人的お気に入り。

「ほのぼの」と、「ドラマ」と。★★★☆☆

 

エルフェンリート

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原作はヤングジャンプで連載されていた。神戸守監督作品。グロシーンがあることで有名だったり、実は海外からの評価がめちゃくちゃ高かったりする作品。wikiには

また、根底には差別や孤独に対抗する人間性(humanity)や主人公の純愛が描かれており

という記述もあり、まあ素晴らしい作品に違いはないのだが、申し訳ありませんが、自分はこの作品の「重圧」に耐えられませんでした...いや、もう一周くらいはしてみようかな...この作品のOP曲である「LILIUM」は賛美歌風に作曲されており、海外の合唱隊によって歌われたりしています。

アニメOP

合唱隊Ver.

個人的にはちょっと重かったかな...★☆☆☆☆

 

宇宙海賊ミトの大冒険

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一見ただの女の子にしか見えない宇宙海賊・ミトとその息子・光国葵を中心に、銀河の支配を企む「爛磐」との戦いを描いたドタバタコメディ。色んなキャラクターがいっぱい出てきてみんなでワイワイする系の作品だったので、楽しく観れました。映像もどことなくレトロ感じがあって、そこも評価ポイントの一つです。

深夜向け「テレビまんが」★★☆☆☆

 

・BURN THE WITCH

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スタジオコロリド制作。原作はBLEACH久保帯人による漫画。ロンドンの裏側に広がる「リバース・ロンドン」を舞台に、二人の魔女、ニニー・スパンコールと新橋のえるの活躍を描いた作品。ドラゴンマジかっけぇ!登場人物マジカッケェ!続きはまだか...続きは...!ってなりました。流石はBLEACH描いただけはあります(読んだことないけど)。

ドラゴンもキャラクターもマジカッケェ...★★★☆☆

 

陽なたのアオシグレ

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スタジオコロリド制作の短編作品。妄想が好きで同級生のしぐれちゃんのことが大好きなひなたくん。ある日、しぐれちゃんが転校することを知って...途中でスピッツの楽曲が流れるのですが、これが綺麗で疾走感ある映像と相まってめちゃ気持ちの良い(?)作品でした。

美しく疾走感のある映像★★★☆☆

 

・寫眞館

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これもスタジオコロリド制作の短編作品。とある写真館に写真を撮りにきた笑わない女の子。彼女は成長して大人になっても一向に笑うことがないのだが... セリフが一切無い作品。文字・字幕も入りません。とても穏やかで、静かな作品。自分はこういう作品が大好きすぎるので、一度観て、めちゃ気に入って、また観ました。こういうのが観たかったんだよ...!

とても静かで穏やかな作品★★★★★

 

少女☆歌劇 レヴュースタァライト

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ブシロードコンテンツ。演劇学校である聖翔音楽学園を舞台に、「地下劇場」で「レヴューオーディション」と言う名の“決闘”に参加することとなった少女たちの物語。(自分は観たことないけど)少女革命ウテナとか好きならブッ刺さるんじゃないか?と言った感じの深みのある(?)ストーリーで、めちゃくちゃ面白かったです。また、“演劇”ということもあって、少女たちは歌いながら戦う訳ですが、その曲がなかなか良い!個人的お気に入りは「恋の魔球」。

少女達の“決闘”を見よ★★★★★

 

・劇場版再生産総集編

少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド
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上記「レヴュースタァライト」の総集編。まあ話の内容はTVアニメ本編のダイジェストになる訳ですが、使われてる楽曲がTV版とは違って劇場特別ヴァージョンだったので、原曲派の自分はイマイチ乗りきれなかったです...ハイ...

劇場版よりTV版の曲が好き★☆☆☆☆

・劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

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こちらの劇場版は完全新作になっています。インターネットを見てみると劇場に100回くらい足を運んだ猛者がいるような、そんなカルト的作品になっています。で、自分も観ました。カッコいいシーンとかは満載なんですけど、当時頭の糖分が不足していたのもあって、「一体...何が起こってんだ...!?」(←いい意味で)ってなりました。なので私はこの作品をもう数周することが必要です。

もう数回観てから評価したい★★☆☆☆

 

・阿波連さんははかれない

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水あさとの漫画が原作の作品。無口で無表情、人との距離を測るのが苦手な阿波連さんと、その隣の席になったライドウ君のほのぼの日常アニメ。「お決まり」のギャグ要素あり、ほのぼの日常描写あり、そして恋愛シーンありで、最後は温かHappyEndだったので、日常モノが好きなら普通にオススメできます。

ギャグから日常から恋愛まで★★★★☆

 

世界征服〜謀略のズヴィズダー〜

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TVオリジナル作品。

この物語は、日々の食事や嗜好といった些細なことから大衆に関わる後々の大局に至るまで、ズヴィズダーが世界を征服する軌跡を辿った物語である。

ってwikipedeaには書いてあります!キャラクターデザインはめちゃ良いのですが、ストーリーは何やってるかさっぱりわからなかったです!感想は以上です。

ストーリーがよく分からんかった。★☆☆☆☆

 

今、そこにいる僕

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大地丙太郎監督作品。普段はギャグを得意とする監督が、一切のギャグを封印して真剣に「戦争」というものを描いた極めてシリアスな作品。インターネットでは「鬱アニメ」なんて言われてますが、そんな一言で済ませることができないほど、深く、重く、そして“面白い”作品でした。コアなアニメが好きな人なら、この作品は絶対に観るべきです。

「戦争」を真っ向から描いた名作★★★★★

 

・ワッチャプリマジ!

