名古屋作曲の会(旧:名大作曲同好会)

“音楽”を創る。発信する。

〈作曲ものまねシリーズ〉#4 モーリス・ラヴェル

どうも、名作会会長の冨田です。

自分は今年度大学を卒業してから、作曲家として活動すべくインプットとアウトプットを重ねる日々を送っております。

この連載は、クラシックの大作曲家たちの作風を研究し、ものまねで一曲書いてみようという趣旨です。

4回目の今回は、長らく研究に苦戦していたモーリス・ラヴェルのものまねに挑戦します。

かなり骨が折れました。


モーリス・ラヴェルとは

モーリス・ラヴェルMaurice Ravel)は、1900年代初めごろにフランスで活躍した作曲家です。

管弦楽の魔術師」の異名を持ち、ドビュッシーに代表される印象派の作曲家とされていますが、その作風はドビュッシーに比べると伝統主義的です。

スペインにほど近いバスク地方に生まれたことから、作品にはスペイン民謡の雰囲気が感じられます。

バレエ音楽の「ボレロ」を作曲したことで有名ですが、「ボレロ」がラヴェルの代表作かというと微妙なところです。

もっと彼の作風をよく反映した名作は数多くあるでしょう。

 

というわけで、今回モノマネをするにあたり参考にした曲は2曲です。

まずは、リストの「エステ荘の噴水」に霊感を得て作られたといわれる「水の戯れ(Jeux D’Eau)」。

そして、スペイン風の6拍子で書かれた舞曲、「道化師の朝の歌(Alborada del gracioso)」です。

 

特徴点の分析

まず、全体的な部分から。

楽式を見てみると、「水の戯れ」はソナタ形式、「道化師の朝の歌」は明瞭な3部形式であることが分かります。

また、「道化師の朝の歌」の終わりの部分ではこれまで出てきた主題の断片が代わる代わる演奏されるシーンがあり、フーガの嬉遊部のような作りになっています。

▽5:50~あたり

このように、ラヴェルは楽曲の全体的な構造・主題の扱い方の点では古典的だと言えます。

しっかりとした古典的な構成の上に、全く古典的でない音を乗せていくのです。

☆POINT☆

・伝統音楽的な楽曲構成

 

次に、一聴して分かる際立った特徴を洗い出していきます。

まず、彼の音楽には不協和音が大変多く、それが古典音楽と一線を画するポイントとなっています。

「道化師の朝の歌」冒頭

「水の戯れ」38小節目~

このように、あからさまな音のぶつかりが多く見られます。

こうした不協和音は、和音の構成音が上下に半音ずれるずれ和音や、刺繍音・倚音などといった非和声音が和声音に解決しないままになった結果として生じるものです。

こういった”解決しない非和声音”によって、ラヴェルの音楽の中にはジャズにおけるテンション・ノートに等しい音がしばしば用いられます。

打撃的な不協和音も、美しいテンションの乗った和音も、どちらも”解決しない非和声音”という共通の発想から生まれているのは面白いと思います。

「水の戯れ」冒頭

上の譜例では、古典音楽では用いられることのなかったメジャー7thコードが当たり前のように用いられていることが分かりますね。

 

こうした7thコードなどの不協和音を用いる際は、ヴォイシング完全5度を基礎に敷かれるという特徴もあります。

上の譜例を見ても、右手・左手ともに完全5度を奏し、その結果としてメジャー7thコードが鳴っていることが分かります。

空虚5度も多用され、和音全体の響きを支えるために低音の完全5度も頻繁に登場します。

「道化師の朝の歌」9小節目~

このように完全5度が愛用されるあたりは、ドビュッシーを思わせますね。

ラヴェルの音楽では、もはや連続5度は積極的に用いられています

 

さらに、これもドビュッシーの影響を感じますが、ヨナ抜き音階(陽旋)や陰旋といったペンタトニック(5音音階)が好んで使われます。

下の譜例では、左手がペンタトニックで主題を奏しながら右手はぶつかりを含む完全5度のアルペジオを奏していますね。

「水の戯れ」第2主題

☆POINT☆

・ずれ和音や拡張された非和声音による不協和音、ぶつかりの多い音使い

・7thや9thなどのテンションは普通に使われる

・完全5度の響きに支えられたヴォイシング

・ペンタトニック

 