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「プリパラ」や「プリチャン」等の「プリティーシリーズ」の一環。佐藤順一監督作品。主人公を取り巻く大人たちがしっかり描かれていたり、男子のプリマジする回があったりと、意外なストーリーで毎話ワクワクさせてもらいましたが、最後の物語の着地のさせ方がちょっとフワッとしすぎてたかな、と思います。因みにプリティーシリーズはこの作品で一旦打ち切りとなっています。この先どうなる日本の女児アニメ...

ラストは微妙だが、それでも面白かった★★★☆☆

 

王立宇宙軍 オネアミスの翼

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GAINAX制作の劇場作品。「何もしない軍隊」と揶揄される王立宇宙軍に所属するシロツグは、あることがきっかけで宇宙飛行士に志願するのだが... ストーリーは全体的にフワッとしてましたが、緊迫&大迫力のロケットの打ち上げシーンで普通に泣いちゃいました。ロケット打ち上げって、現実でもなんだか馬鹿にされる傾向があるじゃないですか。でもその裏側にはこんなにも情熱的な人々の姿があるんやな、って... 因みに音楽は坂本龍一がやってます。

ロケット打ち上げシーンで泣いた★★★★☆

 

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

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押井守監督作品。皆さんご存知、うる星やつらの劇場版。原作は観たことも読んだこともありませんでしたが、キャラクターさえ押さえれば観れちゃう作品です。原作のドタバタ感もちゃんとありますし、一方で押井守らしい美しさと静けさの混ざり合った描写とかもあって結構良かったです。DVDで買ったのでもう一回くらい観たいです。

押井守的描写」が良い★★★☆☆

 

舟を編む

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原作は三浦しをんの小説。「玄武書房」に勤める馬締光也が、新しく作られる辞書『大渡海』の編纂者として辞書編集部にヘッドハンティングされてから『大渡海』が刊行されるまでの出来事を描いた作品。基本的には粛々とストーリーが進んでゆく感じだが、「辞書作りとは何をしてるのか」という解説もちゃんとあり、事件もあり、恋もありで、それぞれの事象が非常に丁寧に描かれていてとても面白く、好感度の高い作品でした。2022を締めるに相応しい、素晴らしい作品でした...

粛々と、丁寧に進むストーリー★★★★★

 

 

 

以上!

ところで最近アニメを観る本数がだいぶ少なくなってきてしまいました...そろそろ私もオタクの称号を剥奪されそうです。ま、無理せずゆったりまったり、観たいものを観ていこうと思います。今年も色々観られるといいな。

 

おわり

ぼざろも見たことだし、00-10年代邦ロックについて回顧でもしますか

こんばんは、榊原です。

12月中はありとあらゆる疾病により体調を崩しまくっていたので、基本的に家で寝ていました。しかし家で寝てるのはどうも暇でして、寝ながらも映画とかアニメとかをガンガン見ていました。てへ。

 

なのでぼっち・ざ・ろっく!(ぼざろ)もみました。

bocchi.rocks

このブログはぼざろの感想の感想を述べるのみになるでしょう(ネタが尽きているから)。

しかしまあアニメの内容に言及しても仕方がないと思うので、今回は楽曲に対する言及にとどめようと思います。

 

 

と言いつつも少しは内容に触れたいと思います。

このアニメの舞台は主に下北沢です。不自然なまでに女の子しか出てこない環境下で、女の子4人がバンドを組んでなんやかんやという話です。要するに萌えアニメですね

どうでしょう、続きを読む気が失せてきたところでしょうか。

 

下北沢が舞台のため、劇中曲は下北沢系の日本のロックバンド(いわゆる邦ロック)をベースにつくられています。参考にされている曲の年代としては00-10年代前半くらいでしょうか。

 

邦ロックはクソ

しかし00-10年代前半邦ロックはクソです。これはどう贔屓目に見てもダメだと思います。(10年代後半のシティポップブームになるとやや盛り返してきたようにも思いますが、結局それも過去の縮小再生産のような気もします。が、これはまた別の話になるので今回は割愛します。)

このころの邦ロックは

 

アジカンみたいなやつ


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くるりとかその辺(いわゆるスニーカー系)の90年代直系のシンプルなバンドサウンド

・曲がシンプルな分、歌詞で良い感じのことを言っている気がする

 

カナブーンみたいなやつ


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特徴

・大元はクラブミュージックから輸入されたと思われる四つ打ちのドラム

・ボカロ文化やフェス文化の発達の影響だと思われる2小節単位のかなり短いリフ、明らかに速いBPM

 

の二つに大(?)別されると思います。かなりざっくり分けたので取りこぼしは多いと思いますが、まあざっくりなんてこんなもんでしょう。

大体00年代を代表するのが前者で、10年代が後者でしょうか。今改めて聴くと10年で音楽シーンの方向性がそれなりに変わっていますね。

 

 

......まあ、両方ともフツーに嫌い(だし、良くないと思う)なんですが。

フツーに嫌いなうえに、わたしが中学生~高校生くらいの時まではこういうのが跋扈していたのでかなり忌避していると言ってもいいでしょう(でも歌える)。

 

なのでぼざろも「死ね~!」と思いながら見ていたのですが、ですが、


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めちゃ良いとは言わないですが、フツーにかっこいい。00-10年代の邦ロックが上手いことアウフヘーベンされていて、確実にあの頃のロックシーンの上位互換ではありますね。

そして編曲(三井律郎)が上手い。アニソンとしての展開の多さを担保出来ているにもかかわらず、4ピースバンドがライブで鳴らせる音しか出していないのはある意味アンチ・アニソン的でもあります。

 

こういうのを聴いちゃうと邦ロック許せちゃいそうになるな~。

 

 

いやまあ許さないんですけどね。

こうやってポップスに食われた時点で、全く許すことはできないんですよね。

 

私はこういう呪縛を抱えて生きています。

コンテンポラリーの回廊 俺の視聴部屋3

コンテンポラリーの回廊

 

 皆様あけましておめでとうございます。旧年は三の酉ということもあり、SNSではたびたび炎上、バカばかりが雨後の筍がごとく現れ切っても切ってもきりがない実に不毛な時間を多く経験しました。しかしその中から拾ったものは大きく、新たに知り合えた仲間の心強さは私にとって代えがたいものになりました。
 この勢いをさらに加速させ尖り倒し、既得権益の巣窟である楽壇中央とは徹底的にやりあっていきたいと思いを新たにいたしました。今年の抱負はずばり「闘い」、作品でも実生活でもトラブル上等でやっていこうと思います。

 

 さて年初一発目の私の担当記事は様々な前衛作品を、このくそ遅れた国に紹介するこのシリーズです。


初めに紹介するのはこんな曲です。

 

1.Black Bottom/Nkeiru Okoye

Nkeiru Okoye

 ンケイル・オコイエは1972年にアメリカに生まれた作曲家であり、名前からもわかる通りアフリカ系で、父親がナイジェリア人である。もちろんそのルーツに迫る楽曲もあるが、むしろ彼女はアメリカの伝説などを題材にした作品が多い。彼女はジャマイカの作曲家であるノエル・ダ・コスタに師事しており、この点からもむしろAfro-Americanとしての意識が作品の中枢にあるようである。
 今回紹介する「Black Bottom」も彼女の作風、コンセプトをはっきりと打ち出した作品といえるだろう。独唱者は民族的な歌い方による歌唱を行い、ドラムやエレキベースも使われ、とてもPopsの色彩が強い。一方シリアスさもちゃんと持っており、これが現代のアートであることを思い起こさせる。全体に11の部分からなっており、この言い方がよいのかはわからないが黒人的な音楽と感じる。それは例えば私がアメリカに暮らして、音楽を書いてもアジア性は消えないのと同じことではないかと思う。とかくこういった題材は歴史的に政治的になりがちだが、むしろ陽気さがあって湿っぽさを吹き飛ばしていくようですらある。
 日本人の悪いところにバブルの幻影にいまだ縛られているところがある。すでに日本は先進国ですらなく、滅びゆく国なのにいまだにプライドは当時のままだ。差別などどこぞの話で自分たちは歓迎されるべき人種だと思い込んでいる。否、すでに黄色い猿に成り下がった私たちは、むしろオコイエのような眼差しこそ学ばなければならないのではないだろうか。

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さて二曲目に行きましょう。

 

2.Furtive Movements/Ted Hearne

Ted Hearne

 テッド・ハーンは1982年シカゴの生まれ。少年時代から聖歌隊に参加し音楽経験を積み、ニューヨークに出てからもそのまま音楽の本格的な勉強を始めることになる。そしてアメリカの一つのゴールデンパターンであるイェール大学に進み、デイヴィッド・ラングに師事することとなる。これはBang On a Canの影響下に入ったことを意味し、この時点で彼の言語の基礎がポスト・ミニマル的になったと言って良いだろう。そしてあらゆる編成のための作品を書き、自らヴォーカリストとしても活動していく中で、当然コンテンポラリーとPops、特にエクスペリメンタルを融合させ独自の境地へ至ったのは何ら不思議はない。
 このFurtive Momentsはその姿勢がわかりやすい作品で、チェロの独奏とドラムセット(打楽器)のために書かれており、明瞭にロックの影響を感じさせる。なるほど弦楽器のSul Ponticelloのサウンドはギターを軽く歪ませた音に近い。Bernhard Ganderがメタルとコンテンポラリーの融合から独自の音楽を行い異端と言われたのとは対象的に、アメリカではこういった折衷は異端ではなく、むしろファッショナブルな最新の音楽である。
 あえて攻撃的に言わせてもらえば、日本でその経歴に詐称が多いと言われている某作曲家は、ミニマル的手法を「現代音楽の歴史で否定された方法論」と言っているが、そういった姿勢こそ「否定」されるべきであり、こうやってアメリカンカルチャーの両翼を担う方法論としてひとつの折衷のなかにファッショナブルなコンポラリーとして脈々と生きている姿は我々の思う「前衛」がすでにカビの生えた古臭いものであることを強く示唆しているのではないだろうか。

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さて3曲目のご紹介に進もう。

 