さて、ラヴェルの曲ではD進行しない属7・属9の和音がたびたび登場します。

属9を乱用する辺りはドビュッシーも共通で、印象派らしさといえるかもしれません。

「水の戯れ」29小節目~

ラヴェルの作品中では、ふつうのD進行というものがほとんどありません。

古典音楽との差異化を図るため、S進行や3度進行・減5度進行・弱進行といった和声の方が多用され、D進行はとっておきの際にしか使われません。

また、D進行はしていても導音の解決が見られないことが多いです。

従来とは違った響きを作ろうという、ラヴェルの気概が感じられます。

フリギア旋法やジプシー音階といった民謡的なスケールが用いられるのも、こういった狙いからでしょう。

「道化師の朝の歌」冒頭

☆POINT☆

・D進行はあえて使わない

・導音の解決を聞かせない

フリギア旋法やジプシー音階など、民謡の音階を用いる

 

ものまね曲、完成

……以上のポイントを踏まえてものまねをしてみました。

モーリス・ラヴェルの作風を意識しつつ、僕が作ってみた曲です。

本家のラヴェルよりも無調感の強い曲になるよう狙いました。

我ながら結構いい感じではないでしょうか。

 

ラヴェルは個人的に好きな作曲家なので、研究にも作曲にも熱が入りました。

近代音楽になると、音楽性もだんだんと一筋縄ではいかなくなってきますね。

皆さんもぜひ、ラヴェルっぽい曲を作って僕に聞かせてください。

 

なお、「水の戯れ」「道化師の朝の歌」の詳細な分析はこちらにアップしています。

興味があれば見てみてください。

同じ曲しか聴けない病

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こんにちは。皆さんお元気ですか。僕は元気ではないです。何故ならこの名作会ブログに書くネタが底をつき始めたからです。

 

このブログのネタ、ということはそれは音楽の話題だ。音楽の話題が底をつき始めたというのは、すなわち、「音楽の話題のインプットが少ない」ということ他ない。インプットが少ないからアウトプットも出来なくなる。それは当たり前のことだ。

 

じゃあ普段音楽を聴いていないのか?そう問われると答えはノーだ。音楽を聴かない日は1日だってない。それも「なんとなく流れてくる曲をなんとなく聴く」のではなく、イヤホンを付け、自分で曲を選んで聴いている。

 

じゃあそれだけ音楽を聴いていながら何故インプットが少ないのか?答えは簡単、私が「同じ曲しか聴けない病」にかかっているからだ。

 

「同じ曲しか聴けない病」、それはその名の通り、新しい曲に触れていくことが出来なくなる病だ。いつまで経っても同じ曲しか聴けない。何度も何度も同じアルバムを繰り返し聴いてしまう。「いつものプレイリスト」ばかり聴いてしまい、プレイリストが全く更新されない。あるアルバムの特定の曲だけ何度も聴いてしまって、アルバムに入っているその他の曲を全く聴こうとしない。などなど、その症状は様々だ。

 

昔はどんなジャンルもある程度満遍なく聴いていた。今よりは確実に音楽に対して柔軟性があった。自分が聴いていた音楽といえば専らクラブミュージックだったが、気になる音楽ジャンルがあれば、インターネットで片っ端からその音楽について調べていたし、youtubeに上がっている1時間ほどのMIXを何本も聴いていた。

 

だが、いつの間にかその病に蝕まれていた。私は物事に対する興味を失ってしまった。そしてなにもかも消極的になった。「おっさんになると音楽が聴けなくなるんだよ」なんて言葉を聞き流していたら自分が本当にその立場になってしまった。

 

思えばこれは他の趣味についても言えるかもしれない。私はアニメを観るのが趣味の一つなのだが、一年に数ヶ月、何を観ても面白くない時期があるのだ。なんとか頑張って、観たことのない作品を一話観てみようとはするのだが、なんとなくその続きを観るのは今ではないと感じてしまう。そしてそんな時には、ただただベッドに横たわるしかないのである。

 

「同じ曲しか聴けない病」と一言で『病のせいにしてしまう』ことこそが、一番の病なのかもしれない。だがこの無限ループに陥ってしまった原因も、そこから抜け出す方法も何も分からないのだ。

 

この病から抜け出す方法をなんとか捻り出してみるとすれば、一つは無理にでも、自分で音楽を一曲一曲聴いていくことだろう。実は、一時期ひたすら自分の知らないアニメのオープニングだけを聴いていたことがあった。もちろんあまり興味を惹かれない曲も山のようにあったのだが、この修行のおかげで「こいつを何度でも聴いていたい...」と思えるような曲に何曲も出会うことができた。

 

また、他の方法として色々な音楽の流れる場所に出かけてみるのも一つの手だろう。最近自分もあまり足を運ばなくなってしまったが、クラブがその場所の一つだ。普段あまり注目もしていなかった曲が良い雰囲気の中で流れると、「あれ、この曲良いかも」と思えることが何度かあった。そういう点で、クラブは新しい音楽に出逢うのに最適な場所だと言える。

 

ただ、自ら新たな曲を探すという行為には相当な精神力が欲求されるし、クラブに行くという行為にもまた体力が欲求される。「病は気から」なんて言葉もあるし、結局はそこに落ち着くのではなかろうか。そういえば最近運動不足がちだったな。週末はランニングにでも出掛けてみるかしら。

 

最後に折角なので、最近の「これしか聴けないアルバム」を紹介しましょうか。私の最近のお気に入りは東北新幹線の「THRU TRAFFIC」だ。東北新幹線は作編曲家の鳴海寛と、同じく作編曲家の山川恵津子のユニットで、「THRU TRAFFIC」はそんな東北新幹線の唯一のアルバムなのだ。収録されている曲は主にシティ・ポップなのだが、その内容がまた素晴らしい。特に好きな曲は「女性の側から別れを切り出す日」と言われている9月14日を静かに歌い上げた「September Valentine」だ。コーラスが素晴らしいので一度是非聴いてみてほしい。

 

 

ではまた。

困ったときは 【Studio Oneの.songファイルが読み込めなくて困った 編】

こんばんは。榊原です。

卒業までにDTMでミニアルバムでも出そうかなと思い、曲をちまちま作っています。

 

 

 

 

草原の商用利用可フリー写真素材611 | フォトック

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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DAWがクラッシュしました

DAW(Studio One)がクラッシュしました。うんともすんとも言いません。いや、「うん」とか「すん」とか言われたらそれはそれで困惑するのですが。そういうことではないですね。

 

まずDAWを再起動してみます。

そのためにまずタスクマネージャーからタスクの終了をします。キャプションを見るとDAWが全然応答していないことが判明しました(それはそう)。CPUやメモリを食っている訳ではなかったので、PCスペックの問題ではなさそうです。ファイルが壊れたのかな? それは困る。

次にPCごと再起動してみます。全然開きません。

 

仮に作り直すとして、コード進行は割と素直なので多分なんとかなるのですが、リズムやオートメーションが結構複雑で、これを再現する気力はないです。なのでデータのサルベージを図ります。楽したいので。

 

それではしばらくの間、データ復旧作業と格闘する私の姿をお楽しみください

そんな楽したがりで怠惰な私のためではありませんが、Studio Oneには頼まなくても勝手に5分毎に保存してくれる素敵機能があります。YOU最高だよ。そしてそれはhistoryというファイルに入っています。

History

というわけでhistoryから自動保存されているファイルを開きます。

開けません。最新のファイルだけでなく片っ端から開いてみます。開けません。

 

......おやぁ?

普段ならこれで解決するのですが、そうでないということは単純にファイルが壊れただけではないのかもしれないし、そうではないのかもしれない。わからない。やれやれ。パスタでも茹でるか。

 

パスタをゆでている間、インターネットでDAWに強い人のブログなどを片っ端から読んでみました。

どうやらDAWに問題がある場合、新規ファイルを立ち上げて音を出すと治ることもあるらしいです。ほんとかよ。ということで試してみました。

 

ダメでした

ダメでした。

 

 

はぁ......。

 

 

さらに調べたところ、サードパーティ製のプラグインが悪さをしている場合もあるそうです。そんなプラグイン売るなよ。

ということで、一回プラグインを全部抜いてみます。

私はローカルディスクCにあるファイルを読み込み対象にしていたので、そこから適当な場所に移しました。まあまあ面倒いです。

ちなみにStudio One 5.2以降だと、こんなことせずにDAWの設定弄るだけで同じ事ができるそうです。便利な世の中になったものですね。私が君くらいの歳の頃はそんなことできませんでしたよ。でもやっぱりこういうしち面倒くさい工程を踏んで原理とかを学ぶことってさ、結局何をするにあたっても潰しが効くっていうか、そういう意味では君たち若者は損してるよね(笑)  まあ、だからと言って前みたいにやろうなんて誰も思わないんだけど(爆)

そう、私は5.0だったのでできませんでした。コンマ2の差でこのザマよ。陸上短距離走か?