3.Sad Songs/Clemens Gadenstätter

Clemens Gadenstätter

 クレメンス・ゲーデンシュテッターは1966年生まれで、ここまでの中ではすでに有名で、大家の作曲家の一人と言えるだろう。オーストリアに生まれ、エーリッヒ・アーバンナーに師事し、その後大巨匠ヘルムート・ラッヘンマンについて大学院を卒業後、自らも教壇に立って更新の育成に努めている。当然ゴリゴリの現代音楽エリート路線で来た作曲家なのでその作風は政治的であることはもちろんながら、本人の作曲命題として「知覚する音楽」という物があるようだ。知覚し、理解することで、それらが政治的な意図を持つという点に至らしめようとする姿勢は大師匠からの系譜に違わぬ、強い作曲家としての闘争を意味している。いわゆる「モダン」の姿勢であり、私はもういささか古いと断ぜざるを得ないと思っている音楽の在り方である。
 「Sad Songs」は聴けばそれが「泣く」という人間的行動であり、悲しみのために泣いていることの背景を知覚させ、メッセージとして発信していることがわかる。しかしその響きはおそらく実際に幾種類かの「泣き声」のサンプリングがベースになっていると思われ、これを響きにするために電子音、エレキギターを含む変わった室内楽編成となっている。泣くという行為とその周囲にある人間の動きや行動を抗議の象徴としてまとめ上げており、また構造的にも師の影響が感じられ再帰的ではないが、非常によくまとめられある意味で知覚しやすくされているように思う。
 いわゆる現代音楽ではあるが、日本で声高にゲンオンを叫ぶ多くの作曲家に、ここまでのサウンドを書く人がいないのはなんだか滑稽ですらあると思わせてくれる作品である。

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つづいて4曲目だ。

4.Tendon/Eliav Kohl

Eliav Kohl

 エリアフ・コールはイスラエルの作曲家。1983年に生まれニューヨークで学んだ売出し中の若手である。これまでにジェーソン・エッカルト、ジェフ・ニコルズ、ルーベン・セルッシ、ジョセフ・バルダナシヴィリ、アムノン・ウォルマンらに師事している。マスタークラスで学んでいる頃から積極的に作品を発表しており、世界中のアンサンブル団体などからの委嘱を受けている。
 「Tendon」は天丼のことではもちろん無く、「腱」や「編み込まれた構造を持つもの」の意味だそうだ。弦楽四重奏のために書かれ、いわゆるポスト・モダン世代の最新前衛の形態をとっている。なかなかに難解で演奏も甚だ難しいだろう。おそらくタイトルの示すところはこの音楽の基本的な構造を示すものであり、プログラム演算を応用した、新しい複雑性を帯びたような構造を「編み込まれた構造」としたと考えられる。ノイズも多く用いられ、極めて先鋭的だが、なかなかに構造的に面白く、この手の曲では飽きが来にくい。
 大海を知ったものの音楽と言えるだろうが、個人的にはなにか強く訴えるものがあるタイプというよりは、作品の生成過程を美と捉える旧来のモダニズムの色彩が強く見え隠れしてしまい、今後の作品がどう成熟していくかが楽しみである。

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さてあっという間の今回のラストだ。

5.Countryside Landscapes/Özkan Manav

Özkan Manav

 オズカン・マナフはトルコの第二世代を代表する作曲家といえるだろう。サイグンやウスマンバスの影響を強く受け、さらにリゲティの影響が顕著な初期の音楽スタイルからだんだんと伝統と前衛を結んだ新しいスタイルへ移行していく。
 マナフは1967年に生まれ、バレーダンサーだった母の手ほどきで音楽に触れると才能を表し、エルシヴァン・サイダム、アドナン・サイグン、イルハン・ウスマンバスに師事した後、さらなる境地を求めてロンドンにわたる。ボストン大学ではルーカス・フォス、マージョリー・メリーマンに学び故郷へ戻ると自ら教壇に立つようになった。初期の作風は先述の通りだが、徐々にトルコの伝統音楽の要素を持ち込んでいくようになると、微分音への関心も強くなっていった。
 今回紹介するのは2007年に書かれた弦楽オーケストラのために書かれた「田舎の風景」と題された作品だ。楽譜や響きはペンデレツキのそれを彷彿とさせるが、これを単なるアレアトリックな前衛作品とみるべきではないだろう。響きに純粋に耳を傾けると聞こえる鳥の声や郊外の雰囲気に身を任せ、その響きにいざなわれるように聞けばたちまち作曲者の見た風景の一因になれるのである。
 いささか旧時代的語法ではあるが、そこにトルコ人の音声分解能の高さと伝統意識が加わりとても文化的な作品に仕上がっている。
 日本はグローバリズムを外国人になりきることと勘違いした国である。本来は国際環境の中でナショナリズムを保つことがその本質だったのに、実に情けなく恥ずかしい。そして日本の現代音楽界隈ではいまでもその勘違いが残存しているのはもはやネタでしかない。その意味では伊福部先生の眼差しはどれだけ先見の明があったのか感心せざるを得ない。同じようにマナフの音楽もまさにグローバリズムの体現の仕方を私たちに教えてくれるようである。

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と、新年早々興味深い海外の作品を5曲紹介したが、我々がこれらの曲に学ぶところは非常に多いのではないだろうか。


プロフィールを盛ることに何の意味があるのか。
海外の人になりきることにどれだけの意味があるのか。
そして今、日本人とは何かが改めて問われている気がする。
高すぎるプライドを持つ前にプロがすべきことがあるだろう。

「音楽ガチ分析チャンネル」の紹介 ~YouTuberへの問題提起~

どうも、名作会会長のトイドラこと冨田です。

僕は最近、YouTube音楽ガチ分析チャンネルを開設しました。

ポップス、クラシック、ジャンル問わずいろんな音楽を理論分析するチャンネルです。

 

そんな音楽分析でいいのか

で、「なんでいまさら???」という話になるわけです。

正直YouTubeをやり始めるには遅すぎるタイミングですし、音楽分析をしている人気チャンネルも既にあります。

音大生が分析してみた」「プロ作曲家が語ってみた」などといった訴求力のある動画、いくつもありますね。

 