ということで抜きましたが、案の定ダメでした。

 

 

 

.......。

 

 

 

もう少しの間、データ復旧作業と格闘する私の姿をお楽しみください

マジで何がダメなんだ? ということで、もう一度新規ファイルを立ち上げます。StudioOneには今まで作った曲からプラグインの設定とかmidiファイルを流用する機能があります。というか今回調べているうちに知りました。(今まで作曲するたびに毎回新規で音作ってたんですが、面白いけどダルかったのでこの機能はありがたいです。つか今までの私、馬鹿?(馬鹿) )

この機能を利用して、開けないファイル=破損しているファイルの有無を確かめます。開けなかったらおしまいです。

 

結果、Tracksファイルがひらけませんでした。おしま〜い!

ちなみにこれは、プラグインの設定とその打ち込んだデータが入っているファイルっぽいです。MIDIデータは生きてるのが確認できたので、プラグインに関するデータがイカれたっぽいですね。それがわかったからといって、私に打つ手はもうないのですが。死ね!

 

お手上げ

お手上げです。もうじき完成しそうだったのでショックです。6年ぶりくらいに書いたバラードだったのに......。しばらくはノイズに塗れた曲しか書けないと思います。

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(※ちゃんとした曲を書きます)

 

あとは神頼みということで、ダメ元でフリーズしている状態で放置してみます。神なんて心の中にしか存在しないから、物質世界への干渉を願ったとて意味ないけどな。

 

 

〜8時間後〜

 

開いた

開いた。え?????????????????

とにかくデータ確保のために別名保存して、ステムデータもエクスポートします。

そして別名保存したファイルを開きます。ここで全然開けなかったらもうどうしようもなかったのですが、すぐ開きました。

よかったーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!! だけどさっきまでのはマジで何だったんだ。茶番?(部分的にそう)

ファイルが壊れてたのは壊れてたけど、染色体の損傷乗り越え修復(あまりに伝わる人種が限られている比喩表現)的な感じで、奇跡的に読み込んでくれたということなのか。パソコンはそんな可塑性のある機械なのか。そしてこの話のどこからどこまでが事実に即した内容で、どこがブログ用に脚色した内容なのか。そもそもデータは壊れていたのか。私が機械音痴だから壊れたと勘違いしていたというだけの話なのではないのか。もしそうだとしたら、それだけのために2000字書いてる俺はマジで何なのか。あなたも貴重な時間をドブに捨ててしまっているのではないか。あなたが認識している世界は本当に世界のありのままの姿を映しているのか。一体この世界の何が嘘で何が真実か。

 

 

 

真面目に考える

真面目に考えます。

1.外付けHDDが落ちたから

作業中にプラグインを格納している外付けHDDが落ちた気がしないでもありません。予期せぬ終了のため、プラグインの立ち上げに異常が発生したのかもしれません。

 

2.PCのスペックがゴミだから

生協のノートパソコン(笑)なので、正直DAWを立ち上げるとカツカツです。PCが情報処理できてなかった可能性もありますが、タスクマネージャー的には問題なかったのでこの仮説は棄却したいです。でもスペックがゴミなのは真実なので脳裏にちらついてしまう。

 

以上、トラブルシューティング(?)でした。

様々な協奏曲①

協奏曲

 皆様は協奏曲と言うと何を思い出しますか?

 ・ピアノ
 ・ヴァイオリン
 ・チェロ

 確かに王道ですし、名曲も多いですよね。これは作曲家の目からするとこれらの楽器がオーケストラを伴奏に従えたときに映える楽器だからなのだろうと思います。
 しかし楽器というのはたくさんあり、昔は書かれなかったようなコンチェルトも現代になるに従って増えていきました。一体どんな物があるでしょうか。書いた作曲家の略歴を添えて楽しんでみましょう。


・タップダンス協奏曲
 最初から相当の変わり種です。この曲以外に例を知りませんが、書いたのはアメリカの作曲家モートン・グールドです。

 

モートン・グールド

 モートン・グールドは1913年ニューヨークのリッチモンドヒル出身で、後のジュリーアドオン学院になんと8歳で入学し、研鑽を積みます。折悪しく不況の世の中で様々な映画館などでピアニストとしてバイトに励んだことがのちの彼の作風を決定づけることになります。彼は純音楽だけでなく、ミュージカルやポップスなども手掛け、あらゆるジャンルの作品を書くマルチ作曲家となりました。
 そんな中生まれたのがこの曲です。なるほど経歴を見るとちょっと納得という感じですね。


では聴いてみましょう。

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いやあ面白い曲ですが、これを踊りこなすソリストにもびっくりですね。

 

口琴とマンドーラのための協奏曲
 これもショッキングな編成による協奏曲ですが、実は現代の作品ではないんです。 書いた作曲はジョハン・ゲオルグ・アルブレヒツベルガーという古典派の作曲家です。

 

ヨハン・ゲオルグ・アルブレヒツベルガー

 もともと多くの協奏曲を書いたアルブレヒツベルガーは、1736年ウィーンの出身、ベートヴェンの師匠としても知られる作曲家ですが、アルト・トロンボーンの協奏曲なども書いていて、一部では定番作品となっています。
 口琴とは非常に原始的な楽器で口腔内に共鳴させ音と音階を得るもので、ジューズハープとも呼ばれます。 マンドーラはリュート属の撥弦楽器で今日見ることは稀でしょう。
 さて気になるその曲を聴いてみましょう。

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古典的な伴奏なのにビヨーンビヨーンと極めて異質なコンチェルトですね。生で見てみたい曲です。

 

・ゴミ協奏曲
 最早ふざけてるとしか思えませんが、要は打楽器協奏曲の亜流みたいなものです。
 そこらへんのガラクタで打楽器アンサンブルをして、その伴奏にオーケストラをおいたという感じですね。
 作曲したのはヤン・ヤルヴレップというカナダの作曲家です。

 

ヤン・ヤルヴレップ

 ヤルヴレップは1953年に生まれたカナダの作曲家で、ヨーロッパとアメリカの音楽、更にはロックやジャズのイディオムを取り込んだスタイルを特徴としているそうです。
 カリフォルニアで学び、作曲をルイス・デ・パブロ、アルシデス・ランザ、ウィル・オグドン、ロジャー・レイノルズに師事、その後カナダに戻ってオタワ交響楽団を活動の拠点としているそうです。

 

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 コミカルで楽しい曲ですね。これがガラクタで作られているというのもユニークです。 でも小さなお子様に見せると真似しそうでちょっと怖いですね。

 

アコーディオン協奏曲
 さて今日最後は日本人の手による作品です。アコーディオン協奏曲は歴史的にも何曲か書かれておりそこまで珍しくはないのですが、日本人による作品として紹介したくて選びました。
 作曲したのは菅原明朗、好奇心の強い作曲家で最晩年まで旺盛な創作活動を展開、近代日本の音楽普及に尽力した作曲家です。

 

菅原明朗

 菅原明朗は1897年に兵庫県の明石に生まれ、改宗カトリックとなり、その後ホルンなどを習得して上京しました。多くの資料で作曲は大沼哲に師事となっていますが、ご遺族により明確に否定されていて、大沼とは親友のような間柄だったとのことです。
 唯一師として挙げられるのは瀬戸口藤吉で、その後はイタリアの作曲家ピッツェッティなどとの交流から独特の音楽観を深めていったそうです。またマンドリンオーケストラの普及に尽力しましたが、これを捨て、その後は名伯楽として多くの弟子を育てたことでも知られています。

 

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日本の叙情性、聖歌性を兼ね備えた独特の響きですが、大変印象的ですね。

 

 他にも紹介したい協奏曲はまだまだありますので、いずれ次回にでも。
 秋の夜長にコンチェルトに浸るのも悪くありませんね。

「バンブラ」という音ゲーを知っているか

このところ「作曲ものまねシリーズ」を連載していましたが、現在ラヴェルの研究に悪戦苦闘しているため今週はおやすみ……。

 

というわけで、今週は僕の思い出話をしようと思います。

大合奏!バンドブラザーズ」、略してバンブラというゲームについて。

 

 

バンブラとは

大合奏!バンドブラザーズ」は、DSシリーズで3作品が発売された音ゲーです。

明らかに某人気対戦ゲーをパクった絶妙にダサいネーミングからも分かる通り、そんなにメジャーなゲームではありません。

ゲーム性ぜんぜん関係ないのになぜパクった???