しかし、その内容を見てみるとどうにも大したこと言ってないんですよね。

まず、音楽分析をうたいながら コード進行の分析しかしていない ケースが大半。

音楽はコードだけではないので、旋律線の対位法的なリズム分析とか、ヴォイシングの特徴、あるいは楽曲の構造分析とか、解説すべきことは無数にあるはずです。

それこそ音大生とかであれば、そういうあたりに言及するのが職責だとすら思うんですが。

そして第2に、 ② 偏ったジャンルの知見しかない という問題点も感じます。

クラシックの分析をする人はクラシックしか知らず、ポップスの分析をする人はポップスしか聞かない。

そのせいで、分析のクオリティもそこそこになっている気がします。

音楽って、ジャンルは数あれど全部おなじ音楽ですからね。

official髭男dismの「cry baby」、旋律の動きがかなりオーケストラ的だし、ベートーヴェンの「月光ソナタ」第3楽章にはメタル・EDMとの類似点が見られますし……。

 

「音楽ガチ分析チャンネル」の理念

というわけで、「音楽ガチ分析チャンネル」では次のような理念を掲げて分析をしていこうと思います。

1. 多角的な分析

コード進行の分析を中心には据えつつ、いろいろな視点から楽曲の魅力を解き明かしていきます。

2. 音楽のジャンル不問

クラシックだろうがPopsだろうが、もちろんそれ以外の音楽でも、オモシロ音楽であれば無差別に分析します。

その意思の表れとして、このチャンネルではコード進行の分析に2種類の表記法をあわせて書いています

2種類の表記法

3. 中上級者向けのハイレベルな分析

現状のYouTubeでは、初心者向けのカンタン分析ばかりが目につきます。

このチャンネルでは音楽用語もバカスカ使い、よりハイレベルな分析をお届けします。

難しい専門用語にはちゃんと解説も付けていますので、用語の勉強にもなります。

4. バラエティ番組みたいな要素の排除

Youtubeだと、どうしても再生回数を稼ぐために余計なことを言ったり書いたりしがちです。

「音大生が~」みたいな肩書でハッタリをかましたり、妙に引きの強いサムネをつくってみたり。

しかし、このチャンネルの目的はあくまでクオリティの高い音楽分析をお届けすることです。

誠実に意味のある動画を作っていきます。

 

おわりに

そういうわけで、「音楽ガチ分析チャンネル」是非ごひいきにしてください。

今後も不定期で動画を上げていく予定です。

こうご期待!

 

ナウシカのシンセサイザーは何を表していた?

 

皆さん、あけましておめでとうございます。

g改め岩附です。

というわけで

今回は映画「風の谷のナウシカ」に登場する音楽とその役割について自分なりに考えたことを話したいと思います。

簡単にいうと、ナウシカBGMのシンセサイザー何を表しているのか?という話題です。

ジブリの音楽の作られ方

そもそもの話、ジブリ映画における音楽、サウンドトラックはどのような過程を経て制作されているのでしょうか。徳間書店の「ロマンアルバム 風の谷のナウシカ」に載っている情報を基にすると、映画のナウシカには主に2つのアルバムが関わってきます。

「イメージアルバム~鳥の人~」と「オリジナルサウンドトラック~はるかな地へ~」です。

 作曲者、つまり久石譲ナウシカの映像が制作される前に漫画や事前情報からシンセサイザーを主に使用して「イメージアルバム」を制作し、それをたたき台として宮崎駿監督や高畑勲といった映像制作スタッフと話し合いを進めつつ、ラッシュビデオを見ながらオーケストラを交えて作曲したのが「オリジナルサウンドトラック」というわけです。

実際には、この 鳥の人 と はるかな地へ の間に「シンフォニー~風の伝説~」が作曲されていますが、劇中に関係するのはこの2つのアルバムです。

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・それぞれの特徴

さて、この2つのアルバムを比較したときにわかることとして

・共通したメロディを持つものがほとんど

・イメージアルバムではシンセサイザー、オリジナルサウンドトラックではオーケストラとシンセサイザーを使っている

という2点があげられます。たとえばイメージアルバムNo.2 はるかな地へ はサウンドトラックNo13「鳥の人」~エンディング~ と同じテーマが用いられていますが、前者はリバーブのかかった4つ打ちの電子音的なサウンドが特徴的ですが、後者はリズミカルな要素を抑えてオーケストラの特徴を生かしたサウンドを持っています。

 こうした違いの差は、単にオーケストラとDTMでは制作環境が違うからだけでは片づけられないと私は考えています。なぜならオーケストラで録音することが可能であった後から作られたオリジナルサウンドトラックにも、シンセサイザーを主体にした楽曲が登場するからです。

たとえばサウンドトラックNo.1「風の谷のナウシカ」~オープニング~冒頭30秒、No.2 王蟲の暴走、No.5クシャナの侵略、No.8腐海にて、No.9ペジテの全滅などにはシンセサイザーが登場します。

 

 つまりナウシカDTM主体のいわば仮音源的な役割であるイメージアルバムとは対照的に、サウンドトラックではオケとシンセは明確な意図を持って使い分けされていると考えたわけです。