某人気対戦ゲー

一般的な音ゲーと同じく、リズムに合わせてボタンを押すというゲーム性です。

ただ、バンブラには非常に特徴的な点がいくつもありました。

 

①自分で曲を作れる

なんと、このゲームには作曲エディタが内蔵されていました

最新作の「バンブラP」では、コードギターなども含む同時10パート+簡単なエフェクタまでついていました(!)。

DSでけっこう本格的な作曲ができたのだ

当然音ゲーなので、自分で作った曲を演奏して遊ぶことも出来ます。
ガチで唯一無二のゲームです。

 

ついでに、最新作ではなぜかヴォーカロイドが内蔵され、自作曲を初音ミクなどに歌わせることができます

???????

DSにボカロを内蔵するってだいぶ狂ってないか?????

開発陣の熱意がすごい。

赤字にならなかったんでしょうか。

 

②本当に演奏しないといけない

ふつうの音ゲーは、リズムに合わせてボタンを押しはするものの、別に曲を演奏しているわけではありません。

しかしバンブラでは、自分がボタンを押さなければマジで何も音が鳴りません

というか、DSについている各種ボタン(ABXY・上下左右・LR)が1つ1つの音に対応しているので、プレイヤーは実際に曲を演奏することになります。

その気になればアドリブを演奏することも出来ます。

「十字&ABXY」がスケールに対応し、「L」同時押しで半音、「R」同時押しで1オクターブ音を上げられる。ボタン数多すぎだろ

この仕様のせいで、オンライン合奏では荒らしが多発しました

……そう、このゲームでは合奏ができるのです。

友だちがたくさんいれば、10パートすべてをみんなで分担して演奏することも出来ます。

 

③楽曲投稿&審査のシステムが存在した

このゲームでは、後から曲を追加購入することができました。

ただし、追加コンテンツを制作するのは開発陣ではなく、僕たちプレーヤーです。

プレイヤーの有志が好きな曲をバンブラ耳コピし、投稿し、審査を受けて通ればDLCとして配信されます

審査通過画面

??????????

冷静に考えてみてください。

好きな曲があったら何でも投稿してDLCに追加できるってヤバくないですか???

どんな超マイナー曲でも、JAS○ACの著作権管理リストに載ってさえいればマジで投稿することができたのです。

そのせいで、2014年の時点で追加楽曲数は7,400曲を超えていたようです。何事?

 

ちなみにバンブラは、JAS○ACシャバ代を収めることであらゆる楽曲の配信を可能にしていました。

ただし、著作権法「完全コピー」は許されるが「アレンジ(編曲)」は認められないので、配信されるためには原曲を完全に耳コピする必要がありました。

これが相当な鬼門で、生半可な耳コピ能力では配信にこぎつけらませんでした。

 

しかも考えてみれば、そんな大量の楽曲を審査するためには相当な手間暇がかかったと思います。

ここに割いた大きなコストが、バンブラの寿命を速めてしまったんでしょうか。

新作の音沙汰はない

 

Noバンブラ, No Life

端的に言って、バンブラがなければ僕は作曲家を志していませんでした

バンブラとの出会いは中学生の頃、「メイドイン俺」というゲームについていたオマケ機能の作曲エディタにハマっていた僕は、

「もっと自由に作曲してぇ!」

と思いこのゲームに手を出しました。

 

で、耳コピにハマったわけです。

初期収録曲だけでは物足りないので、自分でガンガン曲を増やしていきました。

ガンガンと言っても、1曲作るのに1か月ほどかかりましたが……。

やがて最新作の「バンブラP」を買うと、いよいよ楽曲投稿にハマりだしました。

しかし、これがなかなか審査を通過しない。

自分の耳コピの精度を磨いていくことになります。

 

で、気づいたら作曲ができるようになっていました

そりゃそうですよね、既存の曲を全パート耳コピし続けるって最高の修行です。

しかも、バンブラの審査制度はかなり厳しく、ちゃんとプロの音楽家(?)からのフィードバックがもらえたので、相当ためになったと思います。

投稿時にトマト(ゲーム内通貨)を支払うことで、落選時にどこが悪かったか説明してもらえるサービスもありました。

ボロクソに言われる

 

ついでに、バンブラでは定期的に作曲コンテストも開かれていました。

入賞すると配信される上にトマトがもらえるので、いつも大変賑わっていました。

僕の曲が入賞することは結局ありませんでしたが、作曲仲間に囲まれる体験ができたのは大きかったと思います。

ついでに僕の投稿曲も1つだけ・・・

 