関係ないけど、短けぇ夢だったな…とぼやくクワトロさん好き
・実際の作中の使われ方

 閑話休題、使い分けに意図があるとは言いつつも、じゃあそれが何なのか分からなければ話にならないです。なので実際に映像とサントラとイメージアルバムのどこが合致するのか聴きながら検証してきました。見にくいし長いですが参考まで。

drive.google.com

 こうした作業を通じて、まず感じたことは

・存外イメージアルバムの音源がそのまま使われているし、未収録の音源もある。

・重要なシーンは無音であることが多い

ということでした。例えばペジテのアスベルが腐海で蟲に襲われているシーンは殆どがシンセサイザー主体の未収録の音源でした。

 

 そしてシーンごとの分析をした結果、私は

オーケストラは歓喜、日常を表し シンセサイザーは蟲、腐海、極度の緊張を表している

と考えています。

 例えば序盤のこのシーンの後、ナウシカはユパが谷へ帰ってくることを知り歓喜します。その瞬間サウンドトラックNo.13「鳥の人」が入りオーケストラが鳴り響きます。

 しかし、その後直ぐにユパが「皆に変わりはないか」と尋ねるとともにBGMはフェードアウトしていきます。これはナウシカの父ジルが動けなくなったことをナウシカが思い出した為です。その後はしばらくの間BGMがない状態で展開します。また、風の谷のシーン(サウンドトラックNo.3風の谷)ではタブラやダルシマーといった民族楽器が演奏されます。

 このような例から、オーケストラや民族楽器といった生の楽器は大きな歓喜や人間の日常の風景を表現する時に使われているということができるでしょう。

 一方でシンセサイザーが登場する音楽のシーンではナウシカ腐海にいたり、蟲から逃げているシーンなどが多かったため最初は単に腐海を表しているのではないかと考えました。実際に風の谷に胞子が紛れ込んだ時や、腐海の植物だらけのナウシカの地下の部屋のシーンでは一瞬だけ電子音が流れます。

 しかし、それでは説明しきれない楽曲がありました。それがサントラNo.4 クシャナの侵略 です。このトラックは重厚な雰囲気をもつバックと特徴的なリードシンセが目立つ楽曲で用いられているシーンも風の谷にトルメキア軍が押し寄せてきたシーンで腐海や蟲が画面に登場している訳ではありません。また、トルメキアが攻めてくるシーンではイメージアルバムNo.7 土鬼の逆襲 も一瞬だけ流れています。

なので私は先ほどのナウシカ歓喜でオーケストラが流れたということとの対比として谷に何者かが攻め入ってくる過度の緊張状態もシンセサイザーは表しているのではないかと考えたわけです。

 

まとめ

 これらのことをまとめると、ナウシカの劇中では物語が進む重要な会話シーンでは無音であることが多く、登場人物の日常や歓喜といった事象に合わせてオーケストラが演奏され、そうしたものの対極の位置にある腐海や敵の存在を表現するためにシンセサイザーを敢えて用いたのではないかと考えています。

 必ずしもこれが正しい訳ではないし、戦闘にオーケストラが用いられているシーンもある(メーヴェコルベットの戦い)のでなかなか難しい所はありますが、1982年当時にわざわざ数千万もする機材を投入して制作された電子音楽には何か込められた意図があると私は感じています。

 皆さんも、もしナウシカを見直すことがあったら、ぜひ音楽を含めてなぜそのような表現をしたのか考えながら観ていただければ幸いです。

それでは。

2022年良かった曲

オープニング

百姓娘 - 横須賀市立池上中学校生徒会 (1974)


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メリークリスマス! 今年もこの時期がやってまいりました。

12月は今年の総決算と一般的に考える人が多くいる月なわけですが、私も例に漏れず今年聴いた曲をピックアップしていきます。

 

もくじ

 

海外

Can't Stop the Show - Lauren Desberg (2015)


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LAのジャズシンガー。カーペンターズなどからも影響を受けているようで、ジャズシンガーとしてはかなりポップな歌唱です。

曲はKaren Tayarという映画音楽作曲家(?)との共作のようです。めちゃエモい。

特に意図とかはないんですが、このなんとも言えない多幸感がかなりクリスマスっぽくないですか? 特に意図とかはないんですが。

 

Dead Inside Shuffle - Louis Cole (2022)


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LAの超マルチプレイヤー。本業は一応ドラムだが基本何でも弾ける異能。

曲名の通りシャッフルビートですが、どこかおかしくて私の知ってるシャッフルではないです。確かにシャッフルビートではあるのですが。

この前の来日公演を見に行ったのですが、手と足が人間離れした動きをしており、このMVにおけるキモい動きは日々のドラム練習のなのだろうと賜物なのだろうと思いました。でも車は普通に運転してほしいです。危ないから。

 

 

The Soy Lentman Show - Jacob Mann Big Band (2022)


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主宰のJacob MannはLAの人です。KNOWERのサポートメンバーでもあります。Lauren DesbergもLouis ColeもLAだし、LAはすげえよ。私がLAの音楽シーンしかまともに追えてないというのもありますが。

さて曲ですが、全体的に多幸感溢れる明るいサウンドが特徴的ですね。サムウィルクスをはじめとしたLouis Coleの一軒家セッションにいたメンバーも多数所属しているため、これが現代のLAを象徴する音と言っても過言ではないでしょう。つまり私が幸福に飢えてるから多幸感溢れる曲ばかり選んでいるわけではないということです。

他の曲だとKogiとかも良いです。この曲(Kogi)はLouis Coleがドラムを叩いています。


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Only One (feat. Angelica Bess) - Machinedrum (2022)


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LAを拠点に活動するTravis Stewartのソロ・プロジェクト。お前もLAか、と思いきやノースカロライナに生まれで、NYなど拠点を転々としているようです。よかった~。にしてもLAには人を引きつける何かがあるのでしょうか。

Machinedrumの名前通りのいわゆるIDMではありますが、Hiphopや現代ジャズの影響も感じますね。こういうミクスチャーな部分はとてもLAっぽいような気がします。

 

ABC (feat. Sophia Black) - Polyphia (2022)


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テキサスのバンド。ようやくLAではない人たちの曲を紹介するわけですが、まだアメリカを脱出できていません。

PolyphiaはマスロックとEDMの融合といった感じで今までやってきていましたが、ついにKawaii Future Bassとも融合してきました。かわいい~。演奏は全然可愛くないけど。

MVに出てくる五十音が微妙に間違ってるのが、特に理解せずにマジで記号として扱ってんだなという感じがして良いと思います。

 

 

The Shrine - Jaga Jazzist (2020)


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Lars and Martin Horntveth兄弟によって結成されたノルウェーのジャズバンド。ようやくアメリカを脱出できましたが、まだ欧米圏を脱出できていません。曲を主に書くのもこの兄弟です。スカンジナビアのいわゆるニュージャズムーブメントを代表するアーティストとして広く認知されており、2002年にはBBCのJazz Album of the Yearに選ばれるなど人気なようです。

ニュージャズムーブメント代表と言うだけあり、クラブシーン、特にジャズ・ファンクの影響を色濃く感じますね。

 

Gobbledigook - Sigur Rós (2008)


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アイスランドのポストロックバンド。編成が(ロックバンドとしては)イカれている。バスドラム(?)何台あんねん。何気にビョークもいるのが面白いです。

弊会の会長も言っていましたが、この超シンプルなビートでめちゃくちゃかっこいいのは凄い。ビートの上に乗っている音がポリリズム且つ変拍子っぽいのが複雑性を担保しているんでしょうが、四分で打ち続けるだけでもキャッチーになりうるというのは発見でした。

 

 

Shenovo horo - Maksim bend (2018)


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ウクライナ(?)のクラリネット奏者Maksim Shen率いるバンド。伝統音楽をフュージョンでやってるのかな。Shenovo horoのhoroはブルガリア語でダンスという意味らしいです。しかしShenovoは調べても全然意味が出てこなくて謎です。造語?

謎といえば、Maksim Shenをウクライナ人としている根拠は動画のタイトルをDeepLにかけたらウクライナ語と出たからなのですが、キリル文字の判別が全然つかないので正直よくわからないです。マジでラテン文字以外の文化圏の音楽を調べるのがムズすぎる。言語マスターになるしかないのか。

にしてもキメがバキバキですね。あと装飾音符がエグいほど付いていてめちゃ面白い。自分では絶対に思いつかない音選びの連続なので見ていて楽しいです。

 

Requiem for Molly, Pt. 2 - John Fahey (1967)


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イカれサイケ・フォークギタリスト、John Faheyの作品のなかでも特に異常な作品です。サブスク解禁されたので記念に紹介します。

他が強烈すぎて埋もれてしまいがちですが、そもそもギターのメロディラインが希薄な上にスライド奏法(ボトルネック奏法?)を多用しまくっており、既に不安を醸し出しています。そして過剰なサンプリング。67年にこれをやるのは相当大変だったと思います。ちなみに曲名はレクイエムですが、Fahey曰く「まだ生きているが心が狂ってしまった女性への個人的な賛辞」だそうです。

 

結局西洋しかまともに聴けなかったです。

というか、欧米以外の国の曲(特に現地でしか認知されていないポップス)を検索するのが難しすぎます。マジで一生探せる気がしない。

一応インド古典とかラヴィ・シャンカルのジャズ組曲とかは多少聴いてました。あと東・東南アジアあたりの音楽も多少追ってはいますが、検索しようがないのもあり面白いものは見つけられなかったです。というか、かっこいいんだけど、かっこいいね〜で終わる感じですね。すまん、それで終わらせてしまって。でもSweet Johnの新譜は割とよかったと思います。

 

日本

IQ500の蕎麦屋 ー HASAMI group (2022)


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青木龍一郎によるアマチュア音楽グループ。この曲が収録されている最新アルバム「パルコの消滅」はとてもいいアルバムでした。今までのアルバムにあった軽さがほとんど感じられず、もうこれ集大成だろと思ってしまいました。でもそれを裏切って予想の斜め上を行くのがHASAMIだとも思います。

21枚アルバムを出してもまだ進化を続ける音楽グループはそうそうないので、今後も注目していきたいと思います。

 

愛 - 性闘士☆準矢 (2018)


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音楽は最悪ですが、こういう音楽が許されているアングラ音楽シーンは寛容でとっても良いなと思いました。あと音楽をエンターテイメントとして振り切るなら、こういう感じになりうると割と真面目に思うんですよね。世のエンタメ音楽は振り切り足りないです。

 

踊れる - かさねぎリストバンド (2021)


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フリーランス作曲家、増田義基が主宰する音楽合奏集団。「踊れる」はまさにそうですが、ポリリズムとミニマルを基調とした作品が多いです。

大人数ということもありここ2年くらい活動がないので悲しいですが、新たなる活動を私は待っています。

 

ちなみに増田義基氏は個人でも音楽活動をしています。

なれたよ - 増田義基+田上碧 (2020)

なれたよ

なれたよ

  • yoshikimasuda+田上碧
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

これなんかはちょっと矢野顕子っぽいですね。

2022年には最新アルバム「ビオトープ探して」もリリースされておりましたのでそちらも是非。

 