人生で一番オタクしていた(爆)

完全に蛇足ですが、バンブラは当時マイナーゲーにありがちなオタク界隈を形成していました。

当時中高生だった僕は、その中ではかなり若手でしたが、オフ会とかにもよく行っていました。アイタタタ……

でも、そのおかげでこんなものを持っていたりもします。

コンピアルバム(その1)

コンピアルバム(その2)

当時バンブラをやっていた人の中でも、未だに作曲を続けている人はわりといます。

DTMを始めるのに比べてかなり手が出しやすく、それでいて本格的だったバンブラというゲーム、すごい良ゲーだったなと今では思います。

何より開発陣の変態っぷりがすごい。

マスコットキャラがジト目爆乳ドSコウモリってどういう性癖してんだ?????

展覧会の絵のキエフの大門って凄くね?

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ムソルグスキー作曲「組曲 展覧会の絵は皆さんご存知ですね。そう、“あの曲”(がトップバッターにくる組曲)です。

 

 

この組曲の概要をザッと説明致しますと、

 

展覧会の絵』はムソルグスキーが、友人であったヴィクトル・ハルトマンの遺作展を歩きながら、そこで見た10枚の絵[1]の印象を音楽に仕立てたものである。ロシアにとどまらずフランス、ローマ、ポーランドなどさまざまな国の風物が描かれている。

展覧会の絵 - Wikipedia

 

といった組曲になっています。

元はピアノ組曲ですが、今だいたいの人が思い浮かべるのはラヴェルの編曲版です。私も多分それ聴ばっかり聴いてます。

 

で、私はこの組曲が好き。

 

特に好きなパートをいくつかピックアップしますと、

 

古城

中世の古城の前で,吟遊詩人が歌う情景を描いていると言われるこの曲は、古城の持つ独特の美しさ、そして寂しく静かな感じが音楽で綺麗に描き出されていて好き。ファゴットとサックスの奏でる音がエロいのも好き。

 

卵の殻をつけたひなどりのバレエ

この作品の元となった絵は、バレエの衣装デザインだ。1分ちょっとの短い曲だけど、雛鳥(の衣装を着た子どもたち)がちょこまかと踊っている感じが出ててめちゃくちゃ可愛い

 

鶏の足の上の小屋

「どういうこと?」ってな感じのタイトルですが、これはスラヴの伝説に出てくるバーバ・ヤガーという妖婆の住む小屋のこと。「妖婆襲来!」って感じのとにかくバリカッコいいパートから始まり、突如静かに身を潜めたあと、またバーン!と登場する感じが良い。

 

で、この「鶏の足の上の小屋」に続く、この組曲のラスト曲が

 

キエフの大門

 

な訳です。察しの良い人なら分かると思いますが、ナニコレ珍百景で流れる“例の曲”です。この曲はハルトマンがキエフの門再建計画ぼコンペに出した絵が元となっています。まあ結局、その再建計画は頓挫したそうですが。

 

そんなキエフの大門ですが、改めて聴くとめちゃくちゃすごくね?

 

聴いたことある人もない人も、まあとりあえず一度聴いてみましょう......

 

いやすごいね、うん。

この凄さを盛り上がりグラフで表現してみましょう。はい、こうなりました。

 

では具体的にどこがどうすごいか言語化してみましょう。

 

先程もお話しした通り、この曲の前の曲は「鶏の足の上の小屋」です。で、前の曲が「おお、次はどうなるどうなる...!?」ってなった所でクライマックス感あるあの主題がジャーン!と始まる訳です。また、このジャーーーン!はもう一回続きます。しかも盛り上がり的には一回目のジャーン!から完全にギアチェンジしていることが聴いてとれます。もうこの時点で気分はクライマックスです。100%の高揚感な訳です。

 

そのうち全体がスッと静かになって、落ち着いたメロディが演奏されます。ここで我々は少し落ち着きを取り戻すのです。ふう....

 

しかしまた、例の主題が始まります。しかも今回は重厚感のある感じで演奏され始めます。心の声としては「うおおおおおおおおお...!(低音ボイス)」といった感じです。

 

また、スッと静かになりました。次はどうなる...?と身構えていると、カーン...カーン...と鐘の音なんかが鳴り始めて、ジワジワジワジワーーーーーーーーーーっと曲が盛り上がっていきます

 

で、盛り上がって行った先で例の主題がジャーーーーーーーーン!となります。聴いている側としては「おおこれこそが、まさしくクライマックスだ」となる訳です。気分は120%の盛り上がりです。これぞまさしく最高のラスト...!