蕾に雷 - 花譜&長谷川白紙 (2022)


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バーチャルシンガーの花譜と長谷川白紙のコラボ。完全にただの長谷川白紙になっているので花譜氏にはもっと頑張ってほしい。まあこの甘い雰囲気が花譜っぽさなのかな。

にしてもバーチャルシンガー界隈はコンポーザーに割と攻めた人選をすることがままあり、一体どうなってんだという感じです。

↓の一曲目とかASA-CHANGですし。


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マスに訴えかけるよりは一部の音楽オタクに刺さる曲出した方がコスパ良いってことなんでしょうか。

 

バブリング創世記 - 筒井康隆山下洋輔トリオ (1978)


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鬼才・筒井康隆によるパロディ神話「バブリング創世記」を、これまた鬼才・山下洋輔率いるジャズトリオが音楽化したものです。「バブリング創世記」自体が既になんでもありのカオスなのですが、そこに山下洋輔のフリージャズ的解釈と過剰な引用(山下の「GUGAN」や筒井康隆の「熊の木本線」、しまいにはピンクレディーの「UFO」が引用される)が加わることで、この上なく筒井康隆らしい作品になっています。さすが盟友といったところでしょうか。正直原作ありきの曲な気はしますが。

ちなみにこの曲が収録されているレコード「筒井康隆文明」のB面には、筒井康隆が寝る方法を論文調で仰々しく講演する、その名も「寝る方法」が収録されていてこれまたシュールです。

 

overdone - Limonène (2020)


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トラックメイカー サノカモメとシンガー 月島春果によるユニット。

サノカモメ氏は渋谷系、とりわけフリッパーズ・ギターの影響を公言しており、たしかにその影響が感じ取れる内容になっています。この曲はCymbalsの方が影響強そうですが。

その辺の影響もそうなんですが、ボカロなどの10年代のインターネットミュージックの影響もかなり感じられそれはそれで興味深いです。そもそも渋谷系アキバ系と融合してアニソンに発展解消していった(と解釈している)ので、今渋谷系が存在するとしたらこのあり方はとても自然なことのように思います。

 

 

奇妙な印象 - あめあめもと (2022)


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それっぽいタイトルとアーティスト名を付けられていますが、これはおそらくAIによって生成された曲です。サブスクは再生回数に応じて作曲者とか歌手に金が支払われる仕組みになっているんですが、その金目当てのクズがAIで生成した曲が大量にあります。マジでビビります、想像より遥かに多く存在するので。

こういうAI生成曲が蔓延らないようにAppleSpotifyは対策を講じているのですが、こうやってある程度起伏をつけてしまうと人間が作った曲と判別がつかないようで、野放図になっているのが現状です。そしてそこまでリジェクト避けのために起伏をつくっているのなら、それは普通に創意工夫と認めても良い気がしないでもないです。そして区別がつかないのだとしたら、人間とAIの作った曲の違いとは音響的に何なのでしょうか。別に作った人間はそんなこと考えてないでしょうが、なんとなくそんなことを考えてしまいますね。

 

ねむねむ天使 - 伊藤真澄 (2003)


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バンダイナムコの音楽レーベル、ランティスに所属する職業作曲家。主にアニソンとその劇伴を書いているので、アニオタの皆様におかれましては有名です。

いろいろな名義がありますが、伊藤真澄名義の時は主に歌っています。最近は過去作のデジタル配信をしたり初のピアノアルバムをリリースしたり精力的に活動している様子で、この曲も配信されていました。

個人的な00年代エモブーストがかかっていることは否定できないんですが、少し感傷的で印象的なメロディライン、Bメロの裏切りとかはとても良いなあと思います。

 

暗闇でDANCE - BARBEE BOYS (1984)


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日本の男女ツインボーカルバンドの先駆け的な存在(そもそもそんなにいませんが)。女性がいるのにボーイズという名前をつけてしまったことを後悔しているらしいです。でも女1人で他全員むさい男なのにGIRL がついてるバンドがあったくらいなので、今となっては全然良いのではないでしょうか。

ツインボーカルになるとなんでみんな「3年目の浮気」みたいな歌詞になるんだ、とは思いますが、音がかっこいいので良しとします。

この曲は記念すべきメジャーデビュー曲でもありまして、「台風クラブ」という映画の冒頭でかなり印象的な使われ方をしています。ちなみに「台風クラブ」はかなりイカした映画なのでおすすめです。

 

 

大阪より愛を込めて - チャンチキトルネエド (2009)


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現代音楽家チンドン屋の本田祐也氏が設立したバンド。連続テレビ小説あまちゃんの劇伴を演奏していたので、知らず知らずのうちに耳にしていた人も多いでしょう。

チンドン屋みたいな音がベースで鳴りつつも、様々な地域の音楽の要素がミックスされています。そしてジャズ畑ではない人間がアドリブをすることによって生まれるこのパチモンジャズ感が最高です。チンドン屋ベースじゃなかったらこうはカッコ良く収まらないでしょう。

 

とまあこんなかんじで。

毎度のことながら今年発表されたタイトルが少ねえな、と私は思いました。できれば全部今年出た曲で埋めたいんですけどね。

ちなみにクラシックや現代音楽ではプーランクの15の即興曲第1番ロ短調や、リゲティのAtmospheres、WennakoskiのNosztalgiaimなんかもいいなあと思ったのでした。


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クロージング

Silently Sharing - F.S. Blumm & Nils Frahm (2013)


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ではまた来年、良いお年を。