 

が、このままでは終わりません。また曲がちょっとだけ静かになって、曲がまたジワジワと盛り上がり始めます。120%のここから更に盛り上げようとするのです。こんだけ盛り上げておいてまだ盛り上げるのかよ!ちなみにここらへんからがナニコレ珍百景で流れるパートです。何気なく聴いてるかもしれませんが、あのパートに辿り着くまでにはこれだけの盛り上げがあるのです。すごいね。

 

で、堂々のラストです。もうすごい。圧巻のラスト。気分は150パーセント、いやこれはもう200%...!!!!!!!!!!!!!!

 

おわりに

というわけで今回は、キエフの大門の凄さについて長々と話しました、何気なく聴いてた人は是非一度音楽単体でじっくりと聴いてみてください。

 

というチラ裏でした。

 

なんか最近音沙汰がない人たち

こんにちは。皆さん元気ですか。私は元気ではないので労ってください。

さて、世の中には元気がなくなってしまったのか何なのかよくわかりませんが、いつの間にかいなくなってしまった人たちが存在します。いや、多分まだいるんですが、消息不明というやつです。現代における情報発信の大切さを改めて感じますね。

まあ、かりにいなくなっていたらそれはとても悲しいですし、もしかしたら復活する可能性も全然あるので、備忘録がてら書いてみます。

 

CHON


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アメリカのマスロックバンド。元々メタルっぽい感じだったが、年々穏やかな作風になりつつあった。が、テクニックは年々穏やかではない方向に向かっていった。

マスロックバンドは技巧を前面に押し出して、確かに技術は凄いけど曲としてはそんなに面白くないよね、みたいなバンドが多い中、CHONはキャッチーなメロディに割としゃれたコードを使っていたので記憶に残っている。上原ひろみや日本のゲーム音楽に影響を受けたとか受けてないとかいう話も聞いた気がするが、定かではない。

私の記憶では2020年にスタジオライブを配信して以来、何の音沙汰もない。何の音沙汰もないだけならミュージシャンによくあることなのだが(あんまりあってほしくないが)、HPのリンクが切れて久しい。アクセスすると何か凄い怪しいサイトに繋がる。Twitterも前は結構頻繁に更新されていたのだがここ2年くらい全然更新されない。寂しい。

 

LOW POP LTD.


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ただ完全に私の好みというだけなのだが、シューゲイズっぽい爆音ギターロックバンド。エモい。HASAMI groupのカバーがネットに氾濫していてほぼ全てがしょうも無い中、唯一上手かったので記憶に残っている。

HASAMI group結成から10年以上が経過し世代が一巡したからか、HASAMIの影響を受けたバンドが最近割と多く見られるような気がする(いや、どっちかというとNUMBER GIRLとかが本流か)。でもなんかエモいところだけ抽出してるバンドや個人が多すぎる。もっとしょうも無いところにも影響を受けてくれれば良いのに。

さて、話は戻ってLOW POP LTD.ですが、最近は作風が変わったのか制作してないのかよくわからない。2020年からTwitterが更新されてない。してくれ。昔YouTubeに上げてたHASAMI groupのカバーがちょっと前に上げ直されたけど、そんなことより新作を聴きたい。寂しい。

 

北園みなみ


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日本のソロミュージシャン。キリンジを彷彿とさせる凝った楽曲で2010年代からインターネット音楽オタクの間では話題だったらしい。編曲が上手いので記憶に残っている。数年前までOrangeadeというバンドに大沢健太郎名義で在籍していたが、素行が悪かったらしく突然解雇された。どゆこと?

最近は再びソロとしてアルバム制作をしていた。その当時はHPとかも頻繁に更新していた。が、音沙汰無くなってから久しい。音沙汰がないだけならまだいいのだが、HPもしめちゃったらしく、見れない。知り合いも連絡つかないらしい。寂しい。

Over Againは近年の日本のポップスの中でもかなり好きな曲なのでかなり戻ってきて欲しい。

 

 

 

以上です。寂しいですね。

こうして定期的に思いださないと本当に忘れそうで、私は悲しいです。